『屋上階の秘め事 ~序~』



 ある晴れた週末の早朝、僕は非常階段をひたすら昇っていた。
 この建物に備え付けのエレベーターを使わずに階段を駆け上がる。
 それが彼女との約束だったから。

「はぁはぁはぁはぁっ……」

 しかしこのマンションは52階建てだ。
 僕は13階に住んでいる。そこから30階以上駆け上がるのは、正直そんなに楽じゃない。
 それでも会いたい人が今の僕には居るのだ。

「はぁはぁはぁ、はぁっ!」

 約束のフロアにたどり着いた。
 もう完全に膝が笑ってるし、座り込んだら立てなくなりそうなほど疲弊してる。
 それでも僕が立っていられたのは、目の前にいる少女のおかげだった。

「おはよ、おにーさん」

 階段の踊り場で僕を待ち構えていたシルエットに胸が高鳴る。
 涼し気な表情をした美少女が、ひとつ上の階へ通じる階段に膝を揃えて腰掛けていたのだ。

「お、おはよう、悠月ちゃん……!」

 この少女の名前は黒坂悠月(くろさかゆづき)ちゃんという。
 低層階の僕と違って最上階付近に住んでいるご両親の一人娘だった。

 僕と彼女の出会いは偶然だった。

 一週間ほど前に彼女が自宅のカードキーを紛失してしまった時、エントランス付近に通りかかった僕が鍵探しに付き合ったのだ。数分後、僕がその鍵を見つけて彼女は大いに喜んだ。
 それがきっかけで挨拶を交わす仲になれたのだが、僕はひと目でこの少女に気に入られてしまったのだ。

 次の日から悠月ちゃんは僕を待ち伏せするようになった。

 エレベーターで一緒になったり、エントランスホールで座っている彼女に出会ったり。
 偶然にしてはタイミングが良すぎることが何度か続いた。

 最初のうちは半信半疑だったが、どうやら自分が気に入られているということに気づくのにそれほど時間はかからなかった。

 やがて一緒に手をつないでマンションを出たりするようになり、いつのまにか僕も彼女のことが気になりだして……

(悠月ちゃん、今日も可愛い格好してるな)

 まず最初に目につくのはきれいな黒髪だった。
 肩より少し長いその美しい髪は、少しだけ外側に跳ねている。
 それはそれで可愛いものだ。
 白い肌はわずかに化粧をしているようで、透き通るように美しい。
 そして大きな黒目と可愛らしい唇。
 今日は上品なレースのブラウスと、紺色のスカートを履いているようだ。

「うふふふ……そんなに息を切らせてどうしたの?」

 まだ呼吸が整わず、ただ見とれているだけの僕を悠月ちゃんが面白そうに眺めている。
 そして僕の視線を感じたのか、肩にかかっていた髪をサラリとかきあげてみせた。
 つやつやした髪が風にそよぐと、なんとも言えない良い香りがした。

「おにーさんに今日も会えて嬉しいな」

 その仕草にドキドキしてしまう。
 悠月ちゃんはもう自分の魅せかたを知っているんだ。
 年の差を感じさせない色気がすでに彼女には備わっていて、僕はそれに当てられている。

 タワーマンションにありがちな階数格差なんて無縁だと思っていたけど、悠月ちゃんを見ているとその考えが危うくなってくる。
 明らかに僕よりも生活水準が上の家庭。
 育ちのよい彼女。
 着ている服だって上品だし、見た目や言葉遣いも申し分ないお嬢様。
 それが知らないうちに心のなかで劣等感になり、僕と彼女の上下関係はすんなりと決まりつつあった。

 悠月ちゃんは静かに立ち上がり、僕のそばへ身を寄せてくる。

「おにーさん、今日はお仕事行かなくていいの?」
「それは、いくかもしれないけど……」

 本当は有給を申請しているんだけど、彼女のために休みをとっているなんて恥ずかしくていいたくない。
 それにあまり働かない男だと思われるのも年上の男性としては気分が良くない。
 照れ隠しのように目線を下げた瞬間、彼女がさらに身を寄せてきた。

(えっ、こんなに近く……!)

