『情報提供者の罠』




 よく晴れた日曜日の午後、僕は都内某所の電気街にいた。
 外国人観光客と中学生が多い見慣れた光景だ。
 週末はイベントなどもあるのでいつもより人通りが多く感じる。


「そろそろ待ち合わせの時間だ……」

 視線を落としてスマホの時計を見る。
 まだ約束の五分前だけど気持ちが浮足立ってきた。

 今日はネットで知り合った人物との打ち合わせ。
 お互いに初対面だ。
 話の内容的には資料提供ということになる。
 数日前に僕あてにこんなメッセージが届いたのがきっかけだった。


『そうすけ先生に有益な情報を提供できると思います。あたしは……』

 複数に分けた長いメッセージだったけど、要約すると自分の体験談を直接聞いてほしいということだった。
 そんな機会に巡り会えたことなんて今まで一度もなかった僕は、その話に食いついた。

 僕は趣味で成人向け小説を書いている。
 誘惑とか魅了などの状態異常が大好きで、そんな話やイラストを書き溜めていた。

 ハンドルネームは「そうすけ」と名乗っている。
 本名とはかけ離れているし特に深い意味はない。

 長く続けていると、中には作品を気に入ってくれる人もいる。
 いわゆるファンの方々と直接お話してみたくなり、サークルを作った。
 今度の夏も規模の大きい同人即売会に参加する予定だ。

 丁度そのためのネタに難儀していたところで届いた先ほどのメッセージは、まさに渡りに船だった。


「しかし本当に来てくれるのだろうか。
 まあ冷やかしだったとしてもそれはそれでネタになるかな」

 今回会うことになった相手のハンドルネームは「ちなみん」さんというらしい。
 自称女性。嘘をつく理由もないだろうから本当だろう。
 容姿はデフォルト画像(=わからない)。
 フォロワー数やツイートの数からして最近登録した人に違いない。

 最初はいかにも怪しい出会い系じゃないかと疑ってみたけど、送られてくるメッセージはコピペ文章でもないし僕の好みを理解したものだった。
 なにより熱心に送ってきてくれたのが嬉しかった。

 こういう人なら少しは期待してもいいだろう。

 しかもあちらからの条件として、待ち合わせ場所で「ちなみん」さんを見て僕が少しでも不信感を抱いたらそのまま帰っていいらしい。
 もともと相手の容姿は気にならないし、新作につながるような有益な話が聞ければ僕はそれでいいのだけれど。


「あの、もしかして……そうすけ先生ですか?」

 不意に背後から遠慮がちに声をかけられた。
 透き通った綺麗な声だった。

「えっ!」

 慌てて振り返るとそこにはオレンジ色のサマーニットを着た女性がこちらを覗き込んでいた。
 涼し気なトートバッグを肩にかけ、白いミニスカートとサンダル姿。
 ふわっとした黒髪に、清潔感のある装い。
 わりと僕好みの女性だと思った。

「……」
「あ、すみませんっ! やだ、人違いしちゃったかな……」

 呆けている僕を見てその女性は口元を手のひらで押さえる。

 事前にお互いの容姿についてはほとんど情報交換していなかった。

 僕は彼女の服装を知らない。
 そして自分は黒い帽子とメガネをかぶっているとだけ伝えた。

 たったそれだけの情報で相手が自分にたどり着いたことに驚きを隠せないでいた。

「いいえ、確かに僕がそうすけですけど……あなたが『ちなみん』さんですか」
「はい! あたし、ツイッターで連絡したチナです。はぁ、よかったぁ! 声掛ける相手を間違えなくて……」

 自分のハンドルネームを略すんだ……それは別にいいか。
 僕の言葉を聞いて彼女が表情を緩めた。
 笑顔もけっこうかわいい。

「はじめてのときは緊張しますよね」
「あ~っ、今の言葉はなんだかエッチですぅー!」
「ご、ごめんなさい。初めて会うときはっていう意味で、他意はなかったのですが……」
「えへへ、いいです♪ 行きましょう、センセー」

 僕たちは事前に打ち合わせしていた「会議室」へと向かうことにした。







 さて今回の話し合いは実体験に基づく情報提供がメインだ。
 当たり前だけど成人向けの話になる。
 公衆の面前で猥談はできない。

 だから密室が必要だった。
 カラオケボックスという、手軽でありふれた「会議室」が。

 部屋に入ってドリンクを頼むと、さっそく僕は彼女と話し合いを始めた。

 援助交際について、男を狂わせる性技について、名器について……
 普通なら生身の人間相手、しかも異性に真面目に質問できる機会なんてほとんどない。

 それ故に聞きたいことは山ほどあるのだ。
 今日のチャンスを逃してなるものかと、僕は興奮気味に話を聞き続けた。

 時々彼女の方からも僕へ質問を投げかけてくる。

「そうすけ先生はどんな風にお話やイラストを書き始めるのですか?」
「えっ、僕ですか! そ、そうですね……お話を書くときは実体験が一番望ましいですが、空想上の相手も多いので。たとえばサキュバスとエッチするわけにはいきませんし」
「ふむふむ。じゃあ相手に演技してもらうとか」
「都合よく相手してくれる人なんていませんので自分でポーズ決めてみたり?」
「あはは、わかりますぅ~!」

 わかるんだ。
 可愛らしい声で、しかし真面目な表情で彼女は小さく笑う。
 見た感じオタクっぽくない女性がエッチに精通しているというシチュだけで、かなり興奮できる。

 それにしても、なるほど演技か……ありだけど難しいかも、などと考えながら言葉を返す。

「頼める相手が居たとしても、あまり要求が多すぎると不自然になっちゃいますし」
「じゃあもしもですけど~、あたしに対してだったらどんな演技を要求します?」

 ちなみんさんに頼む?
 な、何を……と考えるだけで少しドキドキしてしまうな。

 一度意識してしまうと急にこの状況がエロいものに感じてしまうから厄介だ。

 カラオケルームに二人きりって、なにげにやばくないですか?

