「おまたせー、あずにゃん」


軽音部の練習も終わり、誰もいなくなった音楽室。

「こんな時間に呼び出しちゃってすみません、唯センパイ」

梓は後ろ手に隠していた小さな箱を唯に手渡した。




「これプレゼントです」

「なぁに? この箱」

「唯センパイにはいつもお世話になってるから」

「ほぇ~、開けてもいい?」

コクンと頷く梓を見ながら、リボンがかけられた小箱をそっと開ける。


「わぁ、可愛い~!」

箱の中には小さなビンが入っていた。


「私が調合したアロマです。試してみてください」

「何でも出来るんだね、あずにゃん!」

「そんなことないです」

小瓶のコルクをあけて、化学の実験のときのように手のひらをパタパタさせる。

「刺激があるけどいい匂い……」

嗅いだ瞬間は酢のような刺激がやってくるが、
すぐにレモンとオレンジの中間のような甘い香りに変わる不思議なアロマ。

「中に入っている布も可愛くないですか?」

「どれどれ?」

梓に言われてビンの中を良く見ると、液体を染み込ませた麻布が小さく折りたたんであった。
唯は顔をビンの口に近づけて覗き込んだ。
レモンとオレンジの香りが強くなる。

「あれっ、なにこれ……なんかクラクラ……」

次の瞬間、唯の膝がカクンと折れた。
床に崩れ落ちそうになる唯をとっさに支える梓。

「すごい……こんなに効くなんて思わなかった」

















「んん~~~」

「お目覚めですか? 唯センパイ」

可愛い後輩の声に反応してゆっくりまぶたをあけると、目の前には笑顔の梓がいた。
唯はソファーに座っていた。まだ頭がボンヤリする。
立ち上がろうとしたが身動きできない。手足に力が入らないのだ。


「あれっ……動けないよ、あずにゃん」

「はい。センパイのこと動けなくしちゃいました。さっきの香りの効果です」

アロマの効果?
ためしに右手を握ったり開いたりしてみる。
しかし動いてる気が全然しない。梓の言うとおり指先に力が入らない。
かろうじて首から上が動くだけだ。

「なんでこんなことするの?」

「それは……唯センパイのこと、キライだからです」

「キライ?」

ツインテールの髪を揺らしながらコツコツと歩いて唯の背後に回る。

「あずにゃん?」

「軽音部に入ってすぐの頃は澪センパイに憧れてました。背が高くて綺麗だし、マジメで練習も欠かさなくて理想のセンパイです」

ふわり……と唯を後ろから抱きしめる梓。


「でも最近気づいたんです。本当にすごいのは澪センパイじゃなくて、唯センパイだということに」

「あずにゃん……ひうっ!!」

梓がそっと唯に顔を寄せた。
形の良い耳をついばむようにパクンとくわえる。
突然やってきたくすぐったさに身悶えする唯。
小さな梓の左手が、そっと唯の口元を塞ぐ。

「んんっ!」

「声を出しちゃダメです」

快感にうめく唯の声が遮られる。
口にくわえた耳たぶをゆっくりと舐めまわす梓。
その淫らな舌使いの音……ピチャピチャピチャと小さな水音が音楽室に鳴り響く。

「唯センパイはいつも練習サボってるし、いい加減に見えるのに……ここぞというときのギターは天才的です」

「ん……ふ……んん!!」

今度は舌先を尖らせて、ツツーっと耳たぶの輪郭をなぞる。
唯の口を塞いでいた手を少し浮かせて、人差し指で唇を愛撫する。

「しかもギターを始めてやっと一年だというのにリードギターが板についてるなんて」

「ひうっ、あず……にゃあああぁぁぁぁ!?」

「すごいなぁって素直に思うのと同時に、なんだか悔しくて」

「あずにゃん、それは……」

「ずるいです。唯センパイ」

そこまで言うと、梓は自分の制服のリボンを解いた。
チラリと唯のほうを見る。
アロマの効果で相変わらず身動きが取れないようだ。
梓に敏感な唇や耳たぶをいじられても振り払うことが出来ない。


