『夏の終わりの待ち合わせ』



 平日の夕方。少し涼しくなった時間帯だけど人通りが激しい。
 比較的大きめな都市なので当然だろう。
 僕はこの駅に隣接した広場で人を待っている。

 もうすぐ夏休みが終わって学園が始まる。
 その前にどうしても体験しておきたいことがあって、今日はここへ来た。

 密やかな趣味というか、性癖を充たしてくれる人に会える。そう思うだけで胸が高鳴る。
 僕はくすぐりが好きだ。
 厳密にはくすぐられる方が好きで、「ぐりとぐら」でいうならば「ぐら」なのだ。
 いきなり専門用語で申し訳ない……でも今日会えるはずの相手にはこれで通じる。
 そういうコミュニティの人だから。

 ただし相手のビジュアルはわからなくて、簡単な合言葉しか決めてない。
 しかも向こうから声をかけてくれることになってる。
 相手が僕を見つけたとしても、何か気に入らないことがあればそのまま立ち去る可能性だってあるわけだ。

 待ち合わせの時刻から既に十五分が過ぎようとしていた。
 もう帰ろうかなと思ったその時だった。

「中村じゃん。何してるの?」
「えっ、織川さん……?」

 声をかけられて振り向いた僕はぎょっとした。
 涼し気な声の主は、同じ学園に通う織川美咲(おがわみさき)だった。

 普通に考えれば学園から少し離れているこの場所で会うはずがない。
 でも今は休み中だし、ありえないと言えないこともないか……それに彼女はちょっと遊びなれてるみたいだし。

「ん? 何?」
「いや、偶然だなぁって……それだけだよ」
「ふーん」

 数秒間見とれていたことを隠すように僕は目を背けた。
 毛先まで柔らかそうにカールした長い髪と、気が強そうな瞳。
 黒いミニスカートから伸びた脚に目を奪われそうになる。
 彼女、けっこうな美脚で……学園でもちょっと見惚れることはあった。
 薄いピンク色のニットに黒いカーディガンを羽織っている。
 とても良く似合っていて、僕と比べて確実に大人っぽい服装だ。

「で、何してるの? あたしはここで人を待ってるんだけど」
「そうなんだ……僕もだよ」
「ふーん」

 織川さんは僕を値踏みするようにジロジロと見つめてきた。
 遊び人のように見える彼女だけど、実はとても成績がいい。
 学園内では五指に入る優等生なのだ。
 少し気圧されてるのは事実だけど、なんとなく悔しいから……今度は僕の方から尋ねてみるか。

「織川さん、こんなところで待ち合わせなんて結構ベタだね」
「まあね。相手の希望だし」
「相手……それって、こ、恋人っ?」
「ぷっ! あはは、そう思っちゃうわけ? 想像力が豊かすぎだね」

 僕の言い方がおかしかったのか、少し肩を揺らして笑い始めた。
 でも彼女ほどの女性なら特定の相手が居てもおかしくないと思う。
 性格はよく知らないけど、ビジュアル的には男子なら誰でも……彼女を悪くは思わないだろう。

「そんなに笑うことかな……」
「中村になら、べつに教えてもいいけど、ちょっと耳貸して」

 一歩近づいてきた彼女の方に、僕は少しだけ顔を近づける。
 淡い香水の匂いがして、そわそわした気持ちになる。

 だが次の瞬間――、

「あのね……こちょっ。」
「ひぅっ!」

 彼女の細い指先が、僕の脇腹に突き刺さっていた。

「くすぐり好きなの?」
「っ!!」

 反射的に身を預けてしまう。くすぐられ好きの場合、身を引くことが少ない。
 もっとくすぐってほしいという無言のジェスチャーをしてしまうのだ。
 これは僕だけかもしれないけど。

 でもこんな雑踏の中で身悶えするわけにもいかず、僕は周囲の目を気にしながら声を押し殺す。
 恥ずかしさとくすぐったさが入り混じった僕の顔を見ながら彼女が低い声でつぶやく。

「合言葉があるの。『かしずきなさい、くすぐりまる』ってね」

ぐにっ!

