短編『みかんさんは口数が少ない』
もうすぐ昼休み。ようやく一休みできる時間だ。
とある商社に勤める俺(=柏井恵介)は、月曜日の午前中は伝票整理などの事務処理をすると決めている。
隣の席に座ってるはずの後輩社員・大野田は午前休みだと聞いてる。
どんな理由があっても休み明けは顔を出せと教えたのに……本当にダメなやつ。
そんな時に頼りになるのが少し年上の事務員である中野美柑(なかのみかん)さんだ。
黒髪のショートで、化粧は控えめ。
業務中は縁が太い眼鏡をかけていて、やぼったい印象だが顔立ちは整っている。
身長はそれほど高くないけど脱いだらスタイル良さそう……いかん、不謹慎なことを考えてる場合じゃない。
彼女は黙々と仕事をこなし、俺たち営業のサポートをしてくれる。
真面目で貴重な有能事務員さんなのだ。
「美柑さん、月初の書類おねがいします」
「はい」
「あ、ついでにこの伝票もいいです?」
「はい」
言葉は少ないがチラリと見上げてくる視線と笑顔が可愛い。
俺は午後になってから得意先を回り、その日は直帰した。
その次の夜、営業だけで飲み会を開いた。
何気ない会話の流れの中で美柑さんの話題になった。
彼女に思いを寄せる営業社員は少なくないみたいだ。
「美柑さんいいわー、休み明けは特にいいわー」
「なんで休み明けなんだよ?」
「みかんちゃん喋らないじゃん。
休み疲れなのか知らんけど。しゃべらないとますます良い!」
しゃべらないほうが良いのか……よくわからん。
すると他のやつが口を挟む。
「普段からあんな感じじゃないですか?」
「いやいや、ちがうし!
水曜日とか木曜日の夕方とか結構テンション高いよ」
「あー、それきっと休み前だからじゃないですかね!」
そんな会話の中、昨日午前休みだった後輩が溜息をこぼした。
「はぁ……」
「どうした、大野田? 昨日は結局休んだみたいだけど、まだ具合悪いのか」
「いいえ、良くなりました……でもすんませんでした!
センパイには月曜の朝は休むなって教わってたのに……」
「ちゃんと覚えてくれてたならもういいさ。来週は遅れるなよ」
「はい!」
その後、二次会には付き合わずに俺は早めに帰宅した。
翌日出社してみると、更衣室で昨日の飲み会の話になった。
じつは美柑さんはとても性欲旺盛だという。
「おいおい、本当なのか? 大野田」
「ええ、あの人ヤバいって噂ですよ……」
「信じられんな」
興味が無いわけではないが、愉快な話題でもない。
もうすぐ本人も出社する頃合いだ。
適当にこの話題を締めなくてはと考える。
「でもなんでお前、その話を知ってるんだ?」
「いえ、それは……」
後輩が口をつぐんだところで、ちょうど話題の美柑さんの姿が見えた。
いつになく色っぽく見えるのはきっと気のせいだ。
俺はどうやら感化されやすいようだ。
その日、定時前に事務所に戻った俺は書類整理をしながら朝の話を思い出していた。
チラリと美柑さんを見る。
正直なところ、噂話の真偽が気になる。
幸い今日は事務所内に俺と彼女しかいない。
彼女はいつもどおりうつむいたまま、黙々と仕事をこなしている。
左手で電卓を叩くのってなにげにすごい技術だな。
(ええい、何を気にしてるんだ俺は!
