| ■『ユーノくんを抱き締めよう』 2008.1.31 |
――某日 八神家にて。 主であるはやてが深い眠りに就いた後、ひっそりと守護騎士達の間で行われている事があった。 それは、ユーノの蒐集という来るべき日の為に行われる鍛錬……。 まぁ簡単に言えば色々と恥ずかしい事を前以て練習しているのだ。 それを取り仕切っているのがヴォルケンリッターの中での最年長……いや、最も経験豊富なシャマルさんだ。 彼女は今日、シグナムと共にとある鍛錬を行っていた。 シャマル:「今日はユーノくんを抱き締める練習をしましょうか♪」 シグナム:「だ、抱き締めるだと……!?」 シャマル:「そうよ♪こうやってぎゅーっと……ね♪」 そう言うと枕を手に取りギュッ抱き締めてみせるシャマル。 この枕は度々、ユーノに見立てられて用いられる練習用の小道具だ。 枕の隅には、はやて自作のユーノの似顔絵が貼られており、より感情移入しやすいようにと配慮もされている。 ……正直効果があるのか微妙ではあるが。 シャマル:「はい、それじゃあ同じようにやってみて?」 シグナム:「う……」 枕を手渡され、戸惑いの表情が隠せないシグナム。 ――これをスクライアだと見立てて抱擁しろと言うのか……? これまで主の為に様々な敵と戦い、それを己の力で往なしてきた彼女にとっては、そのような行為は未知の領域。 どのような力加減でやれば良いのか分からないし、どういう言葉を投げ掛けるべきなのかも分からない。 実行に移す以前に、何をどうやれば良いのか頭を悩ませていた。 シャマル:「そんなに深く悩まなくてもいいんだけど……」 シグナム:「お、お前はいいかもしれんが、私には難し過ぎる」 シャマル:「うーん……それじゃあ、こういうのはどうかしら♪」 ただ相手の事を想い、ぎゅっと抱き締めるだけでいいのだが、やはり男女間の経験が薄いシグナムには難しいようだ。 そんな彼女に対し、シャマルは次の実践方法を提案してきた。 シグナム:「な、何をする気だ?」 シャマル:「いいから見てて♪」 枕をベッドの上へ置くと、それに覆い被さるような構図となるシャマル。 そして枕の後ろに優しく手を回し、しばしの間ユーノの似顔絵を見つめると、自身の顔を枕の上に沈めるのだった。 それはもう何とも幸せそうな表情で……。 シャマル:「とまあ、こんな感じ?♪」 シグナム:「絶対に無理だ!さ、さっきのよりも余計に難しいではないか……!」 シャマル:「あら、そう?最後の頬擦りとかはしないでいいにしても……覆い被さるくらいは出来るんじゃないかしら♪」 当然ながらシャマルが示す新たな方法にもシグナムは断固として否定の意を示してくる。 シャマルは本当にシグナムに実践出来る様にする気持ちがあるのか疑わしくなってきた。 シャマル:「だって、こういう構図って何だか相手を制してるみたいでシグナム向けだと思わない?♪」 シグナム:「相手を制する……?た、確かに私向きかもしれんな」 シャマル:「でしょう?ほら、シグナムなりのやり方でいいからやってみて♪」 シグナム:「あ、ああ……」 ”相手を制する”というフレーズは生粋の騎士であるシグナムにとって、分かりやすく且つ心地が良いものだった。 これには先程まで気に染まない様子だった彼女も、次第にやる気が湧き始めているようだ。 シグナム:「す、スクライアッ……!」 シャマル:「(あ、あんなに乱暴にするのは良くないんだけど……。まぁ、いいかしら?)」 ”ぽすんっ”と枕をベッドの上へと投げ飛ばすと同時に覆い被さるような形となるシグナム。 見るからに力で制するといった感じで、その動作からは男女の間の抱擁といった雰囲気は感じられない。 しかし、これでもシャマルの目から見たら非常に進展があったといえる方。 敢えて、その乱暴さは目を瞑ってシグナムの様子を黙って見守る事にするのだった。 ![]() シグナム:「こ、この後は……どうすればいい?」 シャマル:「えっと、枕の後ろに手を回して抱き締めるの」 シグナム:「わ、分かった……こうだな」 ――あら、抱き締める所までいっちゃうのかしら? 大幅な進展に期待を寄せるシャマルであったが、そうはいかないのがシグナム。 相手に隙を作らないように瞬時に枕の裏面に手を回したかと思えば、”ギリギリ……”と聞こえんばかりの強さでホールドしているのである。 これではユーノ本人を抱き締めるどころか奈落の底へと落としかねない勢いだ。 シグナム:「こ、これで良いのだろう……?」 シャマル:「え、えぇと……あははは……」 ――ま、まだまだシグナムには教育が必要みたい……。 こういった訓練よりも、もっと根本的な事から教えるべきではないか。 そう実感するシャマルであった……。 |
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