先ほど、俺は無意識に沙雪から目をそらした。
 まるで沙織の生き写しのような視線に耐え切れなかった。
 沙雪は沙織の愛弟子なのだから当然なのだが……。


「ふわあぁぁ……」

「んっ?」


 そして視線の先には野うさぎみたいな少女、小春がいた。
 こいつは右京の弟子らしい。
 そんなことはどうでもいいのだが……沙雪よりは若干おとなしそうに見える。



「おにいちゃん、恥ずかしいよぉ……」


「えっ?」



「そんなにじっと見つめられたことなんて無いんだもん」


 ちょ、ちょっと待て! なにか勝手に勘違いしてるぞ、この娘。


「別に見つめたわけでは……」



「えへへ……男の人でも照れ隠しってするんだねぇ」


 小春の頬がさっきよりも赤い……。


「だから違う!」


 目を細くして、ますます顔を赤くする少女に向かって俺は言う。




「本当は小春のほうからおにいちゃんを誘惑しなきゃいけないに……」




「ゆ、誘惑!?」



 小春はすでに自分の世界に入っている様子……。
 こちらからの話がまったく通じていない。




 小春が嬉しそうに俺の耳元に顔を寄せてきた。



「沙雪ちゃんみたいに綺麗な女の子より、小春みたいなほうが好きなの?」




「それもちがっ…………んん!?」


ちゅっ♪


 桃色の小さな唇が俺の言葉をさえぎる。
 小春の髪が揺れると、甘い香りがした。


んちゅっ、ちゅ……ぷちゅうぅ♪



(…………くぅっ!)



(んふ…………♪)


 そっと忍び込む舌先にくすぐられ、呼吸が乱される。
 はじめは遠慮がちだった小春の舌先が、じょじょに活発に動き出す。


ちゅうううぅぅぅっ♪

 細かく嬲るようにゆっくりと俺を舐めまわしてくる……。


(う……ま…………い!)


 拒もうとしても、小春を突き放せない。
 あまりにも長い口付けにこちらが参ってしまった。



ちゅぽっ……




「くすっ……かわいい、おにいちゃん♪」



(ふああぁ…………)




 小春の唇が離れるころには、すっかり脱力させられてしまった。
 まだまだ小娘だと思って侮っていたがとんでもない。
 やはり小春も「くノ一」なのだ。
 このまま育っていけば、師匠と同じく男を容易に堕落させる魔性の存在になるはずだ。



「いっぱい……いっぱい誘惑してあげる」


 小春は相変わらず俺をじっと見つめている。
 垂れ気味の目尻は、師匠である右京を思わせる。
 胸はまだ……もちろんそれなりだ。


(この娘も右京のように激しい責めをしてくるのだろうか)




「なぁに?」



(…………)




 にこやかな小春の表情からは何も伺うことはできない。
 微笑んでいるような、それでいて少し泣きそうな顔をしているような……。



「どうしたの? おにいちゃん」


 彼女はもともとそういう顔立ちなのかもしれない。


「いや……」


 目のやり場に困った俺は、無意識に視線を落とした。

 小春は、生意気にも俺を誘惑すると言いやがった。
 誰がこんな小娘に……



「おにいちゃん、小春の足……見てました?」




「へっ……」



 声につられて前を向くと、小春が忍服の裾を持ち上げていた。
 真っ白な太ももの付け根が少しだけ見えた。



「だ、だれが見るか!」


「見てたもん……」



 俺の言葉にむっとした小春がずいっと近づいてきた!


「……絶対見てたもん!」





「うわっ、なにをするっ!」




「おにいちゃん、お顔の上に失礼しまぁす……」






「うぶっ!!」


 小春は俺を転がすと同時に、小さな尻で顔面を押しつぶした。





「えへへ、『岩清水』の術っていうんだけど……」


 むっとした表情から一転して、小春は恥ずかしそうな表情をした。
 遠慮がちに俺の喉元に腰を下ろし、そっと足を開いた。

くぱっ……

「なにこれ……すごく恥ずかしい」




(俺だって恥ずかしいぞ!)


