太陽の光柔らかな春の午後。
町は暖かさに引かれて外に出た人間であふれかえっている。

ここ、王立魔物研究所とて例外ではない。
普段は研究室に引きこもっているような人種もこの日ばかりは外出し、春を謳歌していた。
もちろん全てが全て、というわけではない。
季節を感じる暇もなく研究に明け暮れる人間という者もいるのだ。
今我々の目の机に座っている人間、ジーマ・ジール=ジーギンス博士もその一人である。
猛烈な勢いでスクロールされていく3台のモニター。
そこから目を離すと今度は目にも留まらぬ速さでめくられていく紙束。
そしてまたモニターへ。
この繰り返しである。
椅子の周りは一連の動作をしつつ食べたものだろうか、パンくずの残る紙袋や空の弁当箱が大量に転がっている。
彼自身も目には大きなクマ、無精ひげが口元を覆い、着ている白衣は薄黒く変色している。
自身とその周囲が示しているように、彼は3週間もの間、3台の電子計算機、および大量の紙媒体によるデータとにらめっこを続けていた。
と、不意に彼は目を瞑り天井を見上げると、大きなため息を付いた。


「・・・もはや移住しかないか」

ややあってこう独り言を言うと、足元に散らかるごみを蹴散らしつつ、部屋に大量に置かれている水槽の一つに近づいた。
ここは彼の研究室なのだが、先ほどまで向き合っていた机とその隣にある書籍・紙束をつめた棚。
それ以外は全て水槽の入った棚で埋め尽くされていた。まるでペットショップである。
彼は近づいた水槽からプルプルと小刻みにうごめく半透明の物質を大事そうに取り出した。
それを眺める彼はとても柔らかな表情をしている。先ほどまで鬼気迫る勢いでデータを眺めていたとは思えないほど深い慈愛が感じられる。
彼の手の中でうごめいている生物はスライム。人の間で、魔物と呼ばれる超生物の中でも最下層に位置づけられている生物である。
彼はこの生物分野における第一人者である。・・・と言えば聞こえは良いが、実際には彼ほど深く研究している者が他にいないだけなのだが。


「今、スライムは絶滅の危機に瀕している・・・」

これは彼の口癖である。そして、彼の長い長い独り言が始まる合図でもあるのだ。


「知能、意識、記憶、学習能力を持つが、不幸なことにそれを表現する術を持たぬ。そのために世間、特に冒険者の間では雑魚モンスター等と揶揄される始末。挙句の果てにはゴキブリと同列で考えられるとは何たる無知の罪。本来は水がなければ動くことすら満足にできない生き物だというのに。一部の適合種が強靭だからと言ってそれが全てと思うのは大間違いだ・・・ん?」

終わりの見えない独り言を続けていたジーマ博士は自分の手の中のスライムが体を揺らした。するとすぐさま彼は独り言を中断し、スライムに目を向ける。


「・・・そうだな。こんな事をしている場合ではないな。プランAを実行しよう」

傍目スライムはただ体を揺らしているだけなのだが彼にはそのスライムが言わんとしていることがわかったように言って、スライムを水槽に戻した。
そして彼は白衣を脱ぎ捨てると荷物をまとめ始めた。



 日誌、4月21日。午前7時。ジーマ・ジール=ジーギンス

 アクイラらと開発したタイムマシンを用いて20年後の世界に降り立った。
 場所はあらかじめ用意しておいた私の別荘の庭。変わった様子はほとんどない。
 現在大気中の成分を分析中・・・否、分析終了。大気状態は私がいた時代と変わらない。念のため着ていた防護服を脱ぐ。
 これからの事だが、まずはつれてきたスライム達を新鮮な空気に当てようと思う。
 その後、私が20年前に思い至った仮説『スライムにとってのなんらかの好条件・好因子が発生している』の検証を行おうと思う。

