『遊びのつもりで』番外編




 静かな午後。僕はベッドの上で読みかけの本を読んでいる。


ガチャッ

「おにーちゃん、優美のお友達連れてきたよ!」

「わわわっ、いきなり!?」

 なんの前触れもなくドアが開いて、ふたりの女の子が僕の部屋に雪崩れ込んできた。

 片方は知ってる。おなじみの優美ちゃんだ。
 そしてもう一人の女の子は優美ちゃんの後ろに隠れながら僕を見つめている。

「ユキちゃんっていうの。可愛いでしょ」

「は、はじめまして……優美ちゃんのおにいさん」



 一目見ておとなしい子だと判る。
 真っ直ぐなセミロングの髪と、少し伏し目がちな視線が印象的な美少女だ。
 可愛らしいTシャツとミニスカートを履いてるけど、なんとなく優美ちゃんに似てるな。


「はじめましてユキちゃん。別に優美ちゃんのおにいさんってわけじゃないんだけどね」

 突然現れた二人の少女を目の前にして僕はそんな返ししかできなかった。
 うちの親がいない時に限ってこういうハプニングがやってくるのだ。


「それにしてもまた急な話だね……優美ちゃん」

 できればメールか電話をして欲しかったというのが本音。
 年下の女の子たちに見せたくないものがこの部屋にはゴロゴロ転がっているのだ。

 二人分のジュースを冷蔵庫から取り出してきた。
 お友達のユキちゃんは僕の部屋の中をきょろきょろと見回している。

「男の人のお部屋、初めてです……」

(うわぁ……申し訳ないなぁ)

 そんなことを感じつつも、ユキちゃんのおどおどしたしゃべり方が可愛く感じ始めてきた。
 積極的な性格の優美ちゃんとは正反対のリアクションだ。

「じゃあ何かゲームでもする? アクションものならあるけど女の子向けのはちょっと少ないかもしれな……」

「ゆ、優美ちゃんが『おにーちゃんのことくすぐってあげて』って……」


「えっ」

ポトッ

 思わずゲーム機のコントローラーを床に落としてしまった。
 そんな僕をじっと見つめてる大きな瞳。


「……あの、本当にいいんですか?」

「うっ、うん……いやいや! 急にそんなことを言われましてもっ」

 慌てた僕は優美ちゃんの方を向き直った。

(あ、すごい笑顔……こいつめ、全てバラしたな!)

 ニヤニヤして黙ったままの優美ちゃん。
 そして目の前で興味深そうの僕を見つめ続けるユキちゃん。

「おにいさん、いいですね?」

 彼女のうちに秘めた何かに気圧されたのか、僕は黙って頷くしかなかった。




 僕の承諾を得たユキちゃんは持参してきた小さなバッグから何かを取り出す。

「じゃあ、これ使います……」

「それは――!?」

 ユキちゃんが手にしているのは習字で使うような太い筆だった。

(筆プレイだと……ユキちゃん、おとなしそうな顔してなんという上級者!!)

 助けを求めるように優美ちゃんを見ると視線をそらされた。もはや逃げ場がない。

「おにいさんじっとしててください」

「は、はい……」

 ユキちゃんは僕の手首を優しく掴むと、ナイロン製の紐でベッドにくくりつけてしまった。

(手馴れてるぞ、この子!)

 外見のおとなしそうな印象とは裏腹にユキちゃんは素早く僕を動けなくしてしまった。
 そして身をよじる僕の腰にちょこんと座り込んで、シャツを半分だけまくりあげてきた。

「私の筆、柔らかくて気持ちいいって優美ちゃんが言ってました」

シュリッ……

「ぅくっ!」

 音もなく忍び寄ってきた筆先が乳首をかすめる。

(なんでこんなに、うああっ、くすぐったくて……息ができない!)