でもこうなったら仕方ない。セクハラにならない程度に尋ねてみるか……)
自販機で彼女が好きそうな飲み物を購入して、そっと視界の脇においてみる。
「えっ、これは」
「いつもお疲れ様です。よかったらどうぞ?」
「あ、ありがとう……ございます……」
少し照れたように笑いながら、美柑さんは飲み物を受け取ってくれた。
「柏井さん、おとといは営業の皆さんは飲み会だったんですか?」
「うん、そうだけど」
「大野田くんは元気でしたか?」
「あいつはいつも元気だから」
俺の言葉に美柑さんが微笑む。
事務作業に疲れたのか、ギュッと目をつむってからメガネを外した。
普通に可愛い。
「そういえば、飲み会の席で美柑さんの話になったよ」
「えっ!!」
思わず飲み物を落としそうになる彼女。ドジっ子属性も持っているらしい。
話の中身について興味津々といった様子だったので、遠まわしに内容を伝える。
セクハラギリギリラインの真面目なエロ話だ。
「あ、あの……誰がそんな話を?」
「それは言えないけど、ちょっと気になったものだから……単なる噂だよな! ごめん、引き止めちゃって」
引き際を感じた俺はそのまま背を向けて距離を取るつもりだったが、なんと彼女の方から俺を引き止めてきた。
「どこまで知ってるんですか、その話……私、気になります」
軽くスーツの袖を引っ張っていた彼女は、事務所の出入り口をちらりと見てから両手で俺の腕にしがみついてきた。
誰も来ないことを確認したのだろう。
「嘘だろ……」
たしかに感じる彼女の体温と感触に戸惑う。
こんなところを見られたら彼女よりも俺のほうが叱責の対象になるだろう。
まさかそこまで計算して?
「誰にも言わないでほしいです」
「もちろんだよ、俺だってそんなつもりで聞いたわけじゃない」
できるだけ平静を装う俺を、美柑さんはじっと見上げてくる。
予想以上にきれいな目尻に見惚れてしまう。
「事務所の皆さん、私のことなんて興味ないですよね」
大きな目で見つめられているだけで沈黙に耐えられなくなる。
「でも、まったく興味が無いと言ったら嘘になるかな」
「えっ、どうしてですか……」
「美柑さんってそんな好色なイメージはないからさ。少なくとも俺はそう思ってる」
こう言えば安心してくれると思ったのだが、彼女の顔色は冴えない。
軽いため息を吐いてから美柑さんは目を伏せた。
「そんなに私、安全そうに見えます? 色気ないのかな……」
「いやいや! そういうネガティブな意味じゃなくて、真面目で優しくておとなしいっていうか」
「違います」
即座に否定してきた!?
「ち、違うのか……」
「お褒めいただけるのは嬉しいですけど、おおむねその噂通りなんです……」
体を小刻みに震わせて顔を赤く染める彼女。
一つ一つの仕草がギャップ萌えと言うには軽すぎる強烈な色気を放っている。
さすがにもう我慢できなくなってきた。
「じゃ、じゃあさ! 俺とエッチしてみない? いいえ、お願いします!」
「!?」
頭もちゃんと下げる。こういう話はきちんとお願いしなきゃ駄目だ。
よく曖昧にして、冗談だよと言って逃げる男がいるけど俺は違う。
性交渉は男の真剣勝負。ふざけた笑顔はいらない。
覚悟を持ってダメ元でお願いしてみると、急に彼女が視線をそらし始める。
そしてこれは……脈アリだ。
「じょ、冗談は駄目ですよ……私なんて……」
「いきなりごめん! でも今の美柑さん、すごくきれいだから」
「えっ! そんな、本当ですか……急に……やだ、ドキドキしてる私」
美柑さんは耳まで真っ赤にしながら顔を隠すように俺の腕にギュッとしがみついてくる。
もはや可愛い。普通に可愛すぎる反応に俺のほうがぶっ壊れそうだ。
「会議室、空いてるよね……打ち合わせ、しない?」
「今ですか? その前に本気ですか?」
「もちろん本気だよ」
「わかりました……」
美柑さんは会議室の鍵を取り出して、俺に手渡す。
そのまま彼女の手を握って、俺はエスコートするように背中に手を回した。
会議室に入ると、彼女は正面から俺に抱きついてきた。
細い体がしなだれかかってくるのを受け止めながら、髪の香りを味わう。
黒髪からほのかに香るのは彼女の体臭なのだろうか……とくに不快感はない。
「えっちは、きらいじゃないけど……ひとつだけお願いがあるの。それを聞いてくれるなら……」
「い、言ってみて……」
真剣な声で彼女がつぶやく。
なんだろう。高額なプレゼント?
