■メニュー(SS付きイラスト) 2007.5.14
#『変わらぬ日常』

―光風館・キリヤの部屋前―

シーナ:「
キリヤ?ねぇ、起きてる?

ドアをノックするが中から返事はない。

シーナ:「
はぁ……。また、あいつ寝坊してるわね

ため息を吐きながらそう言うシーナ。
どうやらキリヤが寝坊する事はよくある事のようだ。

シーナ:「
まったく……いつまで寝てるのよ!

シーナは腹を立たせながらドアノブに手を回す。
長い付き合いで普段からこういう事が日常茶飯事であるため、何のためらいもない。

シーナ:「
やっぱり寝てる……。コラ、キリヤ!今日は午後から聖杯の探索に出るって言ってたでしょ!?早く起きなさいよ!!

今日は午後からシーナと二人で探索に出る予定だったようだ。
彼女が言う聖杯とはキリヤ達がこの夢幻大陸エンディアスから元の世界へ帰る為に必要になる物らしい。
それだけ強力な力を秘めているらしいが、実際に手にした所で帰れる保証はどこにもない。
しかし、行動しないよりはマシという理由で探索を続けているのだった。

キリヤ:「
う〜ん……zzz

大声で起こそうとするが、キリヤは起きるどころか口から涎を垂らし幸せそうな表情で寝息を立て続けている。



シーナ:「
もぉ〜何で起きないのよ!やっぱりキリヤの寝起きの悪さは筋金入りだわ……

そんなキリヤを見て、シーナは怒りを通り越して呆れ顔になってしまう。

シーナ:「
しょうがない!いつもみたいに引っ叩いてでも……

幸福感漂うキリヤの頬に照準を合わせ、右手を大きく振り上げるシーナ。
これも日常茶飯事の事でシーナにとっては最終手段である。

シーナ:「
やっぱ止めとこ……

大きく乾いた音が部屋に響くかと思われたが、シーナは振りかぶっていた右手を下ろしてしまった。

シーナ:「
こうやってアンタの寝顔をゆっくり見るのも久し振り……

先程までの怒りと呆れが混じった表情が次第に穏やかな表情へと変化していく。

シーナ:「
ちょっと前までは当たり前のようにしてきた事なのに……。心にゆとり失くしちゃってたかな……

この世界に召喚されるまでは当たり前だった光景。
見知らぬ土地での生活に適応せざるを得ない状況に追い込まれた事で、すっかりその機会も失われてしまっていた。

シーナ:「
今日くらいは自分で起きるまで待っててあげよっかな……?

――今日くらいはゆっくり過ごそう……
キリヤの寝顔を見つめながら、そうシーナは思い始めるのだった。

キリヤ:「
ぅ……ん、シーナ……

シーナ:「
き、キリヤ!?お、起きてたの?

シーナの言葉に同調するかのように突然声を出すキリヤ。
自分の独り言が聞かれたのではと少し動揺してしまうシーナだったが……

キリヤ:「
………zzzz

キリヤはまたすぐに寝息を立て始める。

シーナ:「
ね、寝言……?はぁ……驚かせないでよ

キリヤ:「
シーナぁ……

シーナ:「


キリヤ:「
お前なぁ……ルミナス・ナイツって……学校の名前からまんま取ってるだろ……もうちょっと考えろって……zzzz

シーナ:「
なっ……!Σ

キリヤ:「
だいたいお前なぁ……俺より先に来てる事から間違ってる……。こういうのは男の俺が先に着いて、後から来た女の子を助けるってのが……。まぁ、お前じゃ助ける必要はないか……凶暴だし

シーナ:「
何ですってぇ〜〜!!!

寝言とは思えないほど饒舌な口調で次々とシーナに対しダメ出しをするキリヤ。
これにはシーナも我慢できず大声を上げてキリヤの身体を掴みかかってしまう。
身体を大きく揺さぶられているにも関わらず依然としてキリヤの目が覚める様子はない。

シーナ:「
前言撤回……!ゆっくりする所か最高の目覚めを用意してあげるわ……!

みるみるうちにシーナの表情が怒りのものへと再度変化していく。
振り上げられた手には握り拳が作られ、もはや歯の一本でも飛びかねない状況である。

キリヤ:「
こっちに飛ばされてからも変わらず俺の世話ばっかり焼いたり、俺に引っ付いてきたり……少しは付き合わされる俺の身にもなれよな……zzz

まだまだ口から出てくる不満の言葉。
シーナの手はわなわなと震え、もう顔面への殴打は時間の問題かと思われたが……

キリヤ:「
でもお前が傍に居てくれて本当は助かってる……。俺だけだったら今頃どうなってただろうな……zzz

予想もしなかったキリヤの感謝の言葉。

シーナ:「
キリヤ……

キリヤ:「
はは、何だよ……いつものお前らしくない反応だな……zzz

シーナ:「
ど、どういう意味よ、それ……

反応が返ってこないと分かっていても、つい寝言に反応してしまうシーナ。
しかし、先程までのような強い口調での反応ではなく弱々しい。
すっかり最高の目覚めを演出する気が失せてしまったシーナは、キリヤを掴んでいた手を離し、解放するのだった。

