■鮎川家の変態姉妹■




 鮎川綾奈は、胸の高鳴りを抑えながら、扉の前に立っていた。

 手に持っている手紙が、噴出す汗でしっとりと濡れてきているような気がする。綾奈は、大きく息を吸った。

(美麗ちゃん、これをみたら、どう思うかしら?)

 扉の向こうにいるはずの妹の名前を思っただけで、綾奈の胸はときめいた。心臓から流れ出る血液の音が、耳の奥底から聞こえてくるような気がする。

(怒るかしら?怒るわよね)

 綾奈は、もう一度、大きく息を吸った。肺が空気で一杯になる。

(・・・怒られても、いいな)

 もしも目の前に鏡があったなら、漆黒の黒髪に、白皙の肌に、ほんのりと頬を紅潮させている綾奈の顔が映し出されていたはずだ。手紙を持っていない開いた手で、高鳴る胸を感じながら、綾奈は目を閉じた。

(さぁ、行こう)

 決心し、扉を開けようとした、その瞬間。

「お姉ちゃん?」

 扉の向こうから声がした。

 体がびくんとした。心臓が止まるかと思った。

「帰ってきたの?おかえりなさい」

 透き通った声だ。大好きな、妹の声だ。綾奈の胸の鼓動はとどまることを知らず、どんどんどんどん耳の奥に響いている。

「うん。ただいま・・・美麗、ちょっと入っていい?」

「なに遠慮してるの?変なお姉ちゃん・・・いいよ」

 綾奈は、ゆっくりと扉を開けた。部屋の中の空気が流れ出てくる。

(・・・あ。美麗の匂い)

 心の奥底が、ぎゅっと締め付けられる気がした。綾奈は胸いっぱいに息を吸い込むと、一歩、中に入った。

 持ち主の性格を現しているかのように、可愛らしい部屋だった。大きさはそれほどではない。ベッドがひとつに、机がひとつ。それにテレビにパソコン。たくさんのぬいぐるみが置いてある。綾奈はテレビの上に置いてある熊のぬいぐるみに目をみやった。懐かしい。昔、家族で旅行したときに、おそろいで買ってもらったぬいぐるみだ。同じぬいぐるみが、綾奈の部屋にも置いてある。

(・・・同じ、ぬいぐるみ)