 突然のことに反応できない。
 ふわりと広がる少女の甘酸っぱい香り……そして真っ白な太ももの付け根で潤う花弁だけが、俺の目の前に広がっている。



「舐めて、おにいちゃん……」




(な、ななななんだ……こいつは!)





「こ、小春っ! 」


「捕らえた男にいつもこんなことをしているのか!」


「そんなことないもん! こんなの、小春はじめてだもん…………」


 俺の抗議を慌てて遮る少女の声。
 足の間に挟んだ顔に秘所をぶつけるように、小春が腰を前に出す。

「うぷっ!」


 鼻先にぶつかりそうだった少女の柔らかな部分が、俺の顔をなでる。
 しっかりとこすれあい、ますます小春の香りが深くなる。


「ん……ぐぅ…………」


「あんっ」


 恥ずかしそうに腰を回しながら、小春が何かに驚いた。



「こんなにしてるぅ……」


「さわるなぁっ!!」


「えへへ、ちょんっ♪」



「うああああぁ!!」


 そして股間に広がる刺激。
 亀頭を小春が弄んでいるのか……思わず腰が跳ねてしまった。



「ねえ、おにいちゃん……これ、なぁに?」



「くっ」


 肉棒がじわりとした暖かさに包まれた。





(これは小春の指か……)


 せっかく歯を食いしばっていたのに脱力してしまう。
 息を吸おうとしても目の前には小春の秘所が……


「教えて? おにいちゃん」


「うくぅ……」


 吸い込みたくないのに淫らな空気を吸い込んでしまう。
 顔を動かせば小春を喜ばせてしまう。


「こら、どけ…………!」


「うふふ、本当はこういうのが好きなんじゃなぁい?」



「ぐりぐりするなぁ!」


 俺の肉棒を包み込んだのは小春の指先だった。
 それもおどおどした様子もなく、しっかりと握って刺激してくる。
 しかもこの手つきは……!


「隠しても無駄よぉ? だってこんなになってるし!」





「ああ……ああぁっ!」


「元気なおにいちゃんを見たら、なんだか安心したよぉ。
 もっとこすり付けてあげる……」


 小春は少し腰を浮かせる。
 しっかりと両足を開いて、大事なところを俺に見せ付ける。


(桃色だ……)


 細い足が開き、真っ白な肌が目の前に広がる。
 自然とその中央部分に視線が集まる。


「おにいちゃん、いけないんだぁ……」




「そんなこと言われたって…………」


「女の子を恥ずかしくさせちゃいけないんだよぉ?」

ぴちゃ…………


「うわ……」



「でも、小春はおにいちゃんを恥ずかしくさせていいんだよ?」




「そんな無茶な!」

すりすりすり……


「ん、うぶぅぅ~~!」



「言うこと聴かなきゃ駄目ぇ…………」


 小春は俺の目の前でひらひらと指先を見せつけた。
 そしてゆっくりと秘所に食い込ませて……蜜壺をかき混ぜ、俺の頬に指を滑らせる。

 しっとりとした指先から小春の蜜の香りが……


「くおおおぉぉっ!」


 湧き上がってきた妙な妄想を振り切るため、俺は顔を振って悶えた。


「あ、あんっ! お顔動かさないでぇ……」



(しかし……!)




「小春のつぼみにおにいちゃんのお鼻が当たって……!」


 こ、こんなに可愛らしい少女の乱れ姿なんて、今まで見たことはない。
 相手がくノ一だとわかっていてもこれはたまらない。


「ふああぁぁ! 感じてきちゃうよぉ!!」



 小春は素直に感じている。
 だがその間も、指先での亀頭愛撫は続いている!


(だめだ、こっちが先に感じて……!)




