『プレイガール、プレイドール』




 年が明けた。そして今日が最初の出社日だった。
 会社の行事というか、簡単な儀式(お参りなど)を済ませ、書類整理だけで定時を迎える。
 本格的な営業活動は明日以降ということになる。
 その夜は事務所の全員で例年通り新年会という流れなのだが、一次会だけで俺は宴席を抜け出した。
 時計を見れば21時少し前。これなら間に合う。
 俺は足早に電車のホームへと向かった。





 それから30分後、俺は目的地へ到着した。友人から誘われていた年明け最初の合コンは、少しオシャレなダイニングバーだった。
 店は貸しきり状態で、男女それぞれ十数名ずつが談笑していた。かなりハイレベルな容姿の女性が多いと感じる。その中で俺は今回の一番を探し出した。

 肩より少し長い艶やかなブラウンの髪。ボーダーのニットと、ワイン色のスカートが良く似合っている。派手さは無いが上質なコーデだ。
 優しさを感じさせ、男を安心させる大きな瞳。そして柔らかな笑顔。
 身長は女性にしては高いほうだろう。とにかくこれといった非の打ち所が無い。

 ただその隣に彼女と比較してずいぶん地味な印象の女性が張り付いて会話していた。
 身長は一番華やかな彼女より少しだけ低く、微妙に猫背。耳より少し長い黒髪にセルフレームのメガネというのが地味な印象を決定付けている。顔立ちは悪くないのに残念だ。
 そのせいなのか、会場で一番の彼女は男性と話をする兆候が全く無かった。

 正直、あの地味子が邪魔だと感じるけど、こういう時こそ二人まとめて会話するくらいの度量を見せ付けねば。

「こんばんは。はじめまして。お二人は仲良しなんですね」
「あっ、こんばんは! うん、いつも一緒なんですよ!」
「私は結菜ちゃんの付き添いですから……」

 地味子のおかげで目当ての子の名前がわかった。
 彼女は結菜(ゆうな)ちゃんという名前らしい。思っていた通り快活で素晴らしい声と、性格の良さが滲み出る応対だ。俺はますます彼女が好きになった。

「そちらが結菜さん。こちらは?」
「わ、私ですか。莉子、です……」
「りこさんって言うんだ。いい名前だね。結菜さんの付き添いなんて言わずに、今を楽しみましょう。遅れましたけど、僕は大垣って言います」

 俺の言葉に地味子(=莉子)はコクリと頷いた。
 それから他愛ない話をしばらく続ける。

「お二人はどんな事を趣味にされてるんです?」
「んー、そうですねー。お料理かな?」
「私は人形遊び、かな……」

 おいおい、その年で人形って……ドールとかフィギュアの意味か。それならありだな。
 一瞬だけ微妙な空気が流れたのを感じ取ったのか、結菜が口を挟んでくる。

「莉子! 大垣さんの前でそれを言わなくても」
「あ、そうだね……ごめんね、結菜ちゃん」

 慌てた様子で結菜に窘められ、莉子は申し訳なさそうに下を向いた。
 そこまで謝るほどの事だろうか。まあどうでもいいのだが。

「ははは、別にいいじゃないですか。好きなものは人それぞれですし」
「優しいんですね……」

 気のせいか、下を向いた地味子が顔を赤くしているように見えた。





 その一時間後、合コンもお開きとなった。俺は首尾よく二人のメアドを聞き出し(本当は結菜のメアドだけで良かったのだが)、会場を後にした。
 ところが……

「結菜ちゃ、二人とも同じ電車なの?」
「はい、そうです! 帰りも大垣さんとご一緒できて嬉しいね、莉子」
「そうだね……」

 電車のホームで俺たちは再び合流してしまった。聞けば結菜は俺の降りる駅の手前で降りてしまうけど、莉子はまさに同じ駅だという。
 結菜からのお願いもあって、夜も更けたことだし俺が莉子を自宅付近まで送り届けてやることにした。





 そして次の日。
 まだ出社前だというのに、ケータイがベッドの隣で鳴り響いてる。
 画面を見る。見たことの無い番号だが非通知じゃないところだけは褒めてやる、なんて気持ちで通話ボタンを押してみた。