 更に深く指先が食い込む。
 織川さんは自分の体と、持っているバッグで手元を隠したまま意地悪く僕の脇腹をえぐり続けた。

「は、ひ、ああぁ、『おおせのままに』、あ、あ、んぐっ!?」

 時間にすれば十秒足らずで僕は陥落した。
 秘密の合言葉まで吐き出してしまった。
 甘い香りに包まれ、脇腹を刺激されながら雑踏で織川さんに屈してしまったのだ。
 合言葉を知る、待ち合わせの相手である彼女に!

「まさかとは思ったけど、アンタだったのね。ふふふ、楽しくなりそう♪」

 息を荒くする僕の手を引いた織川さんの顔は、少しだけ西日に赤く染まっているように見えた。







「こんな豪華なホテルに!?」
「あたしって、くすぐりブログ持ってるじゃん? あれの広告収入でね」

 聞けば広告収入を取材費に当てているという。
 そうすることで年度末の確定申告がどうだとか、難しい話をされたので聞き流した。

「そっか。たいへんそうだね……」

 駅前から数分間歩いた先にあるホテルの上層階で、僕は眼下に広がる景色を眺めている。
 ふかふかのダブルベッドの上に織川さんは座り、ペットボトルの水を飲みながらくつろいでいる。

「あー、そういえばごめんね。待ち合わせ場所でけっこう待たせちゃって」
「う、うん。でもそんなことないけど?」
「じつはあたし、時間どおりに来たんだけど……いきなり中村の姿を見て信じられなかったからさ。十五分くらい、他にそれらしい相手が居ないか観察していたんだ」

 なるほど、それが遅れた理由か。
 実際に帰りかけた僕の様子を察して、彼女は近づいてきたというわけだ。
 思い出してみると、会話の中でもいくつか探りを入れられた気がする。

「でも、どうして僕を選んだの」

 僕にとっては素直な疑問だった。
 SNSにおいて、女王的な存在である彼女の人気は絶大だ。くすぐられたい下僕希望者はたくさんいる。

「あのSNSで、近所で同世代っていうだけで、フツーは疑うでしょ?」
「そうかな……あっ!」

 カーディガンを脱いだ織川さんを見て、再び僕の視線が釘付けになる。
 真っ白な肩が艶かしくて、肩にかかる長い髪も色っぽくて、何よりも彼女と二人きりという現実が信じられなくて。

「それなのにアンタはこうして現れた。それだけで審査オッケーね」
「審査!?」
「嘘つきは相手にする気がないの」

 見つめられていることに驚く様子もなく、彼女は髪をかきあげる。
 ポニーテールのようにアップスタイルにしてから、僕の隣に腰を掛ける。
 織川さんの甘い香りに包まれる……。

「ねえ中村」
「は、ひゃい……!」
「くすぐりはSMでしょ……信頼関係がないとつまんないよ」
「そう、だね……うん、そうかも」
「でしょ? たとえばオフで会って、力づくで相手をレイプとか最低じゃん。それよりも、合意の上で乱れたいとか思わない?」

 ゆっくりと近づいてくる織川さんの顔はとてもきれいで、それだけで心臓の音が一段と大きくなりそうだった。
 そっと手のひらが僕の太ももに置かれる。
 その刺激にビクンと反応してしまう、思わず声を出してしまった。
 彼女はクスッと笑う。

「まあ、これから乱れるのはアンタなんだけどね!」
「ううぅぅ……」

 太ももに置かれた手が裏返り、指先がお腹から胸、首筋から顎をゆっくり撫でてくる。
 織川さんになぞられたあとがうずいて、くすぐったくてたまらない! 
 しっかりとツボを心得た愛撫に吐息が漏れる。

「まずは挨拶よ。くすぐりまる♪」
「あっ……そのハンド……る、んぅ!」

ちゅう、ぅ……♪

 あっさりと呼吸を奪われ、僕が息を止めると、織川さんは小さく笑いながら舌先を滑り込ませてきた。
 クチュ、ヌチュ、という音が頭の中に響く。
 静かな部屋の中で、秘め事を隠すように彼女の手が僕の肩を押さえつける。

 顔を揺らして逃げようとしても追いつかれてしまい、さらに深く舌先を味わうことになる。
 口の中をチョロチョロとくすぐりながら、織川さんは肩に置いた手を滑らせて、僕の脇腹をしっとりとなぞる。

