絢ちゃんに肩を借りて立ち上がった僕は、なんとも言えない気持ちのまま更衣室へと向かった。
 更衣室のレイアウトはシンプルで、縦長のロッカーが並ぶ中央通路に細いベンチが二つ並んでいた。
 そこへ腰を下ろし、汗を拭いたあと、力が入らない右手でタオルを握り締める。

(遊びとはいえ悔しいぞ。絶対勝てると思ったのになぁ……)

 そんなことを頭に思い浮かべると、胸に突き刺さった彼女の言葉が疼きだした。

『おにいちゃん、絢が負けるって決まってたわけじゃないでしょう?』

 確かにそうなのだ。侮っていた。それは認めるしかない。
 年下の絢ちゃんに後れを取ることなどありえないという慢心と、男が女に負けるはずがないという傲慢さ。

 その二つをあっさりと彼女は打ち砕いた。
 テニスで翻弄され、コート内をさんざん走りまわされた。
 小一時間も絢ちゃんに翻弄され続けたおかげで、全身が脱力感でどっぷり染まりきっていた。

「くそっ!」

 備え付けてあるスチール製のロッカーを拳で叩いてみたものの、大きな音がすることはなかった。
 緩んだままの筋力では破壊衝動すら表に出すことも出来ないのか……と落胆しかけたとき、更衣室のドアが開いた。

「八つ当たりはよくないなぁ~、おにいちゃん」

「っ!!」

 見られていたのか。思わず僕は眼を伏せた。

「ふ~~~ん……悔しいんだ?」

「だ、だったら何!?」


「うふふ、男の子だな~って思ったの!」

「くっ……」

 いたずらの現場を押さえられた子供を視線で追い詰めるように、絢ちゃんが僕の顔を覗き込んでくる。

「でもぉ、そういうことしちゃいけないよね? 負けちゃったのはおにいちゃんでしょ」

「ううぅ……」


「年下の絢になら勝てると思って、序盤から飛ばしすぎちゃってバテバテになったのはおにいちゃんだもんね?」

「そ、そうだよ!」


「おにいちゃんのサーブ、すごく強かったよ。でもそれだけだったね?」

「……」

 もはや返す言葉もない。それよりも、自分自身の心がジワジワと締め付けられていくのを僕は感じていた。
 言葉尻は優しい彼女の言葉が、ゆっくりと僕の自由を奪っていくみたいで――、

「えっ……んぶううっ!?」

 突然視界が真っ暗になる。同時に、首から上に重圧を感じて、さらに甘酸っぱい香りに押しつぶされた。


「お・し・お・き、はじめちゃおっか?」

 真っ暗な場所に追い込まれた僕の耳に、絢ちゃんの声が降り注いできた。
 このとき、まだ僕は状況が把握できていない。

「な、なにを……うううぅっ! ん、んうううううっ……」

「何って、おにいちゃんの大好きな絢のお尻だよ?」

 息苦しさの中、ようやく僕は自分の置かれた状況を理解した。

 おそらく、僕が彼女の言葉に打ちのめされて、うなだれた隙をつかれて押し倒されたのだ。
 そのまま僕の胸の上に座って、すばやく顔の上までスライドしたのだろう。
 後頭部にベンチの硬さを感じる。
 そして暗闇の正体は絢ちゃんのショーツとお尻……!

(あああぁぁ……っ!)

 今感じているのが彼女の体温で、布一枚隔てた向こう側が美少女のおまんこで……しかも甘酸っぱい香りまでしている。
 ひどく屈辱的なはずなのに、瞬時に興奮へとすり替えられてしまった。

「あはっ、おにいちゃん? 呼吸荒いよ……くすぐったいよぉ」

 絢ちゃんがクニクニと腰を揺らして、僕の上で楽しそうに微笑んでいる。
 僕はあまりの恥ずかしさに、叫びながらジタバタと手足を動かして抵抗した――はずだった。
 しかし実際は、疲労困憊の手足が僕のいうことを聞くはずもなく、ピクピクと小さく痙攣するのが精一杯だった。

「抵抗しても無駄だよ~。さっきスタミナは奪っちゃったんだから。それよりほら、すぐ動けなくなっちゃうでしょ」

「うっ、ううううーーーーーー!?」

 彼女の言うとおり、僕のささやかな抵抗は見る見るうちに弱くなっていった。
 顔をつぶしている可愛いお尻を押しのけようとしても力が入らない。
 絢ちゃんがグリグリと腰を軽くひねるだけで、僕はもうぐったりするしかなかった。


「おとなしくなった? じゃあご褒美だよぉ……」

 細いベンチの上、僕の顔の上に座ったままの姿勢で絢ちゃんがゆっくりと足を伸ばしてきた。
 少し蒸れたソックスが、ふわりとペニスの真上に押し当てられた。

「ふっ、ふぐううぅぅぅぅ!!!」

 もうそれだけでおかしくなりそうだった。
 顔面騎乗のせいで興奮状態だったペニスが直接踏まれたのだから。

 絢ちゃんは、ほっそりした足を前後にスライドさせてペニスをゆっくりと刺激し始める。
 亀頭をかかとでジワジワと押しつぶしたり、両足の指の先を使って玉袋をフニフニと揉みしだく。