 ・・・以上」

そしてジーマ博士はボイスレコーダーを置き、後ろの巨大な鉄の箱、タイムマシンからスライムの入った水槽を一つ一つ丁寧に下ろしだした。

その数20。

しかし、ジーマ博士はまたその水槽を一つ一つ、やはり丁寧に、積み直して戻すと、別荘の中へ入っていった。
慌てて戻ってきた博士の手には大きな台車。
なるほど、下ろして初めて重労働であると気づいたらしい。台車を広げた彼は改めて水槽の積み下ろしを行った。
そしてタイムマシンはそのままに、さっさと別荘に20の水槽が乗った台車と共に入っていった。
力強そうには見えないが中々パワフルな人物である。
別荘の中は荒れ放題であり、また日の出が訪れていないのか薄暗い。しかし彼は特に気にする風でもなく水槽一つ一つをあちこちにおいて行く。
水槽には薄く古い冊子が付いていて、表紙には大きくそのスライムの名前と種類名が書かれている。中を覗くとその生態や観察記録が細かくつけられている。どうやら生態を元に彼は置き場所を決めているようだ。
しばらくして、彼は満足気な表情で一つの水槽脇に腰を下ろした。その水槽に掛かっている冊子が一番古く、また厚い。どうやら一番の古株のようだ。冊子の表紙には擦れた拙い字で『アクイラ スライム』とあった。


「おっとそうだ」

しばらくその水槽の中のスライムを眺めていたジーマ博士であったが、立ち上がって玄関へ向かった。
玄関外の脇には正方形の大きな銀色の箱があった。箱の上部には三つのランプがあり、今は緑色のランプが点灯している。ランプの下には文字があり『長期保存・圧縮』と書かれている。
彼はその箱を開き、中から灰色の紙の束を取り出した。新聞である。
そして蓋をしめると、今度はランプ下についている小さな扉を開いた。そこには三つのボタンが横列にならんでいた。彼は一番左のボタンを押した。すると箱がわずかに振動し出した。ボタンには『削除:関連記事のみスクラップ』とあった。
箱の振動を確かめると彼は再び先ほどの水槽の脇に戻った。朝日がようやく差し込んでくる。光が別荘を照らし、彼が居間にいることがわかった。
彼の読む新聞を見てみると4月12日とある。どうやら昨日のものらしい。


「おや、武器や魔法の類の広告が見られんな。昔は嫌というほど挟まっていたというのに」

このジーマ博士、意外にも剣と魔法の世界の住人である。故にバリバリの科学者である彼は先に所属していた研究所でも異端の存在であった。ちなみに彼が異端に走った理由は簡単である。剣の腕もいまいちならば魔法も使うことができなかったからだ。


「ふむ、魔物の被害は相変わらずか。当然だな・・・何?『スライムによる被害増加の一途』?食害か?いや、この数字と単位はどう見ても人的被害だな。一体どういう・・・」

気になる見出しに目が行くジーマ博士であったが、彼はそれ以上そちらに集中する事はできなかった。
なぜならすぐ脇からパリンというガラスの割れる音がしたからだ。
音の元はもちろんスライムの入っている水槽。
そして水槽を内側から割るほど膨張したスライムの姿があった。


「アクイラ!?」

彼は慌ててそのスライム、アクイラを水槽から引張りぬいた。
途端、ボンッという音と共にアクイラが一気に膨れ上がった。
ジーマ博士はアクイラをしっかりとつかみつつも、一瞬目を瞑った。
ややあってジーマ博士が目を開くと、目の前に女性の秘部があった。
彼は二、三度瞬きをすると、ゆっくりと上を向いていった。
アクイラを掴み上げたはずの彼の手は、今軽くくびれた腰の両側を掴んでいる。
続いて豊かとはいえないまでも、腰の具合から言えば普通サイズの形の整った乳房が目に入ってくる。
そして真上。
見慣れない、青髪・青目の女性と目が合った。
彼は黙って女性をおろすと腕を組み、視線で頭からつま先を往復した。


