『ギャルと仔猫』





 衣替えが終わってからしばらく経つ。今は中間テストの真っ最中だ。
 帰り支度を整えながら、僕は3つ前の席に座っている一人の女子を見つめていた。

 髪型はセミロングとボブの中間で、少し釣り目の強気な印象の顔立ち。
 日焼けサロンに通ったふうではなく、地黒というか……褐色の肌。
 いわゆるギャルと呼ばれるスタイルの、まあそんな子だ。
 イスではなく机の上に腰を掛けて、隣の女子と楽しそうに話をしている。

 彼女の名前は夏目優梨という。
 実は三年間同じクラスなのだが、一度も言葉を交わした事はない。
 見た目だけで不良だと思い込みたくないけど、お近づきにもなりたくない。
 別に相手も僕の事はなんとも思っていないだろう。
 おそらく卒業までこのままお互いに空気のような関係でいるはずなのだが、

「おい仲村、あたしになんか用があるのか?」
「え……僕?」
「このクラスに仲村はお前だけだっつーの」




 記念すべき、三年目にして初めての会話がこんな感じだとは。
 感慨も何もあったもんじゃないが、質問には答えなくては失礼だろう。

「特に用事は無い」
「嘘つくなよ。あたしのことジロジロ見てたじゃん!」
「それは……」

 僕が言葉を濁すと、彼女は小さく笑ってからこちらへ近づいてきた。
 机から降りるとき、スカートがめくれてパンツが見えた……薄い紫だった。

「否定しないんだ? 視線には敏感なほうでね。見られてると気になるんだ」
「そ、そう……」
「仲村って、あたしより背がちっちゃいんだ?」
「なっ、別にいいだろ! それはっ」
「ふふっ、そういえば話をするのは初めてっぽい?」

 今頃気づいたか、鈍感なやつめ。
 僕はいつの間にか至近距離に侵入してきた彼女を睨みつける。

「それで、何? 理由次第ではあたしに見蕩れた事は不問に処すけど?」
「用事って程じゃないさ」
「なんだよ……ずいぶん思わせぶりっていうか、焦らすタイプなんだな」

 半分呆れたように彼女は言うが、正直なところ僕も上手く説明できない。
 ただ、見つめていた理由はある。
 僕が昨日の帰りに偶然見かけた、夏目優梨の行動が今でも目に焼きついているのだ。



 テスト期間中、テストが終わったらすぐに帰るのが普通だが、たまたま僕は生徒会に呼び出されて作業の手伝いをしていたのだ。それで帰りが遅くなった。
 学園からの帰り道、駅まで続いている商店街を抜けるわけだが、そこで彼女の姿を見かけた。

(あれは……夏目優梨? 何してんだ、こんなところで)

 紺色のブレザーに栗色の綺麗な髪は目立つ。
 髪の色だけではなく、客観的に見れば夏目優梨は美人系と言ってよい。
 そんな彼女がしゃがみこんで何かをしているのだ。

「ほぉら、こっちおいで」

 視線を落とすと、どうやら足元に擦り寄ってきた仔猫に向かって、指を伸ばしているように見えた。
 仔猫は嬉しそうに彼女にじゃれ付いていて、夏目優梨も嬉しそうだった。
 その時の表情がとても優しげで、それは普段僕が抱いていた彼女へのイメージを壊すのに充分なほどだった。
 


「おーい、聴こえてますか~?」
「あっ、ああ、うん」
「仲村って怖がらないんだな、あたしのこと……」

 とても意外そうに彼女は言うけど、昨日の事を思い出すと夏目優梨はそれほど悪いやつではないと考えられる。だから僕は派手な印象に惑わされること無く、彼女を正面から見つめることができるのだと思う。

「意味も無く怖がる理由はないと思うけど」
「そっか。ふふっ、気に入った! てゆーか気になるわ。ちょっと今から顔貸して」
「うわっ、お、おいっ……!」

 夏目優梨に手を引っ張られて、僕は教室の外へと連れ出されてしまった。



 そしてやってきたのは体育館裏。
 普通に考えれば決闘がこれから始まってしまうわけだ。

「くそぉ、簡単に負けないぞ! こう見えても僕だって」
「何を勘違いしてるんだか。ここなら誰にも邪魔されずに話せると思ったから連れてきただけなんだけど……」
「あっ、はい」

 くすっと笑ってから、夏目優梨は片手で髪をかき上げる。
 ふわっとした栗色の髪が揺れて、甘い香りが風に乗って僕まで届く。

「それで、本当に……何? 仲村クン」
「えっ……」
「ああ、喋り方がヘンだよね。いつもあたし、荒っぽい言葉を使うようにしてるから」

 驚いた様子の僕に弁解するように彼女は言う。
 いつしか僕たちは体育館の周囲にある石段に腰掛けて、並んで話し合っていた。



 周囲の印象で不良に思われていることや、本当はお酒やタバコも興味が無いことなど、色々と話してくれた。
 そして今は、三年間で僕と初めて話ができたことに、ちょっとドキドキしている……と。

