『待ち伏せチョコレート』
いつもより早く家を出た俺は、学園の正門付近で立ち止まる。
まだ人の気配も少ない。好都合だ。
ここで一人の女性を待ち伏せすることにした。
ターゲットは幼馴染の深川沙羅(ふかがわさら)。
正直なことを言えば、家の前で待ち伏せしたほうが効率がいい。
だが、それだと彼女の親に遭遇する可能性が少なからず生じてしまう。
そしてやつが来た!
「サ、サラ! 話があるッ」
「え……どうしたの、イツキ?」
俺に呼び止められたサラは、不思議そうな顔でこちらを見返してくる。
最近になってようやく俺の身長が伸びてきたので、目線はほとんど同じ高さだ。
今まではサラのほうが背も高く、大人びた顔立ちをしていたので姉と弟の関係だと思われることもしばしばあったのだが、これからはそうならな……今はそんなことはどうでもいい。
肩に触れるくらいの長さの黒髪が柔らかそうに揺れる。
吸い込まれそうな瞳を正面から見つめながら、俺は口を開く。
「これを受け取ってくれ!」
「なぁに、この袋……あら、綺麗ね」
「いいから早くッ!」
「う、うん……」
気圧されるようにして俺から袋を受け取り、中身を確認してからサラが微笑んだ。
「もしかして、チョコ?」
「ああ……」
よし、これでミッション完了だ。待ち伏せした甲斐があったというものだ。
俺は心の中で胸をなでおろす。
「でもどうして私に?」
「ま、まあいろいろ事情はあるんだが。とにかく、渡したからな!」
「ちょっと待って!」
「ぐふうっ!」
余計なことは言わずに俺は背を向けて立ち去ろうとしたのだが、それより早くサラの手が俺の肩を掴んだ。
「私の気持ちは聞いてくれないの?」
「え……」
サラの気持ちって何だ?
言葉の意味を理解しようとしているうちに、振り返った俺とサラは吐息がかかるほど近づいていた。
これなら何を話しても内緒話になってしまう距離だ。
(やべぇ、ドキドキする……!)
息を殺して俺はサラの言葉を待つ。
長めの前髪が揺れて、いい匂いがしてきた。
少し赤くなった頬や、形の良いまつげに見とれていると、ようやくサラが口を開いた。
「あのね、イツキ……私……」
「な、なんだよ……」
ちらりと上目遣いで俺を見つめてくるサラ。
見慣れているはずの俺でさえ、こんなちょっとした仕草がたまに可愛く感じることはある。
それにクラスの噂では、隠れファンも多いという。
清楚な印象が半端ない彼女に見つめられて平然としていられるわけがない。
そしてサラは、はっきりした口調でこう言い放った。
「私、三倍返しは嫌なの」
「は?」
「昭和の時代から続くバレンタインの基本ルールでしょう? 嫌なの」
あっけにとられている俺の前で、サラがぷくっと頬を膨らませた。
不機嫌とはちょっと違うように見える。
視線をさまよわせて何かを迷っている感じ。
しかし次の瞬間、その迷いを吹っ切ったような爽やかな表情で俺に向き直った。
「だからね、今お返ししちゃうね? うふふふふ」
サラは両手を俺の首に回して、背伸びをしてきた。
身長差は3センチくらいしか無いから、ほんの少しだけ彼女が上から目線になるわけで……
「ちょっ、なんで今……お、お、うっ……んうっ! ん、ぅううううう!?」
「んちゅ……♪」
物陰に隠れるようにして、サラが俺に身を預けてくる。
同時に重ねられた唇から全身の力が吸い取られていく……
「ふぁ……」
十秒にも満たないはずのキスがとても長く感じられた。
自分でもよく分かるくらいに膝がカクカクしている。
「イツキ、なんで私に先制攻撃してきたのか当ててあげようか?」
「っ!!」
その言葉で俺は我に返った。
サラは、しっかりと目を合わせたままで、イタズラっぽい表情をしている。
「もしも今日、誰からもチョコレートを貰えなかったら自分が惨め……」
「やめろ……」
「だから先に自分から適当な女子を見つけて渡せば、言い訳ができる」
「ち、違ッ……うあぁ、ァ、ああっ!」
ちゅ、ううぅぅ……
俺の反論は本日二回目のキスで塗りつぶされた。
今度はさっきより少し短い時間で開放される。
「昔からそういうところあるもんね? 変わってないのはちょっと嬉しいかな」
短時間で二度もキスをされて、俺は心臓が破裂しそうになる思いだった。
他の誰かに見られたらどうしよう、サラの親衛隊にでも遭遇したら後でボコボコにされてしまう。
「でもずるい人……ふふふふ、可愛い男の子は大好きよ♪」
さわさわさわ♪
「あああああああああっ!」
「もうこっちは準備完了みたいね」
いつの間にかズボンのファスナーが下げられていて、その隙間からサラの指先が滑り込んできた。
細い指にもてあそばれて、ペニスがあっという間に硬さを増してゆく。
ヌチュ、クチュリ……♪
「朝から幼馴染の手のひらをミルクだらけにしちゃうの?」
「くはっ、ああ、や、やめろ、サラ、あ、あぁぁぁ!」
「ふふっ、もっと我慢しないと情けないぞ♪」
俺をいたぶるように言葉と指先で高めていくサラ。
最近はお互いに忙しくて昔みたいに自分たちの部屋でこっそりエッチすることもなくなっていた。
しかし、まさかこんな場所で……
「ほらぁ、クチュクチュクチュ♪」
「んはあああああっ! ま、待って! マジでやば……」
「あはっ♪ 簡単に降参しちゃいそうだねぇ~」
サラは、壁に背を預けて喘ぎ声を殺す俺を見て嬉しそうに笑っている。
やがてサラはちらりと下を見てから、スカートの裾を少し持ち上げた。
すっかり屹立した肉棒を正面からまたぐようにして、さらに俺と密着してくる。
「じゃあそろそろ気持ちよくしてあげる……」
クニ……ッ♪
「あっ!」
「ほら、太ももで抱きしめちゃうよ~」
きゅううぅぅぅぅ~~~~~!