「んっ、んぅぅ……」
「可愛い声出しちゃって。手を頭の後ろになさい」
「はい……」

 言われるがままに頭の後ろで手を組んだ。もうくすぐられ放題だ……絶対服従の姿勢。
 恥ずかしすぎて赤面している僕を覗き込むように、織川さんが身を寄せて見上げてくる。

「み、見ないで……ふあああぁぁぁ!」
「目をそらさないで。このままくすぐってあげる」

 その言葉だけでもゾクゾクする。こんな綺麗な人に、リアルでくすぐってもらえるなんて!
 しかもその相手は同級生で、僕の嗜好をよく理解している女王様……幸せすぎる。

 震える僕の体を、洋服越しのままで彼女の指がかきむしる。
 削り取られていくようだった。
 我慢も、恥ずかしさも、全てが無防備にされて織川さんの眼の前にさらけ出されていくようで。

クリクリクリクリ♪

「あっ、ああああああああああ! くしゅぐったい、それ、そこおおぉぉ!」
「その声、聞き慣れてくるとたまらない……あたし、本気出しちゃいそう」
「本気!? うあ、あああぁ、だ、だしてっ、もっと僕を、あ、あああぁぁ!」

 顎を跳ね上げて僕が彼女におねだりすると、今度はキスされながら激しくくすぐられてしまう。
 叫び声すら許されないまま数分間くすぐられると、もう僕は彼女に抱かれる人形のようになっていた。

「ふふふふ、いいよ。テストに合格したらね」
「ふ、あ、ぃひっ、いい、え、て、テスト!?」」
「初めてだから選ばせてあげる。全身をくまなくくすぐられるのと、一箇所だけ集中的にくすぐられるの、どっちがいい?」



 こんなに激しく全身をくすぐられ続けたら絶対に我慢できない。
 僕は彼女に、一箇所だけの責めを要求した。

「一箇所だけね。オッケー。じゃあ脱いで」
「脱ぐ?」

 足の裏とか脇腹を責められるんじゃ、と思っていた僕には彼女の言葉が全く理解できない。

「反応遅いよ。あたしが手伝ってあげる!」
「ああああああああああああああっ~~~~!?」

 彼女の手によって、あっという間にズボンがずり降ろされ、ペニスが露出する。
 織川さんはニヤニヤとうずくまる僕を見下ろしている。
 股間は既にしっかりと天井を向いており、先端からヌルついた雫まで流している始末だった。

「や、ああぁ、は、はずかしぃ……!」
「ふふふ、集中責めなら当然ここになるよね。それとも予想外だった?」
「えっ、嘘……ヤバイ、絶対ヤバいって!!」

 数分間味わっただけでメロメロにされた彼女のテクニックを思い出す。
 あの指先は凶器だ。
 直接ペニスをくすぐられたら、我慢なんてできるわけが――ッ!

「できるだけ優しくしてあげるよ……」

くにゅっ……しゅ、しゅっしゅ♪

「んああぁっ!」
「うるさい」
「だって、だってええええ!」

 ほんの少し擦られただけで、大げさではなく僕は叫びそうだった。
 極上の筆で乳首を責められるのと同じくらいの心地よさが全身に染み渡る。

「ぴちゅ、まずは二本指……」

 人差し指をカリ首に巻きつけてから、織川さんが手首を返す。
 粘液を指先に絡めながら、中指との連携で裏筋をこちょこちょと擦ったり、指でなめらかになぞったり……、

(や、なに、これっ、きもちいいっ! この人のテクニック、普通じゃない! くすぐりだけで、こんなのすぐにイっちゃ……んあ、あああああ!!)

