『女神様の戯れ』




「この度の争奪戦、見事な活躍でしたね」

 耳に響く軽やかな声に誘われ、目を覚ました貴方に微笑みかけてきたのは、この国の誰もが忠誠を誓う豊穣の女神だった。

 争奪戦というのは、女神を称える儀式である。

 この国の豊穣と繁栄を心から願い、定められた期間内に功績を残したものは、女神の祝福を受けると言われている。

 そして今宵、儀式において他者より秀でた能力を発揮した貴方の夢枕に、女神が舞い降りたのである。


「貴方の勝利は必然……とはいえ、私の期待に応えてくれた努力に報いましょう」

 そよ風のように柔らかく笑う、包容力に満ち溢れた女神を前に、貴方は照れるしかなかった。

 彼女に見つめられているだけで胸が高鳴り、頭がぼんやりとしてしまう。女神に魅了された男性は全てこうなってしまうのだ。それに下半身も……


「愛しい貴方への褒美は女神の愛撫……この上なき快楽の世界へと導いてあげましょう」
 快楽の世界、という言葉に貴方は思わず反応してしまう。

 女神は小さく笑うと、右手の中指で貴方の股間を指し示した。


「おや、こんなに膨らませて……まさに、神をも畏れぬ豪胆さ」

 穏やかな口調で女神に軽く責められ、貴方は何も言い返せない。

 ゆったりとした彼女の衣装から除く真っ白な肌が貴方を幻惑する。正体不明の恥ずかしさもあって、貴方は黙り込んでしまう。


「すでに心と体は快楽を待ちわびている、という事ですか」

 女神がそっと貴方の体に触れると、不思議な事に着ていた服が全て消え失せてしまった。

 さらに女神は、流れるような動作で貴方の体をゆっくりと押し倒しにかかってきた。


「いいでしょう。まずは、その剛直を私の中へ――」

 何の抵抗も出来ないまま、彼女にのしかかられた貴方は、清らかな彼女の膣口にペニスが飲み込まれていくのを見守るしかなかった。


 ヌルリとした感触が貴方を優しく包み込む。
 女神の秘裂がゆっくりと、最大限まで膨らんだ怒張を覆い隠してしまった。


「んっ♪ ふふふ……女神の火処(ほと)へ招かれた感想はいかが?」

 挿入する瞬間、女神はわずかに艶やかな声を出してみせた。色気に満ちた声や動作を見せつけられた貴方は、ますます気持ちが高ぶってしまう。

 そして内部に招かれたペニスには、じわじわと絶妙な刺激が加えられている。


「私の中で暴れてる……こんなに硬くして、猛り狂っている」

 女神の言うとおり、包み込まれた貴方自身は、膣内で激しく悶え、震えていた。
 この時すでに射精間際に近い状態だったと言える。

 常に男を蕩けさせるように蠢く甘い刺激は、容赦なく貴方の心と体を揺さぶり続ける。


「クスッ、少々興奮しすぎではないですか?」

 清らかに奏でられる笛の音のような声。
 正気を保たんとして、貴方は抗い、首を横に振った。

 このままでは何も出来ないまま射精してしまう。

 いや、射精させられてしまう。

 せめて一太刀、男として意地を見せねばと、無意識に女神の胸に手を伸ばした時、

 女神の細い指が、貴方の手にそっと絡み付いてきた。


「さあ、その両手を私に預けなさい。こうすれば、自分から自由に動く事はできないでしょう。ふふ……」

 交わりあう指の力は強くないのに、どうにも離れそうにない。
 

「貴方の考えなどお見通しです。聖なる存在に、その手で触れてみたいのでしょう?」

 両手を封じられては、目の前で悩ましげに揺れる豊乳を堪能することはできない。

 しかし女神は貴方の動きを読んで、企みを阻んだ。


「何も不思議な事はありません。私と貴方は今ひとつに繋がっているのですから、心も丸裸……」

 動きを先読みする事など当然、と女神は言いたいのだろう。その言葉が終わると同時に、女神の膣内がキュッと窄まった。

 ペニスが甘噛みされ、快感が全身を包み込む。貴方は脱力してしまった。


「人の身でありながら、この肌に自ら触れようとは大胆不敵」

 脱力した貴方の体に、女神はゆっくりと味わうように指先を這わせてきた。

 乳首や脇の下などに細い指が掠めるだけで、感じてしまう。
 もはや貴方は声を押し殺すのが難しくなっていた。


「あまり感心できませんが……その勇気だけは認めましょう」

 魅惑の膣内がさらに複雑に変化した。
 肉襞がペニスを根元から奥へとさざめき、引き込むような動き。


「さあ、もっと奥へおいでなさい。女神の蜜が滴る場所で、心も体も甘く蕩けさせてあげましょう」

 腰を激しく動かすわけでもなく、あくまでもゆったりとした女神の動きに、貴方のペニスは歓喜し続けていた。
 粘液にまみれた肉襞でカリをめくられ、敏感にされた裏筋をねっとりと擦られ、感覚を溶かされる。