「~~~~~~~~~~!!!!!!」
優しい圧迫感とともにペニスがビクビクと歓喜に打ち震えた。
絶妙な柔らかさを持つ美少女の太ももに、俺は閉じ込められてしまった。
気を抜いたら絶叫してしまいそうだ。
必死で歯を食いしばることしかできない!
「あったかいでしょ。甘やかしてあげる」
サラはニヤニヤと笑いながら、ペニスを挟み込んだ太ももを前後にすり合わせるようにしてくる。
(うあっ、ああああああ、気持ちよすぎるうううううう!)
無意識に彼女の背中に手を回し、腰やお尻を撫で回してしまう。
制服越しでもわかるほっそりした腰つきと、小ぶりで触り心地の良いお尻……
「くすっ、今度はどんな言い訳をするの?」
ささやくような妖しい声を、直接耳の穴に吹き込まれる。
そこからさらにピチャピチャと耳たぶを舐められ、俺はついに声を漏らしてしまう。
「……る、でるぅ……!」
「ちゃんと聞・か・せ・て♪」
俺に抱きついたまま、サラが太ももをキツめに締め上げて上下に体を揺らしてきたああああ!
クチュクチュ、チュッチュッチュッチュ♪
その間もずっと耳たぶはネロネロと舐め上げられ、ときどき吐息が吹き込まれた。
全身に彼女の柔らかくて優しい体を感じながら、俺はついに降参してしまう。
「あああああああああああああ!!」
ビュクッ、ビュク、ビュッ……!
抱きしめた体を味わうように震えながら、俺はサラのスカートの中で盛大に射精してしまった……。
「くすっ、いっぱい出てる~!」
「うあ、ああ、さら、もうゆるして……」
「駄目♪ 逃してあげないんだから」
射精したことをしっかり感じながら、サラが再び体を揺らしてくる。
きゅっきゅっきゅっきゅ……♪
「ひいっ、は、ああ、あ、ああああ!」
「私の楽しみを奪っといて、それはないでしょう?」
悶える俺を抱きしめながら彼女が呟いた。
しかしその意味を掴む前に、二度目の射精の波が俺を包み込んで……
ビュルルルル!!
封じ込められた太ももの中で、さらに妖しく揉みしだかれた肉棒は悲鳴の代わりに白濁を彼女に捧げてしまう。
もう完全に防御力はゼロの状態、イカされっぱなしで力が入らない……
きゅっきゅ……♪
「あがあああああああああっ!」
「ほらほら、しっかり出し切っちゃいなさい。えいっ、えいっ!」
俺を抱き支えるようにしながらも、サラは次の射精をねだってくる。
ヌルヌルになった幼馴染の太ももの感触の良さに我慢など許されるはずもなく、俺はまた絶頂する。
ピュウッ……トロリ……
「は~い、三発目♪」
もはや声も出せず、抗うこともできないまま全身に快感が染み渡っていく。
そんな様子の俺を見ながら、サラは何度も熱いキスをしてくれた……
そして数分後。
「落ち着いた? じゃあ、一緒に行こうね」
ようやく呼吸が整った俺の手を引いて、サラが歩き出す。
まるで飼い主に引きずられて散歩する犬のようだ……。
「お、おい……」
「何よ?」
「さすがにこれは」
恥ずかしさで顔を赤くする俺に向かって、サラが鞄の中から何かを取り出した。
「うるさいなぁ……はい、これ!」
「え……」
それはチョコケーキが有名なお店の包み紙。
もしかして最初から俺に渡すつもりで?
「これなら格好がつくでしょ。ふふふふふ♪」
俺にチョコレートを手渡したサラは、人目も気にせず誇らしげに腕を絡ませてくるのだった。
(了)