シーナ:「
何で寝言でこういう事言うかなぁ……

シーナはキリヤの自分自身に対する本心が寝言から垣間見えた事に少し気恥ずかしさを覚える。
部屋にはこれまでの喧騒から一転、しばしの静寂が訪れた。

――それから少し経った後の事だった。
先程までの寝言がウソのように静かになってしまったキリヤの様子を見ようと顔を覗き込む。

シーナ:「
や、やだ……!もしかして、これって……

気のせいだろうか、キリヤの唇がもにょもにょと怪しく動いている。
時折、舌を出し入れさせたり動きが生々しくてイヤラしい。
恐らく夢の中でシーナと良い雰囲気となり接吻……もといキスでもしているのだろう。

シーナ:「
ちょ、ちょっとぉ……

まだお互いリアルでそんな関係でもないのに夢の中で一足先に何をやっているのか。
自分がキリヤの夢の中でされている事を想像してしまい、思わず自らの唇に触れて頬を紅潮させてしまう。

キリヤ:「
っ……はぁ……!シーナ……良いだろ……?zzz

夢の中でのキスを終え、甘い声で優しく囁くキリヤ。
幼馴染で長い付き合いはあるがこのような声、そして言葉は聞いた事がなく思わずシーナはドキッとしてしまう。
やがて彼女の中でこのまま寝言がどこまで進んでしまうのか興味が湧いてきてしまい、葛藤が始まる。

シーナ:「
な、何を考えてるのよ私っ……!いくら夢でもこんなのって……

必死に頭では否定はするものの、身体は肯定を受け入れ動いてくれない。
どうやら身体は「興味」の選択肢を欲しているようだ。

キリヤ:「
なんだ……お前、意外と可愛い下着着てるんだな……zzz



シーナ:「
う、うぅ……

キリヤの夢の中での行為は更に進む。

否定したい気持ちに反し、胸の鼓動は早くなり、キリヤの次の言葉を期待している。

キリヤ:「
それじゃあ……脱がすぞ……zzz

シーナ:「
ぇ、ちょっ……!?

いくら興味があるとはいえ、夢の中で自分が晒している姿を想像するともう耐えられそうになかった。
これまで好奇心で抑え付けられていた身体はようやく動き、キリヤを起こそうと頬を軽く叩く。

シーナ:「
ね、ねぇ、キリヤ!もう起きなさいよ……

キリヤ:「
うぅ……ん、ハハ……お前、成長したなぁ……zzz

シーナ:「
……っ!!

キリヤ:「
適度に出る所は出てるし……あぁ……だが、まだ下はツルツr(略)……か……zzz

シーナ:「
なっ、なっ……!

キリヤが今、口にした事はまさにシーナがリアルに気にしている事だった。
身近に理想系のプロポーションを持つクレハがいるだけに、自分の体型が比較の対象となっていないかいつも気に悩んでいたのだ。

キリヤ:「
……zzzz

そして、キリヤの寝言はその言葉を最後に途絶えてしまう。

シーナ:「
ちょ、ちょっとぉ……まだ他に言う事あるんじゃないの!?でも可愛い、とか……ねぇ!

――その言葉だけでも聞ければ自分のコンプレックスは薄れ、救われるのに……
そう期待するがキリヤの口からその言葉が出てくる事はなかった。

シーナ:「
何よ、これじゃまるで私っ……

寝言が突然途絶えてしまう事はよくある事だが、これではまるで自分の身体を見た事で萎えてしまったようにもとれてしまうのが納得がいかなかった。
ムリヤリにでも続きの言葉を聞きだそうと、キリヤの頬を思い切り横に引っ張ろうとするが……

キリヤ:「
んぐぐ……、そ、そんらぁ……ひっ、ひたいれすぅ!クララさまぁ……!zzz

次に出てきた言葉はシーナが期待していたものとはまるで違うものだった。

シーナ:「
く、クララさま……ってもしかしてクララクラン姫の事……?

クララクランとはキリヤ達が身を寄せ聖フィリアス王国の王女の事である。
王女であろうと皆と同じように普通に接しているキリヤがどうして……

シーナ:「
いつもは「様」なんて付けて呼ばないクセにぃっ……!!