「えっ、それは、ちょっと……う、うーん、えっと、答えにくいかな」
「ふふふ、冗談ですよー。本当にまじめなんですね、そうすけセンセー」

 どうやらからかわれていたようだ。
 その時、正面の一人がけソファに座っていた彼女が、ゆっくり立ち上がって僕の隣へ場所移動してきた。
 まるで恋人同士みたいにぴったりと張り付くようにして……


「ちなみんさん!? あっ、あのっ!」
「そうすけセンセー、どうしたんですかぁ?」

ピトッ……

 僕の右足と彼女の左足が、衣服という薄皮一枚隔てて触れ合う。
 短めのスカートから伸びた白い脚がほんのり温かくて、とびきりやわらかい……

「ひっ、あ、あまりくっつかれると、ちょっと困るんで……」
「もしかしてあたし、嫌われちゃいました? はうぅ、チナ悲しいです~」
「違いますよ! え、ええっと、そんなことをいわれましてもっ」

 思わず好きですといいかけて焦る。
 慌てだす僕を見て彼女が笑っている。

 手玉に取られてるみたいでドキドキが高まってしまう。
 きっと彼女のほうが年下なのに……

 それに僕に対して慣れ始めてきたせいなのか、ちなみんさんの話し方までも変化している!

 右手でペンを握る僕の手に、今度は遠慮無しで彼女の細い指が絡みついてきた。

キュ……ッ!

(や、やわらかい……あぁ、女の人に触られてる!)

 思わず強く拳を握ってしまう。
 自然な流れで動きを封じ込まれたように僕の呼吸がどんどん乱されていく。

 普段エッチな話を書いているからと言って、自分自身は異性に免疫がないのだ。
 しかもいつものクセで、勝手にこの先の展開を考えてドキドキしてしまう。

 二人きりの部屋、異性と密着……
 駄目だ、不健全な期待をしてしまう。

 自分にとって都合よくて、恥ずかしくて口にできないような妄想ばかり溢れてくる。


「あのですね、ええと、ちな、みんさん……本当にもう少し離れていただかないと」
「いただかないと?」
「一応、ここは密室ですし。男女ペアですから何が起きてもおかしくないっていうか……」
「何か起きちゃってもいいんじゃないですかね?」
「あうっ!?」

フニュン、クニュッ……!

 突然右腕に柔らかいものが押し当てられた……。
 気持ちを落ち着かせるために物理的に距離を取る提案をしたというのに、逆に彼女は距離を縮めてきたのだ。

(お、おっぱい! おっぱいが触れて、それにあし、あ、あし! 脚もおおおおお!!)

 僕は軽いパニック状態になっていた。
 細くて長い左足が、ゆっくり僕の右足……ふとももに乗せられていた。
 つま先から覗くキラキラ輝いてる足の爪に目を奪われ、ふくらはぎの柔らかさがジーンズ越しに伝わってくる。

(こんなのやばい、絶対勃起しちゃうッ!! 抑えろ自分ッ)

 頭の中でさらに淫らな光景が広がっていく。

 密室で、可愛らしい人に迫られてる自分。

 現実が妄想を上回りすぎてる。

 でもこんな状況が許されていいのは二次元だけなのに。

 このままもし自分から手を出して、誘っている様子だった彼女が突然拒否して絶叫しようものなら……

 きっとすぐに店員さんがやってきて僕は逮捕。
 次の日の新聞の記事にされてしまうだろう。

 もちろんネットでも炎上、イベント参加もなし、アカウント停止、その他諸々社会的な制裁が……

 だからこそ今は動けない。
 なんとかして言葉だけで彼女を自分から遠ざけなければならない。


「ち、ち、ちなみんさん? こんなに近づいたら、僕だって、お、男なんですし!」
「そうすけセンセー、今の言葉は~、センセーがチナのことを襲っちゃうぞーって意味ですよね?」
「へ……いえいえいえいえ! けっしてそんなつもりないしっ! そういうことでは」
「別にチナはそれでもいいですけど?」

 さらにぎゅっと僕の腕にしがみつき、上目遣いで彼女が続ける。
 しっかりと僕を見つめながらの甘ったるい口調は、すでに誘惑から洗脳に移っているようだ。

「ふぇっ、う、嘘でしょ……い、いいの!?」
「はい。でもきっと、立場が逆になっちゃうとおもいますよー?」

 彼女のいたずらっぽい言葉が頭の中をぐるぐる回る。
 直接耳の中をねっとりと舐められたみたいに全身がゾクゾクし始める。

 まさか彼女は――!

「チ、チナさん!?」
「ねえセンセー……どうして自分が襲われちゃうかもって考えなかったんですかぁ?」

 彼女ははじめから僕を襲うつもりだった!? 

 そんな事を考えてるなんて……

「僕が、いやちが、ぼ、僕を? なぜ――」
「ねぇ、どうなんですかぁ?」

チュ……♪

「あーーーーーっ……!」

 接触するとびきり柔らかな唇のせいで息ができなくなる。
 そしてもう一度、美しい彼女の顔が近づいて、やさしく呼吸が奪われた。

 その瞬間僕は脱力してしまう。

「んふ……♪」

チロチロチロ……

 口の中へ小さな蛇が侵入してきてくすぐってきた。
 このままじゃ呼吸だけじゃなくて理性まで奪われてしまいそうだ……

 なんとか息を吸うと、ちなみんさんの髪からほんのりと甘い果物の香りがした。

 いつの間にか僕の左手首がしっかりと握られていた。
 背中から回された彼女の左手が僕を捕まえていたのだ。

 嘘だろ、まさか本当に僕が逆レイプされる……ありえない、そんなの絶対!