 唇を思いきり結んでいるのにやわらかな責めに屈してしまいそうだった。

「おにいさんにも気持ちいいって言ってもらえるかな」

 ユキちゃんは左手で僕のシャツの裾をめくりながら、乳首周辺をクリクリとこね回してくる。

 直接的な刺激に加えて、少女の体による圧迫感と暖かさであっという間に股間が張り詰める。

 僕の変化に気づいたのか、ユキちゃんが小さく笑う。


クシュッ、クリクリクリ……

(ああっ、なんて意地悪な筆さばきなんだああぁぁ!!)

 予想以上に柔らかな毛先が際限なく僕を責める。

 ユキちゃんは僕の左の乳首を敏感にしてから、今度は右の乳首に……移らなかった。
 そのまま筆先が滑って僕のおへそをほじりだす。

「ひゃはっ、ああぁ~~~!!」

「感じちゃって下さい、おにいさん」

 うっすらと微笑みながら僕を観察する視線は優美ちゃんと同じものだ。

 そうか、この子は優美ちゃんにとってくすぐり仲間なんだ。

 僕の反応を確かめるようにユキちゃんの筆が動き続ける。

(これはまずいぞ、絶対に狂っちゃう! この子は羊の皮をかぶった淫魔みたいだあああ)

 おへそを責めている筆はそのままに、ユキちゃんがそっともう一本の筆を取り出す。

 今度は小さな筆だ。その先端をぺろりと舐めて湿らせてから、彼女は魅せつけるように小筆を僕の右乳首に忍ばせた。


「あ、ああああぁぁ~~!!」

 さっきよりも強い刺激だった。筆が小さくなったぶんだけくすぐったさの密度が上がってる。

 しかもおへその筆がスルスルと滑って、今度は左の脇腹を――!

「あひゃ、ふああ、あああぁぁっ! ユキちゃんっ、あああ!」

「すごい敏感……続けてもいいのかな、優美ちゃん?」


「いいよいいよ~。ユキちゃんのテクでおにーちゃん狂わせちゃって!」

 優美ちゃんが少し離れたところで勝手なこと言ってる。
 それでも僕はもう気にならなかった。ユキちゃんの巧みな筆使いに体がビクビクと反応し始めていたから。

 優美ちゃんに了解を得たユキちゃんが僕に向き直る。そして静かに宣言した。


「じゃあ『いろは責め』しちゃいますね」

「なっ、なにそ……れええええぇぇっ!?」

 聞き終える前に太い筆が僕の右乳首に据えられた。

「まずは『い』から……」




 そして大きな動きで僕の体に文字を刻む。

「んああっ、あ、うあああぁぁ~~~!!」

 もがいてみても無意味だった。

 ユキちゃんに馬乗りにされたままくすぐったさでベッドに縛り付けられた僕。


「続けます……」

 うっすらと微笑みながらユキちゃんは楽しそうに筆責めを繰り返す。

 彼女の意のままになめらかな曲線を描く筆先。

 その都度顔を振ってもがく僕を見て、ユキちゃんが顔を寄せてきた。

(静かにして、おにいさん)

 近づいてきた小さな唇が僕の唇に少しだけ触れる。

 それだけで僕はだらしないほど脱力してしまうのだった……。




「今日は『と』まででおしまいにします……」

「そん、な、ぁ、ハァ、ハァ、ハァ……」


「ごめんなさい、おあずけです。でも次はもっと筆の種類増やしますから」

「も、もっと……?」

 ユキちゃんの言葉に戦慄する。二本の筆でさえこんなに喘がされたというのに!

 ゆっくりと何度も同じ筆使いを続けられると、体のほうが甘い刺激に順応してしまうみたいだった。

 ユキちゃんのいろは責めは残酷なほど僕をくすぐったく感じさせた。

 苦しいほどくすぐられているのにその先を求めてしまう筆先のテクニック。

 でもこれでいいんだ。このまま最後まで続けられたら絶対に狂っていたと思う。


「えー、おにーちゃんは二周目突入まで平気だよー!」

 僕達を眺めていた優美ちゃんがブーイングを飛ばしている。


「それはダメ。こんなに弱い男の人、いきなり全開で責めたら壊れちゃうもん……」

「そっかぁ。優しいんだねユキちゃん♪」

 さらっと恐ろしいことをつぶやくユキちゃん。
 おとなしそうな女の子なのに、本当に見た目で判断してはいけないな。


ツ……

「ふぐっ!

