「こちらの準備は良いみたいですね」
はっきりと膨らみきった俺の股間を一瞥して、女は言う。
そして俺をまたぎ、ゆっくりと腰を沈めてきた。
快楽に縛られたまま、冷たい床に横たえられた俺はどうする事もできない。
「あああぁぁ、やめろ! やめてくれッ!!」
「いい顔をしますね。さて、どれくらい持つかしら?」
いきり立つペニスの先端が膣口に触れる寸前、彼女は腰の動きを止める。
そして突然自らを慰めるように、クリトリスを中指でいじり始めた。
「挿入はしません。擦り付けるだけですが――」
ほんのりと頬を赤くしただけで、女が喘ぐことはなかった。
だがその指先には自分自身の愛液がたっぷりと乗っているようだ。
「ふふ、いきますよ」
ク、チュッ……!
「んあっ、あああああぁぁ~~~!」
反射的に声をあげてしまった。
この上なくヌルついた女の指先が、上品に肉棒へと添えられる。ただそれだけなのに途方もない刺激だった。
オナニーで濡れた指先で亀頭を弄ばれ、肉棒と俺の腹との間に手のひら全体を滑り込ませてきた。
そして同時に、濡れそぼった女の膣口が、添えられた手のひらの反対側を圧迫してきた。
「貴方を骨抜きにした私の手のひらが……サポートします」
潤みきった膣口が棹を舐めまわし、器用に蠢く指先がカリ首をめくり上げる。
スマタであり、手コキでもあるような複合技だった。
巧みな性技のおかげで、見る間に肉棒は限界点まで高められてしまう。
「気持ち良さそうです。それそれっ!」
「ひいっ、あ、ああぁ、やめ――ッ」
女はゆっくりと腰を前後にグラインドしつつ、ペニス全体に愛液をまぶしてくる。
新たに潤った部分をもらさず指先でこね回す。だが強めの刺激はない。
延々と弱い刺激で、どこまでも性感だけが高められてゆく。
「ふあぁ、ああっ!」
「ここでゆっくりと亀頭を……」
女の腰の動きが止まり、二本指がカリ首を強めにつまむ。
さらに少しだけ腰を浮かせ、膣口全体で亀頭のみを包み込んできた。
快感の牢獄に囚われたペニスを更なる仕打ちが待ち受けていた。
「ふふっ、お気に召しましたか? では続けますね」
そのまま女はゆらゆらと腰を振り始める。
緩慢な動作で、男を惑わせ、狂わせるための淫らな舞だった。
(いい、イけないっ! 出せないッ、これじゃあ、もどかしいだけだああああぁぁぁ~~~!!)
無意識に腰を跳ね上げる。決定的な刺激を求めた男の悲しい本能だった。
だが女はそれすらも予測して、腰を上下にずらす。
本当に先端だけを咥え込み、膣口が男を捕食するクプクプという音だけが静かな通路に響き渡っていた。
「依頼者の名前は?」
「だ、誰が言うもの、か……!」
「そうですか。では」
尋問に対して拒絶の意思を示すと、女はあっさりと腰を落とした。
ズチュウウウウウッ!
「うあ、あっ! ああああぁぁ~~~~~~~~~!!」
突然訪れた天国、とでも言うべきか。
すっかり蕩けきった膣肉が、肉棒を隅々まで舐め尽す感触に、俺の思考はぶっ飛んだ。
(ああ、イく! これならイける、やっと解放されるんだ……)
自分の意思を通り越して腰がビクビクと波打っているのがわかる。
悔しいが俺はこいつの与える快楽に負けたんだ。
俺が観念しかけたとき、女は何事もなかったかのように腰を上げた。
「しゃべる気になりましたか」
「くっ、なんてことを……!」
おあずけされたことで俺の心に反抗心がよみがえった。
その気持ちを女が見逃すはずもない。
「強情ですね。では」
チュブッ、ズチュッ、ズチュウウウ!
「んあああああっ、ああああ~~~~~!!」
今度は挿入されてから腰を捻ってきた。
トロトロになっている膣内が、先ほどとは違う角度で俺を責め立てる。
女はそれから先、五分以上少しずつ角度を変えて肉棒を味わった。
それは同時に、俺にとってはこの上ない寸止めだった。
こちらがイキかけると女は腰を止める。何故だかわからないが、完全に俺の呼吸が見切られていた。
たっぷりと犯されたあと、女は俺の表情を覗き込む。
「もう一度だけ聞きますけど……」
俺は無意識に、何度も女に向かって恭順の意思を示していた。
こちらを見つめる大きな瞳の奥に、だらしない顔をした俺の顔が映りこんでいるような気がした。
(了)