「ちち、チナさん!? あの、あのっ!!」
「クスッ、センセー……もう何も言わなくても、わかるよね? うふふふふ」

 わからない。
 困惑したままの僕は動けない。
 ただ頭の中が熱くなってぼんやりしてる。
 指が絡みつく右手が熱すぎて、しっかり握られた左手首も溶けそうで、密着した彼女の左脚が柔らかすぎて正気を保てそうにない。

 それからかなりの時間が過ぎて、やっと唇から解放された。

「ちなみ、んさん……ぼ、僕にどうしろっていうんですか……」

 呼吸を整えながら、絞り出すように僕が言うと彼女は嬉しそうに笑った。
 笑顔がさっきよりも可愛くなってる……

 すでに僕の心が溶け始めてるけど、まだ実際には何もされていないに等しい状況なのに。

(あっ、両手が自由だ……まずい、このままじゃ!)

 今なら引き返せる、力いっぱい彼女の細い体を弾けばいい。
 それなのに僕の体は全く動こうとしなかった。恥ずかしさと情けなさで僕は視線を落とした。

(こんな可愛らしい人が、清楚な女性が僕を誘惑してくる。密室で体を預けて甘く囁いてくる……しかもキスまでされちゃった)

 そう、まるで自分がいつも考えている小説みたいに。

 呼吸を乱してじっとりと汗ばむ僕を見つめながら、ちなみんさんが静かに告げる。

「センセーがいつもお話に書いてるみたいなゲームしましょう?」
「ゲームって? まさか!」
「ふふっ、そーです。バトルファックと色仕掛けってやつです」

 視線を上げて彼女の顔を見る。
 その表情は、すでに僕に対して圧倒的に優位に立っている女性の顔つきだった。







 カラオケルームの中はそれほど広くもないし、出入り口は半透明で気持ちが落ち着かない。
 人から覗かれる可能性だってあるし、一説では室内の監視カメラの映像は店員さんたちに筒抜けだという。

 それでも僕の心はすでに、彼女が口にしたバトルファックという言葉に傾きつつあった。

 実際にそんな事を経験したことはない。
 こんなニッチな嗜好を理解してくれる人は少ない。
 だからこそ試してみたいのが本音だ。

 しかし、出会ってからこの瞬間まで、目の前の女性が何を考えているのか今ひとつ掴みきれていない。


「あの、ちなみんさん……バトルファックって言ってたけど」
「きゃはっ♪ そうすけセンセー、もう期待しちゃってますね~」
「ッ!! べつに、そういうわけじゃないけど!」
「かわいいなぁ~♪ でも、厳密な意味ではバトルファックじゃないと思います。だって……」
「だって?」
「うふふふ、なんでもないです~」

 ちなみんさんは髪を軽くかきあげながら妖しく微笑む。
 いたずらっぽい言葉と仕草で、僕からの問いかけをはぐらかしてしまう。

 それでもバトルファックをする意思だけは伝わってきた。

「ちな、あ――ッ!」

ギュ……!

 言葉を続けようとした僕の手を彼女が柔らかく握りしめる。

「あわてないで、そうすけセンセー」
「うううっ!」

 あらためて身を固くした僕をちなみんさんがグイッと抱き寄せる。
 右手にしっかり指を絡めながら、同時に首筋をぺろりと舐められた。
 僕の右肩に顎を乗せながら顔を横に向けて、

レロォ~~~~~~~♪

(あああああああああああーーーーーーーーーーーーーっ!!)

 ビクンと上半身が跳ね上がる。
 背筋がゾクゾクして何も考えられない。

「それでルールですけどぉ、今からあたしがセンセーを誘惑しますから、センセーはひたすら我慢して?」
「はい……え、ええっ! そ、そんな無茶な……」
「んぅ~、チナじゃ魅力が足りないからだめですかぁ?」

 魅力が足りないなんて、そんなわけがない。
 少し顎を引いて正面から僕を見つめる彼女。
 その表情が困ったフリの演技だとわかっていても、たまらなく魅力的だった。

 僕からの反論がないと判断してから、彼女はクスッと小さく笑いながら白い指先で首筋から肩をゆっくりなぞり始めた。

 肩から肘へ、そして手のひらへと指先が滑り……

 握っていた拳がほぐされ、手のひらを上に向けられて恋人握りにされる。

「えへっ、きもちいいですか~」
「うっ、うあ、うん……」

 真面目そうで可愛らしい人が僕に密着して恋人握り……
 さきほどまで拘束されていた左手首は自由になっていたけど力が全く入らなかった。

「ふふふ……」

 余裕たっぷりにちなみんさんは僕を解放してソファへ押し倒す。
 そして右手の人差指を僕のシャツの隙間へと忍び込ませてきた。

ツツツツ……

「こっちもさわっちゃお♪」
「あっ! やば……だ、だめええええ!」

 指先が向かう先は明白だった。
 忍び込んだ人差し指が僕の乳首に触れて、クリクリと弄びはじめる。

(んはっ、ああ、あ、きもち、いいいいいい~~~!!)

 横すわりのまま僕に馬乗りになり、ちなみんさんは微笑みながら愛撫を続ける。

 クネクネと動く指先がそのままゆっくりと下腹部へとスライドしてゆく。
 乳首を弄ばれてるうちに、いつの間にはシャツのボタンはすべて外されていた。

 そして……

クチュッ♪

「うああっ!」
「ふふふっ、おちんちんもいい感じに固くなってますね。これなら楽勝かな?」

 視線を落とせば彼女の左手はすでに僕のズボンの中に潜入していた。
 さらに亀頭の先端を嫐られて僕は悶える。

「あっ、あっ、あっ、あっ!!」
「騒いじゃだめです~~」

ニチュッ……!

「ぐぷううぅぅ!!」

 僕がこらえきれずに声を上げる直前に、乳首をいじっていたはずの彼女の指が口の中に入ってきた!

