ひめまつり・その後
※イラストは時空戦士さん



 僕の家には淫魔がいる。出会ってからもうすぐ一年近く経つ。
 初めのころは緊張したけどさすがになれた。
 見た目はきれいだし話し相手になってくれるし、たまにエッチの相手もしてくれるし。
 最近ではテレビのような、ケータイのような……とにかくなくてはならない存在だ。

 今日は二人いっしょに古本屋へ向かっている。
 デートといえばデートか……でも早く人間の相手が欲しいよ。

「あつ……いなァ……」

 五月に入ってしばらく経つけど、最近すごく暑い。
 春なのに夏みたいでなんだかよくわからない季節だ。

「お前はいいよな……一年中涼しそうで……」

 僕は恨めしそうに隣に浮かんでいる淫魔を見つめた。

「お前たち人間こそうらやましい。我らはそういった感覚すらないのだから。」

 彼女は涼やかな目で、暑さにヒーヒー言ってる僕を楽しそうに見つめている。
 お互いに無いものねだりといったところか。





「なんだあれ……?」

 しばらくカンカン照りの街中を歩いていると、忍者のように日陰を選んで歩いている女性が目に入った。
 服装からしてOLさんのようだ。チョコチョコ歩いている姿はなんだか可愛らしい。

「しかし困ったな」

 僕も暑いから日陰を歩いている。このままではそのうち僕とぶつかる。
 あと数メートルのところまでOLさんが来たときに、僕はサッと日陰から出た。
 気を利かせて彼女の行く道を空けてあげた。

「あっ……」

 ところが彼女のほうも僕と同じように日陰から一歩外に踏み出してきた。


ドンッ


「きゃっ」








 彼女は僕に弾かれて尻餅をついてしまった。
 大丈夫ですか、と声をかけつつ僕は手を指し伸ばした。

「すみません……」

 少し節目がちに恥ずかしそうなしぐさで立ち上がる。
 その姿は僕から見てとても可愛らしく見えた。

 しかし小さい人だなぁ。僕はそんなに背が高いほうじゃないけど、きれいに渦を巻いている彼女のつむじが良く見えた。
 たぶん150cmあるかないか……だな。

「こちらこそすみませんでした。」

「いいえ、あたしのほうこそ………………あっ!?」

「?」

 僕の顔を見たその女性は驚いたようなうれしいような顔をしている。

 どこかであったことあるかな?

 真っ黒な髪を二箇所で縛ってる真面目そうなOLさん。
 年はきっと僕より下だろうけど……とにかくちっちゃい。
 知り合いだったらこんな可愛らしい人はすぐに気づくんだけど……

「あ、あの……いえ、やっぱり覚えてないですよね?」

「えっ……」

 彼女は僕のことを知っているようだ。
 学校でいっしょだったか……いや、こんな人は知り合いにいない。

 バイト先でいっしょだったとか…………僕のバイト先は男だらけだったしこれも違う。
 ヤバイ、思い出せない!

 戸惑う僕の前でちっちゃなOLさんが髪をいじりだした。
 二つに分かれてる髪をさらにぐいっと引っ張ってみせる。

「ま、まいひめっ!」

 少し頬を赤くしながら彼女は言った。その光景を見ていた周りの通行客がクスっと笑った。

「あ、あああー!!!」

 やっと思い出した。
 彼女は3月に人形の卸問屋にいた自称・三人官女「舞姫」さんだ。

「ひさしぶりだねー、舞ちゃん」

「は、はいっ!おひさしぶりです!……思い出してもらえたぁ♪」

 胸に手を当てながら舞ちゃんはにっこりと微笑んだ。
 でも本当にわからなかった……女の人は着るもので変わるというけど。

 着物姿もいいけど地味な紺のミニスカートとパンプスをはいた彼女も可愛らしい。
 本当に妹系そのまんまだなぁ……


「おい、さっきから鼻の下が大変なことになってるぞ」

 隣でおとなしく浮かんでいた淫魔がボソッと囁いてきた。
 その言葉におもわずドキっとして僕は緩んだ表情を引き締めた。

「くすくす……」

 僕と淫魔のやり取りがおかしかったのか、舞ちゃんは鈴のように笑っている。
 聞けば会社のお使いの帰りだという。そして今日はもうこのまま直帰するらしい。

「よかったら買い物に付き合ってくださいませんか?」

 舞ちゃんからのお願いを断る理由もないので、僕と淫魔は彼女について行く事にした。





「ありがとうございました!助かりました!!」

 僕らは買い物を終えて喫茶店でお茶を飲んでいる。
 付き合ってくれたお礼に舞ちゃんがご馳走してくれるらしい。

「かえって高くついちゃったんじゃない?」

「そんなことないですよぉ。こうしてまたお会いできたし♪」

 ストローでアイスカフェオレを飲む舞ちゃん。その脇で淫魔はガツガツとケーキを食べていた。
 いっしょに暮らすうちにチーズケーキが淫魔の好物だということが最近わかった。