「もしもし」
「昨日はありがとうございました、大垣さん。莉子です」
「あ、ああ……お礼なんていいですよ。おはようございます」

 モーニングコールの主は地味子だった。結菜ちゃんでないことが悔やまれるが、邪険にはできない。彼女たちは繋がっているのだから、好感度は下げないほうが良い。

「それでどうしたの? 忘れ物とかありましたか」
「いいえ、じつは相談事があるんですけど……」

 俺は内心舌打ちをした。朝早くから相談ごととか勘弁して欲しい。
 ただ、地味子の声は電話だと非常に綺麗に感じる。
 断れないというよりは、断りたくないような雰囲気だった。

「じゃあもし良かったら、今夜うちに来ます? お茶くらいしか出せないけど」

 仕事が終わればお互いに帰るわけで、それからでも悩み事の相談は遅くないだろう。
 なにより彼女と俺の家の距離は数百メートルだ。

「っ! いいんですか……」
「もちろんいいよ。昨日知り合えたのも何かの縁だからね」

 俺はにこやかに答えながら、速やかに通話が終了する事を願った。



 そしてその夜。
 仕事も終わり帰路に就く。地味子からの連絡はまだ無い。

(なにやってんだろうなー。仕事終わってないのか)

 もやもやした苛立ちを抱えたまま俺が帰宅すると同時にメールが届いた。

 莉子からだった。
 遅くなって済まないという旨と、今からこちらへ向かいたいという簡素な内容だった。
 仕事場から直接来るらしい。
 俺は自宅の住所を彼女に教えた。

 一時間も経たぬうちに、俺の部屋のチャイムが鳴った。
 モニターで彼女を確認してから解錠する。

「こんばんは。あれ?」

 目の前に立っていたのは地味子、のはずだった。
 しかし昨日とは様子が違い、やり手のOLといった雰囲気。
 髪型は変わっていないが眼鏡をしていない。
 そしてしっとりと濡れているように見える黒髪の毛先。
 赤茶色のコートの下は黒いニットで、胸のふくらみがしっかりとわかるようなラインを描いている。そしてグリーンのミニスカートから覗く脚も美しく感じた。

「あ、あの……何か変ですか、私」
「い、いや! そんなことないよ。ただ昨日と少し印象が違うなーって」

 首を傾げる彼女に向かって慌てて答えつつ、部屋の中へと促す。

「お邪魔します」

 言葉短く彼女は言うと、着ていたコートを丁寧に畳んで自分の脇へ置いた。
 俺がコーヒーか紅茶を用意すると告げると、彼女は紅茶を選んだ。
 そしてカップに口をつける様子を、俺は観察していた。

(こいつ、本当に昨日と同じ女か……?)

 おそらく何も変わっていない。しかし、となりに結菜がいないというだけで、眼鏡をしていないというだけで、ここまで印象が変わるものだろうか。
 華やかさは一歩譲るとしても、それ以外は友人である結菜と比べて引けを取らない。今日は背筋も伸びている。俺は彼女に対する認識を改めた。

 莉子は視線をテーブルに落としたまま、上品に紅茶を飲んでいる。
 いつまでも黙り続けているわけにも行かないので、俺は本題をぶつけてみた。

「それで相談事っていうのは?」
「はい。実は……結菜ちゃんにまた怒られちゃって」

 おとなしく静かな口調だが、この部屋は昨日の会場ほど賑やかではないので充分声が伝わってくる。

(また……?)

 短い言葉の中に残るかすかな違和感。
 その正体がわからないまま、俺は彼女に次の言葉を促した。

「そうなんだ。ええと、それはどんなことで?」
「えっと、結菜ちゃんが言うには『また莉子に男子を取られた!』ってことなんですよね」

 もしかして俺が莉子を自宅付近まで送り届けたってことか。
 その程度のことで結菜ほどの美貌を持つ女性が愚痴るのだろうか。疑わしい。

「よくわからないな……」
「大垣さんにはわかりませんよね。でも、これで去年から数えて十回目なんですよ」
「えっ?」

 十回目? 何が……そう尋ねる前に、彼女の手がそっと俺の手を握り締めてきた。




「莉子ちゃ――」
「大垣さん……私のこと、最初に会ったときに地味子だって思いました?」
「ッ!!それは……」

 彼女の手が、きゅっと俺の指を握り締める。
 白くて細い美しい指だ。透明感のあるピンクのマニキュアがキラキラ輝いて見えた。

「素直に言ってくれて良いんですよ。そういう風に見えて当然ですから」
「いや、そんなことないよ。莉子さんだって魅力的だし――」
「結菜ちゃんよりもですか?」
「っ!?」

