『宵闇にまぎれ』
ここは深夜の学園。
月明かりに隠れるように一人の男が校舎の中を駆け抜けていた。
「……」
男は風のように疾く、なによりも静かだった。
元々この内部の構造を入念に調べていたのだろう。
足の運びに無駄がない。
流れるような動きで幾つかの部屋に忍び込み、短い時間で中を調べ尽くしてゆく。
男はある書類を探していた。
そして校舎の三階にある部屋に入った直後のことだった。
「悪いことしてるの誰かなぁ~?」
「っ!!」
突然声をかけられ、男は驚きそうになる……が、一瞬で冷静さを取り戻した。
それは女の声だった。まだ校舎内に人が残っていたことに気づけなかったのは仕方のないこと。
すぐに割り切って次の行動へ移る。
身を低くして気配を探る。
声の主を探すと窓際に人影を捉えることが出来た。
(先手必勝!)
男は即座に戦闘モードに入り、冷え冷えしたフロアを這うようにして窓際へと向かう。
音もなく数歩、そして一足飛びに女の影に飛びかかると――、
「きゃあああっ!!」
小さな悲鳴。だが気にせず細い手首を掴み、軽く捻り上げる。
同時に相手の口元を手のひらで塞ぐ。
「大人しくしてれば危害は加えない……」
低い声で諭すように言う。女は抵抗しなかった。しかし、
「あれぇ、優しいんだね。泥棒サン?」
「!!!」
捻り上げた女の腕の感覚が消えてゆくのと同時に、男は自分の背後に気配を感じる。
さらに左の耳にフッと息をかけられた。
「ば、馬鹿な……」
一瞬で背後に回られた事実をにわかに信じられずに居る男に、女は言う。
「そっちは影分身。残念」
「なっ!! うぶううぅぅぅっ……」
先ほどのお返しとばかりに右腕が拗じられ、ぐいっと体の向きを変えられてしまう。
しかも女の力とは思えない勢いで引き寄せられ、柔らかい何かに顔面が激突する。
(こ、これは……)
「はぁい、つかまえたよ♪」
ギュウウウウウウウウウッ!!
男が理解するより早く、女は彼の体を抱き寄せた。
「んっ、んんん!!」
男の顔が左右に振られる。
息が苦しい。目の前が真っ暗なまま、訳も分からず目と鼻と口が塞がれてしまった。
(なんだこれは……逃げようとしてもまとわりついてくるッ!)
顔に吸い付くような肌の感触と、少し汗ばんだ女の香りが男の思考を鈍らせる。
認めたくはないが男の本能が理解する。
これは女体の感触だ、と。
「そろそろ動けなくなっちゃうかもね?」
逃げようと必死にもがく獲物をさらに強く抱きしめ、拘束する女。
まだ自由が利くはずの男の腕はいつの間にか脱力して垂れ下がっていた。
スッ……
それから数秒後、抵抗の意思を弱めた男の体を女が解放する。
「ボクのおっぱいはどうかな? 美味しい?」
その言葉を聞いて男は自分の判断が間違っていなかったことに気づかされた。
しかし体が動かない。
まるで熱に侵されたように呼吸も整わず、視界もグラグラしている。
(なにかクスリを……盛られたか……不覚!)
この期に及んで男の精神は冷静だった。
しかし体は完全に彼の意識から切り離されつつあった。
「んふふふ、悶えちゃって可愛いなぁ~」
女はすっかり虫の息となっている男を横たえ、月明かりでその顔を確認する。
そして小さく微笑んだ後、つややかな指先を男の股間へ忍ばせた。
「ぅううっ!!」
「ふふっ、硬ぁ~い」
辱めを受けた男が嗚咽を漏らす。
だがそんな感情を有耶無耶にするように女は巧みに彼自身を刺激した。
軽く撫でられただけで膨らみを増した男根に蛇のようにまとわりつく指先。
クチュッ……
「くあああぁ、や、やめ……!」
拒む男の意志に反して、ペニスは女の指がもたらす快楽を受け入れる。
「それ、それそれっ」
人差指と中指が亀頭の先端をいじり、ヌルついた粘液を爪の先に蓄える。
さらに男が脈打つポイントを見極めつつ意地悪に根本からカリ首までを愛撫してきた。
(ぐっ、なんだこいつ……上手い! まさかクノイ……)
チュウッ♪
「!!!!!」
男の舌先が絡め取られる。
股間を這い回っていた蛇が口の中に侵入してきたように、ねっとりと彼の口内を蹂躙する。
(な、なんだこれ……うあっ、今度は腰がああああああああああっ!!)