「こっ、これは……
 小春が気持ちよくなりたいからじゃないよ!」




「はぁっ、はぁ、はなせ……うぼおぉっ!」


 俺が抵抗すると、小春はますます顔の締め付けをきつくした。

「お兄ちゃんを……あはぁ……誘惑するためにしてるんだからねッ」


 息を弾ませながら、少女は俺に言い訳をする。
 少し慌てたその声を聴くと、なぜか淫らな妄想を許されたような気持ちになってくる。


「おにいちゃんの心を縛って、小春でしか感じなくしてあげる」




「そ、そんな……」


 だがこのままでは、そうなりかねない。
 すでに小春の香りで頭の中いっぱいに霧が立ち込めているのだ……

「小春の匂いをいっぱいつけて、おにいちゃんを独り占めしちゃう」




「ひとりじめだと……?」



「右京様からはお許しをいただいてるのぉ」

 小春は腰を浮かせて、俺の顔色を伺っている。
 おそらく俺はだらしない顔をしているのだろう……


「……なんの許しをもらったって?」



「ふふっ、おにいちゃんを壊してもいいって」


 こ、壊す? まだ疑うことも知らない少女になんて物騒なことを教えるのだ、右京め……


「でもね、壊さないよぉ?」


 当たり前だ!
 玩具じゃあるまいし、壊されてたまるか。


「うふふふっ…………そろそろいいかなぁ?」


 小春はちらりと振り返ると、視線を落した。
 そして硬さを確かめるような手つきで亀頭を包み込む。



「おちんちん、こんなになっちゃったね?」


くきゅうぅぅ



「んああぁっ!」


 少女の指が俺自身を揉みまわす。
 悔しいが……たまらなく気持ちいい。

「気持ちよくして欲しい? おにいちゃん」




「……」


 大きな目で俺を見つめる小春。
 快楽で俺を堕とそうというのか。そんなに簡単に屈するわけには……!



「小春が優しくなでなですれば気持ちよくなれるよね?」





「うぐっ」


 亀頭を包む指が、わずかに動いている。
 じれったくなるほどゆっくりと、だが確実に小春の指がうごめいている……


「ちゃんとお願いしてぇ…… 『小春ちゃん、イかせてください』って言って……」




「そんなことっ……」


きゅっ


「ああぁぁぁ!」


 反抗的な俺を戒めるような小春の指使い。
 亀頭のくびれを指先でそろりと撫でられた。


「お顔に乗ったまま、おててで……してあげるよ?」


 穏やかに微笑みながらも、俺を篭絡しようとする少女……
 俺はこんな小娘に、片手で動きを封じ込まれている……


「あれぇ? ちゃんとお願いできないの?」




「だれがするものか!」




「じゃあ意地悪しちゃうよ…………」


 小春は口元をゆがませ、淫らに笑うと指先で亀頭をくすぐり始めた。




くり……くりくり……



「ああっ、あぁぁ!」


 ゆるゆると虫が這うような動きに、思わず腰をくねらせてしまう。

「ゆっくりなでてあげる。狂わせちゃうもん」


 じ、じれったい!
 かゆいところに手が届かない気分というか……肉棒に絡みついた快感が腰に無理やり留められている!!


「あがああぁぁ!」




「おにいちゃん、ここからは少し苦しいよぉ?
 『指くらげ』の術……」



 小春の指先の動きがまた変わる。
 亀頭に絡みつく指の数が増える。


「おてて全部を柔らかくして、おにいちゃんをいじめちゃうのぉ」




「おあああぁぁっ!」


 さっきとぜんぜん違う!
 亀頭を這い回る指先が不規則で、しかも一本一本が吸い付くように滑らかに動いている。


「くあ、あううぅぅぅ!!」

 こんな小娘に見事なまでに追い詰められてる……

「亀さんぬるぬる~」



くちゅっ、くちゅっ……


「あ、ああぁぁ! もっと、もっ……」



「小春の指もぬるぬるだよぉ……おにいちゃん」




「は、はやくっ!」


 思わず口にしてしまった言葉に、小春は嬉しそうだ。

「ぴくぴくしてもゆっくりよぉ……うふふふ~」


 だが小春の指の動きは速まらない。
 むしろゆっくりと俺を溶かすように指を動かしている!