 気づけば、彼女と俺の距離は十センチ程度にまで近づいていた。
 第一印象は強烈だ。俺は彼女を、結菜を手に入れるための踏み台にしようと思っていた。
 その程度の認識だったのに、つい先ほどその印象を自分自身で否定してしまっている。

 莉子はそんな俺の気持ちを見透かしたように、フッと小さく笑った。

「昨日みたいな飲み会で、男の人が真っ先に考えるのは結菜ちゃんみたいに可愛い女の子をどうやって口説くか、落とすかなのではないですか?」
「……」
「そのために私に近寄ってくる男の人、多いです」

 彼女は握り締めていた俺の指を解放すると、そのまま両手を俺の肩に置いてきた。
 正面から向かい合う。その事に俺は一抹の罪悪感を覚えていた。

「莉子さん、お、俺はッ!!」
「私、結菜ちゃんとは本当に仲良しで……よく勝負したりするんです」
「え……」
「いかに効率よく男の子をゲットできるかどうか、をです」

 俺は絶句した。今、こいつ……なんて言った?
 男漁りなど、それは確かに合コンに来るくらいの度胸はあるだろうけど、あの会場で輝いてた結菜と張り合おうとするなんて。

「意外だと思っていますよね。そんなの勝てるわけ無い、結菜ちゃんが圧勝するって」
「い、いや……」
「でも、実際は逆なんです。彼女より私のほうが勝率高いんですよ」

 そう言いながら、彼女は右手で再び俺の手をふんわりと握ってきた。

「な、なにを……ッ!!」 
「私の体、触ってみませんか?」

 そして自分の手で、俺の左手を胸元へと誘導してくる。
 黒いニットの上からはっきりと存在を主張するバストへ、後ほんの少しで触れることができる距離へと……

「無理にじゃないですけど、大垣さんのズボンが膨らんじゃってますね……まだ何もしてないのに不思議」
「あっ! う……うぅ……」

 さらに彼女は、座ったままで左足を少し持ち上げて見せた。
 形の良い膝の先が、本当に少しだけペニスを小突いてきたのだ。

 じんわりと広がる快感の波紋。
 彼女が投じた小さな石が、無限に広がってゆく。
 しかも二度、三度と膝先で股間を撫でるように刺激してくるのだ。

「結菜ちゃんのことを思っているなら、私の体に触ったところで特になんとも無いはずですよね。ほら……」

ふよんっ……

「ああぁ、うあああぁぁ……」
「でも興奮してる。すごくしてる……それが何故だかあなたにもわかっていない。だからもっと――」

 脚で股間を刺激されながら、手のひらをバストに押し付けられる。
 そして上気した顔で彼女が俺の目をじっと見つめてくる。

(我慢している心が、溶け出しているみたいだ……こんなの、うあああ!)

 数秒後、俺は彼女の誘惑に負けた。
 黒いニットの上から自らの意思でバストを揉み、同時に股間を彼女の膝先に擦り付けた。

「き、気持ち、いいぃ……」
「ふふふ」

 やがて彼女は、膝先に密着した俺の股間をなぶるように、左右にジリジリと蠢かせてきた。

「うあっ、そ、それ……たまらない!」

 敏感にされた部分を巧みに刺激され、俺の手に自然と力が篭もる。

ふにゅう、ぅ……

 指先が柔らかな彼女の胸に埋もれる。それがまた輪をかけて俺自身の中へ快感を生み出すきっかけとなる。

「あんっ……思ったより優しい手つき、ですね」

 少しだけ勝ち誇ったような、にこやかな表情で彼女は俺のわがままを受け入れてくれた。


 俺は求め続けた。彼女の膨らみ、その柔らかさを。
 指先に力を入れてもその形は全く変わらず、むしろ芯に近づくほど弾力が増してくるようだった。

「この手つき、遊び慣れてますね。悪い人……」

 蔑むように彼女は言うが、悪いのはこの凶悪なバストだと俺は思う。
 しかも一方的に俺が揉んでいるわけではなく、逆に彼女の美脚によって股間を弄り回されているのだ。興奮しないで済むはずが無い。
 それに、もしこれを生で味わったら……