 そう思うと、綾奈は少し微笑んだ。

「遅かったね」

 美麗は、ベッドの上に腰掛けていた。制服はきちんと脱いで壁にかけてあり、今は普段着だ。

「やっぱり、受験生は忙しいんだね。私も来年だし、そろそろ真面目に勉強しなきゃいけないね」

 足をぶらぶらさせながらそういう美麗を見て、綾奈は心の底から可愛いと思い、抱きしめたいと思った。

「美麗」

「なに、お姉ちゃん?」

「・・・今日遅くなったのはね、勉強してたからじゃないの」

 そう言うと、綾奈は手にしていた手紙を、また、ぎゅっと握り締めた。とくんとくんとくん。心臓が止まらない。

「・・・じゃぁ、こんなに遅くまでなにしてたの?」

 美麗の質問に、綾奈は答えなかった。逆に、質問を返した。

「今日、お父さんとお母さんは?」

「二人とも、仕事で遅くなるって」

「・・・そう」

 窓の外を見た。もう薄暗くなっていて、まるで鏡のようになっている。窓に映し出された綾奈の姿は、学校帰りのセーラー服で、腰まで届く黒髪が美しかった。

 両親がいないのは、最初から知っていた。知っていたからこそ、まっすぐに美麗の部屋に来たのだから。

 怪訝な顔で見つめてくる美麗にむかって、綾奈は黙ったままで、手にしていた手紙を差し出した。

 読んで、とは言わない。美麗が手紙を読むのは分かっている。それから先の行動も、分かっているつもりだ。

 思ったとおり手紙を読み始めた美麗の隣に、綾奈は腰掛けた。

 ベッドが少しきしんだ音を出した。

「これ・・・」

「お姉ちゃん、これでももてるんだからね」

「嫌!」

 美麗が立ち上がった。肩が震えている。少しウェーブの入った髪の毛は、黄色く染めてある。その染めた髪の毛も震えていた。

「なんでこんな手紙、受け取ったの?」

「そんなこと言ったって、断れないじゃない」

「断ってよ!」

 そう激昂すると、美麗は手紙を投げつけた。

 手紙には、「鮎川綾奈さま」とかかれており、その先に、男の名前が書いてあった。

 今日の放課後、綾奈を校舎裏に呼び出した男の名前だ。

「断ってって・・・美麗、そんなこという権利が、あなたにあるの?」

「あるわよ!」

「どうして?」

「だって・・・」

 美麗は、少し涙ぐんでいた。綾奈は、ぞくりぞくりと、背中に痺れを感じた。

「お姉ちゃんは・・・私のお姉ちゃんだもん」

「私は、美麗のものなの?」

「そうよ!」

 この言葉を待っていた。綾奈は、放課後、男に呼び出されたときから、この瞬間を待っていた。美麗の潤んだ瞳を見つめていると、全てを吸い取られてしまうような気がしてくる。

「どうして、私は美麗のものなの?」

「だって・・・」

 一筋の涙が、美麗の頬を伝った。顎筋にたまった涙が、ぽとりと落ちる。

「・・・してくれたじゃない」

「なにを?」

 分かっているのに、あえて問い返す。嗜虐的な悦びが、綾奈に満ち溢れていた。

「私のこと、好きだっていってくれたじゃない!」

「それだけ?」

「ううん。それだけじゃない」

 もっと言って欲しい。もっともっと、言って欲しい。もはや、綾奈は手紙の存在など忘れていた。どうせ、美麗をたきつけるためだけに受け取った手紙だ。男など、どうでもいい。