「ううううっ、ぁううううううーーーー!!」

「これくらいガマンできるよね? うんうん、それでこそ男の子だよ♪ それぇ――!」

 絢ちゃんはスライドする足を止めて腰を上げる。
 久しぶりの新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んだ途端、彼女の顔が目の前にやってきた。


「おにいちゃぁん……♪」

 キスできるくらいの距離で彼女が微笑んでる。
 左の肘を僕の顔の脇について腕枕をするように抱きしめながら、覆いかぶさってきたのだ。

 甘い吐息を浴びながら、僕の興奮が頂点に達した。


「ちち、近い! 顔が、あ、あやちゃ……ひ、ひいいいっ!? うあっ、あああああああああああああ!!!」

 だが次の瞬間、すっかり大きく膨らんだ僕の股間に、甘美なバイブレーションが襲い掛かってきた。
 絢ちゃんがジーっと見つめたままだというのに僕は情けない声をあげてしまう。

「うあっ、あああぁ、なにこれええええ!?」

「ふふっ、気持ちいいの?」

 絢ちゃんが淫らな笑みを浮かべている。
 彼女は僕に覆いかぶさりつつも、左足はフロアに付けていた。
 そして右手は僕の左手首を掴んで、抵抗できない状態のままで、右足でペニスを圧迫していた。

「それそれそれっ」

「ああぁ、あああ、あっ!」

 押し付けられたみずみずしい太ももが、くいっくいっとリズミカルにペニスを刺激する。

(でちゃ、でちゃうううううっ!!)

 目の前には可愛い絢ちゃんの顔、それに密着してる体温、彼女のニオイ、そしてペニスへの振動。
 この状況で射精感を押さえることなんて無理だ。
 平らなベンチに押し倒され、おしおきの名の下に身動きの取れないまま、年下の絢ちゃんに犯されてる……

 しかもここは男子更衣室なのに!
 相変わらず僕ら二人だけというか、バイトの管理人すら戻ってくる様子はない。

「こんな風に、絢のお膝でおちんちん踏まれてもガマンできるぅ? いっぱいグリグリされたり、絢の小さい足でフミフミされちゃうのって恥ずかしいよね? おにいちゃん」

 絶妙な太ももコキの最中に、甘ったるい声で絢ちゃんはささやき続ける。
 彼女を押しのけようにも、抵抗するための手足に力が入らない。

 この凶悪な抱きしめ太ももコキのせいで、全身が脱力したまま快楽に染まっていくのを僕は感じていた。

 そしてついに、

「うあっ、ああああ――ッ!!」

ビクンッ、ビュクウウウッ!

 自分では激しく、彼女を突き飛ばすくらいの勢いで僕は腰を跳ね上げた。
 だが実際は彼女に抱きしめられたまま、小刻みに痙攣を繰り返しながらの射精。


「ん~? なんか今、ビクンビクンってしたよね」

「はぁ、はぁ、ぁ、絢ちゃ……」

「ちょっと確かめま~す」

(く、くそっ、恥ずかし……見ないでくれえええええ!)

 それは声に出せない叫びだった。同時に、股間がジワリと熱くヌルヌルになってる。
 おそらく密着している彼女にもそれは伝わっていることだろう。
 すぐにハーフパンツの隙間から彼女の手が忍び込んできた。


「あああああぁぁ…………差し込まないで!」

「うわぁ、ヌルヌルしてる。絢のお手手が真っ白になっちゃうよぉ……おにいちゃん、サイテー……」

「ご、ごめん……ううぅ……」

 その数秒後、絢ちゃんは僕のパンツを完全にずり下ろした。
 そして男として見られたくない「惨状」を見つめながら、小さく笑った。

「イっちゃったね。いじめられて反応しちゃうんだ……ねえ、どうなの? おにいちゃん!」

「……」

 答えられるはずがない。
 だがそんな僕のわがままを許す彼女ではなかった。

 空気に晒されても、未だビクビクと悶えているペニスの先端に、細い指先が舞い降りた。
 しかも二本。

「ッ!!」

 何とかその刺激には耐えたものの、絢ちゃんの指先がそのまま滑り降りて、亀頭のクビレに絡み付いてきた。


にちゅっ――

 中指と人差し指が戒めるようにペニスをひねりこんでくる。


「ひゃううあああっ!」

 亀頭のクビレ、つまりカリ首に付着した精液の残滓を、指の隙間で拭うような動き。
 ドアノブを回すように、スナップを使って……その様子をわざと彼女は僕に見せ付けたのだ。

 視覚攻撃と同時にやってきた巧みな指コキに僕は簡単に悶絶させられてしまう。


「いい声もらっちゃった……それに、さっきより少し大きくなってきたね」

「ちょ、絢ちゃんっ!?」

 恥ずかしさで顔を覆い隠す僕を見つめる彼女の吐息が乱れてる。

 スカートの中に指を滑らせ、純白のショーツをするりと脱ぎ去った絢ちゃんがゆっくりとペニスの真上に腰を下ろそうとしている!


