「ヒマだなぁ~」



夏休みのある日、家で勉強中の澪に遊んでもらえなかった律は、ひとり寂しく駅前を歩いていた。

「ゲーセンでもいこうかな……ん? あれはムギッ」

道行く先に発見したのは見覚えのあるうしろ姿。
栗色の髪をおさげにして、フワフワさせながら歩いているのは、軽音部のメンバーである琴吹紬(ことぶきつむぎ)に間違いない。

「よし、後ろから声をかけて驚かせてやるか…… あ、あれっ??」

路地を曲がった紬の背中を追いかけたつもりが見失ってしまった。


「わっ!!」

「フギャー!!!」

「律ちゃん、こんにちは♪」

「やられたっ……くそっ」

不覚にも律は紬に背後をとられ、返り討ちにされてしまった。


「ところでムギ、どこか行くところなの?」

「ええ、避暑地に持っていくものを買いにいこうかと……」

「そっか、残念! 特に用事がないなら一緒に遊ぼうと思ったのに」

律の言葉を聞いた紬の目が鋭く光る。



「さっきの嘘です! ヒマ!! 私ものすごくヒマですっ!!」

「え……? いいのか?」

こうして律と紬はふたりで遊ぶことになった。














「律ちゃんはどこにいくつもりだったの?」

「そうだなー、普段ムギが行かなそうなところにしよーか。ゲーセンとか駄菓子やさんとか……」

「だがしや?」

「あ……イヤか?」

「ううん! 私いってみたいですっ」

律にしてみれば若干疑問の残るデートコースではあったが、思った以上に紬は喜んでくれた。

マクドナルドでひと休みする二人。
紬は新発売のカフェラテを頼み、律はダイエットコーラを頼んだ。

「ふわぁぁ~」

「すっっごく楽しかったぁ~」

クレーンゲームでゲットした抱き枕みたいなぬいぐるみを抱きしめながら紬がいう。

「そりゃ良かった」

「今日はありがとね、律ちゃん」

感謝の言葉に、律はニカッと笑った。
そういえばいつもは澪と一緒にいることが多くて、紬とこうして二人きりで遊ぶことはない。
律にとっても新鮮な一日だった。

「それにしても律ちゃんはエスコートが上手ね」

「え?」

「律ちゃんが男の子だったら、きっと女の子にモテモテね!」

紬の(微妙な)誉め言葉を聞いて固まる律。

「あれ、律ちゃん?」

「あたしにどうリアクションしろっつーんだぁ!!」

パコーン!

「あいたーっ!!」

律は反射的に紬に対して突っ込みを入れてしまった。
まるでいつも澪にしているように。

「これでいいのか?」

「うん! とっても幸せ」

頭に出来たタンコブをスリスリしながらムギは言う。

「こんなので幸せ感じられてもなぁ……」

「澪ちゃんが羨ましいわ」

マクドナルドで一休み中に紬から言われたことを律は思い出していた。
学校で律が澪とスキンシップする姿がうらやましいので、思いっきり叩いて欲しいと紬に言われたのだ。
無防備に突き出された紬の頭をひっぱたくわけにもいかず、その時は手を出さなかったのだが……

