今年も真夏日が続いている。
 猛暑のおかげでバイト先は目の回るような忙しさだった。

 そんな事情もあって、一般的なお盆休みとは少しだけタイミングをずらして、まとまった休みをとることができた。

 ただ、特にやることも決めてなかった僕は、約一か月前に優里さんから受け取ったメールを読み返していた。


 そして――、

「ついに来てしまった……」

 目の前に広がるのは閑静な住宅街、といった様子の街並み。

 先ほどのメールに書かれていた、差出人の住所に到着した。
 目の前にはオレンジの屋根と白い壁の、こじんまりした家がある。

 インターホンのボタンを押す前に、もう一度メールの内容を思い出す。
 ちょうど昨日の今頃、何気なくこちらから打診した内容に対して優里さんからの反応は素早かった。

(私と優美の二人で、精一杯おもてなししますね)

 もしかして僕からの返事をずっと待っててくれたのかな……などと妙に自信ありげな妄想をしてみたり、泊まらずに食事だけごちそうになって帰るべきだろうかと迷ってみたり。


「今ならまだ引き返せる。でも……」

 ここ数日、実は体が疼いて仕方なかったのだ。
 原因は、一か月ほど前に優美ちゃんに激しくくすぐられ続けたせいなのだと思う。人のせいにするのはよくないけど、それしか思い浮かばないのだ。

 それを彼女の母親である優里さんが癒してくれた。
 かけられた暗示のようなもののおかげで、しばらくの間はくすぐりに対して気にすることなく過ごす日々が続いたけど、逆にそれが禁断症状を呼び起こしてしまったのかもしれない。

 不意にビクンと体が震える時がある。

(ぅあああぁ、くすぐられたい、今の状態で優美ちゃんの、あの可愛い指でコチョコチョされたらきっと気持ちいい……けど、それもまた危険な気がする……)

 誘惑と葛藤。それらの迷いもあって、伸ばした指先がなかなかインターホンを鳴らさない。

 その時、玄関のドアが勢いよく開いた。

「やっぱりおにーちゃん!」

「うわああああっ、優美ちゃん!?」

 パアアっと顔を輝かせたと思ったら、まるでラグビー選手がタックルするみたいに、彼女が僕に体当たりをしてきた。

 とはいえ、体重が軽いので何ともない。僕はその小さな体を楽々受け止めて見せた。

「えへへ、おにーちゃん。会いたかったよぉ」

(か、かわいくなったなぁ……)

 スリスリしながら僕を見上げてきたまっすぐな眼差しがとてもまぶしい。

 僕の肩にギリギリ届くくらいの身長差。
 ふわふわの柔らかな髪。
 年下の可愛い女の子がなついてくれてることを嬉しく思う。

 でも油断してはいけない。
 こんなに無邪気な外見なのに、その卓越したくすぐり技術で何度も僕を翻弄した天使……小悪魔。

 さて今日の優美ちゃんは、夏らしくサマードレスというか、涼しげなワンピースを着ている。
 でも足元の黄色い花が付いたサンダルを見るとまだまだ子供なのかな、と安心する。

 そんな彼女に、突然ぐいっと手を引かれた。

「こっちだよ! ママもいるよっ! はやくはやくっ!」

 嬉しそうに笑いながら先に家の中へ入っていった優美ちゃん。


「あっ、うん。ちょっと待って、靴ぐらい脱がせてよ……」

 せかされながら僕は苦笑する。

(やっぱり子供だなぁ……それよりも問題は)

 この先には優美ちゃんのお母さんが、優里さんがいる……あの日、自分自身にされたことを思い出すだけで下半身が、わずかに疼いた。

「はは、いかんいかん……」

 あの日、優里さんは僕の顔に手を触れただけ。
 そして優しくささやいただけ。

 それなのに僕はイかされてしまった。
 局部への刺激などほとんど無しで、心の奥のほうが何度も犯されたのだ……

 慌てて邪念を振り払う。
 少し落ち着いてから、家の中に一歩足を踏み入れると、ほのかに香水の匂いがした。

(優里さんに対して、何か期待していないと言ったら嘘になるけど)