「……このまま食べてあげる」


 射精直後で、まだ半分程度の硬さしか復活していなかった肉棒が、そのたった一言で完全体になってしまった。

 充分な状態になったペニスを見て、満足そうに手を伸ばす絢ちゃん。

「いくよ、おにいちゃん。できるだけガマンしてね?」

 スカートに見え隠れする絢ちゃんのおまんこに、僕は息を呑む。
 蕩けきった少女の膣肉は僕を喜ばせるに違いない。

 イったばかりで抵抗力ゼロのペニスが、その甘すぎる刺激にどれだけ耐えられるのか――


クニュッ

「んくううっ!」

 苦しげに声をあげたのは、もちろん僕のほう。
 絢ちゃんはうっとりした表情でゆっくりと腰を沈めてくるだけ。

 ヌルヌルの肉棒を優しく包み込むであろう、おまんこのキスだけで気が狂いそうになる。


クチュ、ヌリュリュ……

「うあっ、んうううう、うっ、うううううううッ」

「もうちょっとガマンして、おにいちゃん!」

 励まされながら歯を食いしばる。
 先端はすでに彼女の内部で、トロトロの襞が絶え間なくいたずらしてくるようで――、


「苦しそう。でもまだ半分だよ、一気に全部食べちゃうね?」

くちゅんっ!

「ふあああぁっ!」

 腰から下全部が飲み込まれたような感覚。
 絢ちゃんは気を使ってペニス全体をすばやく絡め取ってくれたけど、それはもう僕の限界点だった。


「震えてる。じゃあ、もういいよ?」

 ギュッと彼女に抱きしめられた。


「いいいい、いっ、くあっ、ああああぁぁ~~~~~~~ッ!!」

 その途端、体中に広がる多幸感は、まるで毛穴の全てから媚薬を注がれたかのように僕を溶かしつくす。


ビュルッ! ビュクビュクビュクッ、ドピュウウウウウウウウウ!!

「~~~~~~~~~~~~~~ッ!?」

 この時ばかりは疲れ果てていた僕の手足も力を取り戻し、歓喜に打ち震えた。
 膣内に迎え入れられたペニスは、それこそ生産していた全ての精液を彼女に捧げてしまう。

 顔をクシャクシャにして悶える僕を見下ろしながら絢ちゃんが言う。


「テニスでも負けちゃって、おちんちん攻撃にも負けちゃうなんて……ぜんぜんガマンできないんだね。ふふふ」

キュウウウウウウッ……

 すっかり愛液まみれにされて、掴みどころがないほどヌルついているペニスが鋭く締め上げられた。

「ああああぁぁ、ダ、ダメ! 動かすのは駄目だよっ、あああああぁぁ!!」

「うふふふ、さっきからおにいちゃんばかり、ズルいなぁ。絢のことも気持ちよくしてね」

ズチュウウッ! ズチュッ、ズチュッ、ズプウ!

 僕の都合を無視して行われたのは、強引なグラインドだった。


「ひあああっ、そんな急にっ!」

 絢ちゃんは僕の首に腕を回したまま、腰を浮かせて左右に振りたてる。
 おそらく両足をフロアにつけて、安定させたまま何度もペニスを出し入れしているのだ。

 やがて腰と腰がぶつかる音は消えて、ペニスの先端から中ほどまでが何度も膣壁こすり付けられるようになった。

(き、気持ちいいよおぉぉぉ……絢ちゃんの膣内、すごくヒクついてて、吸い付いてきてエッチだよおぉぉ……)

 それはまるで、宙に浮いたままで犯されているような感覚。
 絢ちゃんの体重を感じることもなく、膣内を浅く何度も往復することで快感だけが増幅してゆく。

「もしかして我慢してるのかな?」

グチュウッ!

「ふあああっ!」

 不意に強く腰を打ち付けられて、僕は悲鳴を上げた。
 その直後、じんわりと快感が体中に広がって上書きされてゆく……

「ねっ? 絢に抱きしめられたら、どんなことしたって無駄でしょ。はじめからわかってたのに……おバカなおにいちゃん♪」

 口を開けっ放しにして、よだれまで出して快楽に浸る僕へ、絢ちゃんが優しくキスをしてきた。

 小さな唇が重なる瞬間、体の芯が熱くなる。


「ふあっ、ああああ! 出るッ、また出ちゃううううぅぅ!」

 細い体に抱きしめられたまま、僕は何度も何度も更衣室で彼女に精を捧げるのだった。





(了)










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