『ハンター対女王の結末』





俺の名はダイン。淫魔ハンターだ。

淫界に突入してから早半月。ようやく最深部に到達した。

数々の敵を蹴散らし、守護淫魔どもの誘惑を振り払いつつここまで来た。

しかし物語の終わりは近い。

今まさに、最後の砦である淫女王と対峙しているのだから!



「あはあああああああぁぁぁ!!!」

熱い息づかいと共に、俺の腕の中で淫女王の汗が飛び散る。

ここが勝負どころだとばかりに俺は腰に力をこめる。



「まだまだぁ! 満足するにはまだ早いぜ!!」


こんな言葉、もちろん強がりだ。

俺の体はすでに大半の精力を目の前の女を責めることに消費している。

回復魔法を連発しても鎮まらないほどの性的快感をこの女王は俺に与え続ける。


相手をしているのは歴代最強と名高い淫女王パメラ。

紫の長い髪と褐色の肌のコントラストが美しい長身の淫魔。

そして甘い言葉、性技、膣のしまり、全てにおいて非の打ち所がない相手。


こんなやつに真っ向勝負で性技を競えばこちらもただではすまない。

俺は旅の途中で拾った数々の封淫具を用いて、女王を弱体化させた。

しかしまだ圧倒的に相手のほうが有利だ……気を抜けば一瞬でイかされる限界バトル!


「貴方のおちんちんが……奥に当たってる!!」


彼女の腕に力がこもる。

これはこの後やってくる急激な膣の収縮のサイン。


「おっと、その手は食わないぜ!」

サッと腰を引く俺。

しかし食いつきが早い!!

ジュプッ、という音が股間にまとわりつく。

そして後からやってくる穏やかな快感……

必死で膣から引き抜いた亀頭にジンジンとした痺れが残る。


「本当にすごい。フフッ……」


「なにがおかしい!?」

今まで以上に魅力的な笑みを浮かべる淫女王。

俺の勝利は間違いなく目前だ。

しかし……なんともいえない不安が俺の胸に広がった。

それほどまでに無邪気で無防備な笑みをパメラは浮かべているのだ!


「私、このままイかされちゃうのよね……?」

「当たり前だ! 俺が最期の相手だということを誇りに思え!!」

この期に及んで命乞いか。

しかし彼女の真意はそうではなかった。


「ふふっ、そうね。私、貴方が好きになっちゃったみたい」


「なっ……!!」


思いがけない言葉に絶句する俺。

今までも敵がこちらを油断させるために愛を囁いてきたことはあった。

そんなときは一笑に付して、声も出せないほどのピストンをお見舞いしてやるのだが……

この状況でそんな言葉を発してくる女王に、正直なところ俺は当惑した。


「いったい何をたくらんでる……パメラ!」


ぐいっ!


さらに膣に深く食い込むおれのペニス。

その凶暴さにビクビクと反応しつつも、淫女王は笑みを絶やさない。


「さっきの言葉通りよ。貴方ほど信念を持って私に挑んできた人はいない」

息を切らせながらも俺から視線をはずさないパメラ。

頬を赤く染めて、絶頂がもうすぐだということを俺に知らせてくる。

俺は彼女のまっすぐな瞳を受け止められない……

吸い込まれるような純粋な思いを瞳が語りかけてくるからだ。


「そんな貴方になら負けてあげてもいいと思うの。でも、せっかくだから貴方と過ごした思い出を残したいの」


ちゅうっ♪


「ううっ……や、やめ……」


「大好きよ、ダイン」

嘘偽りのないパメラの言葉に、俺の理性が切れた。


ジワリ……


「うああああああああああぁぁぁー!!!!!!」

今までこらえていたものが一気に吹き上がってくる。

まるでグツグツと音を立てているかのような股間への振動。

や、やばい!!!


「さあ、来て……私の膣内で…………」


「やめろ、やめろやめろやめろおおおおおお!!!!」

そしてもう一度彼女が俺を抱きしめて、優しいキスをしてきた。



ビュクンビュクンッ!!


もう限界だった。

パメラのキスは勝負などどうでも良くなるほどに俺を幸せにした。


「ステキ……私のこと、好きになってくれたんだね」


「はぁっ、うあああぁぁぁぁぁ…………」


圧倒的な射精感で頭の中がしびれた俺は、しばらくの間痙攣したのちに気を失った。

不覚……無念…………

あと一歩まで敵を追い詰めたのに、敵の策略にはまってゲームオーバーだ。


ギリギリまで目を見開いていた俺が最後に覚えているのはパメラの優しい笑顔だった。









「…………うっ」

どれくらいの時間がたったのかは定かではないが、俺は目を覚ました。

まぶたが開くことを確認して、指先の感覚も確かめる。

大丈夫、普通に動く。痺れもない。


周囲の気配に警戒しつつ、俺はむくっと起き上がった。

体が軽い……俺は淫女王に敗北したはずなのに。


なぜか淫呪縛も何もない。

戦う前と同じ自分の体を不思議に思う。



「……ん?」

俺が横たわっていたあたりに、球状の物体と手紙が置いてあった。

手紙をそっと開いてみると、穏やかな筆跡……パメラからのものだった。


『親愛なるダインへ

 貴方のおかげで私は幸せな時間を過ごすことができました。

 ありがとう。

 バトルの中で口にした貴方への思いに偽りはありません。

 だからこそ貴方はあんなにも感じてくださったのですよね? 

 たくさん貴方の大事な精を浴びた私は、

 本来ならば貴方の魂をとろけさせて魅了するのが女王としての正しい姿でしょう。

 しかしそれはできませんでした。貴方を愛してしまったから――』


手紙はまだ続いている。

俺の視界が歪んでいる……なぜこんなときに涙が……?


『貴方に話したこと覚えてるかしら。
 
 貴方と生きた証が欲しいと申し上げたことです。

 私はあの言葉通り、貴方から授かった精を支配ではなく未来に変えました。

 それはこの手紙と一緒に置いた卵です。

 
 その卵は、貴方の愛情を糧に成長します。

 ある時期がくれば孵化すると思います。おそらく可愛い女の子でしょう。』


こともあろうに淫女王との間に子供を作ってしまったらしい。

床にそっと置いてある卵を手に取る。

不思議となぜか……落ち着く。

淫魔の卵とわかっているのに叩き割る気にならない。


「参ったな……」


俺は頭をかきながら卵を大事そうに服の内側に入れた。

心なしか、卵が暖かくなった気がする。

淫女王に愛されたハンター……協会に知られたら大変なことになる。

パメラからの手紙は最後にこう書いてあった。


『私の淫界は貴方がここを立ち去ったあと崩壊します。

 貴方にとっては任務完了ということになるでしょう。
 
 それが私からのプレゼントです。


 そして願わくば卵を無事に孵化させて、可愛く育ててください。

 貴方の未来を明るくしてくれると共に、人間と淫魔の架け橋となるような強い子に育ててください。

 わがままばかりですみません。

 
 貴方のことが大好きなパメラより   』




改めて周囲をうかがう。

もはや敵の気配はない。


「よし、帰ろう。地上へ!」


俺は手紙と卵を大事に持ち帰ることにした。




プロローグ 了