「うむ、うまかった……満足した。私は先に帰るから、お前は彼女をちゃんと送り届けてやれ!」

「お、おい!ちょっとま……」

 淫魔は勝手なことを言ってそのまま消えてしまった。



「うわ……どうやって消えたのかしら」

「詳しいことはわかんないけど、とりあえず僕がお送りします」

「よろしくお願いしますね♪」

 もしかして気を利かせてくれたのかな? 淫魔のやつ。
 そうだ、そうに違いない……ということにしておこう。


「じゃあそろそろ行きましょ、おにいちゃん」

 こんな可愛い妹がいたら彼氏とか絶対認めないだろうな。
 しかしいい響きだなぁ……「おにいちゃん」って。

 彼女の言葉につられて僕は席を立った。
 両手に荷物を持って外に出るとさっきよりは暑さは和らいでいた。

 これも舞ちゃんのおかげかな? 喫茶店を出てから舞ちゃんのあとをついて歩く。
 しばらくして彼女がいきなり立ち止まった。
 そして急にモジモジし始めた。

「あ、あのっ……えっとぉ…………」

「むむっ!」

 ……おもいっきりラブホの前じゃん!! さらに続く舞ちゃんの衝撃発言。

「もういちどっ、わた、私と勝負しませんかっ」

 可愛い舞ちゃんが顔を真っ赤にしてうつむいている。
 むしろ僕のほうからお願いしたいくらいだよ、という言葉のかわりに僕は黙って頷いた。

「うれしい…………」

 ほっとした表情の舞ちゃん。
 でもよくよく考えたら、3月3日のときはボロ負けしてるんだよね……僕。

 とにかく舞ちゃんの気が変わらないうちに、僕らはいそいそとホテルの部屋を選んだ。






「舞ちゃんって積極的なんだね……」

 僕は素直に驚いていた。
 こんなに可愛らしい舞ちゃんが自分から男を誘うなんて。

「はしたない女だと思われちゃいますよね」

「いや、そういう意味じゃ!」

「こんなお願いができたのはお兄ちゃんだから……ですよ?」

ファサッ……

 舞ちゃんがそっと上着を脱いだ。
 すごく色っぽい仕草で、思わず目を奪われてしまう。

「私、自分に自信がないんです。見た目なんかすごく年下に見られるし、身体だって……」

「そんなの気にしないほうがいいよ!舞ちゃんはすごく魅力的だよ」

 本当にそう思う。ちっちゃくて可愛い舞ちゃんがなぜ悩むのか理解できない。
 でも女性というのはみんな何かしら容姿にコンプレックスがあるらしい。

「ほんとですか?」

「うん、すごくキレイだよ」

 あえて僕は可愛いという言葉は使わなかった。
 舞ちゃんはおそらく背が低いことを気にしている。
 可愛いという言葉は彼女の暗い気持ちをさらに悪くするような気がしたから。

「えへっ、うれしい…………」

 僕の読みが的中したようだ。
 舞ちゃんは少し涙を浮かべながら微笑んだ。
 そして急に僕に飛びついてきた!

「わわっ!」

「おにいちゃん、今日も舞に可愛い声聞かせてね?」

チュッ♪

 彼女の小さな唇が僕に重なる。
 忘れかけていた甘い香りが唇を通して僕に広がってきた。

「あっ……」

「もっとキスしちゃうね。おにいちゃん♪」


ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ♪

 今度は唇をついばむようなキス。少しずつじっとりと唾液がにじんでくるのがわかる。

 舞ちゃんはキスがとても上手だ。
 こないだは人形売り場でいきなり襲われてあっという間にイかされちゃったけど、今日は負けないぞ!

「んくぅ!!」

 僕は片手で彼女の小さな頭を抑える。
 唇をちゅっちゅされ続けていると意識が朦朧としてしまうので、とりあえず押さえ込んだのだが……

レロォ~~

クチュッ、クリュ……

 舞ちゃんの舌使いが変わった!!
 さっきまでの軽いキスの連発ではなく、ネットリとした甘さをすり込む様な熱いキス……に……!