 廊下に漂う甘い香りに誘われるように、優美ちゃんの可愛らしいくすぐりと、優里さんの淫らな寸止めが頭の中で交互に入れ替わる。







「お邪魔します」

 リビングに入ると、優美ちゃんが笑顔でお迎えしてくれた。

「おにーちゃんいらっしゃい!」

「あ、あれ?」

 おかしい。
 さっきよりも可愛く見えるのはなぜだろう。

 照明の加減なのか、髪と肌がつややかに見えるのだ。
 それに来ている服も何となく大人っぽくて……

「もしかして、というよりも……優里さん、ですよね?」

「はい」

 僕の言葉に彼女は小さく舌を出した。
 声も仕草も優美ちゃんの真似をしていたのだ。

 優美ちゃんは何か見せたいものがあるらしく、自分の部屋で準備していると言われた。

「すぐに見破られてショックかも」

(実は一瞬気づかなかったなんて言えないなこれは……)

 もう一度優里さんを見つめてみる。

 普通に可愛い……これも人妻の魅力ってやつなのだろうか。
 見た目は年下なのに僕よりもお姉さんという現実。
 このギャップもそそられる。

 床にぺたんと正座しているせいか、ワンピースの裾から真っ白な太ももがチラリと覗いてる。できれば膝枕されたい。

「あなた、視線……わかりやす過ぎ」

「はうっ、すみません……」

 咎められてうつむく。
 だが彼女はといえば、まんざらでもなさそうに見える。

「久しぶりだから優美と見分けがつかなくなっちゃった?」

「……絶対わざとですよね?」

「さあ、なんのことかしら」

 優里さんは静かに立ち上がると、用意してあった紅茶セットにお湯を注いだ。

「ふふふ、あなたが来てくれてうれしいわ」

「いえ……」

 落ち着いた声色になった彼女の後姿に、思わず見とれてしまう。

 身長はそれほど高くない。
 でも相変わらず細身で、頭が小さいのでスタイルがよく見える。

 うっすらと化粧した白い肌と、控えめにくっついてるピアスがなければ優美ちゃんと姉妹だと言われても疑いようがない。それほどの童顔なのだ。

「今日はうちにお泊りしていくのよね?」

 優里さんが振り向くのと同じタイミングで、僕は無理やり視線を逸らす。

「は、はい……ご迷惑でなければ」

 何の迷いもなく口にしてから、ふと気づく。この時点で当初の予定が完全に狂った。
 食事だけいただいて帰るというつもりだったのに……僕の中でそれはすでに否定されていたらしい。

「そう、優美も喜ぶわ。あ、もしかしてアイスティーのほうがお好みだったかしら」

「いいえ、このままでいいです!」

 優里さんが淹れてくれた紅茶を飲む。
 香りがよい。
 上質なダージリンだと思う。

 もう一口いただく。


 だがカップの半分ほど飲んだところで、頭がぼんやりしてきた。
 目の前の優里さんの色香にあてられたせいだと思い、できるだけ平静を装う。

「どうかしたの?」

「美味しいです。でも、あ、あれ……おかしいな、僕……」

 すぐに消えそうもない、目眩にも似た感覚に耐え切れず、僕は音を立ててティーカップをソーサーに戻してから、座っていたソファに身を預けた。心なしか呼吸も荒くなってきた。

「す、すいません……優里さん……」

「あら大変」

 優里さんが僕の隣に腰を掛けて、何かをつぶやいてきた。

「……相変わらず可愛いのね。優美もきっと喜ぶわ。それに、私もね♪」

 最後のほうは上手く聞き取れなかったが、視界の端で優里さんが微笑んだ気がした。







「おにーちゃん……おにーちゃんってば!」

 ペシペシと頬を叩かれ、僕は目を覚ました。

「気が付いたみたいね」

「あ、優美ちゃ……ここは?」

 淡いクリーム色の天井と、大きめの窓のある部屋だった。
 ブラインドの隙間から光は差し込んでいるが、エアコンの効いた快適な空間。
 僕はおそらくベッドの上に横たえられている。