「博士、どうかしました?」

ようやく、女性の方が口を開いた。若干高めの澄んだ声である。


「幾つか疑問点があるのだが・・・君と私は知り合いかね?」

対する博士は表情、姿勢、語調全て変わる事なく言った。


「やだなぁ、アクイラですよ」

「アクイラは私のスライムの名前だ」

「ええ、ですから私じゃないですか」

「・・・百歩譲って君がアクイラとしよう。ではアクイラ、君は姿見を知っているかね?」

埒が明かない。

そう判断したジーマ博士はとりあえず目の前の女性をアクイラ(仮)としたようだ。


「光を全反射する金属の表面にガラス面を置いた板、所謂鏡です」

「その通りだ。で、そこに姿見がある。そこに立って自分自身を見てくれるかね?」

「立って見るって言っても私に目なんかないですよ?」

「・・・いいから立ってみてくれ」

ジーマ博士は「君の顔についている二つの球体はなんなんだ!」という叫びを飲み込みつつ、極力冷静に言った。


「?わかりました・・・ぎゃーっ!!だ、誰ですか!?」

そしてアクイラ(仮)は自分を見て悲鳴を上げた。


「君だ」

「え、だって、あ、足!手!目!嘘、虚像とか色とかしっかり捉えてるし!あ、口!?え、これ私の声ですか!?ちゃんと空気振動起こしてる!!」

アクイラ(仮)自身の体を手と鏡で確認し、さらに自分の声やら手の感触やらに忙しなく驚いている。


「・・・本当にアクイラなのか?」

「だからそう言ってるじゃないですか!ってなんで私、え?変身魔法?」

「私は魔法は使えん」

「ですよね!?だから今時科学なんて夢物語の技術に手伸ばしたんですもんね!?」

「その頭が良いのか悪いのか分からん物言い、どことなく抜けている挙動。間違いなくアクイラか」

「あ、もしかして?」


言いたい事だけいってようやく冷静になったのか、アクイラはハッとしたように言った。

「あぁ、おそらくこれがスライムにとってのなんらかの好条件・好因子なのだろうな。まあ詳しくは・・・」

そんなアクイラに博士は頷いた。そして何かを言おうとした直後、家中からパリンッ、ボンッという一連の音が聞こえ出した。


「・・・博士?」

「おそらく全部のスライムが君のようになっているのだろう。私は様子を見てくる。アクイラはスクラップした記事からここ20年間の流れをつかんでくれ」

「わかりました」


それからは早かった。
形が変わった事にはジーマ博士が個別に対応し、20年間のブランクを埋める作業を21人で行った。
その結果、5年ほど前にスライムと淫魔との融合が何故か起き、スライムのモンスターとしての危険度が中堅にまで達したという事がわかった。
しかしそれだけである。流石に20年分のスライム関連の記事は膨大で、気づいてみれば夜もふけていた。
自身のスライム達にはとりあえず食事を与え、細胞のサンプルを取り、各々がいた水槽のすぐ近くで休んでもらった。
そして研究室。
相変わらず汚れた白衣姿のジーマ博士が皆から集めたサンプルを分析していた。
傍らでは白衣を直に着たアクイラがそれを手伝っている。


「ふーっ・・・」

電子顕微鏡をじっと眺めていたジーマ博士は溜息と共に背もたれに身を預けた。古ぼけた椅子がきしんだ音を立てる。

「どうでした?」

アクイラが不安そうに彼を見つめる。やはり原因不明で姿形が変わったというのは気持ちが悪いのだろう。


「わからん。細胞は明らかにスライムのものだ。にもかかわらず君達は全員が人型に、しかも美女になっている。触診をした限りでは脈もあるし、光によって瞳孔が収縮もすれば、舌による味覚もある」