 必死で声を殺そうとして、両手で後頭部を強く抑えるけど、寄せては返す波のような柔らかな刺激に耐えられるはずもなく、僕は自然に腰を揺らし始める。

「もう一本増やすね。まだ余裕っしょ」

クニュ、ニュルン……

「んああああああっ!!」

 中指、薬指、人差し指によってペニスが弄ばれる。もう声を我慢することはできなかった。
 ちらりと目をやると、人差し指と薬指で固定された肉棒の先端を、長い中指がピッピとしゃくりあげている。
 その動きに合わせて、無意識に僕も腰をはねているのが情けなかった。

「ふああぁぁ、あぁ……」
「効いてる効いてる♪ 両手で責める前に手足、縛ってあげる」

 すっと刺激が引いて、代わりに脱力した手首と足首に何かを巻きつけられた。
 革製の手かせと、足かせだった。

「これでよし」
「あ、ううぅぅ……動けないよおおぉぉ……」
「脇の下も脚も閉じられなくなっちゃったね。これだけでも感じちゃうでしょ」

 織川さんは微笑みながら僕の顔に息を吹きかける。
 その優越感に満ちた表情が、美しくて魅力的で、そして少し悔しくて……ペニスがビクンと大きく跳ね上がる。
 僕は性癖を完全に彼女に把握され、心を握られているのだ。支配されていると言い換えてもいい。

「全身くすぐりコースなら、脇の下も足の裏もこれでくすぐり放題だよ……」
「っ!!」

 眼の前で彼女が両手を構え、わきわきと動かし始める。

「こちょこちょこちょこちょ♪」
「あっ、ああああああああああ~~~~~!!」
「言葉だけなのに……ふふふ、すこしいじっちゃお」

 全身に蜘蛛の子が這うような感覚が沸き立ち、毛穴から汗が吹き出す思いだった。
 今の彼女なら実際に可能なんだ。言葉通りのくすぐり地獄を生み出すことが!

「足の裏もクリクリ~~」
「いぎっ! ひいいいいいいいいい!!」

 実際にくすぐられてないのに僕は悶える。言葉だけなのに狂わされてしまう。
 動けない僕に覆いかぶさり、耳元で妖しくささやく彼女に支配される快感。
 そして何より織川さんは期待に答えてくれる。期待以上に心をやんわりと責めてくれる。

「膝と肘のくぼみもツンツン、ツンツンツン……」
「ああ、やめっ、やめてええええ!」

 こんなの続けられたら、本当に彼女の虜になってしまう!
 耳に流れ込んでくる声は甘く優しく、そしてどこか冷酷で、全てが僕の好みだった。

「いい声……お耳も熱くなってる。ふうぅぅ~~~」
「くはああぁっ!」
「冷ましてあげないとね?」

 左側も右側も、彼女は甘く囁いてから息を吹きかけてきた。
 その死刑宣告のような言葉責めに僕は何度も屈した。
 射精はまだしていないけど、心が蹂躙され続けたせいでイきまくっているのと同じだった。

「はぁはぁはぁはぁ……」」
「手のひらを少し浮かせて、指先だけで背中をさわさわ……さわさわさわさわ♪」
「んひいいいいいいいいいっ!!」

 両脇に手を通した彼女は、僕を正面から抱きながら背中をとんとんと指でつついた。

「ずるいっ、その囁きがあああ!」
「う~ん?」
「気持ち、良すぎる……頭の中、もう、くすぐられまくってるぅ……」
「ふふふ、それが目的だもん♪ 心を犯し尽くされてからくすぐられたら、素敵じゃない?」

 息も絶え絶えになっている僕の体を人差し指だけでゆっくりとなぞる。
 時々指を離して、僕の顔色をうかがう。
 一分以上かけてその行為を繰り返した彼女は、うっとりした様子で僕に宣言した。

「狂わせてあげる……あたしのテクで、たっぷり可愛がってあげるよ」



 自分のバッグの中にある可愛らしい緑色のポーチから、織川さんは何かを取り出す。
 旅行用のシャンプーなどを入れる容器の中には、透明な液体が半分くらい入っていた。
 それを自分の手のひらにふりかけ、両手で揉み込む。

「ほらぁ、両手で掴まれちゃった。今のアンタと同じ、無抵抗なおちんちん♪」
「あ、ああぁぁっ!」
「すっごいヒクついてる。そんなに期待してるの?」

 手のひらからクチュクチュという音が聞こえだす。
 それは間違いなくローションだった。
 成分まではわからないけど、あんなので股間を握られたら絶対に気持ちいい!!

