Another Name For Life
番外編 True or False
「……やっぱり、おまえもそう思うか?」
「あぁ。ていうか、間違いねぇだろ」
昼下がりのギブソン・ミモザ邸の一角で、妙に神妙な顔をして話し込んでいるのは、フォルテとバルレル。
珍しい組み合わせに、二人を見かけた者は揃って首をかしげた。
「なぁ、二人して何話してるんだ?」
尋ねたのは、マグナ。
「おっマグナ、ちょうどいいところに!」
「テメェはどう思うんだ?」
「……何が?」
二人の言葉に、マグナは訝しげに首を傾げる。
「の胸、実は上げ底なんじゃないかって事だよ」
「…………んなッツ!!??」
フォルテの一言で、マグナの顔は一瞬で耳まで真っ赤になる。
そんなマグナを楽しそうに(でも意地悪な顔で)見るバルレルがフォルテの言葉に続く。
「あいついつも首から下まで服で隠しちまってるしな。
あれだけ腕とか足が細いくせに胸だけあるってのは不自然だと思わねぇか?」
「そ、そうなのか?」
バルレルの言葉を聞き、マグナはう〜んと唸る。
言われてみればそう思えなくもないかもしれない……
「ちょっと!
二人とも人聞きの悪い事言わないでよ!!」
「げ!」
「トリス!?」
マグナの後ろから投げかけられた怒声に、フォルテがびくりと肩をすくめる。
こんな話をしていたことをケイナにでも知られたら、後が怖い。
ちなみにケイナは、所用のため留守にしていた。だからこそこんな所でこんな話が出来たのだが。
しかしフォルテの心とは裏腹に、次の瞬間トリスが発したのは、まったく見当違いの言葉だった。
「の胸は間違いなくホンモノよっ!!
あたしはこの目でちゃんと見てるんだからねッツ!!」
何を言い出しやがるんですかこのお嬢さんは。
その場に居合わせてしまった全員が固まった。
マグナやネスティ、リューグに至っては、完全にゆでだこ状態だ。
そんな純情青年どもの心情なんて、最強調律者様が気に留めるはずもなく。
更にとんでもない発言をぶちかましてくれやがるもんだからたまらない。
「そうよね、ネスっ!?」
「「「「「んな…………ッツ!?」」」」」
その言葉に、全員が声を上げる。
呼ばれた本人は、暫しの硬直のあとに妹弟子を怒鳴りつけた。
「き……君はバカかっ!? 何で僕に振るんだ!!」
「だって、ネスだって見てるじゃないっ!
目撃証言は多いほうがいいのよ!」
(*『Another』第2話参照)
ぐっと拳を握り締めるトリスは、自分の発言の意味が理解できていない風だった。
それだけ頭に血が上っているのだろう。
かと言って、それに巻き込まれたネスティとしてはたまったもんじゃない。
なんとかトリスの暴走を抑えようとしたその時、後ろから冷えた視線を感じ、ハッと振り返ると。
「……おい、ネスティ……」
「説明、してもらえますか……?」
「……フォルテ、アメル……?」
ゆらりとこちらに迫る二人に、ネスティはたじろぐ。
そんなネスティの両肩をフォルテががしぃっ! と掴んで、そのまま前後に身体を揺さぶる。
「お前……いつの間にそんなおいしい真似をーッツ!!
ずるい、ずるすぎるぞーッツ!!」
「ネスティさんっ! トリスさんの言ったことは本当なんですか!?
だとしたら、本当にさんはネスティさんの恋人なんですか!?
ていうかそうなんですね!?」
言っていることはバラバラだが、その剣幕は同じくらい恐ろしい。
「ちょ……! やめ…………ッツ!?」
前後にがっくんがっくん揺さぶられるネスティは、心の中で密かに思った。
――今日は、厄日だ……ッツ!――
そんなことが繰り広げられているとは露知らず。
話題の中心になっていたは、テラスでハサハとレオルドとまったり日光浴などして、のん気に過ごしていたのは、また別の話である。