――とある初夏の水曜日。

衣替えの時期にさしかかり、事務所内でも半袖の男性社員が目立つようになってきた。
私の名前は田中レイ。
この中小企業で営業事務をしている。
もともと営業がしたくて大手でもないこの製薬会社に就職したというのに、始めの半年を過ぎたら事務職に回された。
男尊女卑の縦社会。
こんな小さな会社でもその理屈はまかり通っているらしい。
やり場のない悔しさを徹底的に仕事へぶつけてみたところ、何故か二年目で主任に抜擢された。
仕事では誰にも負けたくない。
性別や容姿はともかく、私は男勝りな性格なのだと思う。




「とうとう結婚することになったのか!」

「はい、披露宴には是非皆さんに来てほしいと思って……」

「とにかくおめでとうー! がんばれよ!!」

そんなやりとりが課長の席から聞こえてきた。
ペコペコ頭を下げているのは今年の新人……田中くん。

私と苗字が同じだけで特に血縁でもないけど、やはり親近感を覚える。
彼は私のことを「レイ主任」と呼び、私は彼を「田中くん」と呼ぶ。

そんな彼が近々結婚するという噂は耳にしていた。
お相手は学生時代から付き合っているという彼女。
特に私との接点もないし、嫉妬する気持ちなんて持ち合わせていない。

そんな彼が課長の席から順番に挨拶回りを始めた。
当然私の前にもやってくる……。


「おめでとう、田中くん」

「あ、ありがとうございます……レイ主任」

恥ずかしそうに笑う彼の表情には幸せが満ち溢れていた。
私は胸の奥で湧き上がる衝動を抑え、上品に微笑みながら彼を祝福した。

「心から祝福するわ」






――次の日。

お得意様の訪問予定が消え、用意していたお茶とお菓子が行き場をなくしていた。
普段は出さないような高級な紅茶と焼き菓子を手に、私は彼に話しかけた。

「田中くん、これ試してみない?」

「いいんですか! なんだかすごく高級そうで気がひけちゃうなぁ」

気が引けて当然、紅茶が注がれているのは1セットで十万円以上するティーカップとソーサー。
もちろんそんなことは彼に伝えないけど。

「さあ? 試供品みたいだからいいんじゃない」

「僕は毒味係ですか!」

「そうとも言えるわね?」

私がおどけた様子で微笑むと、彼も釣られて笑った。
そして美味しそうにお茶とお菓子をたいらげてみせたのだった。

私が紅茶に溶かしたクスリにも気づかずに。






――それから数十分後。

「はぁ、はぁ……」

「どうしたの?」

「なんでも……ないで……す……」

田中くんはフラフラと立ち上がり、更衣室の方へ向かおうとした。
当然の結果だった。

私が盛ったクスリが効いてきたのだ。
何気なしに彼の背中に触れてみると、すごい熱を発していた。

「すごい熱……! ダメじゃない、ちゃんと休んでなきゃ」

「でも……おかしいな……なんでだろ……」

まだ開発中のED治療薬を健全な男性に試すのは初めてだったけど効果はてきめんだった。

今の彼はきっと数週間オナニーをしていない中学生のようにムラムラしているはず……。

試しに背中に触れた手のひらを腰のあたりに滑らせてみると、ビクンという大きな反応が得られた。


「いいから私に任せて。この時間ならB会議室が空いてるわ。今日はもう誰も来ないはず」

「すみません、ありがとうございます……」


「辛い時はお互い様でしょう?」

私は飛び切りの笑顔を浮かべながら彼を会議室へと導いた。





「ほら、ネクタイ緩めて」

「はい……」

熱に浮かされた様子で、手元がうまく動かせない彼の首筋に手をやる。
そしてネクタイだけでなく、ワイシャツのボタンも3つほど外してあげた。

「あ、あの……自分でぬ、脱ぎますから!」

「いいのいいの。あら……結構たくましい体つきなんだね? 田中くんって」

露出した肌はすでに桃色に染まっている。
私は右手をそっと忍ばせて、彼の心臓付近を手のひらで撫で回した。


「……ぁ!」

「すごく熱が出てるみたい。大丈夫……?」

ねぎらいの声をかけつつ彼の体を愛撫し続ける。
ただでさえ乱れていた呼吸が喘ぎ声に変わるのも時間の問題だった。

(効いてる効いてる……♪)