「唯センパイのことをいっぱい感じさせて、メロメロにしちゃいます」

続いて優しげな手つきで唯の制服のリボンを解き始めた。
第一ボタンが外れたブラウスの隙間に左手をしのばせると、柔らかな唯ぬくもりを感じた。

「やめて、あずにゃ……」

「ダメです」



唯は先ほど梓にプレゼントされたアロマのせいで、身動きが取れなくなるばかりか敏感にさせられていた。
もちろんその効果については唯が知るはずもなかったのだが……

「はぅんっ! なんかすごい気持ちよくって」

「そうですか? もっとセンパイのこと気持ちよくしちゃいますよ」

「ダメぇ……あずにゃん」

「騒げないようにしちゃいます」

梓はポケットからミニタオルを取り出して、唯の口の中に放り込んだ。


「んんんんんん!!!」

「唯センパイ、可愛いです」

顔を真っ赤にして抵抗する獲物の様子を窺いつつ、ブラウスをゆっくりと脱がす。
ふっくらとした唯のバストがあらわになり、桃色の乳首も柔らかな縞模様のブラジャーから飛び出した。

「綺麗な肌……それに胸もけっこう大きいんですね」

目を大きく開いてモジモジしている唯を覗き込みながら、梓の手のひらが優しく上下する。

「唯センパイ、着やせするタイプなんだ。何だか悔しいな」

じらすようなフェザータッチでバストを撫で回していた梓の手がピタリと止まる。
そして力任せに、快感で打ち震える唯の乳首を強くひねりこんだ。

キュイイイィッ!!


「ンムッ、ンンー!!」

「痛くないですよね? センパイ」

決して痛くないはずはなかった。
だが今の状況は唯に痛みよりも羞恥心を与えていた。

(あっ、あずにゃん! 恥ずかしいよッ)

唯の心の叫びも梓には全く届かない。
可愛い後輩のいたずらに手も足も出ずされるがままの現実……

「私のギター……ムスタングみたいに抱いてあげます」

ソファーと唯の身体の間に梓が割り込んできた。背中から唯を抱きしめる梓。
さらに唯のブラウスとブラジャーを完全に脱がせて上半身を裸にしてしまった。
そしてついに唯のスカートの中に小さな手をしのばせ始めた。

「あうっ!!」

唯の黒いストッキングの上から秘所をなぞる。

「こうやって右手の指先で撫でてあげれば」

指先がパンティラインの一点を通過したとき、唯の身体がビクンと跳ねたのを梓は見逃さなかった。
もう一度同じように撫でてやると、またもや唯の身体は海老のように跳ねてしまう。

「すごい敏感ですね」

「んん……んー!!」

「唯センパイもいい声で鳴いてくれそう」

梓の小さな手のひらが唯の秘所にぴったりと張り付く。
さらに細い指先でカリカリと弱点だけを弄ぶと、唯の身体の芯からトロリと何かが溢れ出した。

「ほら、だんだん滑らかになってきた……」

「ンン……フ……ン……」

「どうですか、唯センパイ。後輩に背中を抱かれて、気持ちよくされちゃうなんて」

ゆっくりと左手で乳首を転がしながら小さく震える唯の身体を抱きしめる。
焦らすような梓の手つきは効果てきめんなようで、愛撫された相手の吐息はすっかり熱くなっていた。

「澪センパイや私が精一杯練習して、やっと手に入れたテクニックを……唯センパイは見よう見真似でそれ以上にしちゃうんです」

梓はさらに意地悪な手つきで唯を追い詰める。
パンティの上からクリトリスを探り、素早く円を描くように刺激する。
時折パンティの中にそっと手を入れて、膣口に指を沈ませる。

「こんなに悔しいことなんて、滅多にないですよ」

すっかりトロトロになってきた唯の秘所を指先で掻き混ぜつつ、脚をゆっくりとM字に開脚させる。
さすがに恥ずかしいのか、首を横に何度も振って抗議してくる。
しかし梓は意に介さず、ぐいっとさらに大きく脚を広げてしまう。

「だから悔しさを忘れるようなことを考えてたんです」

「んん! んんっふ!?」

「唯センパイが私の指で気持ちよくなるところが見たいです」

無理やり開いた脚を閉じさせないように、
梓は背後から脚をかぶせて唯を動けなくしてしまった。
ついでに口元に手を伸ばして、先ほど唯の口に詰め込んだものを取り出してやる。

「あ……あぅ……!」

「私に負けちゃうんですよ、センパイ?」

いつの間にか梓は唯のストッキングを片足だけ脱がせていた。
そして背後から両手を伸ばし、左手でクリトリス付近を刺激しながら右手の指をズプズプと膣に出し入れし始める。