「だぁーっ! ムギッ!!」

「な、なに? 律ちゃん」


「まだ時間あるよなっ」

「う、うん……」

このままではどうにも納得いかない、といった面持ちの律。

意を決したように紬の手をしっかり握ると、律は駅の向こう側へと彼女を引っ張っていった。

















歩きながら律は冗談のつもりで紬に聞いた。


「いまから二人でいいことしようぜ」 

「えええっ!!」

「この辺にムギんちで経営しているラブホとかないの?」

「ありますよ♪」

そしてたどり着いたのがこの部屋だった。
ただし、ラブホではなく駅前の立派なホテルのジュニアスイートルーム。



「この部屋しか空いてなかったみたい。ごめんなさい」

「いや……しかし本当にあるとは」

自分が言い出したこととはいえ、あまりの驚きに律は目が点になっている。
紬はいそいそと浴室へ向かうとバスタブにお湯を張り始めた。

そして数分後。
浴室から笑顔で律を手招きする紬。

「律ちゃん、お湯がいっぱいになりましたよー」

「おおっ! じゃああたしも行く」





「うふふ♪」

「なんだよ、ムギ」

「まさか律ちゃんから誘ってくれるなんて」

「あたしだって驚いてるよ……」

律はカチューシャを外して前髪を下ろした。

「うわぁ♪」

「あ、あんまり見つめるなよっ」

恥ずかしそうに律は言った。
澪もそうだが、彼女が前髪を下ろすと珍しそうにジッと見られることがある。

「いつだか唯ちゃんみたいって言ったけど、あれは撤回」

「んん?」

「唯ちゃんよりも可愛いわ、律ちゃん♪」

嬉しそうに微笑む紬を見て、律はため息をついた。

「ムギも胸デカいなー! 澪みたいだ」

「うふっ、ありがとう」

「少しは否定しろ!」

律は自分の胸元をペタペタ触っていた。
柔らかさだけなら負けない…………と思う。

浴室の床は大理石風で、バスタブは二人で入っても余裕があるほど大きい。
壁には金色のライオンが口を開いてお湯を溢れさせている。

「律ちゃん、そこ座って。私がきれいにしてあげる」

「う、うん。うわわっ! なんだこの椅子!!」

「気づいた? スケベイスって言うらしいわよ。」

なぜ一流ホテルにこんなものが?
もしかして紬が慌てて用意させたのかもしれない。

「真ん中が凹んでるのか。なんかヘンだな」

「これがいいんじゃない。ほらっ」

おそるおそる腰掛けた律の背中からお湯をかける紬。
二度、三度とお湯をかけて律を安心させてから、シャンプーの脇に用意しておいた粘り気のある液体を手にとる。

ヌチョ……

「ひゃううぅっ!!」

突然、律の秘所にひんやりとして、しかもネトネトの指先が這い回ったのだ。

「ごめんなさい、ローションまだ冷たかった?」

「そそそそうじゃなくって……んああぁぁ!」

律を気遣う声をかけつつ、紬は手のひらを優しく揺らす。
普段は軽音部で美しいメロディを奏でる彼女の指先が、律の大事な部分を弄んでいる。

「どうしたの? りっちゃん」

クチョクチョクチョ……

「はうっ、ああ、うああぁぁ!」

「便利よね。こうやってダイレクトに触れちゃうんだもん」

ヌチュ、クチュ……ヌチュチュチュ♪

中指を時々折り曲げたり、人差し指で敏感な突起をなぞったり、小指で禁断のつぼみをつついたり……

「ムギ、いきなりダメえぇぇ!!」

「律ちゃん喜んでる♪」

自分の手の動きに悶える律の反応を見て、紬はニッコリと微笑む。

もちろん手の動きは止まらない。


「むむむむ、ムギッ!」

「あら? どうしたの?」

身体を震わせながらなんとか自分のほうを向いた律を見て、身体の芯がズキンと疼いた。

いつもは明るく元気で、強気な律。

それが瞳を潤ませて、許しを請うような顔で自分を見つめている。

普段の彼女とのギャップもあり、とても可愛く感じる。

(私の指で律ちゃんが感じてる……)

澪から律を奪いたい。

今、この瞬間だけでも……


紬は手のひらを返すと、中指と人差し指で何度も滑らかにクリトリスを擦りあげた。

クリュ、チュル……チュル、クニュ……

「はあっ、ああぁぁんッ!!」

敏感な部分を優しく愛撫され、足をモジモジさせながら上半身を跳ね上げる律。

「いつもはキーボードがパートナーだけど、今日は律ちゃんを私の楽器にしてあげるね」

「や、やめてぇ! その指使い……!」

「クセになっちゃいそうでしょ?」

紬は空いている方の手を震える彼女の体に巻きつけた。
しっとりとした色白の腕が、淫らな蛇のように律を絡めとる。

「律ちゃんのバスト、柔らかくて気持ちいい……」

ふにゅふにゅんっ

「ひううぅぅ!!」

膣口を弄ばれるのと同じように、律の感じやすい乳首に紬の指先が触れた。
あくまでも優しく、うっとりするようなタッチで。

(律ちゃんの身体ってすごく敏感。いっぱい感じて欲しいな……)

秘所に忍ばせた手の動きはさっきよりも少し緩めてやる。
そうすることでより深く、紬は律を感じさせようと考えていた。

クプ……

「中までしっかりきれいにしてあげるからね」

指先を第二間接まで膣の中に挿入する紬。
キーボードの鍵盤を撫でるように、繊細なタッチで膣内に指を這わせる。




「あひぃぃっ、ムギイイイィィ!!」

「うごかないでね、律ちゃん」

ぎゅっと抱きしめる紬の腕の力が強くなった。

「律ちゃんの感じるところってココね」

その時、上半身を抱きしめていた手が少しだけ律の乳首をかすめた。

「あはぁぁぁんっ!」

「クリよりも乳首が感じちゃうんだ」

律のあごが跳ね上がり、背筋がエビみたいにピンッと伸びた。

紬にとって彼女はある意味、憧れの存在である。
それが今、自分の腕の中で快楽にまみれ、抵抗しながらもがいているのだ。
これほど興奮するシチュエーションは、なかなか考えられない。