こみ上げてくる笑いを殺しつつ彼の体を弄ぶ。心なしか腰のあたりが切なく震えだしていた。


「レイ主任……だ、ダメですよ……こんなところを他の人に見られたら――」

「そうよね……じゃあ…………」

カチャッ

「え……」

「じゃあ見られないようにしちゃえばいいじゃない」


彼が驚いた顔でこちらを見つめている。
私が後ろ手にこの部屋に鍵をかけてしまったから。

再び彼に向き直り、心配そうな表情を浮かべながら頬を撫でる。

「田中くん、すごく苦しそう……もっとラクにしていいんだよ?」

「はい……」

手のひらに感じるのは汗でしっとりとした感触と火照りまくりの男性の肌……私の奥がじわりと潤み出すのを感じる。


「ここにはどうせ私しかいないんだからね」

「でも……あ、あの……恥ずかしいです」


「あれ? 男の子のくせに度胸ないんだ? ふふっ」

「……!」

その一言で彼の表情が変わる。戸惑うだけだった「男の子」から、野生を感じさせる「男」の顔に変わる。
でもまだ理性が残っているみたい……すぐにおかしくしてあげる。




「じゃあ意気地なしの田中くんの前なら、私が脱ぎ始めても問題ないよね?」

「えっ!」

驚く彼を無視して私はブラウスのボタンを外す。


「今日は暑いわぁ……」

パサッ

彼には見えない角度でブラジャーを外し、フロアに投げ捨てる。

「普通の男の子ならちょっと怖いけど、今の田中くんなら安心……って、きゃああああっ!」

気が付くと私は会議テーブルの上に押し倒されていた。
彼の顔が近い……!


「あんまり僕を誘わないでください……僕だって、僕だって!」

「結婚前なのにいいのかな? フフフフ……私は全然構わないけど」

「!!」

表情を曇らせた彼を畳み掛けるように言い放つ。


「前から田中くんのこと、気になってたし。どんな味がするのかなぁ……ってね?」

「レイ主任……それって……」


「やだ、聞こえちゃった? うふふ。エッチな顔になってきたね、田中くん」

「……」

明らかに迷っている。私の誘惑に乗るかどうか、彼は人間の皮一枚でこらえている。

(どこまで我慢できるかしら……?)

私は彼の首に両手を回し、抱き寄せるように力を込めた。
そして頬がこすれあう距離で、がけっぷちで迷っている彼を欲望の谷へ突き落とす一言を囁く。


(ねえ……好きにしていいんだよ……キミが欲しいの……)

たった一言。
私の声を聞いただけで彼の体が大きく震えた。

そして――

「う、ううぅぅ……主任っ!!」

「おいで……フフフ……」

そっとズボンを脱がしながら、彼のペニスに優しく触れてみるとすでに我慢汁でベトベトになっていた。

天然の潤滑油を指にまぶしながら、やわyわと肉棒を弄ぶと彼の口から気持ち良さそうな喘ぎ声が漏れ出す。

トロトロの粘液をペニス全体に伸ばしながら、私はそっとパンティを脱ぎ去る。


「ぼ、僕……ずっと主任とエッチしたくて……ひああぁぁっ!」

彼を戒めるように、ヌルヌルになった亀頭を私の茂みにこすりつけると、それだけで彼は果ててしまいそうになった
クスリの効果が素晴らしすぎる。
これなら何度でも交われそう……。

(レイって呼んでいいよ……今だけは……ね……?)

途切れ途切れの声を彼の耳元に届けると、私の体を思い切り抱きしめてきた。

すっかり熱を帯びた田中くんの自身を感じながら、私も快感の波に身を任せていくのだった。









「本当に好き放題やってくれたわねぇ……スカートが乱れちゃった」

「すみません……でも僕、もう我慢できなくって」

数分後、あっけなく果ててしまった彼が目の前でションボリしている。
何度も私の唇を求め、バストを揉みしだきながら腰をふる彼の姿は健気で可愛らしかった。
もちろんこれだけでも十分満足に値するのだが、ここからが私にとっての本番だ。


「田中くんも健全な男子だったんだね。でも……ちょっとまずかったんじゃない? あれ……」

私は静かに彼の背後を指さす。
ちょうど会議室に備え付けのスピーカーのあたりだ。
そこに目をやった彼の顔色が変わるのにそれほど時間はかからなかった。

「あ、ああああぁっ!」

「バッチリ録画できてると思うわ。フフフフ♪」

黒いスピーカーに隠れるように設置されている黒いデジタルカメラ。
そのレンズの脇に見える赤いLEDが点灯しているのは、スイッチが入っている証拠だ。

「こ、これは全部主任が……」

「それについては正解、と言っておくわ。ついでに言えば録画した画像はあの本体だけでなく、WEB経由で私の自宅のパソコンに送信されてるし、クラウドにも保管されてるの」