それとも会社で何かを優遇しろとかそういう類なのだろうか。
彼女の考えていることが読めない。
「私がもし、柏井さんを満足させるようなセックスをしてあげたら、その後でおちんちん見せてくれる?」
「っ!? ま、まあ……それくらいなら、いいけど……」
「ウン、じゃあしよ? 今の約束、絶対だからね」
ホッとしたように息をつく彼女。
かわいい……美柑さんってプライベートだとこんな笑顔を見せるんだ。
思わず彼氏に立候補したくなってしまうほど魅力的だ。
もっとも、彼女だって心に決めた相手はいるんだろうけど。
(だが今は、俺のものだ……!)
余計な雑念を振り払い彼女を抱き寄せる。
ちゅ、ううぅぅ……
「っ!! そんな、いきな、り……ぅんっ、んんーーーー!!」
少し荒っぽく顔を引き寄せ、唇を奪った。
キスをする直前、彼女が「はぁ♪」と呻く。
めちゃめちゃ色っぽい。
同時に後頭部や首筋、背中を優しく撫で始める。
「あんっ……すごい、上手な触り方……」
いきなりバストや股間に触れるような真似はしない。
あくまでもゆっくり相手の性感を高めていく。
「柏井さんと、こんなに近くで……くふぅっ、手付きがえっち……」
「もっとエッチになれるよ、俺は」
「あっ……」
きれいな髪をかきあげ、首筋に軽くキスをする。
たったそれだけでカクンと膝が折れた。
「私のこと、好きにして、いいよ……」
瞳を潤ませて呼吸を乱す美柑さんを優しくソファに横たえる。
体の小さい彼女を寝かせるには三人がけのソファは広すぎた。
不安そうに俺を見つめる顔を手でなでながら、ふっくらしたバストを服の上から刺激してみる。
「んう、はぁ、ぅくっ!」
「ずいぶん可愛い顔するんだね……これじゃあ言い寄られた男は堪らないや」
「そんなこと、ない、もんっ……あああああああぁぁっ! 声、出ちゃうううう!!」
制服の隙間から指を忍ばせ、柔肌に触れる。
そのままブラウスまで脱がせて片方だけ露出させる。
胸は大きくないかもしれないけど形が良い。
乳首もピンク色で全体的に柔らかさが抜群だ。
男好きする体であると言えるだろう。
そのまま指をスカートの中へ忍ばせてみると、淫らな沼地はすっかり潤みきっていた。
「こんなに濡らしてる……美柑さん、エッチすぎだよ」
「焦らさないでぇ……」
「ここはどれくらい敏感なの?」
いきなり二本の指を差し込んで見る、が抵抗がない。
しかしすんなり受け入れてからすぐに指先が締め付けられた。
「!!!!!」
挿入した指はそのままに、親指でクリトリスを強めに押して見る。
ビクンと彼女の体が跳ねた。
そのまま三本の指をくねらせ刺激を強めていく。
「美柑さん、じっとしてないと駄目だよ」
「らめっ、こんなに、こちょこちょされたらかんじすぎて、い、イっちゃ、ふああああ!」
クリトリスを優しく転がしながら内部をくすぐり、出し入れを行う。
喘ぎを抑えようとする口元が色っぽくて、思わずキスをしてしまった。
「んうっ、んーーーーーーーーっ!! あ、ああああぁぁぁ……」
キスとクリ責めの同時攻撃に、彼女はあっさりと絶頂してしまう。
やはり噂は真実だったみたいだ。
ただし、この程度で淫乱と呼ぶには……
「今度は俺が楽しませてもらうよ」
「え、あ、まって! まだイったばかりだから、ふあああああああああ!!」
その先の言葉を待たずに俺は狭そうな膣内に肉槍を挿入した。
するとさっき指先を締め付けていたのと同じようにペニスがキュンキュン締め付けられる。
(や、やばっ、だめだこれ……我慢出来ないやつだ!!)
ビュクウウウウウウウウウッ!!