 しかも、そっと腕を絡ませてきた。柔らかな感触と女の子の体温を感じる。

「でも、お仕事に行く前にわたしに会いにきてくれたんだ。うれしいなぁ」
「っ!!」

 無邪気な表情で悠月ちゃんは体を横に向けて抱きついてきた。
 僕も恐る恐る手を伸ばし、細い体を抱きしめる。

 ああ、すごい……まだ成長中なのにはっきりと女性らしい柔らかさを感じる。

ぎゅうっ!

 僕に抱きつく力が急に強くなった。苦しくはないけど、ドキドキ感が増す。

「おにーさん」
「ゆ、悠月ちゃん……」

 僕の腕の中で、彼女はしっかりと見上げてきた。
 お互いに目が合うと、悠月ちゃんは妖しく微笑んだ。

「……ちゃんといいつけを守れたね。ご褒美あげる」
「えっ」

 上目遣いの彼女から、今度は視線がそらせなかった。
 僕たちは階段を登ることなく、踊り場で抱きしめ合う。


 年下とは思えない大胆さで彼女が僕にキスをねだる。
 リードしてみたいけど、必ず先手を取られてしまう。

 いや、小さな舌先がチロチロとうごめくのを見ると、僕はそれだけで固まってしまうのだ。

「んちゅ……フフ、昨日より美味しい味」

 無防備な僕に差し込まれた舌先が、一方的に恍惚感を与えてくる。
 抗うことなどできず、僕はその甘美な刺激を味わい尽くす。

 同時に、そっと手のひらが股間を撫でてきた。

「ねえ、ここ……年下の女の子にキスされて嬉しくなっちゃったんだね」
「あ、ああああぁぁ!」

 形の良い手のひらに力がこもる。
 美少女の手で圧迫されたことで僕の呼吸が乱された。

「おにーさんのおちんちん、おこってる……」

 喘ぎ始める僕をさらにかき乱す囁き。
 さらにグイグイとこすりつけるような手付き。
 どちらもたまらず情けない声が僕の口から溢れる。

「うっ、あああ、あ!」
「よしよし♪ 今日も気持ちよくなろうね?」

 悠月ちゃんはクルリと手首を返して、指先で亀頭をカリカリとくすぐりはじめた。
 服の上からの刺激でもそれは確実に僕に効いた。
 手のひらによる圧迫感が打ち消され、指先だけで敏感な場所をこね回される。
 じわじわと染み込んでくるそれは、男にとって焦燥感が募る愛撫のひとつだ。

「う、うまい……なんで、こんなに……?」
「でしょー? わたしいっぱい勉強してきたんだからぁ」

 聞けばネットで「男性が喜ぶ触り方」を調べたという。
 実際に試すのは初めてということだが、それにしても上手すぎて、い、いや、この刺激は凶悪だ!

(気持ちいい、きもちいいよ、ゆづきちゃんっ! そ、そこ、おおおおぉぉ!)

 必死で言葉を噛み殺すと、それをあざ笑うように亀頭へのくすぐりが強くなる。
 まるで全てお見通しよと言わんばかりに彼女は僕を追い詰める。

ジジ……チキキキ……

 美少女がもたらす快感に震えていると、細い指先が器用にファスナーをこじ開けはじめた。
 それだけでドキドキしてしまう。
 直接ペニスに触れてもらえることに期待を隠せない。

 汚れのない少女の指先を、僕が汚してしまうんだ……

 そんな僕の思いを感じ取ったのか、悠月ちゃんは優しく包み込むようにペニスを掴んできた。

「熱いよ、おにーさん……」

 ヌリュッ、クニュッ、ヌチュ!

