「そこには全ての欲望を満たすお宝がある」

 酒場で耳にしたそんな話を頼りに、俺はこの迷宮へとやってきた。
 思えば何の根拠もない、怪しげな冒険者同士の語らいだ。
 真に受けるほうがどうかしてる。

 しかし金も欲しい、女も欲しい、冒険者としての名誉も欲しいこの俺にはピッタリの話だ。

 欲望の迷宮があるという街に着いた俺は、装備もそこそこに整えて、早速お宝へと通じる階段を降りた。







 そしてちょこまかと目障りな妖精を払いのけ、やたら腕っ節の強い犬みたいな狼女を蹴散らして、第一階層の奥へと向かう途中のことだった。



――ドバババババババババ!!

「ぐはああああぁぁぁっ!」

「トリックオアトリート? 私の研究室に変な慣習持ち込まないでくれるかなぁ」





 目の前でフワフワ途中に浮かんでいる小娘が不満げに言う。

 馬鹿でかい鍔付きの帽子をかぶり、魔力で浮かせた杖に腰を掛ける少女……いや、魔女。
 身長は俺の肩ほどぐらいしかないくせに、妙に大人びた口調をしてやがるのが気に食わない。


「へっ……ハロウィンを知らないのか? 魔女のくせに……」

「なっ!! べっ、別に知らないわけじゃないけどね。今はそういう気分じゃないの」

 魔女は不機嫌そうにツンと顎を横に向けた。


「そんなことより、いきなり私に襲い掛かってくるなんてどういうつもり?」

「ああぁ?」

 何言ってんだこいつ。
 この洞窟内で、自分以外の異形を見たらどう考えても全て敵だろうに……
 そう言いかけた俺の脇腹を、魔女が爪先で小突いた。

ドムッ!

「なにしやがるっ!」

 いや、この力加減はもはや蹴りだ。
 その拍子に俺が羽織っていたマントの裾が開いた。


「ご丁寧にアーステイルまで装備しちゃって、私の電撃をかわして何をするつもりだったのかしら……怖いからもう一発受けてもらうわね」

 魔女は呆れたような声を上げると、小さな声で呪文を詠唱した。


「や、やめ……!」

 俺の制止など耳を貸さず、魔女は杖に魔力を込める。
 空気がかすかに震えた瞬間、杖の先にある宝珠がまばゆく輝いて――

「リバースライトニング!」

ドバババババッ!!

「あぎゃあああぁぁぁ!!」

 先ほどと同じ激痛が俺の体に走った。
 俺が倒れている床に電撃が走り、たまらず転がりまわっても逃れることすらできない。


「ふう……少しだけ気持ちがすっきりしたかな」

 晴れ晴れとした表情で、魔女は少しだけ笑った。







「きさ……ぐうぅっ……!」

 うめき声すらまともに出せないほど手足も喉も痺れてる。

 魔女は、俺の周りをフワフワと飛び回りながら手足をツンツンつついて回った。


「さすがにもう動けないでしょ? 実験台くん」

 そして俺を見下しながら、軽く爪先で俺の胸を抑えてきた。


「おのれ……俺を足蹴にするとは!!」

「あはっ、悔しいの? そんな顔しちゃって」

 こんな小娘にバカにされて、悔しくならない男なんていないだろう。

 だが残念ながら手足は痺れ切ったままだ。
 力を入れて立ち上がろうとしても、全身の毛穴から全て抜け落ちていく。


ガッ!