「ふあっ、ああああああああああ! 熱いいいいーーーーーーーーー!!」
中出しされた彼女が叫ぶ。
情けないことだが、思い切り奥に差し込んだ結果……一回も腰を振ることなく俺は達してしまった。
ニュルニュルした膣内と絶妙な暖かさ、それに強烈な締め付けが一瞬で俺のペニスを昇天させたのだ。
流石にショックではあるが、気持ちよすぎたのだ。仕方ない。
「はぁ、はぁ……美柑さんの膣内、すげー良かった……」
呼吸が整ってから俺は彼女に声をかけた。
中出ししたことを咎められるだろうと思っていたが、美柑さんの反応は意外なものだった。
「……イヤ、おちんちん!」
「えっ」
「おちんちんもっと見せて! もっといじらせてよおおぉぉ!」
「え、えっ!? ちょ、どうし……」
ガバッと起き上がり、俺と体を入れ替えた。
ソファに座らされた俺に跪くようにしながら両脚の間に体を割り込ませてきた。
「おちんちんください!」
「えっ、だって、いま……」
「くれないなら自分でしちゃうもん! えいっ」
ぎゅううう!
「うああああっ!?」
力いっぱい握られた、が……痛くはない。
そして彼女はブツブツいいながら肉棒を上下にしごいたり、皮を伸ばしたりしている。
(なにをしてる、んだ……でも、なんだこれ……だんだん気持ちよくなって……!)
自分でも信じられないことだが、全く抵抗する気になれなかった。
はじめは乱暴だった彼女の手付きが、どこか大切なものを愛でるような動きに変わる頃には完全に骨抜きになっていた。
そして息を弾ませる俺を確認してから、美柑さんは左腕で俺の顔を抱きしめてきた、
右手は相変わらずペニスを掴んだままだ。
「後輩の大野田くん、なんで月曜日お休みだったのか知ってる?」
「なにを、急に……」
「あれはね、日曜日の夜に私に付き合ってもらったから」
大野田が彼女と? 何を?
すでに溶けかかっている頭の中で反芻する……が、混乱するばかりだった。
いつもと違う妖しげな声で美柑さんに囁かれ、背筋がゾクゾクして体中がしびれてきた。。
「今みたいにエッチして、おちんちん触らせてくれたの」
「え……あ、まさかあいつが!?」
後輩社員がこのテクニックの餌食になったというのも驚きだが、大の男を動けなくなるまでスタミナを搾り取ったということか。
「でも、全然ダメだったの」
「え……」
「私のフェラでほんの数回チュポチュポされただけでイっちゃうから……」
フェラ、と言ったかこの事務員。
それはあまりにも甘美な響きだった。
美柑さんの上品な唇でフェラ……我慢できるのか。
腟内があんな名器だと、上の口も相当な凶器なのではなかろうか。
そんな気持ちを察してか、彼女がクスッと笑った。
「柏井さん、試してみる……?」
ほとんど条件反射のように俺はその言葉にうなずいてしまう。
後輩を瞬殺したフェラ、俺も味わってみたい……
「おちんちん、優しくしてあげる」
ぺろりと一度、手のひらを軽く舐めてから肉棒が彼女に包み込まれる。
(ううううぅぅ!)
それだけでも相当な刺激だった。
一度吐き出していなければ射精してしまったかもしれない。
「またこんなに固くしてくれたんだね……ちゅ♪……んふふ」
「……美柑さん、エロすぎるよ」
「ありがと。じゃあそろそろ……いくよ? ……んっ、おおき……」
「くっ、あああぁぁ!」
ゆっくり皮を剥いてから、優しく口付けをしたペニスを大切そうに口に含む。
その一連の動作がとても卑猥で、清らかで、男心を揺さぶるものだった。
「おちんちん、そっと舐めてあげる……そうしないと、すぐにイっちゃうから……」
蕩けた口の中に包まれると、それはまた別次元の快感だった。
「レロ……チュル、チュッ……このおちんちん、えっち……」
問いかけるように、尋ねるように彼女はペニスに最適な刺激を送り込む。
舌先でクニクニと尿道をいじられ、裏筋をなぞられる。
「怒ってるみたい、裏筋も冷ましてあげるね……おちんちん、あぁぁ……すきぃ……」
うっとりした口ぶりで美柑さんは愛撫を続ける。
男だったら我慢できるはずのない、愛情あふれる口腔性技。
小さな舌がチロチロと俺自身を削り取っていく。
「おちんちんよろこんでる、うれしい……もっと甘やかしちゃう……」
カプッと先端を咥えたまま吸引され、ソフトクリームのように舐め回される。
唇は底なしに柔らかく、舌先は的確にザラリと感じる場所を舐めあげる。
当然、俺の背筋が跳ね上がる。
「ふふっ、かわいいんだ……」
同じ動作を数回繰り返しながら、微妙に角度を変えてくる。
まるで手探りで俺の性感帯を探しているかのように。
「食べちゃう……ンプッ、クプッ……んふ、エッチなニオイ……」
ちゅっちゅっちゅっちゅ♪ ちゅっちゅっちゅっちゅ♪ ちゅっちゅっちゅっちゅ♪ ちゅっちゅっちゅっちゅ♪ ちゅっちゅっちゅっちゅ♪ ちゅっちゅっちゅっちゅ♪ ちゅっちゅっちゅっちゅ♪ ちゅっちゅっちゅっちゅ♪ ちゅっちゅっちゅっちゅ♪ ちゅっちゅっちゅっちゅ♪ ちゅっちゅっちゅっちゅ♪
顔を前後に動かしながら、何度も何度もキスをしてくる。
俺はその小さな吸着音に合わせるように情けない声を断続的に漏らしてしまう。
「我慢できないの? じゃあ……ふふふふ」
「!!」
美柑さんは俺をソファに転がしてから覆いかぶさってきた。
シックスナインの体勢だ……そして彼女の太ももに顔が挟み込まれた。
(い、息が……!)