(あ、ああああぁぁぁ……っ! こんなことまで……征服されちゃうなんてぇぇ!!)

 指先は僕の口の中、上顎あたりを軽くくすぐるように蠢いている。
 不思議なことにそれだけで動けないのだ。
 それは完全に僕の動きを封じるのに十分な屈辱だった。

クチョクチョクチョクチョ♪

 口の中と同時に肉棒も優しく愛撫されていた。
 細い指先が逆手でカリの付近を往復しているのがわかる。

 我慢汁でヌルヌルにされてしまったペニスを、優しくいたわるようになで上げられるたびにため息が出る。

 だめだ、これきもちいいよおおぉぉぉ……

「クスッ、お口もちゃんと塞いであげますからね」

チュポッ……

 口の中から指が引き抜かれる。
 そして今度は美しい手のひらで口元を塞がれた。

キュ……!

「ンウウウウウウウウッ~~~~!!」

 たしかに防音室だと言っても情けない声を出す訳にはいかない。
 しかし声を抑えるだけでなく、彼女は完全に僕の体を抑え込んだのだ。

 声をだすことすら禁じられ、一方的に快感を流し込まれる。

(このままじゃ本当に、犯されちゃう……いやだ、こんなの……ッ!)

 やがて僕が小さく首を横に振ると、ちなみんさんはあっさり手のひらをどけてくれた。

「ぷはああっ!」
「ふふふ、ちょっと刺激が強すぎましたか」

 ぐったりする僕の頭を彼女は優しくなでてくれる。
 もう片方の手では相変わらずペニスが握られている。

「はぁ、はぁ……このバ、バトルで何を賭けようっていうんですか」
「察しが良いですねー。頭の回転がいい人ってチナも大好きです」

クニュ……

「はああああっ!」

 二本の指でゆるゆるとペニスを弄びながら彼女が笑いかけてきた。
 親指と人差指で輪を作り、カリを挟んで上下に揺らす。
 さらに時々小指の先で裏筋を優しく引っ掻いてくる。
 淫らな指先でクニュクニュとつままれたり、サラサラ撫でられたりすると勝手に背筋がビクビクと震えてしまう。

「はぁ、はぁっ……!」
「もしこのままセンセーがチナの誘惑に負けちゃったらぁ、今度の夏にあるイベントで売り子させてください」
「えっ、そ、それだけですか?」
「ううん、それともうひとつ。チナの作った同人誌を委託販売させて?」

 ちなみんさんが同人誌を? 急に話が怪しくなってきた。

 すると彼女は耳を寄せて所属するサークル名を僕に告げてきた。
 快感のせいでぼんやりとかすみ始めた意識の中で甘く囁かれた言葉に僕は反応する。

「そんな、どうして!? まさかキミがあのサークルの……」
「まあ別名義ですけどね。今回は落選しちゃったんで凹んでいたんですよぉ」
「それで僕のサークルに目をつけたのか。でもなぜ……うちみたいな弱小サークルを」

 ちなみんさんの目が不意に細くなった。
 冷ややかに見つめられて僕は硬直してしまう。

「何言ってるんですかセンセー。自己評価が低いのもいい加減にしてくださいよ」
「うっ……!」
「そうすけセンセーはぁ、なかなか優秀です」
「なんで僕のことをそんなに……」
「だって、思考が辿り着く場所っていうか、お話の方向性がうちとよく似てるんです。だからいつも先を越されちゃうんです」

 つまり、彼女のサークルとジャンルがかぶっているということか。
 ちなみんさんは薄く笑いながらさらに言葉を続ける。

「うーん、ある意味あたしはセンセーのことを軽く恨んでいると言ってもいいかもしれませんね」
「そんなっ!」
「もちろんそうすけセンセーに罪はないですから、これは単純な八つ当たりみたいなものです」

 そんな物騒なことをつぶやきながらも、ペニスに触れた指先の動きは僕の体をとろかし続けていた。
 腰から下に力が入らない。
 気持ちよすぎて身動きができないのだ。

クニュ、クニュ、クチュッ……

「あ、あああ、その手つきやめてええええ!」
「うふふふ♪ やめてあげませーん」

ヌチュヌチュヌチュヌチュッ!

 淫らな音のせいで、ヌルヌルした指が亀頭をカリカリする様子を無理やり想像させられる。
 それもまた魅力的で、彼女から目が離せない。

 強くない優しい刺激なのに、まるで指先に薄皮をむしり取られていくようで淫らな味わいだった。
 このまま同じ動きを続けられたら我慢の鎧をすべて剥がされてしまう。

 無様に声を上げて射精してしまいそうだ……。

 呼吸を乱し続ける僕を観察しながら、彼女がゆっくりと顔を寄せてくる。

「チナが今からたっぷり魅了して、センセーを骨抜きにして、操り人形にしてあげる……」
「っ!!」
「ふふっ、しってますよ~? こういう言葉責め、きらいじゃないでしょ?」

 悔しいがそのとおりだった。
 しかも耳元でこんな風に言葉を吹き込まれたら本当にたまったものじゃない。

「さっきも言ったとおり、うちのサークルと似てるところが多いから、センセーの好みだってある程度は合わせてあげられるんですよ」
「だからキミはそんなにも……僕好みの女性なのか」
「ふふふ、衣装合わせに苦労した甲斐があったみたいです~。センセーにとって清楚系ビッチとかたまらないでしょう」

 ああああああ! 清楚系ビッチ!!
 そうだ、まさに彼女のビジュアルを一言で表現するのにぴったりな言葉。

 これから僕はそんな人と……

 やばい、想像するだけでまたペニスが固くなってしまいそうだ。

 彼女ならたしかに理想的だ。
 控えめな印象に包まれた美しい容貌、それと真逆の淫らなエッチのテクニック……
 ビッチで清楚なんて実在するわけがないと思っていたのに、まさか自分の目の前に現れるなんて。



 うっとりと彼女を見つめる僕の顎に、白い指先が添えられた。

「おそらくこのバトル、あたしが圧勝しちゃいます」
「!?」

 そのままクイッと顎を持ち上げられて、ちなみんさんの真っ直ぐな視線に射抜かれる。
 心の奥まで貫かれたみたいで目をそらせない。

クニュクニュクニュクニュ……

 ペニスへの刺激は緩やかだが続けられている。
 だが直視できないことでますます感覚が鋭くなっていく……

「ふふふ、それでね……センセーは当日イベントに出られないの」
「え……なっ、なぜ!?」
「だって、センセーのスペースはチナのサークルスペースに変わっちゃうんだから」

チュッ……!

