Another Name For Life
番外編 Ears
「ねえねえ、ネスティ」
「なんだ?」
ふいにかけられた声に、ネスティはソファに腰かけたまま、声をかけてきたへと向きなおった。
「ネスティさ、猫って好き?」
「……またずいぶんと唐突だな。
べつに、普通だと思うぞ。好きでも嫌いでもない。
それがどうかしたのか?」
片手に持っていたままのカップに口をつけて中の紅茶を飲むネスティの隣に、やや真剣な面持ちで座る。
「うん、あのね。
この間たまたま聞いたんだけど……
召喚獣が“ネコミミ”つきだと、召喚師としてはうれしいって本当?」
ごふぅっ!
喉の奥に残っていた紅茶のせいで、ネスティは激しく咳き込む羽目になった。
慌てて自分の背中をさする目の前の少女に、困惑した目を向ける。
「い……いったいどういう発想なんだそれは……?」
「私に聞かれても……ひとから聞いた話だし。
あぁ、それでね。ネコミミっていうとやっぱりメイトルパでしょ?
でもネスティは機属性だから喚べないし、そうなるとネコミミをあとからくっつける必要あるなって思って」
言いながら、「でもねえ」と腕を組んで軽くうなる。
「いろいろ頭の中で思い浮かべてみたんだけど、ネスティの喚べる召喚獣、みんなあんまりネコミミ似合わない気がするんだよね。
それに護衛獣ってわけじゃないからすぐにロレイラルに帰らないといけないでしょ。
だったらやっぱり私がやるしかないのかと思ったんだけど、よく考えたらネスティが猫好きじゃないとどうしようもないしねぇ。
まぁ、嫌いじゃないならいいよね」
「よくないよくない!
やらなくていい!!
ていうか頼むからやめてくれ!!!」
あっさりととんでもないことを言ってのけるを、ネスティは慌てて制した。
というか、既に懇願に近い。
「僕にそんな趣味はないから、勘弁してくれ……!」
「え、これって個人の趣味の問題なの??
ネコミミついた召喚獣を従えるのがロマンだとか、ネコミミは召喚獣のたしなみのひとつだとかっていう話だから、てっきりリィンバウムの召喚師ってみんなそういうものなのかと思ったんだけど」
「そんなわけがあるか!!
どこのどいつだ、そんな歪んだ情報を流しているのはッッ!!」
「え、さぁ……私も誰に聞いたかちょっと覚えてないし」
リィンバウムの召喚師に対して激しい誤解を招く発言をした……というかむしろ、この案外朴訥な少女にそんな情報を流した人物を、ネスティは力いっぱい恨んだ。
「とにかく、ネスティはネコミミには興味ないわけね」
「当たり前だ」
「なら、うさぎならいいのかな。
ミモザさんに相談してくるねー」
「って、何でそうなるんだ!?
ちょっと待て!! 止まれーッッ!!!」
UP: 05.12.09
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