「はぁ、はぁっ」
「でも、何故そんなに息を荒くしてるの?」

 言える訳が無い。
 昨日まで地味子と決め付けて、格下に考えていた女の子に興奮してるなんて。
 その体、バストと膝コキに心が蕩けそうになっているなんて。

「私みたいな地味な女の子が好みというわけじゃないでしょう。ふふふ」

 いつしか俺は両手で彼女のバストを揉みしだいていた。
 だがそれが彼女に快感を与えるためではなく、自分自身がその感触に酔いしれる事になろうとは……興奮しきっている顔を、格下の地味子に見つめられる事になろうとは思っていなかった。

 しばらくの間、俺に身を任せていた彼女が急に膝立ちになった。

「ベルト、外してあげます……」

 よいしょ、と掛け声を発してから莉子は俺を抱き起こし、膝立ちにした。
 そして、手馴れた様子でベルトを外し、ファスナーを下げてから感嘆の声を上げた。

「やだ、興奮しすぎじゃないですか? これ」
「う、ああぁ……」

 責められて一瞬で声が出なくなる。
 俺は顔を真っ赤にしたまま俯く。まるで昨日の莉子のように。

「今度は私から触ってあげます……」
「うあっ!」
「お肌、綺麗なんですね」

 すっかり怒張を示し、トランクスにテントを張って先端を濡らしているペニスに触れぬように、莉子は両手の指を俺の太ももに這わせ始めた。さらにその手がわき腹、へそ、胸などを撫で回してゆく。

「あ、ああああぁぁ!」
「それに敏感で素敵……レロッ……」

 ジェルを含んだ透明な彼女の唇が、ねっとりと俺の乳首にキスをしてきた。

チュッ、チュ、ウ……プチュッ、レロ、レロ……

「可愛い乳首、濡らしちゃった」

 しつこく何度もキスをされ、俺の頭の中が真っ白にされてしまった。
 舌先でチロチロとくすぐったり、チュパチュパ舐めまわして乳首をふやけさせてくる彼女の技巧は凄まじく、凶悪で容赦ない快楽を植えつけてくる。

 さらに敏感にされた乳首は莉子の親指と人差し指でつままれ、ジリジリと捻られたり転がされたりしている。そのたびに俺の口からあえぎ声が漏れ出す。

「私の指で弾かれて気持ちいいですか?」
「ふあっ、あああぁ! やめ、うっ、あ……あああああああああ!!」

 不意に彼女の指が下腹部に伸びて、無造作にトランクスの中へと侵入してきた。

「そろそろ熱くなってるおちんちんを……鎮めてあげます」

くちゅうぅ……

「ひああああああああっ!」
「ふふっ、たまらないですか。これ……」

 手のひら全体で亀頭を包み込んだまま、彼女はクネクネと手首を動かしてみせる。
 もちろんもう片方の手で乳首を責めながら。

「そ~~っと触れるだけで、こんなに感じちゃうんですよ」
「ひあっ、あお、それ、ヤバいよ……あ、あっ、ひっ!
「今から優しく皮をむいて、逆らえなくしてあげますからね。パンツも脱がせちゃいますね」

ク、ニュ……ズリュッ!

「くはああああっ!」

 トランクスが一気におろされ、細い指がカリ首を捕まえたまま上下する。包皮を根元まで押し下げられ、むき出しにされた肉棒に彼女がトロリとした唾液を落とす。

「ほ~ら、ヌルヌルですよ……ふふふ」

 しっかりと裏筋を刺激しながら、莉子の指は憎らしいほど正確にその動作を繰り返す。
 乳首を刺激していた指が止まり、そのまま滑る様に背中に手がまわる。
 ふにょん、と彼女の右胸が俺に押し当てられ、さらに俺と彼女の密着度が増す。

「かっ、はぁ、な、なんで……!」
「地味な子にリードされるなんて思っていなかった……そんな表情ですね」


 穏やかな声を耳元で聞かされながら、もはや俺は身動きできずに彼女を見つめる事しかできなくなっていた。

「ほら、もう丸裸にされちゃいましたね」
「り、こ……君は最初から……あっ、ひいいいいい!」

ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ!