 棹に絡みつけた指を滑らせるようにしながら上下に動かされると、深く握り込まれるたびに我慢汁が弾けた。
 美少女の手による絶妙な刺激がたまらなく心地よくて、自然と前かがみになってしまう。

「あっ、ぅあっ、あっ、あっ!」
「先っぽだけよしよしすると気持ちいいけどイけないんだよね?」

 その言葉通り、亀頭の先端を彼女のニ本指が這い回る。
 人差し指と中指がバタ足をするように交互に入れ替わり、亀頭の側面を甘く削り取っていく。

「うあっ、あああああ!」
「きもちいい? きもちいいんだよね? フフフフ♪」

 ひんやりした指先が踊るたびに僕は喜ばされてしまう。
 やがてヌルヌルになった肉棒を三本の指が包み込みドアノブをひねるような動きに変わった。

「んあっ、あああああ~~~~~~~~~~~!!」
「これもきもちいいんだ? ヘンタイさんだねぇ」

 嘲るようなつぶやきを受けながら、とろけるような指コキの感触を味わっているうちに、下半身が完全に脱力した。
 へたりこもうとする僕に気づいた悠月ちゃんが体勢を入れ替える。

「さっきのを続けてるとね、男の人は腰がガクガクになって、モジモジしてきちゃうんだって」
「んあっ、あああ、も、もう……」
「クスッ、本当みたいだね?」

 カリ首にまとわりつく少女の指先が、戒めるように肉棒をキュッキュと締め付ける。
 リズミカルに上下する手首を感じていると、勝手に膝が伸びて腰が浮き上がってきてしまう。

「悠月ちゃん、上手すぎて、これきもちいい、きもちいいよおおおおぉぉ!」
「わたしが上手? フフフ、そうかなぁ」

 すでに股間から漏れ出すクチュクチュ音は遠慮なく周囲に響き渡っていた。
 幸いここには僕たち以外はいないけど、誰かに聞かれたら確実に怪しまれるだろう。

「単純におにーさんがチョロイだけじゃないの?」
「そんな……!」
「でもわたしのことを褒めてくれて嬉しい♪ もっと気持ちよくなろ?」

ヌチュヌチュヌチュヌチュッ!

「ああっ、あああああ~~~!!」
「こっちむいて、おにーさん……」

チュッ……

「っ!!」

 悠月ちゃんに軽くキスをされた。
 ただそれだけなのに新たな我慢汁が一瞬で滲み出す。

「もっとエッチなおにーさんを見せて?」
「や、やばいって! はずかしいよ、悠月ちゃん」
「はずかしい? それより怖いんじゃないの~」

 その言葉に僕はビクッとしてしまう。
 たしかに理論上は誰からも見えない角度だ。でも不安は尽きない。

「誰かに会っちゃったら言い訳しなくちゃいけないもんね」

 彼女の言う通りだ。しかも相手がこんな美少女なら確実に僕が悪者になるだろう。
 そんなことになったらここに住めなくなる。

「誰かに見られたら、本当にまずい……」
「だからその前に出してスッキリしちゃえば?」
「え」
「わたしの手の中に出しちゃえばいいんじゃない?」

 思わず彼女の顔を見る。
 とてもいたずらで、魅力的な美少女の顔が間近にあった。

「ほら、イっちゃお?」

 僕からは見えにくい位置で彼女の手首がクネクネとうごめいているように感じた。

シュシュッ、シュリュッ……

 粘液越しに僕の我慢を削り取るような愛撫。
 指の先がツンツンと亀頭を刺激したり、裏筋をなぞるようになであげていく。

「うあっ、イくううううっ!!」

 甘い言葉に誘われて思わずイきそうになるが、僕は寸前で何とか思いとどまる。
 それをみながら悠月ちゃんがフッと笑顔になる。

「髪、さわってもいーよ」
「え……」
「ますます興奮しちゃうかも知れないけどね」

 今度はそういいながら自分から首を傾けて僕の鼻先に髪の毛をくっつけてきた。
 絹糸のような黒髪が、サラサラと僕の顔を撫でる。
 清潔感のある香りに頭の中がまたもや蕩けだした瞬間、

ヌチュヌチュヌチュヌチュ……

「んああああっ!」
「ほら、シュッシュッシュ……おちんちんビクビクだよぉ」

 急にペニスを包み込む刺激が強くなった。
 視線を落とせば指の本数が一気に増えてる……見ているだけでもやばいので、思わず顔を上げ、情けない声を吐き出してしまう。

「ここがいいのー?」
「そ、そこ……ち、ちがうっ、べつにそこは、あ、あああ、あーーーーーーーー!!」

 違うと言った嘘をあっさり見破っての集中責めに、僕はあえなく敗れ去る。

 絡みついた指先が念入りに、覚え込ませるように快感を肉棒に刻みつけていく。
 気持ち良い場所だけを探り当てたのか、その指使いは僕に抵抗を許さないほど心地よくなっていた。