「どこって、優美のお部屋だけど」

「そっか……でもさ、なんというか、身動きが取れないんだけど?」

「そうなの?」

 不思議そうに僕の顔を覗き込む優美ちゃん。
 その瞳は、どこか悪戯な感情が押し隠されているようにも見える。

 目覚めてからすぐに気づいたけど、力を込めても指先がうまく動かない。
 思い通りに動かせないのだ。

 しかし両手と両足は自由だ。
 もちろん縄で縛られているわけでもなく。

「あー、まだお薬効いてるのかな」

「っ!?」

 その言葉に、急に背筋が寒くなった。
 まさか、あの美味しい紅茶を飲んでからすぐに目眩がしたのは偶然じゃなくて……

 優美ちゃんが僕に添い寝をするような体勢になる。

「ママとお茶したんだよね? おにーちゃん」

「それが何か……? あううううっ!」

 優美ちゃんがクスクス笑いながら、人差し指でわき腹をえぐってきた。

 くすぐったさに身悶えすることはできても、僕はまだ動けない。
 手足が縛られているのではなく、痺れているだけなのに!

「ホントに動けないんだ?」

「う、うんっ! だからやめ――」

「あーぁ、これじゃあ……当然くすぐられちゃうことになるよね!」

 優美ちゃんがいきなり僕のシャツをまくり上げた。

「な、なんで!? ちょ、ちょっと!!」

 さらに見せつけるように、指先をワキワキと動かしながら、そっと乳首に触れてきた。

「ひゃううっ!」

 それは久しぶりに味わう甘美な調べ。
 少女の指先がクリクリと乳首を弾き、舐り、弄ぶ。

「いい反応するよねー。おにーちゃん」

「あっ、わあ、ひい、あ、ああああぁぁ!」

 自然に足が突っ張り、指先が与えた刺激がペニスの先端に集中する。
 思い切り暴れてるつもりなのに、わずかに身を揺らすだけにとどまる。
 優美ちゃんは半身になったままで馬乗りになって、片手で僕を押さえつけ、もう片方の手のひらで僕を喜ばせにかかる。

「ほ~ら、こちょこちょこちょ♪」

「いぎ、いいいいいぃぃ!」

 みっともなく叫ぼうとする僕。
 しかし声すらうまく出せない。

 首筋から肩、肩甲骨から胸元、乳首からおへそまでを何度も小さな指が這いまわる。

(だ、駄目だ! こんなの続けられたら、僕しんじゃう、壊れちゃうッ、イキまくっちゃううううぅぅぅ!!)

 久しぶりに味わう優美ちゃんのくすぐりテクは新鮮で、僕に我慢を許さない。
 小指の先でおへその穴をくりくりとほじられ、跳ね上がった顎の先も丁寧に指先で崩されてしまう。

 上半身を抱きかかえるような姿勢で背中をくすぐられて悶えれば、首筋や耳の穴を舌先でレロレロとくすぐられてしまう。ほんの数分で僕は全身隙だらけにされてしまった。

「まだ参ったしないなんて、わがままだなぁ……おにーちゃん」

「ひゃぁ、はぁ、やめて、優美ちゃ、うあ、あああぁぁ!!」

ちゅ……う……

 小さくて、可愛らしい顔が僕の呼吸を乱す。叫びながら僕の意識がさらに深く犯されていく。
 だらしなく緩んだ僕の顔を見ても、優美ちゃんは手加減してくれない。

 全身を細く小さな体で包みこまれ、絶え間なく体の表面を刺激されたまま僕は悶え続ける……







 ほんの数秒間、もしくはもっと長い時間かもしれない。僕は完全に気絶してしまった。

 優美ちゃんのくすぐりで全身の力を抜き取られたおかげで体が重い。
 ずっとこのまま眠り続けたい。くすぐり中毒患者の末路だった。

 それでも目覚めたのは、鼻腔をくすぐるあの香りのせいだった。

(こ、これは優里さんの……香水……)