「でも人間の食事よりは普段食べている物の方が美味しかったですよ?物足りなかったですけど」

「それだ。好みはスライムのまま。物足りないというのはスライムの時よりも大きくなったからだ。だがわからん。君達は確実に淫魔と融合を果すような事はなかったはずだ。」

「はい、間違いありません。」

「にもかかわらず君達もこの時代のスライムのように変化した。これは一体どういうことなのか・・・」

「あの、博士、全く関係ない事なんですけれど」

「何かね?」

ジーマ博士のような人種は物思いの独り言を中断されると不快感を感じるタイプが多いが、彼の場合アクイラらスライムに止められるのは別問題であるらしく、すぐさまアクイラの言葉に耳を傾ける。


「嗅覚を持ったせいか、臭いが非常に気になるんです。つまり、その・・・」

「あぁ、私が臭うと?」

「はい。それに不衛生なのは体に毒ですし、疲れてもいるんですから今日はさっぱりしてお休みになったらどうでしょう?」

「・・・そうだな。正直、今日は色々あって疲れた。そうしよう」

言うが早いか博士は立ち上がると着ていた白衣を『洗濯』と書かれた銀色の箱に押し込んだ。


「そう言ってもらえると思って準備しておきました」

「君は風呂の沸かし方も知っていたのか」

「知識としては。実際にやれるとは考えてもいませんでしたけど」

「ふむ、ではアクイラの入れてくれた湯だ。じっくりとつかるとしよう」

ジーマ博士は今日一番の優しい笑顔でアクイラに言った。


「ごゆっくり」

アクイラもやはり笑みで彼に応えたのだった。

「ふぃー・・・」

3週間と20年分の垢を落とし、久々にさっぱりとした気分でジーマ博士は湯船に使っていた。
ボサボサで脂ぎっていた黒髪も今は光沢を取り戻し、流れるような長髪に変わっている。
長く伸びた前髪に隠れた目は切れ長だが瞳はとても優しい。こうしてみると2×歳相応の好青年に見える。風呂の魔力は絶大だ。


「前髪を切らねばならんな」

自身の視界の半分以上を占めている前髪をつまみ上げ苦笑する。


「お背中流しまーす♪」

至福の時を過ごしていたジーマ博士だがそこに白衣を脱ぎ捨て、ねじったタオルを頭に巻いたアクイラが登場した。


「・・・時々思うのだが、君は私の端末に繋げられた時どのような情報を仕入れていたのかね?」

「博士のデータですよ?温泉街100選」

「あぁ、あれか」

「はい♪」

「しかし、もう体は流してしまったんだが・・・」


そこでジーマ博士は言葉を切るとジッとアクイラを見つめた。

「?どうかしました?」

「いや、見とれていた。世のスライムが皆サキュバス並の魅力を備えたのなら確かに男連中はひとたまりもあるまい。脅威にもなるだろう、とな」

「んー・・・そのー、ですね、ぢつはその辺の話で相談したい事が」

ジーマ博士のその一言にアクイラは急に体をもじもじしだした。


「どうした?」

「えと、ぢつは、食事が物足りなかったんですよ」

「それはそうだろう。スライムサイズ量しか与えていないのだから、今の質量を考えると足りないのは当然だ」

「いえ、そうじゃないんです。物足りないというのは味の話で」

「妙な事を言う。私が食べるようなものよりは美味かったのだろう?」

「比べればの話です。前ほど美味しくないんですよ」

「味覚が若干変わったというのか?では今これが食べたいという欲求はあるかね?」

「さっきまではなくて、ただちょっともやもやしていただけだったんです。けど今は・・・」

「今は?」

「その・・・博士が欲しくてたまらないんです・・・」

「・・・・・・或る程度予測はしていたが、まさかなぁ」

言いながらジーマ博士はゆっくりと湯船から上がった。


「えっと・・・」

「ちょうど風呂場だ」

そして若干不安げなアクイラを抱き寄せると、彼女の後ろにある扉を閉めた。
自然と二人の顔が近づいていき唇が重ね合わさる。
そのまま離れようとしたジーマ博士であったが、アクイラは逆に彼の頭を抱えると口内に舌を滑り込ませた。
とまどうジーマ博士であるが徐々にその熱心な舌技に体が蕩けてきたのか、抱きしめていた腕から力が抜けた。
倒れそうになった彼の体を、アクイラが優しく受け止める。