「とろとろの涙まで流して、気持ちいいんだ……」

ぴとっ♪

「はぅん!
「いくよ。さっきのささやきを思い出しながら感じてね?」

 ヌルヌルの右手が、五本の指が優しくペニスを握りしめた。

クニュ、クチュ、クチュウウウウウ!

 蕩けきった指先が妖しい刺激を刻み込む。
 ローションの滑らかさと彼女の指先の温度のコラボは絶妙で、しかも拘束されているという事実が快感を倍増させていた。

「うあっ! あああああああ! まるで全身を撫でられてるみたいでっ!」
「そうだよ……やっと気づいたの?」

 一定のリズムで肉棒をしごきながら彼女は言う。
 左手で睾丸をやわらかく握り、弄ぶ。
 右手は亀頭から中程までをゆっくりと這い回り、弱点をあぶり出してくる。

「ここね」
「うっ、あ、あああああ!」
「我慢してね」
「む、無理いいいいぃぃぃ!!」

 首を横に振ると、彼女は嬉しそうに手を激しく動かした。
 感じやすい部分を把握したあとでその動きは緩やかになるが、今度は永遠に快楽の檻に閉じ込められたように心がイかされ続ける!

「逃げられない、その手付きだめえええ、ずっと、ずっと感じちゃう! これじゃあおかしくなるううう!!」
「アンタはもう逃げられないの。体中どこを触られても感じちゃうし、感じたいんでしょ」
「ふあっ、そ、そうですううぅ!」
「あたしに、こうして抱きしめられたいんでしょ」

くにゅううううっ!

「ああああああああぁぁぁ、包まれたああああぁぁぁ!」
「このままくすぐりも混ぜて、甘く揺らしてあげる。」

 ニッコリと微笑みながら、彼女は責め続ける。
 両手で僕の股間を包み込むようにして、ゆっくりと上下に揺らされるともう降参するしかなかった。
 全てを掴まれ、握られている。
 暖かくて柔らかい彼女の手のひらに包まれて、体より先に心がくすぐり漬けにされてしまった。
 たまに小指がアナルをかすめると、僕は情けない声を上げてしまう。

「全身汗まみれ……もうイく? イきたいの?」
「ひゃいっ、も、もうむひ、ひいいい! いかせてえええええええ!」
「くすっ♪ じゃあ、あたしがキスした瞬間にイきなさい。いい? ほらぁ――」

 両手でクチュクチュとペニスをくすぐりながら、織川さんが顔寄せてくる。
 僕は小鳥のように彼女の正面で唇を差し出す。

ちゅ……

「く、ううううっ!!! あ、あああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

「んちゅ……ふふっ、イけ♪」

ビュグウウウウウウウウウウウウウウウウッ!!!

 拘束されたまま、僕はイかされた。
 心と体を同時に、がんじがらめにされた状態で絶頂を強いられた。

 予めベッドに転がされていてよかった。
 こんなの絶対、立ち続けることなんてできない。
 手足から力が抜け落ちて、目の前が真っ白になって、僕は静かに気を失った。







「中村、全然駄目じゃん。これで本気出したら絶対アンタが壊れちゃうよ」
「織川さん……ごめんね、期待ハズレで」

 夕暮れがすっかりと夜になってから、僕は目覚めた。
 織川さんはシャワーを浴びたあとのようで、さっぱりした様子だった。

「これは特訓が必要ね」
「え……?」
「次は来週、ううん明日でもいいよね。まだ休み中だし。もう少し我慢できるようになってもらわないとあたしがつまんないもん!」

 少し不満そうに彼女が言う。左手を顎に当てて、難しい顔をしているけど、僕を見る目はそれほど怖くなかった。

「え、それって……っ!」

 ぱっと顔を輝かせた僕に向かって、織川さんはニッコリと微笑んだ。

「アンタの体を攻略して、徹底的にくすぐり漬けにして、犯し尽くした記事をブログに上げさせてもらうから。きっとSNSの皆も喜ぶわ」
「作品に出演とか、まじですか!?」
「うん、それでお金が入ったら……もっといいことしよ?」

 もっといいことってなんだろう。
 妄想を豊かにするワードが頭の中でどんどん広がる。

 すっかり織川さんに魅了された僕には、彼女の申し出を断る理由が思いつかなかった。



(了)












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