 終わりの見えない快楽の調べに、自然と腰が跳ね上がってしまう。

 魔性と呼べる快楽に貴方は本能的に怯えてしまう。その気持ちと真逆に、ペニスは硬さを保ったまま抱擁を待ちわびる。


「怖がる事はありません。私の中に溺れてしまえばいいのです。そして……」

 女神がクイッと左右に腰をひねると、膣奥が収縮してペニスを強く締め付けた。
 亀頭のみを集中的に弄るような動きは、まるで貴方を戒めるようだった。


「こんなにヒクつかせて……不埒な欲望には、相応の罰を与えましょう」

 穏やかな口調で女神は言う。そして小さな声で、すばやく何かの呪文を詠唱すると、貴方の体が熱くなった。


「快楽の鞭で、ペニスを甘く縛り付けてあげる……でも、精を勝手に吐き出す事は許しませんよ?」

 不意に女神がゆらりと腰を上げる。ペニスが外気に触れ、貴方もため息をつく。
 しかし何故か、膣内で強く締め付けられたままのように貴方は感じていた。


「出したくても出せぬように、射精を封じておきました」

 少しだけ意地悪な口調で、女神が微笑む。そして素早く再びペニスを膣内に飲み込んでしまった。

 包み込まれた感覚に声をあげようとした貴方を、女神の柔らかな体が押さえつけた。


「狂おしいほどの快楽に身を委ね、魂を焦がしながら全てを晒すのです。そのあとは、最高の快楽を約束しましょう」

 女神の腰がいやらしく前後に蠢き、しゃくり上げるような動きでペニスを弄ぶ。

 慌ててその細い腰を掴もうとしても、すでに手足に力が入らず、彼女の思うままに操られてしまう。


「限界まで快楽を蓄積させて、一気に全てを吐き出せば……」

 息を乱す貴方の上で、女神が微笑んでいる。
 そして目と目が合った瞬間、ペニスの根元と先端が絶妙な加減で締め付けられ、貴方は再び悶絶した。


「強い貴方でも、簡単に堕落してしまうかもしれませんね」

 計算しつくされたように甘すぎる刺激のせいで、思考がまとまらない……



 それからも、女神の膣内で貴方は幾度となく狂わされてしまった。

 完全に貴方の性感帯を掌握した女神は、射精に達しないギリギリの刺激を与え続け、貴方の精を一滴残らず吸い上げようとしていた。

 活かさず殺さずの快楽拷問に、いつしか貴方は指先すらまともに動かせなくなっていた。

「ふふふ、まさかもう限界ですか」

 グチュリと、蕩けきった膣内で淫らな音が響く。

 同時に貴方の全身に快楽の電流が走り、無意識に手足を突っ張らせて何度も痙攣した。
 それは静かな絶頂だった。

 快感に悶えるための体力すら尽きかけた貴方に、女神の手足がしっかりと絡みつく。


「でも射精はできませんね。そのまま何度でも空打ちしてしまいなさい。この翼で、貴方の全てを抱きしめてあげますわ」

 女神の背中に眩い光の翼が顕現する。

 すると膣内の戒めが解け落ちて、貴方は急激な射精感に襲われた。



「くすっ♪ ほら、イって……!」

 魅力的な微笑みに導かれ、貴方の魂は全く抵抗する事も許されずに骨抜きにされてしまう。無防備の魂が、女神の快楽まみれの指先でそっと撫で回される。

 同時に、女神の膣肉が今までで一番優しくペニス全体に絡み付いてきた!

クニュウゥゥゥゥ……

 中央部分はやんわりと包み込まれ、甘く揉みしだかれる。
 逆に亀頭と根元は強めに締め上げて、リズミカルに収縮する妙技。

ビクッ、ビクンッ!

 極上の誘惑に、たまらず跳ね上がった貴方を女神の翼が抱擁する。
 ねっとりと流し込まれ続けたのは、今まで貴方の体に蓄積された快感の全てだった。

 終わりなき快楽。その刺激に貴方は声すら上げることも出来ず、背中を弓なりに反らせて絶頂し続ける。


「もっと踊りなさい」

 連続する絶頂の切れ間で、女神がパチンと指を鳴らす。
 すると、射精の感覚はあるものの、実際には精液が噴出す事はなかった。
 貴方の体は、射精する寸前の状態に引き戻されてしまった。

 体は射精する直前に戻れても、一度イかされた心は簡単には元に戻らない。

「ふふ、苦しそう……逃げ場のない快楽に蝕まれてる」

 悶絶する貴方の体を、女神は嬉しそうな表情で優しく愛撫する。
 乳首を転がし、皮膚をくすぐりながら震えるペニスを膣内で蹂躙する。


「ほら、もう指先で体をなぞられただけでも、たまらないでしょう?」

 貴方の顔を覗き込みながら、女神が意地悪く微笑む。
 すっかり手足の力が失せた貴方に、魅了の魔法を重ねがけする。


「心と体、どちらが先に折れるのか、しっかり見届けてあげます」

 もう無理だと言い掛けた貴方に、女神は軽く唇を重ねた。
 ただそれだけで、甘美な気持ちで満たされ、貴方の抵抗する心は霧散してしまった。


「せいぜい私を楽しませて下さいね。うふっ、ふふふふふふふ♪」

 女神の微笑みに魅了された貴方は、彼女への想いを胸に再び精を放つ。

 度重なる射精の結果、貴方の肉体は快楽の虜に成り果てていた。

 しかし恐れることなど何もない。

 貴方の身に快楽が満ちる時、肉体も魂も大地に還るだけなのだから。





(了)










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