「クスクスッ、もうね……弱いところわかっちゃった♪ おにーさん、こんなに可愛く反応してくれるんだもん」

 すると、きれいに整えられた爪の先が裏筋の一点を意地悪く責める。

クニクニクニクニ……

「~~~~~~~~~~ッ!!!!!」

 あまりの気持ちよさに声すらあげられない。
 それは快感を植え付けた瞬間にえぐり取るような残酷さだった。
 指先がうごめくたびに快感で満たされる。

(だめだ、こんなの……おかしくされちゃううううう!!)

 本能的に身を捩って逃げようとすると、彼女に動きを先読みされてしまう。
 しっかりと手首を掴まれた僕は完全に逃げ場を失ってしまうのだ。

「逃さないよ?」
「ゆ、ゆづきちゃん……」

 さらに……、

「んぐっ!」

 視界が突然、柔らかなもので塞がれた。
 一瞬の出来事だった。

「おっぱいきもちいい?」
「ん……!」

 おっぱい、こ、これが! 悠月ちゃんの胸の感触!!
 自分から求めたら間違いなくアウトな禁断の刺激。

 僕は彼女に抱きしめられて、胸に顔をうずめているようだ。

「フニフニしてて自分でも気に入ってるんだよぉ」

ふにゅ、ふにゅうううう……

(なんだよ、これ……)

 絶対的なボリュームなどあるはずがない、と思っていたのに!
 服の上からではわからなかった、しっかりとした柔らかさが感じられた。

(こんなの、すきになっちゃう……うごけないし、うごきたくないし……)

 さっきよりも早く抵抗力が削ぎ落とされていく。
 僕の両腕がだらんと垂れ下がった。

 ふわふわしているのにしっかりした弾力があって、しかもいつまでも抱かれていたくなるような安心感まで備わっている少女のバストに僕は魅了されかけている。

「……直接さわってみたくなっちゃった?」

 そういいながらズリズリと上半身を揺らしてくる。
 少し角度が変わっても少女のバストは相変わらず柔らかい。

 さわりたい、こんなの触りたいに決まってる!
 でも全然力が入らない……


「おにーさんのおててで優しく触ってほしいなぁ~」
「!!」

 暗闇から解放された瞬間、そっと手のひらが掴まれる。
 さらにその手は彼女に導かれ、柔らかな肌に添えられた。

(い、いつのまに服を脱いで……ああ、本当に柔らかいいいいい!!)

 ふわりとした淡雪のような感触と、確かな手応え。
 洋服越しには見えなかった桃色の蕾も、片方露出している。

(乳首、こんなに綺麗で……清らかで……もっと、もっと触って、な、なめたい!)

 美少女の体に向かって無意識に一生懸命手を動かす。
 みずみずしい肌はそれに応えるように僕の手の中で弾み、しっかりした弾力を主張した。

「やだ、おにーさん。目が怖いよ?」
「はぁはぁ、だ、だって! 悠月ちゃんが誘惑、するから」
「ふふふふ……そんなに求めてくれるんだ?」

 ニッコリ微笑む彼女に見つめられ、僕はまた興奮してしまう。
 そしていつまでも揉んでいたくなるような触り心地と背徳感に僕はすっかり夢中になってしまう。

 すっかり自分の虜になった僕を見つめながら、密かに彼女は片足立ちになっていた。

「おちんちん、いっぱい興奮しちゃったね……じゃあ、これでおしまい♪」
「はぁはぁはぁ、あ……あああああああああああっ!」

 ゆっくりと僕に体を預け、右膝の先でペニスを圧迫してきた。

ズニュウウッ!

「あひいいいいいいいいっ!?」

 急な刺激に間抜けな声を出してしまった。
 ペニスに触れた彼女の素肌、美脚の感触と体重が、必死に我慢していたものを容易に覆す。

ぐちゅうううっ、くにっ……

「えいっ♪」

 僕の両手を封じたまま膝の先に体重をかけた彼女が、ほんの少しだけ膝の先にひねりを加えた。
 その僅かな刺激がトリガーになって、僕は全身を震わせながら爆ぜる。

ビュルビュルビュル、ビュクウウウウッ!!