「私みたいな美少女に頭を踏まれると、それだけで喜んじゃう人だっているんだよ。少しは嬉しそうな顔してみれば?」

「この俺をそんな奴らと一緒にするんじゃねえ!!」

「へぇ、強がり言えるんだ……さすが冒険してる実験台くんだね」

 クスクスと笑いながら魔女は乗っていた杖から降りた。
 床にふわりと舞い降りた彼女は、本当に年端もいかぬ少女に見えた。
 バストなんかもちろん……なさそうだ。


「なんかすごく失礼な波動を感じたわ」

 ブツブツと不満を口にしながら、魔女は静かに瞳を閉じて何か呪文を詠唱し始めた。

 とても嫌な予感がする……。


「はいっ!」

 小さな掛け声とともに、彼女が目を開いた。


バササッ……


 その瞬間、俺の着ていた装備が全て意思を持っているかのように床面に落ちた。

「なっ!? いきなり……」

「勇敢な実験台くんは、生まれたままの姿になっちゃいました〜! うふふふふ」


「これも貴様の仕業か……!」

「おー、こわいこわい。恥ずかしいねぇ? でも実験台くんはこのままじっくりいじめられちゃうのよ」

 丸裸になった俺の股間に、魔女の足がゆっくりと近づいてきた。
 俺に見せつけるようにそ〜っと、皮のブーツの先がペニスを踏みつけようとしている。

「おっ、おい、やめ……ろおおおおっ!」

クニュッ♪

「このブーツの先でぐちゃぐちゃにしてみようかな♪」

「ひっ、や、やめ……ええええぇ!?」

 先の尖った革製のブーツが俺の股間をグリグリ踏み潰す。

 ほとんど重みは感じないが、こんな靴の先でなぶられているのかと思うと泣けてくる。

 しかも妖しげな刺激がしびれた体中に染みこんでくる。


「ぐぅぅっ……くそ……んぅぅ……」

「あらら〜、これは真性だわ……ヘンタイ確定ね」

 何を勘違いしたのか、彼女は頬を赤くして俺をジッと見つめている。


「ち、ちが……ううぅぅ!」

「へぇ? 足の裏で押さえられてるだけなのに、なんでこんなにしてるのか説明して欲しいんだけど?」


「それはっ…………!!」

 軽く体重を乗せて、魔女の足がクイクイとペニスを撫で回した。
 思いのほか優しい刺激に、不覚にも股間が反応してしまったのだ。



「お、おのれ! こんな辱めを受けるくらいなら俺は――」

「ふふふ、じゃあもっと辱めてあげようか? ヘンタイの実験台くん」

「!?」

 激しく嫌がる俺の顔の前に、魔女は杖の先を突きつけてきた。


「な、なんだそれは……!」

「ん? 道具プレイってことになるのかなぁ……ほら、私の杖をご覧なさい。ちょっと面白いことになるわよ〜」

 ぼんやりと青く光っていた杖の先の宝珠が、次第に朱に染まってゆく!

 しかも太陽のように赤くなってから、次第に色が薄れ……球状の宝珠がグニャリと変形し始めた。

 丸い杖の先から幾つもの突起が現れ、それぞれが意思を持っているかのように不規則に蠢きだす。


「それは…………!」

「見える? ローパーの触手を魔力で再現してみたの」

「ローパー!?」

 それは頼りない外見と異なり、体力・防御力・各種耐性に優れ、あらゆる場面においても強敵であるケースが多いモンスター。
 俺の聞いた話では、ローパーに襲われた冒険者は大幅に精神力を削られるという。

 まさかあのおぞましい異形を、魔力だけでこの娘は……!


「さあ、実験開始よ!」

 そしてニヤニヤ笑いながら、魔女は杖の先を俺の股間へとゆっくりずらしてゆく。


「や、やめろ……!」

「ここから先は気持ちいいことしかないんじゃないかな……研究者として、実験台くんにはいい声で鳴いてくれることを期待するわ」

 やっぱりこいつ、俺をあの触手で弄ぶ気だ。
 あのざわめくローパーの中に無防備なペニスを差し込んだら……。

「くそっ……くそおおぉぉ!!」

 逃げようとしても体は動かない。まさに絶体絶命の状況だ。


クチュッ……

「ひっ……」

 触手のうち、一本が亀頭に触れた。

グリュ……ニチャ……

「があああぁぁっ!」

 その上から、他の一本が粘液をドロリと垂らす。さらにもう一本が、ペニスをコーティングするようにその液体をまんべんなく伸ばす。

 先端から玉袋まで、あっという間に粘液まみれにされてしまった。
 そのせいなのか、下半身がトロけるように熱い……!