「仲村クンの視線を感じたとき、あたし何かまずいことしちゃったかな~って……」
「ううん、別に何もされて無いよ」
「ホントに? 嘘つくとあとで怒るからね……」

 不安そうな彼女に向かって僕が頷くと、夏目優梨は普段は見せない可愛らしい笑顔を僕に向けてきた。
 僕はつい先程までとは違う気持ちで、彼女に見蕩れていた。

「良かったぁ……ずっと気になってたから」
「昨日の商店街の猫、可愛かったね」
「えっ、あれ見てたの」

 僕の言葉に彼女は恥ずかしそうに頬を染める。

「そっかぁ、見られていたんだね」
「そう言われると、こっちがなんだか申し訳なくなるね……」

 僕は素直に頭を下げた。
 盗み見していたわけではないけど、声をかけなかったのは事実。
 理由はわからないけど彼女にとっては隠しておきたいことだったのかもしれない。

「謝んなくていいよ。それは別にいいの」
「あ、いいんだ……」
「でも、その様子だと、最後まで見てなかったでしょ」
「えっ?」

 すると突然彼女は立ち上がり、僕の膝にまたがってきた。
 そして小さく笑いながら、両肩に手を添えて体重をかけてきたのだ。



「くっ……!」

 曇り空のせいなのか、コンクリートは冷たかった。
 押し倒された僕は真下から彼女を見上げる。

「あの猫、どうなったと思う?」
「どうって……わかんないよ」
「そっか。じゃあ仲村クンの体に教えてあげるね」

 夏目優梨は僕の左肩に置いた手を下へ滑らせ、ズボンのファスナーを器用に下ろす。

「なっ、なにを……」
「昨日の仔猫ちゃんね、私の指でくすぐられただけで泡を吹いて気絶しちゃったんだよ」
「えっ、それは……まさか」
「死んではいないと思うけど、気持ちよすぎて溶けちゃったみたい」

 美しい彼女の顔が正面にあり、妖しい雰囲気で語りかけられる。
 その時点で僕の下半身は過剰なまでに反応しており、夏目優梨の口元が次の言葉をつむぎだすのを待ちわびていた。

「同じ事をね、男の子にしてあげたいなーって思ってたんだ」
「う、やめ……僕は仔猫じゃない!」
「ふふふ、仔猫と同じだよ。同じ目をしてるもん。あたしに期待してる、その目……」

ちゅ、うぅぅ……

 彼女の小さな顔が僕に重なった。
 柔らかな感触が唇から広がって、甘い匂いと息遣いに心が酔わされる。

にちゅっ、くちゅ……

 僕が無防備になったのを感じたのか、細い指が直接ペニスにまとわりついてきた。

「先っぽ濡れてるじゃん」
「はうっ、これ、は……あっ、うあああぁっ!」

 くるりと中指が絡みつく。長い指がゆっくりと形を確かめるように何度か僕をしごいてから、人差し指と親指も追従してきた。
 親指は棹を固定するだけの役目で、彼女の人差し指と中指が僕を挟み、くすぐり、翻弄する。

「こんな風にね、二本の指で仔猫の頭を撫でてあげたんだ」
「いぎっ、き、気持ちいい……」
「へぇ……感じやすいじゃん。もっと可愛がってあげるよ」
「あああぁぁ……!」

 次第に大きくなるピチャピチャ音を感じながら僕はますます興奮させられてしまう。
 すっかり剥き出しにされ、敏感になったペニスからとめどなく透明な粘液が搾り出されてゆく。
 夏目優梨は僕を見下ろしながら、爪の先でカリ首と裏筋を交互に責め立てる。

クニュクニュクニュクニュ……

「首筋を何度も撫でてあげると弱いんだよね。猫って」
「うくっ、そ、そこはっ! ふああああ!」
「仲村クンも弱いね。おちんちんの、首筋♪」

 そしてまた僕に顔を近づけ、今度は舌先を伸ばして僕の唇にそっと押し当ててきた。

(うううっ、ヌルヌルしてる……夏目さんの舌が僕を犯してるみたいで!)