 目を覚ませば優里さんに会える。
 なんとか意識を取り戻した僕は重い瞼を開ける。

 すると目の前にいたのは――、

「ゆ、優美ちゃ、ん……?」

「あ、起きた! どうしたの。そんなお顔して」

 僕の声に反応した彼女がニコリと微笑む。
 片手には白いタオル、そして汗まみれだったはずの僕の体は彼女の手によって清められていた。

「今、優里さんの香りがしたから……」

 何気なく返事をしてしまった。
 すると優美ちゃんはニヤニヤし始める。

「うふふ~、あやしーなぁ。おにーちゃん」

「な、なにかなッ……」

「もしかしてママにこんなことされたかったの?」

「え……そんなこと……」

 すると優美ちゃんは片手で髪をかき上げた。
 ふわりと芳香が漂う。

「たしかにママの香水を少し借りたけど、なんでおにーちゃんはそのニオイを覚えているのかなぁ?」

「そ、それは……」

 否定する言葉も、説明する言葉も思いつかないうちに優美ちゃんの手のひらが僕の顔をやんわりと包み込む。

「あっ……」

「ふふふ、久しぶりだね。おにーちゃん♪」

ちゅっ……

「ふ、あぁ」

 ほんの一瞬、優美ちゃんからのソフトなキス。
 それなのに僕は、優里さんからもキスをされたように感じてしまった。

(や、やばいぞ……落ち着け、落ち着け~~~っ!!)

 必要以上にドキドキさせられたおかげで、また全身がじっとりと汗ばんでしまった。
 優美ちゃんは、枕のそばに置いてあった円形の容器を手に取った。

「クスッ♪ 今日はね、こういうの使っちゃおうかなーって」

「……何それ?」

「これはベビーパウダー。しってるよね? すっごいキモチいいんだよ~」

 軽く容器のふたをひねって中を見せてもらうと、白くて細かい粒が見えた。
 優美ちゃんはその表面にそっと触れる。彼女の指先が白くなる。

「さっきタオルで汗を拭いてあげたけどぉ、おにーちゃんのお肌をもっとサラサラにしてあげるね」

 白い粉が付着した十本の指が、ゆっくり近づいてきた。

「や、やめて……それ、なんかやば――」

「逃がさないもん♪」

 僕が身を引くより速く、優美ちゃんの指が襲い掛かってきた!

「いっぱい気持ちよくしてあげるぅ~」

 少女の右手は僕の左肩に、左手は僕の右わき腹に添えられている。 
 乾いた白い指先が静かに踊りだすと、僕の意識はあっという間に溶け始める。

「うふふ、エッチな声を出しちゃダメだよ~」

「うあっ、あああぁぁ! これ、気持ちいいよおおぉぉ~~~!!」

 喘ぐ僕の動きを制しながら、小さな手のひらは徐々に降りてくる。

「しょうがないなぁ。ほらほら、くぼんだところもクーリクリ♪」

 左肩にあった手が脇の下へ伸びてきた。
 同時に、右の脇腹にあった手のひらはスルスルと滑り降りて……トランクスの中へ侵入してきた。

「ひいいいいいいっ!!」

「前よりもくすぐるの上手になったでしょ、ふふふふ」

 くすぐりと同時に、純粋な快感が背筋を駆け上がる。
 脇の下のくすぐったさはあるものの、トランクスの中をもぞもぞと這いまわる手のひらのほうが数倍凶悪だった。

 ほどなくして陰茎をつかまれ、僕の背筋がびくっと震えた。

「ゆ、ゆみちゃ、駄目! そこはだめっ、おかひくなりゅうううう!!」

「じゃあもっとおかしくしてあげるぅ……」

 さらさらした指使いのまま、優美ちゃんは指先でペニスをコキ始める。

「あああぁぁ……」

 それは溜息が出るほどの心地よさだった。
 与えられる快感と同時に、急激に製造される我慢汁がドクドクいいながら彼女の手を汚す。

クチュクチュ、グチュッ、ジュプッ!

 特に、優美ちゃんの手で先端を撫でられるとどうしようもなかった。
 見る見るうちに射精感も高まり、くすぐりではなく直接的な性的な刺激に体が狂わされていく。

「ね、もう我慢しないでイっちゃお? 優美のくすぐりと、おちんちんナデナデに負けちゃおうよ、おにーちゃぁん……♪」

 勝ち誇ったような表情で、彼女はささやく。
 でもまだこの誘惑に負けたくない、一方的に無様なところを晒すわけにはいかない!