いつもと違う態度に嫉妬心が生まれ、頬を引っ張る力が更に強まる。

キリヤ:「
んあぁぁあぁっ……!!そっ、そんら風に盾を押し付けてくるらんてっ……ら、らめれすって……あぐぅ!!zzz

頬を更に引っ張られながらそう漏らすキリヤ。
言葉から察するにどうやらクララクランが持つ聖女ミナスの盾に押し潰されているようである。
彼の口からはその苦しみを拒絶したい言葉が漏れていたが、よく見るとその表情は快楽を得ているようだった。
いつもはクールに接していても、その内では高貴な女性に弄られたいというM精神が秘められているのかもしれない。
そんな自分が知らないキリヤが自分ではなく別の女性へ向けられている事がシーナは悔しくなった。

シーナ:「
何よぉ、そんな気持ち良さそうな声出してぇっ!!!

キリヤ:「
あぁっ!!い、いっ、ひっ!いだぁあぁぁっ――……ッッ!!……っあ、アレ……?

引き千切られんばかりに伸ばされるキリヤの頬。
その痛みのせいなのか、それとも目が覚める頃合だったのか定かではないがキリヤはようやく眠りから目を覚ました。
まだ寝ぼけたような表情で一体何が起こったのか理解できないような様子でこうシーナに問いかける。

キリヤ:「
な、なんでお前がここにいるんだよ……!?

シーナ:「
ようやく目が覚めたみたいねぇ〜……キ・リ・ヤ君?

キリヤ:「
でも確か俺はさっきまでクララ様と……

シーナ:「
クララ様ぁ?

キリヤ:「
あ、いや……く、クララクランと……

シーナ:「
随分と楽しそうな事してたみたいだけど、一体何してたのかしらねぇ〜……?

シーナは笑顔を以って尋ねてくるが、口が引きつっているので怖い。
その表情の奥底には激しい負の感情が渦巻いているという事が容易に見て取れる。
それにキリヤ本人も何だか嫌な予感がしてきた。

キリヤ:「
な、何をって……まさか、お前……っ!?

シーナ:「
えぇ、ぜーんぶアンタが寝言で勝手に喋ってたわよ

キリヤ:「
い、いつから……?

シーナ:「
私に言った事を思い出してみたら分かるんじゃないの?

キリヤ:「
お、お前に……。えーっと…………あ……!

さっきまで自分が見ていた夢をゆっくり思い出してみる。
最初はぼんやりと薄れていた記憶が徐々に鮮明になっていき、キリヤは自分がシーナに対して言ってしまったであろう事を思い出してしまった。

シーナ:「
アンタ、私に何て言ってたかしらねぇ〜……?

キリヤ:「
う……

――このままではマズイ
シーナのあの様子だと全て聞かれていたに違いない。
このまま正直に全てを答えるか、それとも……

キリヤ:「
る、ルミナス・ナイツってネーミングセンス良いよなぁ!

しかしキリヤの口から出た言葉は、真逆のモノだった。
ここは敢えて素直に出ず、シーナの機嫌を取ろうという作戦なのだろうと思われたが……

シーナ:「
……他には?

キリヤ:「
し、シーナはまだまだ身体は子供っぽいけどしょ、将来がた、楽しみ……だなぁ、ハハハ……

シーナ:「
……

肝心の部分は素直に答えてしまった。
シーナの表情を恐る恐る伺ってみると、ジト目で物凄く睨みつけられている。

キリヤ:「
ち、違った……?

シーナ:「
……何で私の身体の事には脚色なしなのよ

キリヤ:「
それは俺の正直な気持ちだ!

いつになく真剣な表情でそう答えるキリヤ。
正直な気持ちを伝え、窮地をめでたく脱する……

シーナ:「
……子供っぽくて悪かったわね、こんのバカぁぁっーーーー!!

という予定だったが、それはもはや今のシーナの精神状態には逆効果だった。
特に「子供っぽい」という言葉が。

キリヤ:「
ちょ、まっ、待つんだシーナっ!最後までちゃんと聞いたか!?将来が楽しみだって……!!!

シーナ:「
問答無用ッ!!

キリヤ:「
ふごぉぉっ!!!

ゴスッという鈍い音が部屋に響き渡り、近くの木々に留まっていた鳥達が一斉に飛び立つ。

シーナ:「
はぁっ……。玄関で待ってるから、さっさと来なさいよー

キリヤ:「
は、はひ……

思い切り殴った事ですっきりしたシーナは、そう言い放つと部屋を出て行くのだった。
こうしてエンディアスでの長い一日は、ある意味いつもと変わらぬ光景で始まりを迎える
……
■キャラ設定
>キリヤ・カイト
ウィンドにおける主人公。
シーナとは幼馴染の関係で、軽口を叩けるような間柄である。
あまり物事には表立って積極的にはならず、その気持ちは内に秘めがちだが、性的なことに関しては激しく積極的という一面を持つ。
幼い頃からシーナに弄られてきた故、M男君。

>シーナ・カノン
キリヤとは幼馴染の関係で共に異世界へと召喚される。
明るい性格と積極的な行動で控えめなキリヤを引っ張ったり、世話を焼くのが彼女の日課。
キリヤに対し荒っぽい行動を取る事もあるが、その内では密かにキリヤへ想いを寄せている。
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