 強めの単発キスで、彼女はその言葉を僕の心に刷り込もうとする。
 でも僕の心はにわかに冷静さを取り戻していた。

 ここで負けちゃだめだ……誘惑に負けたら大変なことになる。

「まさか本気で乗っ取るつもりなのか」
「クスッ、結果的にそうなっちゃうかなぁ? もちろん、委託という形を取りますけど」

 僕のサークルスペースはそのままに、僕を不在にして彼女が売り子とした実質支配をするつもりらしい。

「そんなことしたら、僕のサークルが出禁になっちゃう……」
「あー、心配しないで? そのあたりはうまくやりますから♪」
「それにしてもなぜ僕が当日休むことになるんだ」
「だってセンセーは、チナの魅力に溺れて骨抜きにされちゃいますから」

 僕が彼女に溺れる? そんなことは、ありえ、ない……
 でもこんなふうに見つめ合ってるだけで胸のドキドキも止まらないし、下半身はずっと快感でしびれっぱなしなのだ。

 片手で僕の顎と、ペニスを抑え込んだまま彼女はにっこり微笑む。

「これで下準備は完了です♪」
「え……」
「そうすけセンセーへの刷り込みがおわったということです。 ……さあ、そろそろはじめましょう?」

 ちなみんさんはゆっくりと僕を抱き起こし、脇の下へ手を入れる。

ギュウウウウウッ!!

(あああああああああっ!!)

 強く抱きしめられて体が密着する。
 僕の左肩に顔を乗せたまま、しばらく彼女は断続的に僕の体を抱きしめた。

「うあっ、ああっ、な、なんで……」
「ふふふふ……センセー、抱きしめられるのは好きでしょう? 女の子に優しくされるのと同じくらい、ギュウウウってされると心が熱くなっちゃいますよね」

 完全に僕の性癖がバレてる……
 こんなの逆らえない。

 しかしちなみんさんは、さらに僕に対して責めの手を強めてきた。

「こっちをむいて……」
「えっ」
「ふふっ、いい子♪」

チュ、ウウウウゥゥゥ……ッ!

(あ……ッ)

 抱きしめられたままの不意打ちキスに、意識が飛ばされてしまう。
 ちなみんさんの香りを感じながら、唇の味を覚えさせられ、魅了される……

「これくらいのキス、そうすけセンセーなら余裕でしょう」
「ふ、あぁ……」

 僕の気持ちはふわふわしたままで、彼女の問いかけに答えられない。

「慌てなくてもたっぷり時間をかけて絡め取ってあげますからね」

チュウウウゥゥ!

「んあっ、あああぁぁ!」
「ふふっ、もうお目々がうっとりしてますねー」

 そしてまた軽いキス、それも数回連続で――!!

チュッチュッチュッチュッ、チュッチュッチュッチュ♪

「んひ、あ、あああぁぁ……」
「かわいい♪ センセーみたいな反応してくれる人は大好きです。うふふふ……」

 大好きという言葉に胸が大きく疼く。

 こんな綺麗な人が僕を抱きしめて、そんなふうに言ってくれるなんて……
 恍惚とした表情でちなみんさんを見つめていると、優しく微笑みながらニットの裾をするりと持ち上げ始めた。

「ねえセンセー、今日のあたしの格好を見てなにか感じません?」

 スカートとの境から白い肌が見え隠れしている。
 パンチラではなくておへそがぎりぎり見えそうな位置……

「センセーが好きな女の子の特徴をいくつも取り入れてるんですけど」

 明るい色のニット服はとても柔らかそうで、しかもちなみんさんの白い肌の美しさを引き立てている。
 無意識にその服と素肌に目が引き寄せられてしまう。

「触ってみたくないですか?」
「え……」
「ふふっ、いいよ……触らせてアゲる♪」

 そして彼女がニットを半分以上めくりあげると、白い肌の露出が増えた。
 うっすらと縦に線が入った腹筋と、ゆったりしたカーブを描く下乳を見て自然に手が伸びる。

 指先がその輝く素肌に触れた時、僕は思わずため息を吐いてしまった。
 そしてすぐに興奮が急上昇して、手のひらをニットの奥に滑り込ませる。

フニュッ、ムニュウウウッ!

(ああああああっ、なんだこれええええ! おっぱい、こんなに柔らかくて、大きくて綺麗で……!)

 言葉を失ったままその触り心地に陶酔する。
 そんな僕を見つめながら彼女がつぶやく。

「くすくすくす……こんなに夢中になっちゃって」

 しばらく自分の体を僕に堪能させてから、ちなみんさんの手が動き出した。

「今度はあたしから……ね?」

 彼女の指先がそっと僕の肌に触れた瞬間、おっぱいを懸命にいじっていた手が止まる。

(さ、さわるよりも、さわられるほうがきもちいい……な、なんで? なんで!?)

