『じっとしてると気持ちいいお店』



 休日の電気街。
 ここは色んな国からやってきた観光客や、好奇心旺盛な中学生、高校生、大きなお友達などで賑わう場所だ。

 偶然今の仕事の都合で俺はこの近くのワンルームに住んでいる。
 休みの日はたまにブラブラと出かけることもあるのだが、今日はいつもと少し様子が違った。

 見慣れない制服の、自称女子校生と思われる美少女たちがウロウロしている。
 本当に可愛いのが何人も混じっててやばい。
 なにか新しい店でもオープンしたのか。

 その中の一人と目が合った。
 テテテっと擬音がつけられそうな可愛らしさで駆け寄ってくる。

「こんにちは、おにーさん」
「こんにちは……」
「JKリフレいかがですかー」
「えっ?」

 耳を疑った。こいつ、開店したばかりの店を閉鎖に追い込みたいのだろうか?
 この街は特に規制が厳しくて有名なのに。

「いいからいいから♪」

 だがそんな思いはお構いなしで、女子校生は俺に腕を絡ませてきた。
 近くで見るとかなり可愛い子だとわかった。年齢はわからないけどおそらく成人しているはずだ。
 それにいい匂いもするし、何より押し付けられた制服越しのバストが柔らかくて……

「ちょっ、強引じゃね?」
「そうですか?」

 気づけばもう、雑居ビルの階段を登り始めていた。
 俺が困惑しながら多少の抵抗を続けていると、女子校生が上目遣いで目を細めた。

「でも、本気で拒否しませんね。おにーさん」



 何も言い返せないまま店のドアをくぐる。
 女子校生姿の美少女スタッフはナナコと名乗った。

「思ったより綺麗なお店だね」
「えへへ、ありがとうございます♪」

 第一印象は小奇麗なカラオケボックスだった。
 朝早くから一生懸命掃除したのだという。
 黒服の姿はなく、代わりに妙齢のバニーガール姿の美女が微笑んでいる。

 店の雰囲気は悪くない。しかし……

「今さらだけど、ここはどういうお店?」
「健全なお店ですよ」

 ナナコにJKリフレという言葉について問いただすと、
「じっとしてるときもちいいリフレクソロジー」の略称だという。

 じつに紛らわしい建前だ。

「逆に聞いちゃいますけどー、JKリフレってなんだと思ったんですかー?」
「い、いや……別に……」
「ふふ~ん、えっち♪」
「ちち、違うッ!」

 そんな会話をしつつ、ナナコはテキパキとベッドを作る。
 簡易寝台に綺麗な白いシーツと枕を用意した形だ。

「じゃあ横になってください」
「うっ……」
「まずはうつ伏せになったままでいいですから、じっとしててくださいね」

 言われるがままに横になると、ナナコが正面に回ってきた。
 なんとなく恥ずかしいので横を向くと、鏡の中にいる自分と目が合った。

「お顔と肩をマッサージします……ずいぶんこってますね?」

ぎゅっぎゅっぎゅ……

 アロマオイルを使う、ちゃんとしたマッサージだった。
 でもアロマ以外にもいい匂いがする。
 おそらくナナコの髪の香りなのだろう。

 いつの間にか彼女は薄い桃色のナース服に着替えていた。
 そのままマッサージは続き、肩から腕、背中、腰、そして太ももまで進む。

「じゃあ足の裏をふみふみふみ……」
「っ!!」

 そしてこれが今日一番の気持ちよさだった。
 フニフニした足が俺の足の裏と合わさって、絶妙な刺激を与えてくれる。

「どうですかー、気持ちいいですかぁ?」
「ああ、すごくいいね……続けて……」
「わー、よかったですー♪」

 嬉しそうにナナコは足を踏み続ける。
 足の裏だけでなく、上手にバランスを取ってふくらはぎや太ももの裏も踏んでくれた。
 この幸せな時間がずっと続いてくれたらいいのにと、俺が思い始めた頃、