「・・・どこでこのような技術を?」

「博士の顔を見てたら自然と動いてしまいました」

言いながら、アクイラはジーマ博士の一物に手を伸ばす。アクイラの舌で口内を蹂躙されていただけで既にジーマ博士のものは目一杯に張り詰めていた。


「熱い・・・」

手を添えて恍惚とするアクイラ。その手からはじんわりと粘液のようなものが分泌されていた。
それだけで言いようのない快感がジーマ博士を襲う。

「ふふふ、変ですよね?触っているだけなのにこんなに気持ちよくて?私の手の平から出てるの、誘淫作用のあるローションなんです。どうしてこんな風になったのかはわかりませんけど・・・今は関係ないですよね?」

アクイラのローションは既に博士の一物の全体に広がり、睾丸まで届いていた。

彼女は壁を背に、ジーマ博士を自身に寄りかからせると両手で一物への愛撫を開始した。

右手が鈴口から裏筋までを丹念になぞっていき、左手が睾丸をサワサワと揺らしていく。


「はう・・・」

ジーマ博士はうめき声を上げつつもアクイラの方を見た。

「博士こういうの初めてですよね?私もです。けど何故かどうすれば博士が気持ちよくなれるのかはなんとなくわかります。だから・・・今日は私に任せて下さいね?」

アクイラは彼の目をしっかりと捉えるとニッコリと笑みを浮かべて言った。

その一挙動で博士はわずかに残っていた緊張の糸を手放した。

この間もアクイラは手を止めずに優しくも的確な愛撫を続けている。


「あ、博士の、痙攣してます。もう少しなんですね?」

アクイラはそう言うと親指と人差し指で輪を作り、そこにジーマ博士の一物を差し込んだ。
するとその輪はジーマ博士のカリ首にピタリとはまりアクイラの体から離れた。

「入れる前にだされたら嫌ですから栓をしました。ふふ、ちょっとだけ苦しいと思いますけど、我慢してくださいね」

言いながらジーマ博士を仰向けに寝かせる。
そしてアクイラは博士の腰をまたいでちょうど一物の真上に立った。


「博士、ちょっとだけ、見て、下さい」

既に夢見心地であったジーマ博士はアクイラの一言に素直に反応し焦点をそちらに合わせた。
そこには恥じらいつつも大胆に秘部を自ら広げて見せ付けるアクイラの姿があった。
柔肌はピンク色でローションとは若干粘度の異なる液体が流れ出している。


「人と同じですね。今からここに博士のを入れます。初めてって人の間だとすごく特別なんですよね?ふふっ、なんだか嬉しいです」

そしてアクイラは狙いを定めると一気に腰を落とした。


「わぁっ!!」

「ひゃうっ!!」

驚きと歓喜の入り混じった声が二人同時に飛び出した。
ジーマ博士は既に限界に達していた一物が愛液に濡れた秘部に飲み込まれた事により許容量をオーバーしていた。
しかしアクイラの栓により達する事ができず、その狂わんばかりの快楽から逃げるように腰を上下させている。
一方のアクイラもジーマ博士の熱くたぎった一物を体の中に受け入れた事で驚きつつも非常に満ち足りた不思議な感覚を持っていた。
しかも入れた瞬間よりジーマ博士の腰が暴れ馬の如く跳ね上がり、自分の膣を突き上げていく感触がさらにアクイラの劣情を刺激していく。


「あっ、あぁぁぁぁっ」

「ぐあぁぁっ」

そしてアクイラの感覚がピークに達した瞬間、膣が一物を締め上げると同時に“栓”がアクイラの体へと戻りジーマ博士もようやく達することができた。
達することができたジーマ博士であったが、そこには幸福感の他に、ゴッソリと何かが抜けた虚脱感があった。

