『魅惑のラッキーガール♪』










(選択肢 1)



 あくまでも柔らかな物言いではあるが自らの優位を隠そうとしない茄子。
 その表情が美しければ美しいほど、勇人の中に闘志が燃え上がる。

「ぜ……ッ、ううぅぅ……」

 抵抗の意思をはっきりと示そうにも快楽で手足に力が入らない。
 それでもなお首を縦に振る様子を見せない勇人を見て、茄子は目を細めた。

「なるほど。戦意はまだ衰えていないということですね」

 勇人に覆いかぶさっていた茄子は静かに体を起こす。
 それと同時に彼の脇に両手を通し、上半身を抱きかかえる。

(な、なんだ……!?)

 茄子に抱き寄せられ、甘い髪の香りに戸惑う勇人。

 しばらく呆然としながら、気がつけば彼はリング上に立たされていた。
 先程まで勇人の心のなかでもやもやしていた気持ちはどこか落ち着きを見せていた。

 手足のしびれや痛みもなくなっており、自分の体が試合開始直後のように感じられた。
 まるで茄子に抱きしめられたことで全快したように――。


「さあ、構えて下さい」

「!?」

 茄子の声にハッとする。
 そして彼女に促されるままに勇人はファイティングポーズを取らされた。

「なんのつもりだ……」

「せっかくですからあなたが得意な立ち技で圧倒してあげましょう」

 茄子はにこやかにそう言いながら腰を落とす。
 右手を前に出し、手のひらは勇人のほうへと向けている。左手は親指以外を軽く折って卵を包むように軽く握りしめている。
 さらに右足を少し前に出し、軽くつま先立ちになっている。
 それはまるで舞を踊るように優美な構えだった。

「後悔するぜ……」

 勇人は彼女をにらみつつ警戒する。
 茄子は右手の甲を勇人に見せながら自らの方へ手招きをする仕草をする。

「ちょうど私も少し体を動かしたいと思っていたところです」

「くっ……挑発しやがって」

 一見すると受けの構えのようであり、もしかしたら自分から飛び込んでくるのかもしれない……普段は感じ取れるものが茄子の穏やかな表情からは読み取れないのが不気味だった。


「最後には必ずあなたの口から『参った』と言わせてみせます」

「なんだと……!」


「降参させてあげます。さあどこからでもどうぞ♪」

 茄子の言葉が終わる寸前、弾かれたように勇人が前に出る。


「はああっ!」

 それは今日一番の鋭い牽制打。
 しかし、あまりにもスムースに体が動いたことに勇人自身が驚いている間もなく、茄子は迎撃態勢に移っていた。


「やぁっ!」

 茄子は勇人が突き出した拳の内側に右手を滑らせ手首を掴み、自らの方へと引き寄せた。
 さらに握った左手を突き出し、掌底を彼の右頬にヒットさせた。
 鈍い衝撃が勇人の呼吸を一瞬止める。

「ぐっ、こ、この……」

 軽く脳を揺らされて視界がゆがむ。
 それでも勇人は次の攻撃に移る。
 右の拳を固く握って至近距離にある美少女の左脇に向けてボディブローを放つ。

 カウンターに対するカウンター……普通なら回避できるはずがない死角からの反撃。

 しかし――、


「えいっ!」

 気迫の乗った小さな声。
 右の拳が茄子にヒットする寸前、鈍い衝撃が勇人の体を揺らした。

「ぐはあああっ!」

 勇人の渾身の一撃は空を切り、その代わりみぞおち付近に茄子の膝蹴りが命中していた。

(な、なんだ……今の動きは……ぁ!!)

 無防備な状態で急所に膝を入れられて体中の力が抜け落ちそうになる。
 思考がまとまらず状況が整理できない。

 勇人の頭部と腹部に連撃を見舞ったあと、茄子は軽やかなステップで彼と距離を取る。

 未だに動けない相手を見つめつつ、静かに呼吸を整える茄子。
 牽制の初撃を決められず、代わりに重い打撃を二発も食らった勇人はダメージを回復できない。

 彼の右頬に掌底をヒットさせた直後、茄子は勇人の気迫を感じ取った。
 同時に彼からの反撃を予測していた。

 そこで掌底を放った左手を突き出し、その反動を活かしながら、右膝でもう一撃入れることにしたのだ。


「ふふふ♪」

 優雅に微笑む茄子を見て、再び勇人の目に闘志が宿る。

「うああぁ、くっ! 全然効かねえなあああぁっ!!」

 痺れが抜け切らない手足に力を込め、前のめりになりつつ彼女へ立ち向かう。
 だがそれは自らを奮い立たせるための一言にすぎない。

「クスッ♪」

 伸ばした茄子の手の中に勇人の拳が吸い込まれてゆく。
 乾いた音を立てながら、かき集めた力を振り絞った拳が軽々と受け止められてしまった。

「な、なんだよお前……」


「動きがかなり鈍くなってきましたね」

 茄子は無造作に彼を引き寄せ、左手で彼の顎をクイッと上に向ける。

「あっ……」

「優しく封じ込めてあげます♪」

 勇人は茄子の瞳に魅入られたように動くことができなかった。
 仮に動くことができたとして、彼女に有効打を与えられる自信が殆どなくなりかけていた。


「ふふっ、心をボロボロにしてあげますね」

 ヒクヒクと震え始める勇人の目を見つめながら、茄子はその突き出された頬に向かって右手で平手打ちをした。

パンッ!