「気持ち良すぎておちんちんが溶けちゃうかも?」

「やめろおおお!!」

「クスッ、今のは嘘。体に危害は加えないわ。でも正気は保たせないつもり♪」

 そして魔女がパチンと指を鳴らすと、遠慮がちにうごめいていたローパーの触手が一気にペニスに絡みついてきた。

「んああああぁぁぁっ、あああぁ〜〜〜!!!」

 それは見た目のおぞましさとは裏腹に……決して不快なものではなかった。
 ツルツルした感触の指が無造作に股間を蹂躙してゆくと、それに反応するようにペニスも硬さを増していく。
(気持ちいい……こんなことをされているのに……いいぃぃ!)

 いたわるようにクネクネとうごめく触手に体が緩んでいくのを感じる。


「普通はこのまま精神力を削り取っていくんだけど……気分はいかが?」

 魔女の嘲笑でふと我に返る。

「こ、こんな辱めを……! おのれぇ……!!」

「必死に耐えちゃってる……無駄なのに」

クリュンッ!

「おあああああぁぁぁっ!!」

 魔女は杖の先を前後に揺らしながら軽く回転させた。
 強制的に触手がねじれ、亀頭がニュプニュプと出し入れされる。

「へぇ、けっこう我慢強いのね。じゃあ次はこれよ」

 官能的な触手がすっと遠ざかる。

 たっぷりスタミナを搾られた俺が肩で息をしている眼の前で、杖の先が再び変化を見せる。

「!?」

「わかりにくいかなぁ……スライムの肉を再現したの。プルプルだよ?」

 今までの触手は消え失せ、代わりに半透明で緑色の筒が現れた。


「このなかにジュポッて入れられるとぉ……」

「ま、ま……待ってえええええあああぁぁぁぁ〜〜〜!!」


ジュポオオッ!!

 何のためらいもなく魔女は杖の先をペニスにかぶせてきた。

 それといった抵抗もなく、亀頭が半透明のゼリーに埋没する。

(な、なんだこれ……なっ……!?)

ムキュッ……

 その瞬間、飲み込まれたゼリーの中でカリ首がグニュグニュと揉みほぐされた。

「きひあっ、ああああぁぁ〜〜〜〜!!!」

 それだけじゃない。ヒクヒクと震えている亀頭の先端、鈴口がクチュクチュと歪められ、何かが押し込まれてくる。

 ペニスが内側からくすぐられるような感覚に背筋が震え、俺はたまらず悶絶した。

「どお? さっきよりも凄いでしょう。密着されたまま気持ちよくなって、全部吸い取られちゃうんのよ……」
 魔女は俺の反応に満足気に微笑んでいるが、こっちはそれどころではなかった。
 外見上は何も変化が見えない筒状のゼリーの中で、魔力で形成されたスライムは容赦なく俺の快楽神経を刺激し続けている。
 目元から中央までは絶えずバイブレーションが加えられ、包み込まれた玉袋も丁寧に愛撫がなされている。
 カリ首から上は柔らかい羽で何度も撫でられているように感じるが、時折極上のフェラをされているような抱擁感に襲われる。


「スライムの責めはローパーよりすごいでしょ?」

「ぎっ、あ……あぅっ、はああぁぁ! イ、イく……こんな……あああぁぁ!」

 出したい。早く射精してしまいたい!
 しかし尿道が内部から押さえられているように、射精感が玉袋から上に上がってこない。


「降参する? もう限界ってカンジだもんね。じゃあこれでトドメ……」

 悶える俺を見つめながら、魔女は杖の先を股間から引き剥がした。

 すでにペニスは限界まで張り詰めて、射精寸前にまで追い込まれている。



「最後はこれよ」

「……!」

 杖の先がまた変化した。
 しかしこれは…………

 真っ白な手のひら……まるで大理石のような、それでいて温かみを感じさせる造形。
 爪はきれいに研ぎ澄まされており、ピンク色に輝いている。
 この手の形を見ただけで、絶世の美女を想像させることも可能だと思う。