 トロトロの唾液を僕にまぶした後、舌先がぬるりと口内へ侵入してきた。

「キミも昨日の仔猫と同じ。あたしのおもちゃにしてあげる」
「うあっ、ち、違……」
「それに人を見た目だけで判断しちゃ駄目だよ。見た目以上にエッチが大好きな女の子だっているんだから」
「なっ、夏目さんが、そのエッチな……んあっ、あああぁぁ!」
「キミの鳴き声もかなりセクシーだよ。しつこくいじめたくなっちゃう」

 僕の右肩を押さえていた彼女の左手は、いつしか僕の後頭部を軽く持ち上げ熱いキスをサポートしていた。
 ぽってりとした唇はとても心地よくて、無意識に僕は彼女を求め始めていた。
 夏目優梨もそれに気づいたのか、優しく舐るようなキスを何度も繰り返す。

「ふあっ、な、なつ……」
「ユウリって呼んでいーよ」
「ぐあああっ、ゆ、ユウリ……その手つき、エロすぎるうううぅぅ!」
「ふふ、ありがと♪」

ちゅぷうううぅぅ……

 ひときわ深く、彼女の甘い舌先が差し込まれる。僕は小さくうめく。
 口の中は彼女に制圧され、僕の舌は抑えこまれたままチロチロと愛撫され、ペニスは相変わらず指先の甘い刺激に包まれたまま悶え狂ってる。
 オナニーでは絶対に到達できない刺激を受け続けたおかげで、肉棒は今までになく張り詰めて暴発してしまいそうだった。

「もう動けないよね?」
「あ、が……ぁ……」
「じゃあそろそろ脱童貞の時間ってことで!」

シュルル……パサッ……

 衣擦れの音がしてから、僕の顔に小さな布が被せられた。薄い紫色のように見える。
 さらに、ペニスの先が熱いものに包まれていく……僕はそこで我に返った!
 
「駄目ええええっ、駄目だから! その先は絶対――」
「却下。なにいってんの?」
「ま、待って! 心の準備……」
「遅いよ。仔猫ちゃん、もうあたしに食べられる寸前だよ」

 嗜虐的な視線で僕を見つめながら、夏目優梨は静かに腰を落としてゆく。

ク……プゥ……

 キスと似ているけど違うような、熱く甘い刺激に包まれていく。
 もはや僕の口からは拒絶の言葉は出ない。ただ黙って、じっと刺激に耐えるしかない!

「ぐううっ、あっ、ああああ!」

 さらに彼女の腰が沈み、完全にペニスが見えなくなる。
 そして見上げた視線が彼女に釘付けになる。

「いただきまーす!」

ぐぷううううううううっ!

「あああああああああああああああああああっ!!」
「んー、いい声♪ もっと鳴かせちゃおうっと」

 にっこり微笑みながら彼女は腰を振る。




ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅっ!

「あんっ、仲村、クン……おちんちん硬いし、その恥ずかしいアヘ顔もいけてるよ。キミってサイコーじゃん♪」
「熱いっ、あ、あっ、あああああ! 気持ちいいイイィィ! ふあっ、あああ! ユウリッ、ユウリ!!」
「ふふ、卒業までにあと何回、仔猫ちゃんを鳴かせることができるかなー?」

 淫らな腰使いと膣内の愛撫で、彼女と繋がったまま僕は5回以上果てた。
 長い手足を駆使して、夏目優梨は気が狂うほど僕を喜ばせた。

 特に彼女が両手で僕の顔を挟み、むさぼるようにキスをしながらクネクネと腰を振るテクニックが最高すぎた。あれをやられると、僕は何も言えなくなり、代わりに手足を突っ張らせてブルブルと震え続けるしかなかった。

「んんっ、んん!! ぷはぁ、ひっ、ふあっ、あああぁ! これ、す、ごいよおおぉ!」
「ねえ、もしかしてこういうの好き? もっとしてほしい? 別にあたしのこと嫌いでもいいけどさ」
「すす、好き! 好きですっ、この腰ふり、キスもっ、ユウリのことも、エッチも好きいいいいぃぃぃ!」
「あっそ、じゃあもっと気持ちよくしてもいいよね」

 ユウリは容赦なく腰を振り、硬くなったままの僕自身を何度も味わう。
 ふわふわの髪と甘い香り、彼女の感触を味わっている間……自分の意思でペニスを萎えさせるのは不可能だった。

 その日から僕は彼女の仔猫になった。

 毎日彼女の気まぐれに付き合い、どんな場所でもおもちゃのように扱われ、精を搾り取られた。
 クラスの皆は僕たちが寄り添っている姿に始めは驚いていたようだけど、数日も経つとそれも無くなった。

 ただ、僕は男の友人が三人ほど減った。
 理由は彼らが密かにユウリに対して恋心を抱いていたからだ。
 さんざんギャルだのヤリマンだの言ってたくせに、僕のことが羨ましくて仕方ないらしい。

 僕らがどんな関係なのか、クラスの皆は知らない。



(了)







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