「ひゃうううぅぅ!!! らめぇッ」

「唯センパイの感じそうなところはムギ先輩から聞いてます」

髪を振り乱して快感を振り払おうとする唯だったが、背後から伸びた後輩の指先はその抵抗すら許さない。
リズミカルに上下する膣へのピストン運動と、まるでコードを押さえるかのようなクリトリスへの刺激。

「あっ、あっ、ああぁぁ…………!」

「もうイかせてあげますね?」

梓はそう言い放つと、クリトリスを強めに捻りながら膣へ出し入れする指を二本に増やした。

「気持ちいいよ……あずにゃ……あっ!」

「はい、これでおしまいです……」

とうとう我慢できなくなった唯が、体中を激しく震わせて絶頂に達する。
天才ギタリストというにふさわしい憎らしくも誇らしい先輩に一矢報いることが出来る。
梓の中でモヤモヤしていたものがすっきりする。

……はずだった。
















「うそッ……耐えきった!?」

唯の身体が予想していたように大きく跳ね上がらない。
あんなに丁寧にクリや膣口周りに愛撫を重ねたのに効果が出ないわけがない。

だが実際にはどうだろう。
呼吸は乱れているものの、唯はじっと下を向いたまま快楽に抗っている。

「どうしてイかないんですか!? 唯センパイ」

唯がそんなにエッチの経験が豊富だとは聞いていない。
さっき行った愛撫は、確実に彼女が耐えられる快感の許容量を超えているはず。
梓が恥ずかしがりながらムギから教わったテクニックを存分に振るったのだから。

梓の疑問に応えるように、うつむいていた唯が顔を上げた。


「ホントに上手だね、梓ちゃん」

「!?」

「じつは風邪気味だったの。『あずにゃんをよろしくね』って言ってたよ」

「えっ……!?」

「あんなに激しくされたら、お姉ちゃんだったらイっちゃってたよ」

戸惑う梓の目の前で、「唯」が両手をニギニギしている。
一度イきかけて、手足の感覚が戻ったようだ。

「うそ……こんなの嘘だよ……!!」

「私が代わりに来てよかったぁ」



トロンとした目で梓を見つめながら、
脱がされたブラウスのポケットから髪留めを取り出す。
慣れた手つきで艶のある髪をアップにする。

「唯センパイじゃなくて……憂だったの!?」

「気づくの遅いよぉ、梓ちゃん」

すっかり手足が動くことを確認した憂は、ゆっくりとソファーから立ち上がって背伸びをした。



「さて……たっぷりお礼してあげないとね?」

「イヤ、やめて……!」

「私じゃイヤなの? ひどいなぁ」

憂は後ずさりする梓をじわりじわりと反対側のソファーへと追い詰める。


「そうじゃなくて!」

「じゃあいいよね。私のこと、こんなに気持ちよくしてくれたんだもの」

「あ……ああぁぁ……」

憂に気圧され、とうとうソファーに座り込んでしまう。
自分のほうへ伸ばされた手を見て、梓はぎゅっと目を瞑った。

「つかまえた♪」

「はううぅぅ……」

憂の柔らかい手のひらが梓の両耳を挟み込んだ。
ただそれだけで梓は動けなくなる。

彼女たちが関係を持つようになったのは最近のことだ。
いつも親身になって相談に乗ってくれる憂のことを、梓は親友だと思っていた。
だが憂は少し違った。
あるとき、掃除中にふざけている振りをして梓にキスをしてみたところ……いい反応が返ってきた。
女の子同士に興味がある、という無意識の反応。梓は適性検査に合格してしまった。

それからじっくり時間をかけて憂は梓へのスキンシップの回数を増やし、とうとう彼女を落としたのだった。

「梓ちゃん、本当はお姉ちゃんのこと好きなんでしょう?」

「そんなことないもんッ」

「嘘はよくないよ?」

憂は指先で梓の背筋をゆっくりとなぞった。
プルプル震えながら梓は一生懸命刺激に耐えようとする。

「だめ、もう……はぁぁ……!」

「じゃあ試してあげるね」

憂は自分の髪留めに手を伸ばした。
つやつやの栗色の髪がファサッと落ちて、とたんに唯そっくりになる。
さらに右側の前髪をヘアピンで留めてから憂は姉の口調を真似し始めた。