「おにいちゃんは負けちゃうのよぉ?」



「ふあぁ! ち、ちが……」



「このまま小春にいじめられて負けちゃうの」


「い、いやだああぁ!」


 目を細めて、今度は言葉で俺を追い詰める。


 自然に跳ね上がる腰を片手で押し返す小春。


「小春のにおいをいっぱい吸い込んで、小春のおててで弾けちゃうの」




「あ、ああぁぁ!」


 少女に顔を押さえ込まれ、股間を指先で嬲られる。
 しかも五本の指が、小春の意思とは無関係に動いているようで……!


(で、でる! もう……やばい)


 肉棒の震えに、小春も何かを感じ取ったようだ。

「もうすぐもうすぐ♪」


 やわやわと亀頭を舐っていた指先の動きが止まった。

「しこしこしてほしい?」


 じっと見つめる小春の顔が優しい。
 俺はねだるように見つめ返したのだが……


「うふふふ…………駄目よぉ」


「えええっ!?」


 小春の指が再び亀頭を這い出した!


「このままお漏らししちゃおう? おにいちゃん」




「でも……これじゃあ!」


 この緩い刺激では思い切り発射できない!
 しかしそんなことは口にできない……
 小春に屈服してなるものか、という気持ちはまだ残っている。

「小春にいいお顔見せてぇ……」


俺の顔にそっと手が添えられる。


「ふあああぁぁぁ!」


 ほんのりと感じる手のひらだけでも感じてしまう……


「優しく撫で撫でされて、身体をぴくぴくさせちゃお?」


 小春は陥落間近の俺の身体を軽くさすってから、亀頭に添えた指先に力をこめた。



くちゅり……


「あああぁぁ! これはああぁぁ!!」






「じゃあもう一度いくよぉ『指くらげ』の術~!」


 さっき俺を狂わせた小春の指技。
 柔らかな指使いに、甘く悶えさせられる。
 少女の指先に力を吸い取られていく……


「これでおしまいかも。ほらぁ、きゅう~~~~」


 小春は五本の指で亀頭をつまんでから、素早く左右に回転させた。
 今まで触れてなかったくびれの境目や裏筋などがこすられ、俺はもう我慢できなくなってしまった。

「ああっ、イく~~~~~!!」






 どぴゅどぴゅどぴゅうううう!


「きゃんっ♪ おにいちゃんのおつゆが、小春のおててにぶつかってるよぉ」

 目の前が真っ白になる。
 そして俺の意識も、小春の手のひらも……

 少女の香りに包まれたまま、俺は数回に分けて精を打ち放ってしまった。








「きゃはっ、いっぱいでた!」

「が……ふっ……!」


 小春が楽しそうに微笑んでいる。
 可愛らしい彼女の手によってたっぷりと搾り取られた俺は、身動き一つできない。

 正直、侮っていた。
 ここまで精を吐き出すことになるとは思わなかった。

 だが小春の責めは続いている。


「おにいちゃん、ちょっとだけ我慢してね……」





 小春が顔を寄せてきた。
 甘い桃の香りが強くなる。


ちゅうううぅぅ!


「くうっ……!」


「うふふふふ……」


 軽い痛みが首筋に走る。
 小春に吸い付かれ、皮膚がえぐられるように熱くなる。

 いったい何をするつもりだ!?


「あうっ!」


ちゅぱっ


「つけちゃった。小春のしるし♪」


「なにを……」


 小春が俺を解放したが、力が抜き取られたみたいに動けない。
 首筋の熱は収まらず、ひりひりと疼いている。


「これが三つになれば、おにいちゃんはもう小春のもの」


 おそらく俺の首には小春の唇の跡が着いているのだろう。
 少女が顔を沈めた場所は痺れ、まるで烙印を押されたみたいに熱い。


「お口もしようね……」




んちゅうぅぅ~~



 気の抜けた俺に、小春はさっきと同じような熱い口づけをしてきた。
 何度も俺の唇に吸い付き、淫らな音を立てる。

 小春に、この少女に支配されながら……
 力が抜け堕ちていく……

「おやすみ、おにいちゃん」




「くうぅぅ……」




「起きたらまた遊んであげるからね?」



 にこやかな表情の小春に見惚れながら、俺の意識は闇に溶けた。





『岩清水』の術 編 (了)