「あがっ、あ、あ、ああああああ!!」
「あはっ♪ おにーさん、すごい顔になってる」

 壁に背中を預けたまま僕は少女の膝に杭打ちされたような格好で、数回に分けて精を放つ。
 心の底から彼女に屈して、何度も果てた。
 いつの間にか腰砕けになって目線が等しくなっていたことにすら気づけなかった。

「ゆづ、ちゃ、も、もう……」
「まだ喋れるんだね。さすがおにーさん」

ぐちゅううううううう!!!

「うああああああああああああああーーーーーーーーー!!!」

ビュルッ……

 残酷な追い打ちに、僅かに残っていた精液も全て吐き出してしまう。
 そのまま何度かクイックイッと体を揺らして、悠月ちゃんはペニスを責め続けた。

 快感の余韻に浸りながらの追加攻撃は僕をさらに深い場所まで連れて行った。




 まるで夢の中のようにおぼろげな意識の中、悠月ちゃんの声が頭に響く。

「まだ満足してないよね?」

 すべすべの手のひらで彼女は僕の顔を撫で回してくる。
 それはまるで天女に愛撫されているみたいで、僕はただ彼女をうっとりと見つめ返してしまうのだ。

「あのね、おとーさんとおかーさんは明日までお出かけ中なの」

 ぼんやりした頭の中にその言葉が染み込んでくる。

 いないってことは、ふたりきり?

 いやそんなことあるもんか。でも……

「ゆっ、悠月ちゃん……!?」

 急に意識が戻り、視界がはっきりした。
 やはり彼女は僕の目の前にいた。

「さっきの言葉って……」

 僅かな期待感を顔に浮かべながら彼女を見つめると、悠月ちゃんは僕に向かって小さく頷いた。
 大きな瞳の中に僕が写っているのがわかる。
 その少女のきれいな瞳が不意に細くなった。

「おにいさぁん♪」

 悠月ちゃんの両手が、再び僕の顔を挟みこむ。
 耳の穴も塞がれ、自分の心臓の音しか聞こえなくない。

 それ以上に目の前の彼女に集中させられてしまう。

(おにいさぁん♪)

 美少女の唇の動きだけでわかる。
 たしかに悠月ちゃんが僕を求めてる……それが嬉しい。

 大きな瞳にじっと見つめられ、僕は動けない。

 すると、ゆっくりと整った顔立ちが近づいてきた。

 ずっと細くなった目が僕の目の前にある。
 熱い呼吸が僕の鼻先をかすめ、唇が触れ合う。

 僕はまた彼女に包み込まれる。


ちゅ……

 頭の中が悠月ちゃん一色に染まって、再び蕩けだす。
 美少女の熱いキスは僕にとっては猛毒に等しかった。
 抗うことができない優しい猛毒。

ちゅ、ちゅっ……ちゅうう、ちゅっ……

 しかも何度もしつこく求められて、何度も同じように奪われる。
 こんな甘いキスで快楽漬けにされたら他の女性では満足できなくなっちゃう。

 偶然でなければ知り合うこともなかった可愛い子が僕に何度もキスを求めてくる。

 悠月ちゃんは将来このまま美人になるだろうし、もっとスタイルも良くなって、おっぱいだって大きくなって……そんな可愛い子を独占してるなんて僕はどれだけ幸せなんだろう。

「ゆづ、き……」
「なぁに? おにーさぁん」

 無意識に手を伸ばすと、その動きを待ち構えていたかのように彼女の手が僕の指をきゅっと握りしめてきた。
 そのまま滑るようにお互いの手のひらが重なって、恋人握りになる。

「もう一回しよ?」
「う、うん……」

 それから十数秒間続いたキスの後で、悠月ちゃんは満足そうに微笑みながら、はっきりとこう言った。

「おにーさん、今からわたしのお部屋に来る?」





『屋上階の秘め事 ~序~』 (了)










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