呼吸が苦しい、が彼女はお構いなした、
「叫んでもいいよ、柏井さんのお口……ちゃんと塞いでてあげるから」
眼の前に彼女の蜜壺がある。
俺を一瞬で昇天させた魅惑の膣内を思い出し、その思いが肉棒に伝わっていく。
彼女がクスッと笑う。
「犯されるのって気持ちいいよね。さっき私にしてくれたこと、そのまま返してあげるね」
俺が全く見えない角度で肉棒が舐め上げられていく。
彼女の舌先で削られ、口の中で清められ、溶かされていくようだ……
(こんなの、ぜったい……うあああ、き、きもち、いいいいいいいい!!)
もがこうとしてもすでにスタミナを奪われ、しかも太ももで顔を固定されていた。
そして一方的に快感を与えられ、俺はその心地よさに悶え狂うしかなかった。
「ふふっ、息が当たるとくすぐったいよ」
緩慢な刺激がたまらない。
俺が動かないように再び太ももがきゅっと締まる。
確実に俺を高めていくフェラに為す術もなく喘がされる。
「もう抵抗しないんだね。気持ちよくなっちゃった? それとも……抵抗できないくらい心が溶けちゃったの?」
正確には抵抗の意志はあるが抵抗できないのだ。体に力が入らない。
両手で彼女の太ももを外そうとしても無理だし、触っているだけでまた気持ちよくなってしまう。
「おちんちん、震えてる」
軽く息を吹きかけられる。それだけで背筋が震える。
「もう出したいのかな? レロォ……ふふっ、もうちょっと我慢しようね」
我慢を強要しつつ、こちらが耐えられない刺激を与えてくるのだ。
裏筋を舐めていた舌先が反対側、広くなっている部分にクルクルと文字を描く。
「舌の先でいいこいいこしてあげるから……ペロペロペロペロ……ねっ、優しいでしょ」
すでに性感が高まり、敏感になっている場所をなぞられると腰だけが情けなく震えた。
精液が出るような刺激ではないが、延々と生殺しにされているような感覚。
「おちんちん、すごくかわいい……チュ……」
柔らかく口づけをされても、それは快感をお預けされた烙印に等しかった。
その力加減が絶妙で、俺は悶えることしかできない。
「ここが感じるんだよね。なんとなくわかっちゃうんだ、私……」
「なん、で……んはああああああああああ!!」
「おちんちんが喜ぶと、ほんの少しだけピクってしちゃうね。これはみんな隠せないんだよ~」
ツンツン、ツプウウッ!