「お姉ちゃん、しれくれたもん」

「なにをしたっけ?私?」

「・・・いじわる」

「ええ。意地悪よ、私」

 そう言うと、綾奈はいきなり手を伸ばし、美麗をぐっとひきつけた。

 二人でベッドに倒れこむ。

「私、どんなことを美麗にしたっけ?」

「・・・まずは、キス」

「どんなキス?」

 意地悪に、微笑む。美麗は、しばらく黙っていたが、やがて我慢できなくなったのか、

「お姉ちゃん、目をつむって」

 と言うが早いか、唇を綾奈に押し付けてきた。

「・・・ん」

 綾奈も目を閉じると、腕を美麗の首の後ろに回し、ぎゅっと抱きしめながら、美麗の唇の感触を味わった。

 そして、舌を美麗の口内に伸ばす。美麗は何の抵抗もしなかった。むしろ、積極的に綾奈の舌を受け入れた。二つの舌が、絡み合い、動き回った。

 綾奈は、自らの唾液を、美麗の口内に流し込んだ。美麗は、嬉しそうにそれを受け入れた。

 まるで唇だけが別の生き物のようだった。柔らかな感触を楽しんでいた。

 長い長い時間、唇を合わせていた。

 永遠とも思える濃密な時間が過ぎた後、二人はゆっくりと唇を離した。

 二人の唾液が一本の線を引き、唇と唇の間をつないでいた。

「・・・服、脱がせて」

「・・・うん」

 美麗は、一枚一枚、ゆっくりと、綾奈の服を脱がし始めた。

 汗をかいているのが分かる。綾奈の汗の香りが、美麗の鼻腔をついた。

「・・・そこは待って」

 ブラも脱がされ、いよいよ後一枚で生まれたままの姿になるという時に、綾奈は美麗を止めた。

「どうして?お姉ちゃん」

「・・・ここは、美麗に、下着の上から触って欲しいの」

「いいの?」

「うん。汚してもいいよ。後でお母さんにばれないように、私が洗濯するから」

 そう言うと、綾奈は微笑んだ。美麗は、ゆっくりと、手を伸ばした。

「・・・あ」

 ぴくんと、綾奈が動いた。

 美麗は、下着の上から、中指一本だけで綾奈の一番大事なところをさすった。指の動きにあわせて、綾奈が甘い声を発する。

「お姉ちゃん・・・濡れているよ」

「下着の上からでも分かる?」

「分かるよ。下着なんて、もうぬるぬるしてるもん」

「・・・そうさせてるのは、美麗だよ」

「うん。嬉しい。もっと感じて」

 美麗は指を動かしながら、綾奈の胸と胸の間に顔をはさんでいた。綾奈の胸は大きい。その大きな胸が揺れている。頭の上から、綾奈の切ない吐息が聞こえてくる。

(お姉ちゃん、感じてくれてるんだ)

 そう思うと、美麗はこれ以上ないほどの悦びを感じた。

(もっと、もっと、感じさせてあげたい)

 美麗の目の前に、ほんのりと薄い桃色に染まった、綾奈の胸の先があった。美麗は、舌先を伸ばした。

 ぴくんと、綾奈が動いた。もう一度、舌先をピンクの突起に伸ばす。するとまた、綾奈がそれに合わせて、ぴくんと動いた。

(お姉ちゃん、感じてくれている)

 嬉しくなった美麗は、今度は綾奈の乳首を、少し噛んでみた。

「あ」

「ごめん!お姉ちゃん、痛かった?」

「・・・違うの。気持ちいいの。美麗。気持ちいいの」

 綾奈は太ももをぎゅっとすぼめた。

「我慢できない・・・変になっちゃいそう・・・」

「いいよ。お姉ちゃん。変になって。変になって欲しいよ」

「美麗」

「なに?お姉ちゃん」

「・・・直接触って」

 どこを?とは聞かなかった。聞くまでもなかった。美麗は、綾奈の一番感じる場所に、そっと指を伸ばした。そこは、大洪水だった。ぬるぬるしていた。

 指のすべりがいい。美麗は、しばらく指で円を描くように、綾奈のあそこをさぐっていたのだが、「早く・・・早く・・・」という綾奈の声に負けて、一番深い穴の中に、中指を奥まで一気に入れた。

 綾奈は大きな声をあげたかと思うと、今までで一番強く、美麗を抱きしめた。

「・・ちゃった」

 綾奈の中はまるで別の生き物のようで、美麗の中指をあらゆる角度から締め上げている。

「いっちゃったよ・・・美麗にいかされちゃったよ・・・あん」

 かまわず、美麗はさらに綾奈のあそこの上にある、小さな突起に触れた。

「あ、あ、あ」

 綾奈は、もう声にもならない声を発していた。美麗は、中指の先で突起をぎゅっと押したかと思うと、今度は親指と人差し指と中指の三本の指で、突起をつまみ上げ、そのぬるぬるした感触を楽しみながら早く動かした。

 そのたびに綾奈はいかされた。

 だらしなく口から唾液をたらし、のびきっている綾奈の姿を見て、美麗はこれ以上ないほどの幸せと興奮を覚えていた。

(もっと、愛してあげたい)

 今まで、美麗と綾奈は、何度も何度も愛し合ってきていた。

 このベッドの上で、何度、綾奈を抱いただろう?

 何度、綾奈に抱かれただろう?

 同じ女同士だからだろうか?姉妹だだからだろうか?禁忌に触れていると分かっているからだろうか、だからなのだろうか?愛すれば愛するほど不安になり、抱けば抱くほど不安になる。

(もっと、禁忌を犯したい・・・)

 美麗は、思った。

 二人で、禁忌を重ねたなら、今よりもっと禁忌を重ねたなら、二人共通の秘密が多くなればなるほど、二人で禁忌を超えれば超えるほど、絆は強くなるのだろうか?