「もっとやさしくしてほしーの?」

シュッシュ、シュル、シュルル……

「うあ、ああああ! い、いやだ! いやなのに、これじゃ我慢できないッ、いく、イっちゃうよおおおぉぉ!」

 もう我慢できない。睾丸が上がり、玉袋が膨れ上がる感覚。
 細くて白い指先は、トランクスの中で容赦なく射精を促してくる。

 まとわりつくような感触に変化した優美ちゃんのテクニックに観念しかけた時だった。


「優美、何をしているの!」

 部屋のドアが音を立てて開く。優美ちゃんの手の動きが止まり、快感がおあずけされる。

「う、あぁ、たすかっ……た……」

 体の芯でくすぶる快感に僕は悶える。
 
 その隣で鋭い眼光を向ける優里さんに戸惑う優美ちゃん。
 やがて彼女は、その無言の威圧に屈してペコリと頭を下げた。

「ごめんなさ……ぃ……」







「すみません、優美がいきなりこんなことをしてしまって」

 優里さんは僕を抱き起しながら申し訳なさそうに言った。

「いいえ、僕は……」

「一度シャワーでも浴びますか?」

 すっかり汗だくになった僕をいたわるように彼女は言う。
 もちろんそれはありがたい申し出ではあったのだが、先ほどとは違う意味で僕の体は興奮し始めていた。

(ゆ、優里さんがこんなに近くで……)

 10センチも離れてない位置で僕を心配そうに見つめる瞳から目をそらせない。
 まるで優美ちゃんがそのまま大人になって、可愛らしさを研ぎ澄ませたような女性。

 何も言わない僕の心をくみ取るように、彼女はフッと笑った。

「それとも、さっきの続きをしてほしいのかしら……」

 優里さんはそばにあったパウダーの容器を傾け、少量の粉を手のひらに刷り込ませる。
 さらに僕を優しく押し倒し、白い粉をまぶした指先で体中を撫でまわした。 

「あああぁぁ……そ、れ……」

「ふふ」

 うっとりとした声が自然に口からこぼれてしまう。
 その様子を優美ちゃんにしっかり見られてるとも知らずに。

「おにーちゃんきもちよさそう……」

「優美、よく見ておきなさい。今からもう一段階、くすぐりに弱い男の子にしてあげる」

 優里さんの言葉にコクリと頷いてから、息を殺して優美ちゃんは僕をじっと見ている。

(あああぁ、はずかしい……でも、優里さんの指からは、逃げられそうにない……)

 白魚のような指先が、探るように何度も感じやすい場所をかすめる。

「ここかしら?」

クニュッ……

「ふあっ!」

「わかっちゃった♪」

 優里さんは静かに微笑むと、意地悪な手つきで何度もその周辺だけをなぞる。
 そのたびに僕の体にはもどかしさが蓄積されていく。

「うあっ、ああ、ゆ、りさあぁん!」

 寸止めされた快感に抗うように何度も彼女の名を呼ぶ。
 その声に反応して、優里さんの指先はさらに妖しく舞い踊る。

「すごい、おにーちゃん……ママのとりこになってるみたい!」

「狂いかけてる男の子は可愛いでしょう? だからもっと優しくくすぐって、壊してあげましょうね」

 ベビーパウダーを補充して、ますますサラサラになった指先が僕の背中を這いまわる。
 いつの間にか四つん這いの姿勢に誘導され、恥ずかしいところを二人に見られてしまう。

「おちんちんも、その裏側も全部見られてるわよ?」

「うあっ、ああああぁぁ!」

 両手をベッドにつけたまま、羞恥心に打ち震える。
 優里さんは両手の指を駆使して、肛門とお尻、玉袋を丁寧に責め抜いた。

(はやくっ、はやくしごいてえええええぇぇ~~~!!)