「はふぅぅ・・・気持ちよかったです」

そんな事はわからずに、ペタリとジーマ博士に体を預けるアクイラ。
しかし次の瞬間顔つきが変わる。


「・・・って博士!?博士!!ちょっ、え!?心拍が弱いですよ!?ちょっと、博士!博士!!」

ジーマ博士は、未だ繋がり続けたまま必死に問いかけるアクイラに対して「大丈夫だ」と手を上げて答えようとして、目の前が真っ暗になった。




「ん・・・む?」

次にジーマ博士が意識を取り戻した時、彼は自分の寝室で寝ていた。

「あ!博、士!気が!付い!た!」

喜びの声に反応し、彼はそちらを向いた。
ベッドの傍らには左右に揺れつつ目を輝かせた少女がいた。


「フック」

彼自身が連れてきたスライムの一体のフックである。


「アクイラ!皆!博士が!目を!覚ました!よ!」

一定感覚で言葉を区切る特徴的な言いまわしで彼女は寝室の外へと飛び出していった。
そして次の瞬間にはドッと総勢20体の博士のスライム達が寝室に乗り込んできた。

「おぉぅ?」

あまりの迫力に一瞬たじろぐジーマ博士であったが涙を浮かべて喜んでいるアクイラを見てすぐに思い出した。


「あ、そうか、私はあの後気絶してしまったのか」

「それだけではありません。発見された時博士の心拍数は通常の半分。血圧も低下して非常に危険な状態でした。一日中看病してどうにか持ち直しましたけれどその後一週間も昏睡状態だったんですよ?」

ジーマ博士の呟きに黒髪のお下げで何故か眼鏡をかけている少女がずぃっと前に出てきて状況を説明する。


「ハロルド・・・そうかすまないな」

「謝るんならまずアクイラに、ね?もう大泣きだったんだから」

スライム達全員を見回して頭を垂れるジーマ博士に、背の高い小麦色の肌と青い髪をした女性がアクイラの背中を押しながら言った。


「ほら、皆も心配だろうけど、今はアクイラに気ぃ使ってやんな」

そしてアクイラ以外のスライム達を寝室の外へと追い出して、自身も外に出た。
何となく黙ってしまうアクイラとジーマ博士。

「アクイラ、心配かけたな」

「本当ですよぅ・・・私のせいで死んでしまったらどうしようと思いました」

「抱きついた段階で或る程度予測はしていたんだがな。君なら手加減はしてくれると思っていたが、達した段階でどれだけ生命力が失われるかが未知数だった。その上連日の徹夜で私自身の体力も落ちていたからなぁ」

「もうっ!わかっているならどうしてとめなかったんですか!?」

「止まらなかった。それに君らになら吸い殺されても良いと思ってしまったからな」

「・・・ダメですよ、そんな事言ったら。私達全員博士が好きだからここにいるんですからね?」

アクイラは頬を赤らめつつも、ジーマ博士の目を真っ直ぐに見て言った。


「・・・すまんな」

「いいえ、わかってもらえればそれでいいんです。それに、これからが大変ですから」

改めて頭を垂れるジーマ博士に満足気に頷いたアクイラであったが、その後すぐさま申し訳なさそうな顔になる。

「これから?」

「その、シーラが覗いてたらしいんです。それで全員に広まっちゃって・・・」


そこで言葉を切るアクイラ。言葉の先は推して知るべし、である。

「・・・19人か、きついな」

「今すぐというわけではないですけど、まあ、がんばってください」

「はぁ・・・。まあ今すぐではないしな。とりあえず体力の回復に勤しむとしよう」


微妙な笑みを浮かべるアクイラに、ジーマ博士は溜息を一つつくと自身に刺さっている点滴の薬瓶を掴んでアクイラに差し出した。

「というわけで、点滴お代わり」


「はい、ただいま♪」





END