「ぶふっ!」


パンパンパンパンッ!

 今度は手のひらをそのまま右へ戻し、再び左へ……それを繰り返し往復ビンタへ移行する茄子。

 ひらひらと花びらが風に舞うように、白く細い少女の手が左右に動く。

 その度に炸裂音が生じ、勇人の顔が規則正しく弾き飛ばされる。


「あがっ、あ、やめ、ああっ!」

 リング上で鳴り響く乾いた音は何度も続いた。

 勇人の顔は流血させられることはなかったが、見る間に腫れ上がってゆく。
 なぜなら彼女は的確に同じところだけ狙って平手打ちを続けたからだ。


「どうです? 女の子に手も足も出ないこの状況は」

 数回目以降、勇人は平手打ちの回数が数えられなくなった。
 目の前の美少女に何度も何度も顔を殴られ、恐怖がどんどん上乗せされてゆく。


パンッパンッパンッ!

「ほらほらほらぁ! どんどん行きますよ」

「く、くそっ、ああ、やめろおおお!!」


パンパンパンパンッ!

「ぶふっ、あふ、あっ、や、やめ……」

「やめろ? 違いますよね」


パンパンパン!

「あが、あっ、ああ、ああああ!」

「何か言うことがあるんじゃないですか?」

 一旦手を止めた茄子は勇人の目の奥を覗き込む。
 彼は怯えたようなうつろな目で彼女を見返すことしかできない。

 何度も打ち付けられた平手打ちによって、すでに心が折られていることがわかる。
 手足は弛緩しており、反撃の意思を見せていなかった。

「素直に言えるようになるまで続けてあげましょう」

 茄子が微笑みながら静かに手を挙げると、慌てたように勇人が両手で顔を隠した。

「うわああああああああ、参った! うああああ、もうやめてくれえええ!!」

 その絶叫はマイクを通して会場内を駆け巡る。
 茄子の勝利がここに確定した。

 勇人の醜態にどよめく会場内。その声を背中に受けつつ、茄子は彼を優しく横たえる。
 さらに先ほどと同じように勇人の上に覆いかぶさる。


「よく言えました。ではご褒美です」

 彼の左耳に口を寄せて彼女は言う。
 ほっそりした左腕を彼の首に巻き付け、右手を股間へと伸ばす。
 その指先に触れたものは、数分前よりも怒張した彼のペニスだった。

「うあああぁぁ……気持ちいい、いいよぉぉ……」

 茄子の指先が試合用のパンツと彼の地肌の隙間に潜り込む。
 すっかり我慢汁でビシャビシャになった勇人のペニスを手のひらで味わいながら彼女はニッコリと笑う。

「格闘技で手も足も出なかった女の子にこんな風にされて嬉しいですね? フフフ」

クチュクチュクチュクチュ♪

「んあ、あ、あああああ!」

 カリを人差指と中指で挟み込まれ、親指で尿道をいじられると勇人は恥ずかしげもなく喘ぎだす。

 軽い侮蔑を含んだ茄子のささやき。
 だが勇人はすでに天国の入り口に導かれていた。

「ほら、もうあなたもお友達と同じです。可愛く蕩けたお顔になってきました」

 我慢汁でドロドロに濡れた指先を勇人に見せつける茄子。
 さらにその人差し指で彼の乳首を弄ぶと、さっきとはまた違った嬌声を上げ始めた。

 観衆が見つめる中、美少女による勇人の公開処刑が続く。

「おちんちんの方もそろそろ終わりですね。とびきり恥ずかしい声を上げてくださいね」

 彼の履いている試合用パンツが無造作にずり降ろされる。
 ゆらりと立ち上がった茄子は、完全に露出したペニスと自分にも屈した男を見つめながら小さく笑う。

 茄子は素足で勇人のペニスをそっと押さえ込む。
 その包み込まれるような穏やかな刺激が彼にとっては止めとなった。

「さあ遠慮なく……フフフフフ♪」

 そして数回、裏筋部分が足の指でくすぐられた後――、


「うあああっ、ああああ! イクっ、イくううううぅぅ!!」

ドビュ、ビュルルル~~~~~~~~~~~!!

 蓄積された快感に抗うことはできず、勇人は悶絶しながら断続的に射精した。
 そして何度か痙攣した後でグッタリと動かなくなった。

 同時に会場にゴングが鳴り響いた。

 茄子に惨敗した勇人の姿は後に全国に放映された。




(了)










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