「ちょっと待っててね。指先にエッチな泡を作っちゃうから」

紬は息も絶え絶えの律を抱きしめながら、シャンプーの脇にあったリンスのポンプを数回押した。

「ムギ、なんでこんなに上手なんだ?」

「それは秘密♪」

チュクチュクチュクチュクチュク…………


「ほらみて! この泡で律ちゃんのあそこを包んじゃうから」

「ひいいぃぃっ」

紬は律に見せ付けるように、手のひらで泡だまをこね回した。
滑らかに揺れる塊を相手に認識させてから、ゆっくりと椅子の下へと手を回す。

「優しくしてあげる」

「ムギ……んあっ!!」

クリュ……

「律ちゃんのココかわいい。ツルツルなの?」

「恥ずかしいっ! い、いうなあぁぁ!」

顔を真っ赤にして反論する律の頬に手を添え、自分のほうに向ける。

「ふぁ……えっ……?」




「律ちゃん、好きよ」

チュッ♪

「ムッ、ムギッ!!」

「あはっ、キスしちゃった」

完全に律は翻弄されていた。
さっきから全然自分のペースにならない焦りを感じていた。

(み、澪の時はあたしがリードしてるのにッ!)

いつもとは正反対の立場に戸惑う。
紬の指先で秘所を弄ばれ、気が抜けきっていたところで唇を奪われた。
そしてさらに彼女の指先が、快楽をつむぐ指先が激しく動き出そうとしているのに何も出来ない!

「私の指先でイかせちゃうね?」

身も心も熱くさせられたままの律をやさしく包み込むように紬の愛撫が再開された。
背後から律を抱きしめながら、キス、乳首責め、クリトリス責めを順番に繰り返す。

(あたし、何も考えられなくなっちゃう……こんなのやだよぉ)

唇が続けて何度も奪われる。
紬の舌先が口の中を荒らすたびに頭がボンヤリしてくる。
シャンプーの甘い香りを感じながら、力んでいた律の体が脱力していく。
自分ではどうすることも出来ないもどかしい快楽の罠。

「はふぅ……」

「ホントに可愛いわ。律ちゃん」

はじめはゆっくりと手のひらで包まれていた膣口付近に、ピリッとした電気が流れる。
それも痛みではなく、快感を伴う刺激が急激に広がっていく。

意識よりも先に身体がビクッと反応して、思わず喘ぎ声が上がる。

「ああんっ、ムギ!ムギ!ムギイ!!」

津波のように一気にやってきた気持ちよさに堪えきれず、律が髪を振り乱す。
敏感な乳首を優しく愛撫され、熱くなった秘所は休むことを許されずに掻き混ぜられる。

「もっとキスしよう? 律ちゃん」

「うっ、うん……んんんん~~!」

「舌、いっぱい出して?」

「んぅ…………んっ!!」

やっと突き出された、震える律の舌先をねっとりと絡めとる紬。

チュピ、チュ……チュルッ……ズリュ……

苦しげに突き出された舌先を、丁寧に何度も味わう紬。
時間をかけてディープキスをしてから律を解放し、再び指先に力を入れる。




「ダメぇ……ムギ、も、もうあたし……あっ、あああぁ……!」

「しっかり抱いててあげるから、イって?」

決して律を責める手を休めることなく微笑みかける紬。
彼女の指先は残酷なほど正確に律の性感帯のみをなぞる。

紬の執拗な責めは、律が気を失うまで続けられた。















二時間後 ――

ふたりは浴室での行為をベッドの上でも続けていた。

紬はどこからかオイルを持ってきた。

ローションの代わりにそれを用いて律を愛撫する。

紬の優しい指先責めは、律を徹底的に快楽の世界で狂わせた。


「律ちゃんってすごいわ。こんなに長い時間意識を保っていられるなんて」

「む、ムギ! もう許してぇ」

「ダメです。もっといっぱい感じてね?」

もはや自分では身体を支えることが出来なくなった律をベッドに横たえる。

すっかり火照った律の体に、さらなる快楽を注ぎ込んだ。

律が完全に気を失うまで、紬の愛撫は続いた……






「可愛いお顔。やっぱり律ちゃんって、女の子らしさをいつも隠しているのね」


律をやさしく気絶させた紬は、新しいバスタオルをもってシャワーを浴びようとしていた。

自分たちを引っ張ってくれる頼もしい律のことを紬は密かにあこがれていた。
しかし幼馴染の澪が近くにいる限り、自分はその間に入っていくことは出来ない。

もっと仲良くなりたいのに……

いつか二人きりで遊びたいと思っていた。
だから今日は出会ったその時から、こうなることを望んでいたのだ。




「これからもヨロシクね……律ちゃん」

もう一度憧れの彼女の頬にキスをしてから、紬はゆっくりとシャワールームへと姿を消すのだった。











(了)