『悩みと体位とEカップ』





 ずっと悩んでることがある。
 女子校時代に友人とバストの話になって……

『Eカップ以下だと、なんか寂しいっていうか……貧乳ってカンジ?』

 その時の言葉が呪詛のようにわたしの頭にまとわりついて離れない。
 わたしの胸はギリギリE……のはず。でもギリギリじゃ駄目なんだ。

 あれから数年経った――。

 過去にそんな事があったので、常にコンプレックスがつきまとう。
 決して自信がないわけじゃない。
 身長だって低くないし、体型も気を使ってる。
 でも男性との交際はバストのせいで慎重になってしまう。

 そんなわたしにも恋人と呼べる存在ができた。
 彼は優しい。
 いつもわたしをリードしてくれる。
 でも、土壇場でこの人はわたしを受け入れてくれるだろうか。

 そんな気持ちに揺られながら、ある日の夜にわたし達はラブホに足を踏み入れた。
 部屋の中は清潔感にあふれていた。
 大きなベッドに二人並んで座ると、少し気持ちが落ち着いた。

「そろそろ……いい?」
「う、うんっ!」

 彼の手がわたしの方に触れ、ゆっくりと衣類を剥ぎ取ってゆく。
 しかしこのままだと彼にわたしの胸を見られてしまう。

(こわいよ……)

 恋人への恐怖ではなく自分の内側への恐怖だとわかっていても震える。
 もはや行為に及ぶという瞬間、わたしの頭の中に妙案が浮かぶ上がった。
 嬉しいことに同時に二つも。

「電気消すね?」

 着衣のままでわたしはベッドサイドにあるスイッチ類を適当に操作した。
 部屋の明るさが入室時の二割程度までになった。

「暗いほうが好きなの♪」
「そうなんだ」

 わたしの言葉に彼は同意してくれた。
 あまりにも自然な流れに自分でも驚く。
 暗闇なら胸の大きさだってわかりにくい。
 これが一つ目のアイデア。
 まずは成功と言えるだろう。

 続いてお互いに裸になってから、ベッドに横座りのまま抱き合う。
 唇が触れ合うその時に……、

(えいっ!)

 わたしは彼の首に腕を回し、軽く抱きしめた。それと同時に体重を預ける。
 自然とわたしが上になり、彼はわたしに押し倒されたような格好になる。
 まるでレイプしているみたいでちょっとドキドキする。

「うあっ、ど、どうしたの……!?」
「今日はわたしの方から抱きしめてあげたいなーって」

 鼻先が触れ合う距離でわたしは妖しく微笑む。
 真上から見つめる彼の目の中に、わたしが映ってる。
 とびきり淫らな表情で。

「こうしてると、なんか可愛い……」

 相手を見つめながら、わたしはゆっくり髪を撫でる。
 すると彼は気持ちよさそうに目をつむり、わたしに身を任せてきた。

 その行為を数分間続けると、わたしの下にいる彼の体が脱力していることに気づいた。
 さらに呼吸も少し荒くなってる。
 かわいい……まるでわたしに撫でられて骨抜きにされてしまったみたい。
 とても気持ちよさそう……静かに手のひらを彼の下腹部へ滑り込ませる。

んきゅっ……

「うあ、あああぁ!」
「ねえ、これ……いつもより固いね?」

 そっと伸ばした指先が捉えたのは彼の怒張。
 すっかり準備万端みたい。
 彼も、わたしも……。

「このまま、入れちゃうね……」

 ゆっくりした動作で彼にまたがり、濡れそぼった蜜壺へと導く。

ずにゅっ……クプ……

 トロリとした粘液が彼の先端に触れ、包み込む。
 小さなうめき声が聞こえたけど、構わずわたしは思い切り腰を沈めた。

じゅるっ、ずちゅ、ずちゅうう!

「はぁんっ♪」

 あっという間に、なめらかに一番奥まで彼を迎え入れることができた。
 すると彼が下から腕を伸ばしてきた。
 このままバストに触れるという寸前で、わたしはその手首を掴んでベッドに抑え込む。

「あっ……!」
「勝手に触っちゃ駄目でしょ? ふふふ」

 じっと彼の目を見つめながらわたしはわざと小さく笑う。
 ぎこちない笑顔のはずなのに、彼はわたしをうっとりと見つめ続けていた。

 そのまま上半身をゆっくりと倒して彼に密着させる。
 わたしのバストが形を変えて、彼にピッタリと吸い付く。
 胸と胸が重なるような体勢……これなら大きさなんて関係ない。
 二つ目のアイデアはこれだった。