「普通の手に見えるでしょ。でもこれ、サキュバスの手よ?」

「!!」

 サキュバス……淫魔の手? それを魔力で再現したというのか。


「あ、これは召喚魔法ね。だから本物のサキュバスさんの手だよ?」

「な、何っ!?」


「今のあなたには酷な実験かもね。性技に特化した淫魔の指の動きに何秒耐えられるかしら?」

 魔女が微笑むと、それに反応して杖の先から現れた白い指が誘うような動きをしてみせた。
 そしてゆっくりと股間に添えられた瞬間、人差指と親指、それに中指が優雅にチェスのコマでもつまむように亀頭を優しく包んだ。

クリュッ……

「あああああああああぁぁぁ、なにこれぇぇぇ!?」

 そっと優しく握られただけだというのに、今までで一番の快感が体中を駆け巡る。
 ローパーよりも、スライムよりも優しい刺激のはずなのに我慢出来ない。
 その証拠にペニスの先から透明な粘液がドクドクと溢れ、射精と同じような快感が下半身に固定された。

「これがサキュバスの……おおおおっ、ああああぁあ!」

「叫んでないと気が狂っちゃいそうでしょう? すごくいい声で鳴くんだね、実験体くん」

 魔女の言葉による屈辱など関係ない。サキュバスの手がゆっくりと上下にペニスをしごき始めた。
 体の一部を握られているだけのはずなのに、体中を抱きしめられて媚薬漬けにされているような感覚。

 ゆっくりとした動きの中に、時折変化が加わる。
 サキュバスの人差し指がカリ首をめくりあげたり、裏筋を優しく引っ掻いたりすると俺はその都度体をビクつかせて反応するしかなかった。


「天国だよね? クスクスッ」

「ま、まて……こんな仕打ちを、おおおおぉぉぉっ、ひああああぁぁ!!」


「くすっ、耐えてる耐えてる……でも、もう無理でしょ」

 魔女はやさしく俺を見つめながら、ぎゅっと杖を握りしめた。


「杖を通じてあなたの精が満ちていくのがわかるの。このまま吸ってあげる」

 そして彼女がニヤリと微笑むと、サキュバスの手が大きく広がり、亀頭を五本指で包み込んでしまった。

「ああぁぁ、ゆ、指が……!」

「ほら、先っぽ塞がれちゃったね。このままどーぞ♪」

 しっかりと亀頭をロックしたサキュバスの指が、優しく蠕動し始める。
 まるで5枚の舌先に、丹念にペニスがしゃぶられるような……弱点をあぶり出しながら、感じる場所全てを制圧してくる。


「あ、あっ、ああぁ……もう駄目だ、こんなのされたらあああぁぁ!!」

 サキュバスの手は、親指から小指までを丁寧に使って、レモンを絞るようにジワジワと亀頭に力を加えてゆく。
 指で輪を作り、上下にこすりながら裏筋を小指が引っかいた瞬間、とうとう俺の我慢が限界を迎えた。

「〜〜〜ッ!!!」

ドビュッ、ブリュッ、ドプシュウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ!

 三度に渡って痙攣しながら盛大に精液を潮のように拭きあげ、俺はグッタリと気を失ってしまった。







「んふっ、すごい……若々しい生命のエキスだわ。遠慮無く頂きま〜す」

 気絶した俺の脇で、魔女の声が遠くに聞こえる。
 もう指先すら動かせない。

「あ……ぎぃ……」

「まだ喋れるんだ? すべすべしたサキュバスの手はたまらなかったでしょ。あなたの弱いところは全部この杖に記録しておくからね」


 得意げな声で魔女は続ける。

「最後にオマケ。美少女魔法使いに負けちゃった印を、魂に刻んであげる」

 サキュバスの手も消えて、元通りになった杖の先が一瞬だけ光った気がした。


「うっ……」

「はい、おしまい。これで目が覚めた時には……うふふふ♪」

 なぜだかわからないが胸がドキドキしている。
 この魔女の声を聞いただけで、心が乱されているのがわかる。

(俺は彼女に何をされたんだろう……)

 その答えを出せぬまま、俺は再び深い疲労感に身を委ねるのだった。












 冒険者をまた一人とりこにした魔法少女は、彼が転送魔法で消える間際にポツリと呟いた。



「また会えたその時は、私が念入りに搾りとってあげるからね。バイバーイ」







 つづく


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