舌先で、性感帯を貫かれた。感じやすい場所というのを完全に把握している。
男が感じる場所を調べて、美柑さんは集中責めするのが好きなんだ。
とんでもないドSだ……でも今更どう仕様もない。
「よく見てて……喜ばせてあげる」
ペニスに対する執着心と、男を喘がせる性癖が見事にマッチしている。
ペロペロペロペロ……
「うああ、ああああ、そこだめええええ!!」
「んふ、わかった? 我慢出来ないでしょ」
彼女がゆっくりと体を起こした。
太ももの圧迫感は消えたが、俺は身動き一つできなくされていた。
「もっとゆっくり味わっていいでしょ……おちんちん、こんなに我慢してくれてるんだもん」
そしてまた膝の間に体を滑り込ませて、頬ずりするように彼女はペニスを弄ぶ。
本当に先端を頬にこすりつけてきた。これがまた悔しいことに、気持ちいい……
「柏井さんも気持ちいいのは好きでしょう? 私、おちんちんが喜んでるのを見るのが好きなの……」
ふにふにした感触の女性の頬に亀頭がすりおろされているように見える。
やがてその行為に飽きた彼女は、正面からじっとペニスを見つめだした。
「もっといっぱい喜ばせてあげる。我慢汁もミルクもいっぱい搾ってあげるよ」
「まって、もうやめ……」
「我慢強い尿道、ペロペロで開いてあげるね」
その言葉通り、長い舌を伸ばしてフェラが再開される。
チロチロと舌先だけを集中的に、焼けるような刺激が俺の下半身を支配する。
「チュ……我慢強い子は好きだよ……んちゅ、はむっ!」
「がああっ、あ、あっ!」
「んふふ……クチュ、クプププ……」
溶かされる……ゆっくり味わって、溶かされていくんだ……
ペニスだけではなく全身が彼女の口の中に包まれているような錯覚。
「お口の中だと無防備にされちゃうね?」
「だめ、きもちよすぎるううぅぅぅ!」
「慌てなくていいよ……確実にイかされちゃうんだから。ゆっくり楽しんで? 私のお口の中に溺れてね……」
不思議なことに、最初よりもこの刺激が心地よく感じだしている。
もはや俺の性感帯は完全に彼女に把握されてしまったのかもしれない。
なめらかに滑る舌先の動きに追従して、全身が歓喜の波に押しやられる。
軽く吸引されたり、愛おしく口づけされたりすると特にたまらない。
すべてを捧げたくなるようなフェラだった。
「きもひい? チュルルルル♪ おちんちんが気持ちいいところ、全部わかっちゃったかも……」
「え、そんな……!」
俺の声を聞いて疑われていると感じたのか、美柑さんはニヤリと笑った。
「こことか」
裏筋をピンっと弾かれる。
「んはあああああああ!!」
「ここも……クチュウウウウ♪」
続いてカリ首を一周、ねっとりとなぞられた。
全身が脱力して、残された性感神経だけが更に彼女に嫐られる。
「あ、あ……ひああぁぁ……!」
「ふふふ、もっと可愛い声で鳴いてみせて」
こんな情熱的な刺激を与えられたら、後輩でなくとも休み明けに会社に来れないだろう。
そしてそれを知ってしまった今、俺は彼女の愛撫から逃げることなど全く考えられなくなっていた。
チロチロチロ♪
「あ、ああああぁぁーーーーーーーーーーーっ!!」
真っ赤な舌先が蠢くたびに俺は踊る。
「こんなの、うあっ、ああああ、腰が……!」
しかし、ガッチリと腰には彼女の腕が絡みついている。
振り解けるわけがない……
「美柑さん、イかせて……」
両手でペニスが握られている。
そして先端を溶かすように、彼女はペロペロと俺自身を舐め続けている。
献身的な行為に見えるが、これはすべて彼女にとっては自分自身のためのものだ。
男性器を観察し、挑発し、籠絡する。
どんな男でも最後は懇願するしか選択肢がなくなってしまう。
「イかせて、おねがい、こんなのおかしくなるううぅぅ!!」
「クプッ、チュププ、レロォ~~~~♪」
口を大きく開けて亀頭をくわえ込む美柑さん。
だがこれでは達することができない!!
口の中ではほとんど刺激が与えられず、ただ保温されているのみ……
「あ、ああああ、あ、ああああ! それ、きもちいい、けど、イけないよおおおお!」
「ふふっ、もう降参するの?」
「うああああ、う、うん……!!!!」
「お口で優しくされただけで頑張れなくなっちゃうんだ」
「そんな……!」
こんな清楚で真面目に見える彼女が、とんでもない性癖の持ち主だったなんて!