 突然強めに、手首のスナップを利かせた手コキが俺の感覚を支配する。
 それは言葉を遮る無慈悲な愛撫だった。

「うあっ、あっ、出ちまう! あああ!」
「私の趣味の話、覚えてますか」

 手コキの速さを変えずに彼女は続ける。

「人形遊びっていうのは、こういうことです。私を利用するつもりで近づいてきた男の子を、お人形みたいに操っちゃう……」
「ああああっ! イくっ、イくうううううううう!!」
「はい、おわり」

 体の奥で精液が沸き立ち、射精する数秒前までたどり着いたところで、彼女が俺の体を解放した。それは同時に激しい寸止め効果として、焦らされた俺の体に快感をくすぶらせる事になる。

「イかせて、イかせてくれぇ……」

シュルル……

 腹の中を焼けた鉄の棒でかき回されているような状態の俺を見つめながら、莉子はゆっくりと黒いニットとスカートを脱ぎ去る。

「あ……」

 目の前に現れた彼女のスタイルに、俺は言葉を失ってしまう。今の彼女と比べたら、昨日一番だと思っていた結菜は痩せすぎに思える。莉子は着やせするタイプだったのだ。

 そのバストは、服の上から触れていた時も感じていたが、見事なロケット型だった。
 桃色の乳首はツンと上を向いている。口元に添えられたら、どんな男でも無条件で口に含んでしまうだろう。それほど魅力的に見えた。

パサッ……

「ほら、おいで……糸を付けてあげる」

 さらにショーツまで脱ぎ去り、全裸になった状態で彼女はベッドに身を横たえた。

「我慢できなくなったおちんちんを私に突き刺してみたくないですか?」

 ゆっくりと焦らすように、俺を見つめたまま両脚を開いてくる。
 同時に俺を抱きしめるために両手を大きく広げて見せた。

(食虫植物……みたいだ……)

 美しい肢体に引き寄せられながら、俺はそんな事を感じていた。
 逆らえない。抗えない。我慢できない。

 それでも一歩、また一歩と引き寄せられていく。気づけば俺もベッドに脚をかけていた。
 息を弾ませたまま、無意識に彼女に抱きつこうとするより早く、真っ白な腕が俺の股間に伸びてきた。

キュッ……

「あふううっ!」
「貴方のここ、すごいことになってる……もしかしたら私のほうが操られちゃうかも」

 いきり立ったペニスを、ヌルヌルとしごきながら彼女は引き寄せる。
 片方の手を俺の背中に回し、ペニスの先端を膣口にこすり付けてきた。

クチュ、チュッ、チュッ……!

「うあっ、ああああ!」
「ほら、逆転のチャンスですよ?」

 莉子はそういうが、俺はそれどころではなかった。
 すっかり蕩けている膣肉が俺自身にしゃぶりついてきたのだ。

(だ、出したい、射精したい! このままでいいからッ!)

 無我夢中で彼女を求める。こすり付けられている亀頭の刺激に導かれるように、俺は彼女の奥深くに、ペニスを沈め込んでしまう。

グプッ、グチュウウゥゥ……

「あああぁー……」

 ぴったりと根元まで飲み込まれ、同時に彼女の長い脚が俺の腰に絡みつき、クロスした。

「もう逃げられませんよ。それそれっ」

くちゅ、くちゅ、くちゅっ、くいっ、くいっ!

 拘束したまま彼女は腰を前後左右に揺らす。そのたびに閉じ込められたペニスに快感が突き抜けていく。
 そこまで来て俺は気づいた。彼女の全身は、磨かれている……バストだけでなく、美脚だけでなく、膣内が最高に気持ちよく、男の理性を殺せるように鍛えられている。

「あっ、あああっ、こ、腰ィ! ふあっ、ああああ!」
「あら、せっかく攻め込ませてあげたのに。やっぱり無理でしたか。おちんちんが私の膣内で降参したがってるみたい」

 具合の良すぎる膣内で歓待され、俺は鳴いた。そうせざるを得なかった。
 絡み付く肉壁が精をすすり、膣奥の締め付けが俺を狂わせる。
 しかも間断なく!

 意味不明の言葉が口からどんどん出て行く。
 それは情けないほど心地よく、哀れなほど快楽に没した屈服の証だった。
 そして本能的に俺は自由になる左手で宙を掴もうとしていた。

「私に操って欲しいの?」

ぎゅっ……

「うっ、ああぁ」
「ふふ、わかりますよ。もう心に糸を付けちゃいましたから。これで貴方も――」

 この快楽地獄から逃れようと、伸ばした腕さえ彼女に包み込まれてしまった。


 そして彼女の言うとおり、心に糸を付けられた俺は、毎晩彼女を求めた。
 まるで操られるように毎晩、彼女もその行為を受け入れ、卓越した技巧でますます深みにはめ込まれてゆく。
 もう逃げられない、そう思うまで時間はかからなかった。



(了)












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