「じゃあパチン♪」

 カシャン……

「えっ」
「ここからは暴れられると面倒なので、固定しておきました」

 俺が恍惚感に浸っている間に、両手と両足が革製のベルトと鍵で固定されてしまった。
 慌てて腕や足を引いて暴れようとしたが、体がうまく動かない。

「何だよこれ、聞いてないぞ!」
「だって、ここが……もう大変そうですよ?」

 俺をあやすように、ナナコはにこにこしながら、手のひらを腰から下へ滑り込ませてきた。

くにゅ……

「あああぁっ!」
「ふふふふふ、いい声♪ でも……こんなに固くなっちゃってる。これはマッサージする甲斐がありますね~」

 少しだけ浮いた腰の隙間から差し込まれた彼女の指が、ペニスをゆるく握って上下にしごいてきた。
 俺は必死で声を押し殺す。身動きができない以上、それしかできることもない。

「おにーさぁん……ぜんぜん力が入らないでしょう?
 私に踏まれると、お客さんは皆そうなっちゃうみたいなんです」
「ううっ、なんで……」

 必死に声を絞り出す俺の顔を覗き込むように、ナナコが視線を合わせてきた。

「ねえ、き・も・ち・い・い?」
「……ッ!!」

 素直に答えたら負けなような気がして、俺は顔を背ける。
 すると今度は鏡の中で、ナナコに視線を合わされた。

「言わなくてもわかりますよ。もうメロメロですね?
 だから、ほら……あきらめて力抜いてくださぁ~い」

 背中から覆いかぶさるようにして、ナナコのマッサージが続く。
 腰が浮き上がる高さも徐々に上がっていく。
 背中に感じる体温と、ナナコの息遣いが優しすぎる……。

「おにーさん、すごくエッチな顔になってますよぉ~」
「そんなことは、ない……あああぁぁ!」
「嘘ついちゃ駄目ですぅ♪ はじめてのお客様には大サービスしちゃいます」

 ベッドに肘をついていたナナコが、ふっと力を抜いた。

ふにゅん……

「っ!!」

 完全に背中を抱かれた格好になった。鏡越しに見なくてもわかる。
 確実に感じるナナコの体重と、髪の柔らかさと……

「あれあれ~、おにーさんの背中になにかあたってますね。
 ふふふ、これはいったいなんでしょうね……?」

 それは反則級の柔らかさだった。
 同時に手のひらのくぼみを使って、亀頭がサラサラと撫でられ、時折激しく揉みしだかれる。
 最初にナナコが腕を絡ませてきた時の感覚を思い出しながら、俺はどんどん興奮させられてしまう。

「えっ、こ、これ……あっ、あああああ、やばっ!!」
「むふふふ~、えっちな想像しながら、思い切りイっちゃえ~~~!!」

くにっ♪

 コックをひねるように、ナナコの指先が亀頭とカリ首をゆっくりとねじり込んだ瞬間、

ビュルルッ、ビュクウウウウ! ドクッ、ドクッ、ドクン……!

 拘束されたまま、俺は盛大に爆ぜた。
 逆に押さえつけられていなかったら、あまりの刺激に暴れまくっていたかもしれない。

 ビクンビクンと震える俺の体を、ナナコは数分間撫で続けてくれた……。


 やがて部屋に据え付けてある電話が鳴った。
 あと10分でサービス終了だという。
 ナナコはこちらを見てニコニコしているけど、俺は恥ずかしいので目を合わせたくない。

「ううぅぅぅ、恥ずかしい……」
「いっぱい出ましたね。パンツの換えが必要かも?」

 するとベッドの脇からナナコが価格表を出してきた。
 パンツ一枚が三千円? たけえっ!!

「わかった、買うよ……」
「ふふふ、毎度ありです~♪ またのお越しを!」

 聞けばこれが彼女の取り分だという。
 じゃあもう一枚買ってやるか……。
 俺から余計に受け取った紙幣をしっかり握りしめて、ナナコは無邪気に笑うのだった。



(了)










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