 おっぱいを責めていたはずなのに、一瞬で逆転された気分だった。

コリッ……

「アアアアアアアアアアアッ!!!」
「女の子みたいに敏感ですね、センセー」

 両方の乳首を強くつままれる。
 ただそれだけで、僕は上半身を反らせて喘いでしまった。

「……後で優しくペロペロしてあげましょうか」

 人差指と親指で乳首をリズムよくコリコリと責めながら彼女が言う。
 さらに僕の耳に顔を寄せて、舌先でチロチロと舐め始める。

「ウアッ、アアアアアアアアアア!!!」
「クスクスッ、ささやかれながら乳首を触られるとますます気持ちいいね?」

 その声に頭の中がとろけて、少し遅れて全身がゾクゾクし始める。
 乳首をいじられながら耳を舐められ、その舌先の感触が乳首へ移動したときのことを想像してしまった。

「もっと可愛い声を聴かせて」

 コリコリ、ペロペロ……コリコリコリコリ、チュッ♪

「あっ、ああっ、それえええええ!」

 耳と乳首、それに心まで彼女に甘く責められて僕はどうしていいかわからなくなりかけていた。


「……もう降参ですか?」
「えっ」

 その一言で冷静さを取り戻す。目の前に彼女がいない。

「バトルファックですよ。それなのにあっさりバックを取らせちゃうなんて」
「あああああああああっ!!」

 僕の背中から声がした。
 いつの間にか僕は四つん這いにされていたのだ。

 そしておしりの位置に彼女の顔がある。
 このままでは一方的に責められちゃう!
 それに気づいた僕が慌てて体の位置を入れ替えようとした瞬間、

パシッ!

「ひうっ!!」
「気持ちよくしてほしいんですね。マゾなんですね」

 タイミングよくお尻を叩かれ、僕は抵抗をやめてしまった。
 なぜだろう……ちなみんさんに逆らえない。
 心が微妙に怯えてるのと、体は何故か逆に熱くなっている。

「そういう人にはお仕置きです」

ペロォ……

「んひゅううっ!!」

 ゾクリと腰が震えた。
 これはたぶん、お尻の穴を舌先でなぞられたんだ……やばい、本当に力が入らない。

キュウウウッ!

 だが次の瞬間、ペニスに甘い痺れが走った。

「んはああああ!」

 ヌルヌルになった彼女の手が、しっかりとペニスを握り、しごき、上下する。

ヌッチュヌッチュヌッチュ!

「んあっ、あ、あ、あああ! きき、きもちいいいいい!」

 お尻の穴を舐められながら、ねっとりと手コキをされたことなんてなかった。
 そしてこれがこんなにも気持ちいいなんて知らなかった!

 ちなみんさんはその責めを数分間繰り返した。
 終わる頃にはすっかり僕の体はフニャフニャにされていた。

「簡単にはイかせてあげませんから♪」

 息も絶え絶えの僕を仰向けにして、逆さまになった彼女がささやく。
 十本の指を使ってペニス以外の全身を念入りに刺激していく。

「うああ、あああっ、そんな……ッ!」

 それはとても甘くけだるい愛撫。
 なぞられた跡が熱を帯びてそのまま性感帯になってしまうような責めだった。

「ほらぁ、全身ナデナデからの」

 息を弾ませる僕の顔に、彼女の顔が近づいてくる。
 逆さまになった状態で唇がゆっくり重なって……

チュッ……

「!?」
「んちゅ……心臓がドキドキしちゃいます?」

 ほんのり顔を赤くした彼女が囁いてくる。

「続けてあげる……チュッチュッチュッチュ♪」

 今度は横向きの姿勢になって、頬ずりしながら何度も……
 柔らかい唇を押し当てられるたびに心がとろけていくようだ。

 そしてその唇がゆっくり降りてきて、しばらく刺激されていなかったペニスの先を優しく包み込んだ。

プチュウウッ……

「あっ、あああああああああああああああああああ!!!!」

ビュルビュルビュルウウウウウウウ~~~~!!!

 暖かくて柔らかい唇に包まれ、中に潜んでいた舌先にチロチロと弄ばれた瞬間、僕は爆ぜた。

 かなり大量の精を遡らせたはずなのに、ちなみんさんは溢れさせる様子もなくコクコクと飲み続ける。

 そして、長い射精が終わったあとで口元を拭ってから笑いかけてくれた。

「おちんちん、もうあたしのいいなりです」

チョンッ♪

「くはああああっ!」
「可愛いから撫で回してあげます」

 射精したばかりで敏感な場所に、細い指が巻き付いてゆく。
 その動きは男の習性を熟知しているかのように優しく、じわじわとした快感を送り込んでくる。

「こんな風にサワサワされてるだけだとイけませんよね?」

 じっくりと僕を観察しながら彼女が言う。
 僕は何も返せない。

 人差し指と中指の間にカリ首が挟まれ、ゆらゆらされているだけで天国だった。
 親指の腹の部分で裏筋をクニクニされると全身のしびれが復活し、声を上げそうになる。
 ちなみんさんに触られている時間が長くなるほど弱点が増やされていくような感覚だ。

「今からスイッチ入れてあげます。ねえセンセー、おもらし射精とか……したことありますか」
「お、おも、らし……い、いやっ、いやだああああ!」
「気持ちいいのが漏れ出して、自分ではどうしようもなくなってジワジワジワァって……」

 みっともなく首を横に振る僕を無視して彼女は続ける。

「初体験させてあげます」

 ゆらりと彼女が立ち上がり、両膝を僕の顔の脇へついた。
 いわゆる顔面騎乗の体勢だ。

「このまま膣内に閉じ込めたら、きっと体中の力が吸い取られちゃいますね」

 そういいながら、人差し指と中指で秘所を思い切り開いてみせる。

(きれいだ……これがちなみんさんの、おまんこ……)