 呼吸を整えるために大きく息を吸い込んだ時、おとなしかった筆がまた動き出した。


「筆責めはこれでおしまい。その代わり優美ちゃんがしてくれなさそうなこと……今からします」

 ユキちゃんは軽く腰を浮かせると、少しだけお尻を後方へとずらした。

(あっ!)

 彼女のくすぐりテクによってすっかり硬くなってしまった肉棒が小さなお尻で潰された。

「うふふっ、気持ちよさそう」

「おああああぁっ!」

 ユキちゃんはうっとりした表情で僕を見下ろしている。
 前後に優しく腰を振って、我慢汁でベトベトになっているペニスをズボン越しに刺激してきた。

「えっちな本に書いてありました。こうやって体を倒して密着すると男の人はイキそうになっちゃうって……」

 さらに彼女は僕の脇の下あたりに手のひらを付いて、上半身をピッタリと合わせてきた。
 かすかな胸の膨らみとユキちゃんの吐息、そして洋服越しに感じる確かな体温。

(あああ、なんてことだ! くっつかれてるだけなのに漏らしちゃいそうで!!)

 ペニスへの刺激が物足りなくて自ら腰を突き上げたくなる。
 ミニスカートの下にあるユキちゃんのパンティのぬくもりを感じたい……でもそれをやったら確実に射精してしまう気がする。

(ここはガマンだ! 心を石のようにして――)


「もしかして我慢してます? 無駄なのに」

「えっ!?、ちょ、まっ……」

 不満そうに僕を見つめるユキちゃんが、腰から下だけをクネクネと波立たせてきた。

「ああっ、あっ、ああっ!」

「じゃあ一点集中で。ここだけ……今度はおにいさん自身を筆の先みたいに操ってあげます」

 その言葉通り、カチカチになったペニスを筆の先に見立てたユキちゃんは自分の秘部と亀頭を絶妙な角度でこすり始めた。

「だ、だめだよ、出ちゃう!」

「別にいいです。出して? 優美ちゃんの前で恥ずかしいことしちゃいましょう?」


「で、でもおおぉぉっ!!」

 優美ちゃんのほうをちらりと見る。ダメだ、絶対に助けてくれそうにない表情で僕を見てる。


「おにいさん、そろそろですね……」

「えっ、なに、が、ああああぁっっ、こ、ここれえええ!」

 小刻みな振動はやがて大きなうねりとなって、僕の体全体を揉みほぐしてきた。

 僕より体の小さなユキちゃんがこの快感を生み出している。指先までしびれるような甘くとろける快楽を流し込まれた僕は、ついに自分から腰を突き上げてしまった。

 柔らかくて暖かい彼女の秘所が亀頭を優しく撫で回すと、それだけで大量の我慢汁がパンツの中にしみだした。


(さっきどうやってくすぐられたか思い出してみて? おにいさん……)

 そしてとどめを刺すべく、ユキちゃんが自分のおでこを僕の頬にスリスリしながらささやいてきた。

 彼女の筆で乳首を、おへそをなぶられた。

 さらに可愛らしいキスで頭のなかを溶かされ、それから――

「うあっ、ああああああ~~~~~!!!」


ドピュルッ、ビュクッ、ビュルルルル!!

 叫び声と同時に僕は盛大に射精してしまう。

 自分の下でガクガクと痙攣する僕を見ながらユキちゃんは満足そうに微笑んでいる。


「クスッ、早かったですね。思い出しエッチでイっちゃいましたね」




「ハァ、ハァ、ハァ……こんなの絶対、我慢できな、いってば……」

 完全なる敗北宣言だった。

 優美ちゃんが見ている前で、着衣のままのユキちゃんに弄ばれてしまったのだから。


(くすぐったがりのおにいさん、次も楽しませてくださいね?)

 僕の体を縛っていたナイロンの紐をほどきながら、ユキちゃんは僕にしか聞こえぬようにそう囁いた。








(お友達連れてきたよ編 了)