「ぷはぁっ!んぐっ!、ま……って……んんー!!」

「クスッ、逃がさないよぉ……んちゅ♪」

 押さえ込んだはずが舞ちゃんに逆襲を食らってしまった。
 そういえば3月のときも甘くとろけるようなキスをされたんだっけ…………あぁぁ

ちゅっぽん!

 解放される僕の口元。
 つい名残惜しさに口をパクパクさせてしまう。

「相変わらず可愛いおにいちゃん……もっといっぱいキスしていーい?」

 いたずらっぽい目で僕を覗き込む舞ちゃんを断る理由などない。
 黙ってじっと見つめていたら、舞ちゃんが僕を優しく押し倒してきた!

「舞の手で体中触ってあげる……」

 優しい手つきでシャツを脱がされ、そのままトランクスもするりと剥ぎ取られた。
 続いて舞ちゃんもそっと立ち上がって身につけていた衣類を脱ぎ始める。

「おにいちゃんが感じてくれそうな部分は残しておくね?」

 ブラウスは脱いだのにインナーはそのまま。
 ストッキングまでは脱いだのにパンティは脱がない。

 こ、これは……!




「ふふっ、全部脱がないほうがエッチな感じしませんかぁ?」

 まさに舞ちゃんの言うとおりだった。
 縞のタンクトップのような下着と可愛らしいデザインのパンティの組み合わせは確実に男の理性を削り取る。
 小さく窪んだおへそや少し控えめなバストなども逆に美しく見える。

「うふふ……」

 僕の視線を感じながら舞ちゃんが少し腰をくねらせた。
 その腰のくびれが、少し見上げるような視点の僕にはとんでもなくセクシーに写った。

「このまま身体をスリスリしちゃうよぉ♪」

 舞ちゃんは僕をまたいで静かに腰を下ろした。
 ちょうど亀頭を押しつぶすように膣口が押し当てられる。

(ああぁぁ……やばいよぉ!!)

 嫌でもこないだの名器ぶりを思い出してしまう。
 まさかここまで計算しているのか……

「まだ挿入してあ・げ・な・い」

 ちょっと意地悪な表情をしてから舞ちゃんは腰を小さく揺らし始めた!

クニクニクニクニッ!

「ひいいぃぃ!!」

 こ、このままじゃ舞ちゃんのパンティでイかされちゃう!
 男としてそれだけは避けたいと思った。

 歯を食いしばって彼女の責めに耐える僕。
 だが柔らかい生地で快感を小刻みに与えられてるペニスは早速悲鳴を上げ始めた。

どぷっ……

 自分でもわかる。カウパーが思いっきり染み出した感覚。
 その証拠に股間の摩擦が減って、ツルツル感でいっぱいになってきた。

「ああっ、あ……!」

 自然に腰がモジモジしはじめる。
 そしてその動きは僕の意思では止められないのだ。

「下のお口がパクパクしはじめてますよぉ~~」

「そ、そんなことっ!」

 無意識に快感から逃げるために目を瞑っていた。
 改めて目を見開くと舞ちゃんの顔が目の前にあった。
 ま、またキスされちゃう!!

「キスしてほしい?」

 舞ちゃんの小さな唇を見つめてしまう。
 あの唇が僕をキスするたびに、何かを吸い取っていく。
 危険な罠とわかっているのに逆らえなくなっていくんだ……

「してほしいの?おにいちゃん」

 彼女の念押しの言葉に、僕は思わず頷いてしまう。
 舞ちゃんは口をモゴモゴさせて唾液を少しだけ垂らしてきた!

トロ……

 そのしずくが僕の下唇に落ちる。
 素早く舌先を伸ばしてその小さな水たまりを舞ちゃんは薄く延ばし始めた。

(え、エロいよ……舞ちゃ……ん、あふぅ……)

 無意識に僕も舌を伸ばす。
 すると舞ちゃんは待ってましたとばかりに舌先をチュルッと絡ませてきた。

「んふふー♪」

くちゅっ、ぴちゅ、ぷちゅ……

 僕の舌を絡めながら舞ちゃんは何度もディープキスをしてくる。
 その動きに合わせて下半身も妖しく動かしてくる……

(も、もうイっちゃう……やばい……いいぃぃ!!)

 情けないことにキスと亀頭責めだけで僕はイく寸前まで高められてしまった。
 くいんくいんと回転する舞ちゃんの腰つきは容赦なく僕の精神を追い込んでくる。

「もうガマンできないんでしょ?おにいちゃん」

 すっと唇を離す舞ちゃん。
 たっぷりと嬲られたせいで僕の口元まで銀色の糸がつながっている。

「ま、まいちゃ……ん、もう僕はああぁぁ!!」

「クスッ♪ 上のお口といっしょに、おちんちんのお口も開いちゃお?」


 舞ちゃんは少し腰を上げて可愛らしいパンティを少しだけめくった。
 奥に隠れていたつるつるのアソコ……その様子だけでも充分エロい。

「舞もガマンできない……」

 熱く熟した舞ちゃんのマンコが、亀頭を優しく包み込んだ!