「んふ、じゃあ……動くね?」

 軽く宣言してから、わたしは上下にゆっくりと腰を振り始めた。

たんっ! たんっ! たんっ……

 規則正しいリズムで、杭打ちをするように彼の肉棒を自らの深部へと誘う。
 肉ヒダがめくれるたびにわたしの背筋に快感が走り、引き抜くたびに彼の顔が蕩けていく。

「激しい……ッ!」

 悶えながら顎を跳ね上げる彼を感じつつ、そのかわいい耳たぶをしゃぶるようにゆっくりと口を近づける。

「ふふっ、お互いに胸の音が聞こえちゃうね?」
「ば、馬鹿! こんな状況で囁くなあああああっ!!」

 急にジタバタする彼。
 でもその力はとても弱くて、今のわたしでもあっさり抑え込める程度だった。

 手首をしっかり掴んだままベッドに押さえ込み、上半身を預けたままで腰だけをくねくねと動かしているわたし。
 自分でも驚くほど大胆な行為。肉食系の女子みたい。

「どうしたの? 耳まで真っ赤だよ」

 いつもは受け身のわたしでも、ささやかないたずら心が芽生えてくる。
 からかうように彼を言葉で責めながら、さらなる快感を与えてあげたくなる。

 舌先を伸ばし、耳たぶの縁を軽く舐めてから唇で軽く挟み込む。

「はむっ♪」
「っーーーー!!」

 彼を拘束したままでの耳たぶ責めは予想以上に彼を興奮させたみたい。
 わたしの膣内で彼の分身が大きく跳ね上がったから。

 ごほうびに今度は腰をしゃくりあげるように前後にグラインドしてみる。
 上下のピストンではなくて、ねっとりと舐めあげるような腰使いで裏筋から根本までを刺激する。
 彼の喘ぎ声がさらにはっきりしたものになってきた。

「おちんちんすっごい元気……」

 すると彼は恥ずかしそうな表情でわたしを見上げてきた。

「こ、これは、お前の、せいだぞ……」
「わたし? あはっ♪」

 小学生の負け惜しみみたいでとてもかわいい。
 いつもは頼りがいのある彼がこんなに切ない顔をしてくれるなんて想定外。

 わたしは大きく息を吸いながら下腹部に力を込めてみた。

 自分でもわかるほど膣口と膣奥がキュンと閉まる。
 一瞬遅れて彼の体がビクンと震えた。

「うあああああっ、イくっ! 出る、出ちまう!!」
「あんっ、気持ちいい……固くなってるぅ!」

 強く抱きつきながら、足の先を彼の膝裏に滑り込ませる。
 蛇のように絡みついて、力が入る体勢で陥落寸前の肉棒をさらに追い込んでゆく。

にちゅにちゅにちゅにちゅっ!

 腰のクビレから下だけを動かして膣内に何度も何度も肉棒を迎え入れる。
 一分間に何十回もわたしに犯されているように感じてくれるように。
 そしてもうひとつ……追加攻撃♪

「ねえ、好き……ぃ……」
「えっ!?」
「好き、好き! 好き、好き! スキスキスキ♪」
「うあ、ああ、それ、あ、やめ、ふあああ!」

 一番わかり易い愛の言葉に彼が悶え始める。
 抱きついたまま彼に好きとささやき続ける。
 さっきからもう手首は掴んでいない。
 彼はわたしに反撃することなく、両手でベッドの端を掴んでいた。

「すき、好きなの! おちんちんスキ! はぁん♪」
「だ、だめ、これ、おかしくなるううう!」

 ささやき続けることで彼の頭の中をとろかして、腰を振り続けることで快楽から立ち上がれなくする。
 自分の胸の大きさを隠すためだけに始めた行為だけど、今はそれが楽しくて、気持ちよくて……!

くきゅううううううううううっ……!!

「急に締め付けが、あ、あ! はあああああああああ!!!」
「う、うんっ! いいよ、このまま出して?」

 わたしはそう言いながら、彼の耳穴に舌先をズプリと突き刺し、すぐに引き抜いた。
 それが合図となったようで、彼自身の体積がわたしの中で一気に膨張した。

「うあああああああ、あがあああっ、んっ、……んんう、うううう!?」

 あまりの快感に大声をあげようとする彼の口をキスで塞ぐ。
 こんな可愛い声を外に出させるなんてもったいないから。

 全部わたしのもの……そんな気持ちを乗せた略奪のキスは、彼の意識を今までにないほど甘く混濁させるものとなった。





「すごく……良かったよ……」

 行為が終わり、落ち着きを取り戻した彼がポツリと呟いた。
 その言葉にわたしが微笑むと彼も笑ってくれる。

「あと、お前の胸って」
「え……」

 一瞬でわたしの表情が引きつるワード。
 持ち続けていたコンプレックスをえぐられるような恐怖。

(き、きた! いつか絶対言われると思ってた……
 でも彼の口からは、この先の言葉を聞きたくないよ……)

 小さく震えるわたしに、彼の手がそっと伸びてきた。

「全然小さくないから。前から気にしてたみたいだけど」
「で、でも! 昔……Eカップ以下は貧乳だって言われたんだよ?」
「は? そんなわけあるか」

 微笑む彼の手のひらがわたしの指先を包み込む。
 それは心にあるしこりを溶かしてくれる、とても暖かいものだった。

「わたしで、いいの……?」

 返事をする代わりに彼はわたしを抱き寄せた。
 自分でも明確にわかる。
 心が穏やかになっていく。
 腕枕の中でわたしは彼の手を強く握り返した。





(了)










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