だが気づくのがおそすぎた。
もはや俺に打てる手がない。
せいぜい彼女が気に入るようにおねだりして、この快楽地獄を終わらせるしか無いのだから。
「どうすればいいかわかるよね? 柏井さん」
「くっ……」
「おとなしくて真面目そうな私に、まいりました……って言ってみて?」
「……」
れろんっ♪
「んはあああああああああああああああっ!!!」
たった一度、敏感に火照った場所を舐め上げられただけで俺のプライドが崩れ落ちた。
恥ずかしげもなく俺は彼女に懇願するしかなかった。
「ま、まいりまし……ングウウッ!?」
すると膝立ちになった彼女が俺の体を再びソファに横たえた。
そして微笑みながら俺に覆いかぶさり、さっきと同じように太ももで俺の顔を固定した。
同時に彼女の顔が沈み、ペニスを深くくわえ込む。
目の前にある秘裂と太ももの感触、そして下半身を包み込む彼女の唇に俺は負けた。
ビュルッ、ビュクッ、ビュクッ、ビュクウウウウウウウ!!!
「美柑さんのニオイが、頭の中に回って……ああああ、もうだめだっ! イくっ、イくうううううううううう!!」
言葉より先に俺は果てていた。
何度も何度も、断続的に精が迸る。
ガクガク腰を震わせながら俺は何度も敗北した。
しかし……、
「ふふふふ……今度は私の手で」
「んうううっ!?」
「もう一度犯されて? 私のことだけ考えてね……」
身動きがとれないまま、下半身がゾワゾワと痺れだす。
さんざんフェラで搾り取られたあとだというのに、今度はさらに強い刺激が……!!
「舌先でペロペロされて降参しちゃうおちんちん、今度は私の指で参らせてあげる。
もう感じるところわかっちゃうの……ここ、だよね?」
くにゅうっ♪
「んふうううううううううううううううううううう!!!!」
「はい、当たり♪ 優しくしてあげる」
「ああああぁぁぁ……」
絶対逃さないという意思表示のように、太ももが俺の顔を強く締め付ける。
シックスナインの体勢、それも一方的な女性有利なままで俺は再び精液を搾り取られようとしていた。
「くっ……」
「屈辱的でしょ? でもこうすればおちんちん隠せないよね。手のひらのくぼみの中に溺れさせてあげる……」
彼女は亀頭に手のひらを当てて、クルクルと回し始めた。
尿道付近が焼けるように熱くなる……が射精できない!
だが射精とは違う何かが俺の腰を突き上げる。
これはヤバイ、本能的にわかる……で、でもおおおおおお!!
「うあっ、ああああああああああああううううううううううううう!!!」
「そんなに叫んだらビル中に聞こえちゃうでしょ? このままおとなしくお潮吹いちゃいなさい♪」
ぎゅううううううっ!!
そして、俺は人生で初めてのなにかを放出した……
◆
会議室の時計を見ると、まだ一時間も経っていなかった。
「もうそろそろ時間ですね。お疲れ様でした」
衣類を整えながら彼女は言う。
俺はまだ呼吸すら整っていないというのに。
「はぁはぁはぁはぁ……」
「続きは今度のお休みの日にしましょう」
「え……」
「こんな短い時間じゃ私、満足できませんから」
信じられないが、彼女はまだ満足していないという。
さんざん俺を蹂躙し尽くしたというのに、まだペニスをじっくり見ていないと言い放った。
「日曜日でいいですよね?」
「あ、ああ……」
「今のうちに月曜日の午前休みの届けを出しておいたほうがいいかもしれませんよ」
極めて事務的に彼女は言った。
いつもどおりの、真面目そうな口調で。
だがその直後、
「たっぷり焦らしまくって、最高の射精をさせてあげる……」
「っ!!」
両腕を俺の首に回し、柔らかなバストを押し付けながら耳元でそう告げたのだ。
俺を惑わせたあの色っぽい口調で。
「柏井さんもそのほうがいいでしょ? おちんちんさえ見せてくれるなら、必ず満足させてあげますから」
一つひとつの言葉が俺に突き刺さる。
さっきまでの快感がじわりと蘇ってくるようだった。
こんなことを言われては拒むことはできそうにない。
その言葉に俺はうなずきながら、来週の月曜日を休むための届け出を決意するのだった。
(了)