ずぷぅぅぅ……

 暖かくて柔らかい舞ちゃんのアソコに飲み込まれていく僕の分身……
 少しずらしただけのパンティの隙間から無理やり挿入させられているようで、いつも以上に興奮させられてしまう!

「舞の一番奥まで入れてあげるからぁ……」

「き、もちい……いいいぃぃ!!!」

「あん、まだイっちゃだめぇ。奥まで届いたら、オマンコでちゅっちゅしてあげる♪」

「も、もうっ……ああああぁ……」

 舞ちゃんはゆっくりと腰を回転させながらペニスを飲み込んでいる。
 左右に腰を振られるたびに膣の中で舐めまわされながら、とんでもない快感がやってくる。
 そしてとうとう彼女の腰がぴったりと吸い付くように合わさった!

「ほらいくよぉ……ちゅうぅ~~~」

「えっ、ぎぃ、あああ、いいいぃぃ!!!?」

「うふっ、ちゅっちゅしてあげるねぇ♪」

 クスクス笑いながら舞ちゃんは両手を僕の肩に置いた。
 まるで押さえ込まれるような体勢。
 だが彼女の子宮口に触れたペニスは中でしごかれ、揉みまわされながら吸い付き、締め付けられていた!
 特に棹の真ん中あたりがやわやわと揉み解されながら鈴口を吸われているような感覚……

「で、でちゃうっ!もう、いく、イく~~~!!」

「ふふっ、イっちゃえ~~」

 彼女の膣がギュウウっと締まる。
 それも根元付近から亀頭に向かってジワジワと。

 まるでハミガキ粉のチューブを搾り取るようにうごめく舞ちゃんのマンコ。
 こんなの耐え切れない!!

「あ、あああああああああぁぁぁ!!!」

ドッピュウウ!ドプッ、ドピピュピュ~~~~

 3月3日のBFが鮮明によみがえってきた。
 そうだ……僕はこの子に、この名器に負けたん……だ……

 射精中も容赦なく揉みこまれ、萎えることもなくさらに搾られる地獄。
 いや天国なのかもしれないがイきっぱなしにされる快楽の泥沼。

 挿入したままでの4回連続で射精させられたあと、僕は静かに気を失った。









 無意識にまぶたを開ける……
 いや、完全に開かないけど……ぼんやりとなにかが……

「だいじょうぶですか?」

 聞き覚えのある声。
 この鈴のように軽やかで透き通った声の持ち主は………………
 遠くで聞こえる舞ちゃんの声で僕は目覚めた。

「あ、ああ……だいじょぶ……」

 彼女の顔が逆さに見える。
 頭の下に舞ちゃんの柔らかい太ももを感じた。
 どうやら膝枕をされているようだ。

「良かった。満足してくれたみたいで」

 挿入してから何度もイかされたせいで記憶が一部欠落している。
 満足どころか失神までさせられてしまった。相変わらずとんでもない破壊力の名器だ。

「実は私、自信がなかったんです。女として見られてないって最近感じてて……」

 僕はだまって彼女を見上げていた。
 少し寂しそうな表情をしていたので、ゆっくりと左腕を上げて彼女の頬に近づけた。

「んっ……」

 猫のようにスリスリと僕の腕になついてくる舞ちゃん。
 やはり彼女には笑顔が似合う。
 僕もつられて少し笑った。

「舞ちゃんは充分キレイでかわいいし……」

 その言葉を聞いた舞ちゃんが満面の笑顔になった。


「吹っ切れました!おにいちゃんのおかげです」


ちゅ……

 逆さのまま舞ちゃんは僕に優しくキスをしてくれた。
 彼女といっしょにいると中学生時代の甘酸っぱい恋愛のこととかを思い出してしまう。

 それはきっと舞ちゃんがもつ独特の雰囲気のせいかもしれない。
 年齢よりも幼く見える容姿や、ナイーブな性格などが合わさった結果なのか。

 とにかく彼女は笑顔を取り戻した。それだけで僕は満足だった。

「また迷いが出たら……相談に乗ってくださいね? ノリスお兄ちゃん♪」


 いつでもどうぞ、という意味を込めて僕は小さく頷いた。












おしまい