 そして。

 いきすぎて動かなくなった姉を見て、美麗は一つの決心をした。

(お姉ちゃんと二人で、いけるところまで、いこう)

 指を伸ばす。

 美麗の指は、姉の体の中で、まだ一度も触れたことのない場所を、触れていた。

「・・・美麗?」

 初めて味わう感触に、綾奈は重い頭を持ち上げた。

「なにしてるの?」

 返事はなかった。美麗の指先は、さきほどまで綾奈の秘壺を触れていたおかげもあり、ぬるぬるに濡れていた。

 その液を、何度も何度も、美麗は綾奈の菊の穴に塗りこんでいた。

「ちょっと・・・やめて・・・」

「やめないよ」

 姉の抵抗を、美麗は無視する。

「いや・・・」

 中指を押し込もうとしたが、菊はなかなか開かない。

「お姉ちゃん・・・力抜いて」

「いやよ・・・いけないわ」

「だめ」

 ぎゅっと、力を入れる。綾奈の菊の穴は、弾力があった。しばらく抵抗していたが・・・やがて。

「あ」

 美麗の指を受け入れた。

「お姉ちゃん・・・入っているよ」

「いや・・・やめて・・・抜いて・・・」

「だーめ」

 入り口は小さいが、中は意外と広かった。

「いや・・・いや・・・いや・・・」

 綾奈は目を閉じて肩を震わせていた。全ての神経が、後ろの穴に集中しているかのようだ。

「お姉ちゃん。今、私の指がどこに入っているかわかる?」

「分からないわ。いいたくない」

「今ね。私、お姉ちゃんのお尻の穴に指を入れているんだよ」

「言わないで・・・変態みたいじゃない」

「変態だよ。私たち」

 美麗はそう言うと、思いっきり、指を綾奈のお尻の穴の奥まで差し込んだ。

「姉妹で、こんなことしてるんだもん。変態じゃないわけ、ないじゃない」

 そして、ゆっくりと、中指の中ほどまで引いた。すさまじい排泄感が綾奈を襲った。

「あ」

 それを感じ取った美麗は、再び指を押し入れた。綾奈が腰をあげる。それをみると、もう一度指を引く。すると綾奈が震える。何度も何度も、それを繰り返した。

「・・・お姉ちゃんだからだよ」

「・・・なにが?」

「お姉ちゃんだから、私、こんなことしてるんだよ」

 姉のアナルをこねくり回しながら、美麗はいった。

「他の人のお尻の穴なんて、私、触りたくない。けれど、お姉ちゃんだからいいの。お姉ちゃんだから、私、触りたいの」

「・・・美麗」

「大好きだよ、お姉ちゃん。大好きだから」

 その言葉が、とまった。

 綾奈の肛内をまさぐっていた美麗の指が、あるものをみつけたのだ。

「お姉ちゃん・・・何かあるよ」

「え?」

「今、私の指先に、なにかあたってる」

「・・・まさか」

 美麗は、指を動かした。綾奈の肛内で、その塊が、美麗の指の動きに合わせて動いた。

「お姉ちゃんのが、指にあたってるよ」

「やめて!」

 綾奈は絶叫した。

 他のことなら耐えられる。変な感触だけれども、アナルを触られることなら耐えられる。

 けれど・・・

 これは耐えられない。

「やめて!」

 もう一度、絶叫する。

 しかし、美麗はやめなかった。むしろ、それに反発するように、もっともっと指を動かした。そして、ゆっくりと、その言葉を口にした。

「私の指、お姉ちゃんの、うんちにあたってる」

「・・・もうやめて・・・」

 綾奈は泣いていた。嗚咽が漏れる。信じられない。こんなことをされるなんて、信じられない。

「やめないよ。私、今、お姉ちゃんのうんちに触っているんだもの」

 美麗は、綾奈の肛内に入れた指を、さらに動かした。爪で、綾奈のそれをつつく。それは綾奈の体の中で動き回った。

「お姉ちゃんのうんち、柔らかいよ」

 指先で姉のうんちを触りながら、美麗は姉の顔を見つめた。思わず、綾奈は顔をそらした。

「だーめ」

 姉のアナルに入れている右手ではない左手で、美麗は綾奈の頬にそっと手を触れると、向きなおさせた。