冷静な思考を遮るように女が唇を重ね、同時に手のひらをすぼめて亀頭を何度もこね回す。
「んふっ、レロ……チュル…ピチュッ」
「んっ、んぐ、んんんん~~~~~~~~!!!」
添い寝をするような態勢で男は体中をわななかせながら抵抗した。
しかし暴れる手足の動きに合わせて女は体を寄せて男を官能の世界から抜け出すことを許さない。
「何度もイかせてからぜ~~~んぶ吐いてもらうからね?」
「!?」
「キミが何者で、ここに何をしに来たのか……」
「だ、誰がそんな真似をするものか! くあああああああああっ!!」
強がるペニスを柔らかな手のひらが軽く撫で回す。
一瞬で体の芯を引き抜かれたように弛緩する男の体と、射精寸前でビクビク震える手応えを感じながら女が笑う。
「あはっ、どうせもう限界でしょ。これで終わりぃ♪」
クチュッ……
人差し指の先で鈴口を小刻みに弄びながら、女はもう片方の手でそっと彼のペニス全体を包み込む。
「うあっ、あああああああああ~~~~~~~! い、イクッ! 出ちまううううぅぅぅ!!」
「クスッ、思い切りイっちゃいなよ♪ これはお・ま・け」
チュッ、チュッチュ♪
女の小さな顔が男の影と重なり、小鳥のように可愛らしいキスを何度もまぶした次の瞬間――、
ドピュドピュドピュウウウウウ~~~~~~~~~~~~!!
男の下半身が数回跳ね上がった。
同時に白い飛沫が天井にぶつかる勢いで発射される。
数秒遅れでビチャッ、という音が何度か響いた。
「こんなにいっぱい出してるぅ♪ 悪い子でちゅね~~~」
激しく息を切らせている男の顔を女が覗き込む。
そしてゆっくりと舐めるように彼の全身を見つめてから、ヒクついているペニスをゆっくりと咥え込んだ。
ずっ、ずちゅ、じゅるる、じゅううううううッ!!
「んひいいい!!」
再び男の体が跳ね上がる。
敏感なまま女の口の中へと放り込まれた男の象徴が舌先でなぶられ、唇で吸引される度に切ない喘ぎが彼の口から漏れ出す。
女は戯れるように押さえ込みながらさらなる快楽の世界へと彼を誘う……
泣きわめき、許しを乞う男を優しく責めながら女の尋問が始まった。
「ヒミツを全部素直に教えてくれてありがとう」
「……うあ、はあぁぁ……」
一時間以上責め苦を味わった男は心なしか体がしぼんで見えた。
体中の水分を精液に変えられて女に啜り取られたように衰弱している。
そんな彼の様子を見ながら、女はシックスナインの態勢になる。
シュルルル……
衣擦れの音がして女の上半身があらわになる。
形の良いバストが弾けるように揺れると、ペニスがピクンと反応した。
「んふっ、それになかなか美味しかったよキミ♪」
「はぁ、はぁ、はぁ……ぁぁ……」
男は月明かりに照らされた桃色の乳首をぼんやりと眺めている。
手を伸ばせば刺激できるかもしれない距離だが、もはや指先すら満足に動かせない。
「でもまだまだだね。えいっ」
全く抵抗する様子を見せない獲物に微笑みかけつつ、豊乳をペニスへと落下させた。
ふにゅんっ♪
柔らかな二つの球体がペニスを包み込むように押しつぶした途端、体の奥に残っていた精液がこみ上げてくる。
今度は腰を跳ね上げることすらできそうにないまま男は絶叫する。
「ひぎいいいいいいいいいっ! あ、ああああ、もう無理っ、ああああ!!」
「もうダウンしちゃうの~? ……って、あんまり聞こえてないか」
ビュク、ビュクン、ドッピュウウ!!
爆ぜた精液は彼女のバストですべて隠されてしまう。
がくがく震える下半身を押さえ込んだまま女は何度も体を前後に揺らす。
その度に少量ではあるが彼の体から精が溢れ出した。
乳圧で押しつぶされたまま男は何度も絶頂を味わい、やがて精根尽き果てたように気を失った。
しばらくして女が体を起こす。
胸や手のひらにベッタリと男の敗北の証がまとわりついていた。
足元で痙攣している彼の体を起こしてみる。
すっかり骨抜きにされたようで足腰が立たなくなっていた。
「次はもっと骨のある男の子に出会いたいな♪」
男の体を窓の外へ放り投げてから、女は軽い足取りでその部屋をあとにするのだった。
(了)