 ダラダラと我慢汁を涙のように流しながら、頭の中を快楽でぐちゃぐちゃにされながら僕は祈る。
 しかし優里さんは決して亀頭やカリ首には触れてくれない。
 指先で前立腺を狙おうともしない。完全に生殺し状態。

「もう少しくすぐらせて? お願いよ」

 にこやかにそう言いながら、彼女はワンピースとブラジャーを脱ぎ去る。
 そして四つん這い担っている僕の下半身を抱きかかえるように、身を寄せてきた。

ふよん……

「えっ……あ、あああああ!」

 肌に感じる温かさと柔らかさ。
 僕は自分のお尻に、優里さんのおっぱいが押し付けられたことに気づく。

「とびきり淫らにイかせてあげますからね……優美、彼の下に潜り込んで」

「え、いいの?」

「ふふふ、いいわよ」

 優里さんに命じられて、優美ちゃんが体を滑り込ませてきた。

「おにーちゃん……あはっ」

 ベッドのついたままの両手の間に彼女の顔がある。
 自然に目が合って、僕の恥ずかしさが頂点に達した。

「あ、ゆ、ゆみちゃん……見ないで……」

「イヤ♪ 見ててあげるぅ」

 そういいながら優美ちゃんの手がわき腹や乳首をそっと撫でてきた。

「あら、おしりの穴までヒクつかせちゃって、恥ずかしい子ね?」

 快感に波打つ背中にかけられた優里さんの声。
 そして――、

クニュ、クチュ、クニュウ、シュッシュッシュ♪

「うあっ、あ、なにをッ」

「おちんちん苦しいでしょ? だから、いっぱいくすぐってあげる」

チュクッ……

「あっ」

 包みこまれた……亀頭が、優里さんに。直接見ていなくてもわかる、優里さんの手のひらが全力で僕を射精に導こうとしている!
 それはフェラよりも優しくて、本番よりも淫らで、僕がどんなに悶えても絶対逃げられない快楽の世界の入り口だった。

「もっと力を抜きなさい。気持ちよくなれるから」

 ペニスが手の中でやわやわと骨抜きにされて、彼女に全てを操られる感覚がどんどん高められてゆく。僕はその命令通りに、優里さんの言葉に従う。

 白い指先がツンツンと弾くように亀頭を刺激したかと思えば、感じやすい裏筋をくりくりと弄び、くすぐり抜いてくる。

 蕩けるような感触でくすぐったさを惑わしつつ、男自身をまんべんなく弄び、僕を喘がせる。

 その愛撫が数分間続いたのち、優里さんの手がキュッとすぼまった。

「あ、あああぁぁっ、これすご……!」

「もうイっていいのよ。ほら、きっかけをアゲる!」

クチュウウウウウウッ!!

 雑巾でも絞るように、優里さんの両手がぬるぬると肉棒にとどめを刺してきた。


「出るッ、出ちゃいますっ、あ、ああああぁぁ~~~~っ!!」

ドプドプ、ビュクンッ! ビュルルルル~~!!

 射精の瞬間、優里さんが棹を丁寧にしごき上げた。
 カリ首や亀頭を手のひらで包み、優しく焦らしながら。

「おにーちゃんのお顔、とってもかわいいよぉ……」

 熱っぽい目で優美ちゃんが僕を観察している。
 恥ずかしさでいっぱいなのに僕はさらに、遠慮なく声を上げてしまった。

「ふあっ、ま、また出るッ! しぼらないでえええぇ~~~」

ピュルッ、ビクッビクッ!

 そしてまた、優里さんの柔らかな手のひらに搾り取られる……

「たっぷり狂わせてあげるからね……」

 射精した精液をローション代わりにして、優里さんは再びカリ首に指を這わせる。
 その極上のくすぐりは、あっという間にペニスを再び勃起させた。

 優美ちゃんにしっかり見つめられながら、優里さんのテクニックを無防備に浴び続ける。
 どんな男でも、きっと我慢することなんてできない。

 ガクガク震え続ける僕を、下から優美ちゃんがうっとりした目つきで眺めている。

(次は優美がおにーちゃんを気持ちよくしてあげるからね!)

 無邪気なその瞳は、まるでそう語りかけてくるかのようだった。





(了)










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