 ピンク色でしっとりと潤んだそこは清らかささえ感じる。
 綺麗に剃毛しているせいもあって、僕の興奮ゲージが一気に振り切れた。

「オマンコに閉じ込められて、体の底から精液を搾り尽くされて……」
「うあ、あああああっ!!」
「サキュバスにエナジードレインされてみたいでしょう。うふふふふふ」

 低い声で彼女が囁いてくる。サキュバス、そうだ……きっとこんなふうに綺麗で、男を食べるために美味しく熟れてるようなおまんこに挿入したら……

「でも本番はおあずけです」
「えっ!!」

 冷ややかに言い放たれて、思わず不満の声を漏らしてしまった。

「ふふ~ん、入れたいですよね?
 搾り取られたいですよね。でも絶対に瞬殺しちゃうからお預けにします」

 ペロリと下を出して、彼女は続ける。

「なぜ瞬殺されちゃうのか、わかりますか?」
「そんなの、わからない……」
「ここは、もはやセンセーにとっては理想的なおまんこになっているんですよ」
「理想的な……?」
「あたしに手コキやキスでたっぷり弄ばれて、開発されちゃったそうすけセンセーにとって桃源郷……包み込まれただけでも天国なんですから、おちんちんが我慢なんてできるわけないじゃないですか」
「うっ、うううぅぅ……!!」

 僕の顔の脇についた膝を浮かせ、彼女は立ち上がる。
 そして今度は僕の腰を挟むように膝をついた。

クチュリ……

「っ!!」

 同時に固く張り詰めていたペニスが彼女のおしりに踏み潰される。
 裏筋のあたりに膣口が吸い付いてくるような感覚。

「センセーは自分の想像に押しつぶされちゃうんです。そのうえであたしのオマンコに負けちゃうの」

 さらに上体を倒して彼女が顔を近づけてきた。
 僕を抱きしめたときと同じように両脇に腕を通し、手のひらを僕の両耳あたりに添える。

「だから、今日はここで終わらせてあげますよ」
「なっ……!」
「せっかくですからあたしの膣口の感触も味わってくださぁい♪」

 ちなみんさんは腰をくねらせ、グラインドさせる。
 裏筋を膣口に押し当てたままの腰の動きのせいで淫らな水音が響く。

「挟んであげます」
「え……」

パチュッ……!

「うあああっ、な、なにこれ……ッ!」
「気持ちいいですか? ふふふふ……」

 ペニスが急に狭いところに押し込まれた。

「こんなにいっぱいじらされて、我慢汁をドバドバお漏らしするくらい敏感になっちゃったおちんちんが、このおまんこに包み込まれたらどうなっちゃうんでしょうね」
「ま、まさかこれって!?」
「クスッ、そうすけセンセーの童貞もーらいっ♪ スマタですけど」

 スマタと聞いて僕はこの刺激を理解した。
 正面からかぶさるようにして抱きついて、太ももの間にペニスを差し込んでこね回しているんだ。

 確かに本番じゃない。膣内には入っていないけど……
 これは、たまらなくきもちいいいいいいいいいいいい!!!

「挟まれてるだけでいっぱいいっぱいですかぁ? あはははっ、ビクンビクンしてるぅ!!」

 すべすべした彼女の太ももに挟まれ、一部は膣口に舐め回されている状態。
 しかも上半身はピッタリと密着して、正面から彼女に見つめられたまま腰だけ動かされているのだ。

 ほとんどセックスと変わらないどころか、一方的に責められてる分だけ屈辱的だ。

「お顔をグシャグシャにして泣き出しちゃうくらい嬉しいんですかセンセー」
「うあっ、ああ、く、くそおおおぉぉ!」
「……まだあたし、ぜんぜんふとももを動かしてないんですケド?」

 そう告げてから、彼女が急に腰を上下に叩きつけてきた!

ドチュドチュドチュドチュッ!

「んはああああっ! ああああああああああああああ!!!!!!!」
「さあ、もっと可愛い鳴き声をあげてもらいましょうか。んっ……」

チュウウウウゥゥゥ~~~!

 唇を塞がれたまま腰の動きが加速していく。
 まるでイルカが飛び跳ねるような力強さで腰を波打たせ、彼女はペニスを蹂躙する。

「他のサークルのあたしなんかに抑え込まれて悔しくないんですか」
「くやしいっ、くやしいけどおおお、ああああああああああああああ!!」
「それとも、抵抗できないくらい気に入っちゃったの? うふふふ」

 時々キスをやめて、こんなふうに僕の心を犯してくる。
 清楚なビッチに責められるとこんなふうになるんだ……

 抵抗する気力ごととかされて動けなくされちゃうんだ……!

「心の奥をしゃぶってあげる。センセーの大好きなやつ、してあげる……見つめられて、キスされた瞬間にイっちゃいそう。ううん、イっちゃって?」

 今度はそういいながら、優しく僕を見つめて舌先を見せつけてくる。
 真っ赤な蛇みたいなそれは、チロチロと蠢きながら僕を誘惑してくる。

 このあとキスされて、舌を差し込まれて、口の中を愛撫されたら……

 そんな妄想がうずまき、ペニスはますます固くなる。

 そして彼女に魅入られるように僕は自分から顔を寄せ――、


ンチュ、ウウウゥゥゥ♪

「ふふ……センセー、はじゅかしいお顔でイって♪」


ビュルル、ビュクウウウウッ、ビュクンッ!!