 目と目が合う。綾奈の瞳は、恥ずかしさのあまりに潤んでいる。

「お姉ちゃんのうんちに触りながら、キスしたい」

 美麗はそう言うと、目を閉じた。綾奈はお尻の感触を感じながらも・・・その期待に答えた。

 生まれてはじめての経験だった。形容しがたい感覚が、綾奈の全身を覆っていた。

「お姉ちゃん・・・大好きだよ」

 もはや観念したのか、綾奈は美麗の動きに抵抗しなくなっていた。

 再び舌を突き出し、同じく突き出した美麗の舌先に触れた。唾液が伝わった。

 しばらく二人とも、そうして舌先だけのキスをしていた。

 そして、ゆっくりと・・・美麗は綾奈のアナルから指を引き抜いた。

 長い長い排泄感が、綾奈を襲った。排泄感は、すでに快感へと変わっていた。

「あぁ・・・」

 と声を漏らし、唾液と涙と鼻水を流しながら、綾奈はもはや何度目か分からない絶頂を迎えた。

 

 綾奈と美麗は、向き合って、ベッドの上に横たわっていた。

 お互いの吐息を感じ取ることができる距離だ。

 その顔と顔の間に、美麗は先ほど綾奈の肛門から引き抜いた指を持ってきた。

 爪の間に、茶色いものがはさまっていた。

 何も言わず、美麗は微笑んだ。次の行動を、もはや綾奈は予想することができた。あれほど恥ずかしかったことが、今では充足感に取って代わっていた。嫌悪感はない。むしろ、幸せな気分でいっぱいだった。

「いいよ」

 と、綾奈はいった。

 その言葉を待っていたかのように、美麗は可愛い小さな唇を開けると、指先を口に含んだ。

 くちゅ・・・くちゅ・・・くちゅ・・・

 口を動かす妹を見て、綾奈は心の底から、いとおしいと思った。

 美麗は、口から指を引き抜いた。

 糸がつたっている。

 そして無言のまま、顔を綾奈に近づけた。綾奈は、目を閉じた。唇と唇が触れる。もう数え切れないほどキスをしたのに、今回のキスが、一番衝撃的で、気持ちよくて、そしてお互いの愛情を感じとることができた。

 美麗の口の中から流れ込んでくる液体を飲み込むと、綾奈は力いっぱい、美麗を抱きしめた。

 長い長いキスをして、唇と唇が離れた。

「ちょっと苦いね」

 綾奈がいった。美麗が笑った。

 

「いい?」

「いいよ」

 大きく足を開いた美麗の上に覆いかぶさるようにして、綾奈は足を広げた。

 お互いの顔が、紅潮している。しばらく見つめあい、二人ともくすりと笑うと、口を開いた。

「美麗、愛してるよ」

「私もお姉ちゃんを愛してるよ」

 上に覆いかぶさっている綾奈の汗が、ぽたりぽたりと落ちてくる。

「先に、私が出そうか?」

「ううん」

 美麗は、かぶりをふった。

「二人一緒がいい」

「私たち、変態姉妹だね」

「うん。いいよ。お姉ちゃんとなら。変態でもいい」

 そう言って、美麗は微笑んだ。

「後片付け、大変そうだね」

「お母さんたちがかえってくる前に片付けないとね」

「一緒に、片付けようね」

「うん」

 そして、二人とも、同時に力み始めた。肩が震えている。汗がとめどなく流れている。

 震えながら、綾奈がいった。

「美麗」

「なに、お姉ちゃん?」

「お願いがあるの」

「いいよ。なんでも言って」

「あのね」

「うん」

「私のこと、これから、お姉ちゃんじゃなくって、名前で呼んで」

「え?」

「だって、好きな人には、名前で読んでほしいもの」

「・・・お母さんたち、変に思わないかな?」

「あは。そうだね。美麗はいや?」

「ううん。嫌じゃないよ」

 二人の、菊穴が、ゆっくりと口を開ける。

 中から、茶色いものが顔を出し始めた。

「綾奈」

 そして・・・それは排出された。





おわり





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