コロコロと笑う私とは対照的に、田中くんの肩がガックリと落ち込む。


「何故こんなことを……まさか僕をゆするつもりですか!」

「そんなケチなマネはしないわ。誓ってもいいけど、あなたの幸せを壊すつもりはないの」


「……」

「でもね、私が何を言ってもあなたは信じられない。そうでしょ?」

すっかり生気の抜けた目で私を見つめる彼の心情を見透かす。
田中くんは何も言わずに小さく頷いてみせた。



「この先何があっても、キミは私と関係してしまったことに負い目を感じ続けるの。結婚前の大事な時に浮気してしまった自分を許せなくなっちゃうの」

「や、やめ――」

私は、泣き出しそうな顔で取り乱す彼を強引に抱き寄せ、無理やり唇を奪った。

そのまま彼に体重を預け、さっきとは逆に彼を会議テーブルに組み伏せる。


「んふっ、美味しいキス……絶望に満ちたその表情がすごくそそるの……もっと食べてあげる」

「だ、ダメです主任! もうこれ以上は…………あああぁぁっ!」

彼の言葉を遮るように、そっと股間に指を忍ばせる。


「もうここは復活してるみたいね? 私の膣内、すごく良かったでしょ……」

「主任、あ、あああぁぁ……やめ、やめてえええぇぇ!」


「イヤよ。たっぷり弄んであげるッ」

冷酷に宣言してから、私の予想通り硬くなったままの彼自身を指先で包み込んだ。

さっきまでの受け身の愛撫とは違う攻撃的な指使い。左手と右手を別々に動かし、搾り取るように亀頭と睾丸を交互に弄ぶ。

「で、出ちゃう、はう、うああああぁぁっ!!」

あっという間に射精寸前まで登りつめた彼に追い打ちを掛けるように、左手を首筋に回して私の胸に顔を埋めさせる。

「田中くん、さっきは嬉しかったよ……私の事、好きって言ってくれたよね?」

そう言いながらも亀頭への責めは緩めず、バストの中でもがく彼の頭を優しく撫で続ける。
しばらくその愛撫を続けると、私の腕の中で彼の力が急激に失われていった。
もちろんペニスは張り詰めたままだ。

「ふふっ、おちんちん食べちゃお♪」

私はペニスの根本をしっかりと固定してから、彼をじっと見下した。
田中くんはまるで初めての行為におぼえる少年のような目で私を見つめている。

(男の子を動けなくしてからの逆レイプ……この瞬間がたまらない……)

私は彼に悟られないように、小さく体を震わせた。
そして――

「今度はじっくり田中くんを味わうからね……んっ!」

「ああ、入ってく、あ、ふあっ、ああああ~~~~~~~~!!」

一気に腰を落とすと、私の下で彼がじたばたと悶え始めた。
膣の入り口を思いきり締めた状態での挿入は刺激が強すぎたみたい。

「れ、レイ……しゅ……」

「じっとしたままで中を動かしてあげる」

その予告通り私は内部を意識して動かした。

「中があああああっ!」

「ほらぁ、もっと叫んじゃいなよ? おちんちん搾られて気持よくてたまらないんでしょ」

私はいわゆる名器と呼ばれる部類に入るらしい。
自分の体なのだから自由自在に動かせて当然だと思うんだけど。

彼の根本を締め付けたまま、ウネウネと先端部分を握りつぶすように膣内を動かす。
たったこれだけでほとんどの男は快感にのたうち回る。

しばらくしたらこのまま上下に腰を動かしたり、ゆっくりと円を描いてやればいい。
この刺激に耐え切れる男なんて出会ったことがない。

すると彼は苦し紛れに私の胸に手を伸ばしてきた。
その力のこもっていない両手首を、私は掴んでテーブルに押し付ける。

「何を勝手にさわろうとしてるの? あなたに自由はないわ……」

「レ、レイ……あ、ああぁぁ……」

彼の目に浮かぶのは支配される屈辱と喜び。
私に力で抑えこまれ、弱みも握られ、快感に逆らうことすらできない哀れな自分を受け入れられないでいるのだろう。

「このまま吸い取ってあげる……さあ、そろそろフィニッシュね?」

ペニスを強く締めたまま、私は淫らな腰使いを開始する。

「出ちゃうっ、ダメで、ああっ、い、いやああああぁぁ!!」

先輩とはいえ女子社員に抑えこまれたまま、圧倒的な快感に抱かれての射精。
彼はこのままMプレイでしか感じない体になってしまうかもしれない。
私は一向にかまわないけど。

「あなたの情けないところ、全部見ててあげる。だからもう…………無様にイきなさい」

「ふああっ、ホントに、うあ、ああああ~~~~い、イクッ! 出るうううぅぅぅ!」


ドビュッ、ビュルルル~~~~!!


二度目とは思えぬ盛大な射精。
テーブルの上で彼は何度も大きく痙攣してからぐったりとなった。

射精が収まりそうになってからも、私は膣内を緩めることはしなかった。
きっちり完全にイかせきるために……彼の肉棒が萎えるまで連続して精液を搾り取るのだった。





その次の日、昼休みに彼に呼び出された。
用件はだいたい察しがつく。


「しゅ、主任……お願いですから……」

きまり悪そうに田中くんが頭を垂れている。
先輩とはいえ女性に完全にノックダウンさせられたのだから無理もないけど、私はこういう雰囲気は苦手。


「昨日も言ったとおりよ。私はあなたの幸せを壊すつもりはないの。じゃあね」

彼にくるりと背を向けて立ち去ろうとした時だった。



「待ってください! お願いですから、また……犯してください……」

「あら……?」

これは予想外の展開。
消え入りそうな声で田中くんが懇願する姿を見て、思わずイきかけてしまった。

恥ずかしそうにうつむく彼の顎をクイッと持ち上げて、頬が触れ合う距離で彼の左耳に向かってささやいた。

(癖になっちゃった? いいわよ。また虐めてあげる。フフフッ……♪)


(了)