「あずにゃん、あたしのことキライ?」

「憂、やめて……唯センパイの真似しないでええぇぇ!!」

「そんなこと言わないで……あずにゃん」

ちゅっ♪

目をそらそうとする梓のあごをクイッと持ち上げ、優しく唇を重ねる憂。
柔らかい唇を味わいながら、短い時間で焦らすキス。

梓の心には間違いなく唯にキスされたように映っているはずだ。

「センパイ……唯センパイ……!」

「これでもまだキライ?」

パチンとウインクする「唯」を見て、梓は照れながら否定する。


「憂、やめてよぉ……こんなのずるい」

「あたしは憂じゃないよ? あずにゃん」

続いて梓の目に入ったのは、唯がよく見せる笑顔。


「あたしのことよく見て……ほらぁ」

「ずるいです……」

「へへっ、ずるくないヨ。あずにゃんのこと大好きなんだもん」

偽者だとわかっていても気持ちが動いてしまう。
梓は無意識に憂の肩に寄りかかるように身を預けていた。



梓は上半身を裸にされたままソファーのうえで憂に抱きしめられていた。
背中から抱きしめられ、一方的にされるがままに憂のテクニックを味わう。
さっきとはまるで逆の様子で二人は絡み合っていた。

「くふっ、ああぁぁ……唯センパイ、すご……い……!!」

「あずにゃんが教えてくれたんだよ? さっきこうやって」

「ふあああぁっ!」

くにくにくにくにっ♪


「ギータを弾くときみたいに、指先をすぼめるんだよね?」

「う、うまい……ひ、ぐっ……!」

「あずにゃんも感じやすいんだね」

目の前にある細い首筋をそっと舐め上げる憂。
ビクビク感じながら嬉しそうに悶える梓。

「指先がもうこんなになっちゃったよ?」

「やめて……見せないでええぇぇ!」

「えいっ、ほっぺにつけちゃう♪」

ぬるりとした梓の愛液を見せつけながら辱める。
憂は実際の姉よりも淫らに役割を演じていた。


「あたしも憂もそうだけど、一度見たギターテクニックとかは自然に覚えちゃうんだ」

先ほど梓にされたことをそのまま梓の身体に刻み込む。
クリトリスと膣を同時に違うリズムで責めるテクニックは見事だったと憂は感心していた。

「こん……なのって! くはぁぁ……!」

「だから再現しているだけ。あずにゃんの指さばき、サイコーだよ♪」

快感で上半身が崩れそうになっている梓を抱き起こし、そしてまたキスをする。


「もうイっちゃいそうだね? じゃあ……」

憂は「唯」の演技を止めて自分に戻ろうとした。


「梓ちゃん、最後は私の顔を見ながらイってね?」

「い、いやっ! 憂、やめて……見ないで!!」

ほんの少し髪形が変わるだけなのに狼狽する梓をみて、憂がクスッと笑った。


「かわいいね、梓ちゃん。でも許さないよ」

「えっ!?」

「私の大事なお姉ちゃんをイかせようとしたんだもん。お仕置きだよ?」

「ち、ちがうの……」

「?」

「唯センパイにイかせて欲しいの! お願い……さっきみたいに」

その言葉を聞いてニヤリとする憂。


「髪を下ろして欲しいんだ?」

「ウン……」

「わがままな梓ちゃん♪」

いったん髪留めに手をかけたものの、憂がそれを外すことはなかった。
梓にとって憧れの自分の姉の姿でトドメを刺すことは思いとどまったのだ。


「あっ、ああっ、もう……憂、お願い……」

「ダメだよ。今日は私がイかせちゃう」

梓を抱きしめたまま、憂は何度も耳元を愛撫した。
時折、唯の声を真似しながら獲物をいたぶる。
あっというまに梓におわりが訪れた。

「イくっ、もうイ……ああああああああああぁぁぁ!!!」

身体を何度も激しく痙攣させ、自分の腕の中で悶える梓のことを憂は満足げに眺めていた。



―― 数分後 ――


「梓ちゃん泣いてる……」

憂はソファーで幸せそうに気を失っている梓を見ていった。
左目から頬を伝って一条の涙が流れ落ちた。
それを優しくハンカチで拭ってやる。

「ちょっと可愛そうなことしちゃったね」

少し屈折していたとはいえ、自分の姉を尊敬している梓。
そんな親友を憂は素直に嬉しく思った。



「次にするときはお姉ちゃんの髪型でイかせてあげるね、梓ちゃん」


まだ夢から醒めない梓を起こさないように、憂は音楽室のドアをそっと閉めた。







(了)