 太ももに圧迫されたまま、何度も断続的に精を吐き出す。

 甘い唇の誘惑に僕は敗北した。

 そしてしっかり抑え込まれたまま、ちなみんさんにイキ顔を最初から最後まで見られてしまったのだ……。









 ちなみんさんと初めて会ってから一週間後の日曜日。
 僕たちは同じ場所で待ち合わせをしていた。

「これ、サーチケです……」
「わぁ! そうすけセンセー、ありがと~!」
「じゃあ僕はこれで……って、ああああああああ!!」

チュッ♪

 不意に彼女に抱き寄せられ、唇を奪われた。
 今日のちなみんさんは先週と違うコーデだった。黒髪を一つにまとめ、白いニットに薄いカーディガンを羽織り、スキニージーンズを履いている。
 出会った瞬間に脚のラインがとても美しいと感じた。

「かわい……ねえ、好きですよセンセー♪」
「ああっ、ささやかないでえええ!!」

 傍目に見ても可愛らしいと感じる女性に抱きつかれ、路地裏とは言え公衆の面前でキスされた。
 人の目も気になるけど、何よりもドキドキが収まらない。
 先週何回も射精させられたことを思い出してしまう。

「ううん、続けるヨ♪ 好き好き好き好き……」
「んあっ、ああああああ!!」
「もっと壊れちゃえ♪」

 その日からイベントの当日まで、ちなみんさんと僕は毎週会うことになる。



 次の週。打ち合わせという名目で彼女に呼び出される。

「そろそろ入れてあげる」
「え……」
「今日までお預けしてたから、おまんこのことばかり考えていたんじゃないの? センセー」

 もはやカラオケボックスなどではなく、いきなりラブホへ直行。
 今日の彼女は髪を下ろして、いつも以上に大人っぽい雰囲気の服装だった。

「年下のお姉さんが優しくしてあげる♪」
「うっ、うあっ、ああああ……」

 ベッドの上で恥じらいながらゆっくりを脚を広げていく彼女に吸い寄せられる。
 黒いニーソックスの奥にあるショーツを、ちなみんさんは焦らすようにしてずりおろしていく。

ファサッ……

「はいどーぞ♪」

 すでにしっとり濡れているように見えるオマンコを見て、僕の心臓が大きく跳ねる。
 同時に彼女も僕の服を脱がし始める。

「ひとつになろ? そうすけセンセー♪」

 心がバラバラにされて、体のドロドロになって彼女に包み込まれていく。
 ギュッと抱きしめられると今までで一番の幸せが僕の体の中に湧き上がってきた。

 その日、僕は彼女に本当の意味で犯された。




 それから三日後の夜、平日だというのに僕は彼女と会っていた。

「自分から誘ってくれるなんて嬉しいよ、そうすけセンセー」
「だ、だって、もうオナニーしてもイけなくなっちゃって……」
「うふふ、エッチだね。そうすけ……ううん、オナすけセンセー♪」

 すでに全裸になっていた僕を彼女が優しく抱きしめ、キスをしてくる。
 これだけでとろけてしまいそうだというのに、器用に位置を調整してペニスの真上で腰をふり始める。

「ほらほら、おちんちんにチュッ♪」

クチュクチュクチュクチュ……

「くはっ、あああ、それえええええ!!」
「先っぽだけなのにドロドロにされちゃうよねぇ? うふふふふふ」

 膣口をペニスの先端に押し当て、クネクネと腰を捻りながら上下に体を揺さぶられる。
 入れたい、この中にもっと、もっと深く入れたい!
 それなのにこれ以上奥に進ませてもらえない。

「ほらほらほら~、おまんこでチュッチュッチュッチュ♪」
「やめて、こ、腰が勝手に、あ、あああ! 溶けるうううううぅぅぅ!!」

 腰を突き上げようとしても阻止されてしまう。
 そんな残酷な寸止めを十回以上繰り返され、反撃できなくなったところで彼女が一気に腰を下ろした。

グチュウウウウウウウウウウウッ!!

「あ……あああああああああああああ、い、いくううううううううう!!!」

 しがみつくようにしてガクガク体を震わせる僕を、ちなみんさんは強く抱きしめてくれた。

「うんうん、だいぶあたしに弱くなっちゃいましたね~、センセー♪」




 そしてついにイベント当日。

「おはよーございます、そうすけセンセー」
「ひいっ!!」
「もしかして会場に行こうとしてましたぁ?」

 ここ数週間で、僕の体はちなみんさんに慣らされていた。
 彼女なしでは射精できないようになってしまい、作品を作ろうにもなかなか集中できずにいた。

 でもなんとか作品を出すことはできそうなので、サークル主としての最後の意地で、会場へは絶対に行くと決めていた。
 それなのに……、

「うふふふふっ、出発前にそれを阻みに来たんですよぉ。ねえ、今からチナと一発、しよ?」
「いやだっ、だめだよ! だって今日はイベントのとうじ……んうううう!?」

チュッ♪

「んはあああ! イクウウウウウウウウウ!!」

びゅるるるっ……

 もはやキスだけで、僕の体は彼女にイかされてしまうのだった。

「はぁい、いつもどおりのオナすけセンセーになっちゃった♪ チナが朝立ち、いただきま~す」

 そしてすばやく僕を押し倒し、下半身を露出させてから挿入。
 とろけきった膣肉が僕を懐柔する。

 イベントに行こうと決めていた決心が彼女の膣内で溶かされていく……

 ちなみんさんはゆっくり時間をかけて、僕が気を失うまでペニスを弄び続けた。





 そして僕が再び目覚めたのは午後三時を回ってからだった。
 何度か目覚めようとしたけど、そのたびに全身が鎖で縛られたみたいに感じて動けなかった。

 後で聞いた話だが、うちのサークルスペースは盛況だったらしい。
 そして彼女は売り子として優秀だった。

 自分たちの本を売り切っただけでなく、僕の本も完売させてくれた。
 スマホに写真付きのメッセージが入っていた。

『あとで焼肉食べに行こうよ。もちろん、センセーのおごりで♪』

 きっと、僕はもう彼女に逆らえない。

 逆らえないのに気持ちいい。
 時間をかけてそういうふうに感じるように調教されてしまったんだ。

 自然と左手がペニスを握る。
 彼女の勝ち誇った顔や、朝の激しいエッチを思い出し、僕はすぐに射精してしまうのだった





(了)












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