『突然やってきた最後の日だから思い切り犯してみたけど卒業式があることに気づいた後輩ちゃんのお話』





 三月の始め、いや二月の終わりのことだった。
 いきなり学園が休校になった。
 大人の事情で、それも全国的に。

 進学先への受験が終わってホッとしていたのも事実だが、この時期はとても忙しくて、特に俺は卒業生なのだ。
 まあ、卒業式の予行練習とかそういった面倒なことが消えたのは嬉しいけど、クラスのみんなと会えなくなってしまうのは寂しい。

「それにしても急だよねー」
「もう少しダラダラしたかったのになー」
「今日が最後なんて嫌かも……」

 そんな声が近くで飛び交っている。
 俺も同じ気持ちだ。
 嫌なこともあったけど三年間過ごした学園だ。名残惜しい。
 三月に入ってから二週間近くかけてそんな気持ちをクールダウンさせようと思っていたのに、明日からいきなり学園が閉鎖。
 つまり今日が最終日となった。


 ホームルームが終わり、みんなが教室から出ていく。
 このあとはどこかで集まらないかという話も出ているが、俺は断った。

 最後に会いたい人がいる。話したい相手がいる。それは……


ガララッ!

「ちょっと待ったあああああああーーーーーふぎゃあああ痛いいいいい!!」

 勢い余って机の角に腰をぶつけたらしい。
 俺以外誰もいなくなった教室に突撃してきた下級生。
 それが俺の学園生活最後に会いたかった相手。

「どういうつもりですかセンパイ!」
「俺に言われても困る」
「そりゃああそうですけどっ! こんな終わり方って無いですよ!!

 俺の目の前でやり場のない怒りに身を任せ、自分が腰をぶつけた机をバンバン叩いている女子学園生。あれだけ勢いをつけて激突すれば相当な痛みだっただろう。

 加和井明日香(かわいあすか)というこの後輩は、この学園生活においてほとんど毎日俺につきまとってきた存在だ。
 黒髪セミロングでスポーツ万能の文芸部。
 どう見ても地味子とは呼べない元気の良さが売りの明日香は、それなりに見た目も可愛くて男子からも人気があった。

 たしか、健全な同人誌を作ってみたいという理由で二年生の前半で入部してきたのだが、どう考えても部活選びを間違えている。
 この部室には健全なものなどなかった。
 それでも明日香は部活をやめようとしなかった。

 そしてなぜか俺になついてきた。
 はじめのうちはその心理がまったく理解できなかったのだが、どうやらいじる相手が欲しかったようだ。
 年上だけど頼りない俺はちょうどいいカモだったはずだ。

「センパイ、かわいいですね!」
「彼女とかいないんですか。いないですよね? なるほどなるほど?」
「クリスマスとかお正月も一人ですか? さみし~~~~」

 色々探りを入れられつつ、結構こいつと一緒にいたような気がする。
 お互いに悪くない感情をいだきつつも、告白せずに微妙な距離感を保ってきた。そんな青春ごっこに明日香も付き合ってくれたと俺は考えている。

(そういう意味ではこいつには感謝しか無いわけで……)

 目の前で怒り続けている明日香をじっと見つめると、彼女も視線に気づいてくれた。

「ありがとな、明日香」

 誰もいない教室で見つめ合う。
 それなりに恥ずかしいけど、今日は俺より先に明日香のほうが折れた。

「あれ、もしかして……私の、ために……待っててくれたんですか?」

 ようやく気がついたか。黙って頷く。
 気のせいか彼女の頬が赤い。悪くない雰囲気だ。

 普通の男女ならここで抱きしめ合ったり、熱い言葉をかわしたりするのだろうけど、いまだかつて俺と明日香にはそういった機会は訪れていない。

 だから今日がその時なのかもしれない。

(よ、よし……!)

 ぎこちなく手のひらを持ち上げる。
 俺が意を決して左手を彼女の右肩に置こうとして瞬間だった。

「嬉しいです。じゃあ――」
「えっ」

 異常な素早さで明日香が俺の懐へ入り込んできた。
 俺の左手が空を切る。その代わり彼女の両手が俺の背中に回る。

ぎゅうううっ!

「はううううっ」

 この細い腕のどこにそんな力が隠されてるのかと疑うほど強く、明日香が俺を抱きしめてきた。制服の上からでは控えめに見えるけどこいつの胸は大きくてやわらかい。

(当たってる、当たってるよ明日香!!)

 ぴったりと密着した彼女の髪から漂う甘い香りと、胸元に感じる二つの柔らかさが俺をダメにする。力が抜けて、隣の机に尻餅をついてしまうように座り込んだ。

「ふふっ、可愛い反応してくれちゃって。
 でも許しませんから。今から手短に犯しちゃいますね!!」
「なっ! やめ――」
「抵抗しても脱がせちゃいますから」

 ほとんど俺と目線が同じ高さになった明日香。
 その可愛らしい顔に見とれながら、俺はぼんやりと彼女の手の動きを見ていた。

「可愛い乳首発見! ちょんっ」
「ああああああああああっ!」

 明日香の指先が俺の体に触れた。反射的にビクッとしてしまう。

「許さない、って……なんのことだ!?」

 気をそらそうとして質問してみたが、明日香は応えない。
 その代わりに俺を抱き寄せて正面から囁いてきた。

「大好きですセンパイ」

 突然の言葉に息が詰まる。
 俺はドキドキしながら明日香の顔を見る。
 やばい、目がマジだ。

「お前、こんな時に……話をごまかすなよ!」
「いいえ、ごまかします……んちゅっ」

 そして言葉を失った俺の唇に、彼女の小さな唇が重なった。

(センパイ、センパイ、好き、好きです……)

 実際には何も言われていないのに頭の中に言葉が溢れてくるようだった。
 でも小さく何度も、角度を変えて明日香がキスをしてくる。

「ふあ……」
「うふふふ、相変わらずチョロすぎですよセンパイ」

 生意気そうな顔で彼女は言った。しかし怒る気になれない。

 キスの数が十回を超えた頃に明日香が俺を解放した。
 すっかり頭の中がこいつで一杯になってる……

「センパイ?」

 おでこをくっつけながら明日香が尋ねてきた。俺はまだ言葉を取り戻せない。
 頭の中がふわふわして、生意気な後輩のことを可愛いと思いこんでしまっている。実際に可愛いんだけど、悔しいからそれは言いたくない。

「う、ううぅぅ……」
「ふむ、これが調教の成果っていうやつですかね」

 明日香の口からこぼれた不穏な言葉で我に返る。

「お、おい。今なんて言った……」
「愛のしるし、って言いましたけど?」
「言ってねえ! だいたいお前はいつも……うああああああああっ!?」

 急に目の前から明日香が消えた次の瞬間だった。

「はむ、じゅるるる、ちゅぷぷ……おいひい……レロォ……」

 下半身が急にドクンドクンと脈を打つように熱くなって、反射的に俺は前かがみになった。手を伸ばしたその先に明日香の頭があって――

チュプ、チュルル、クチュウウウ!

「あああああああああ、お、おまっ、なにをーーーッ!?」

 明日香の小さな口の中に、俺自身が閉じ込められていた。
 これをされたのは初めてではなかったけど、こんなに熱く愛撫されたのは初めてだ。

「先っぽを少しくわえてあげるとすぐに息切れしちゃうのもだらしなさすぎですよセンパイ」

 途中でプハッと息をしながら彼女がつぶやく。

 腰から下が蕩けそうな感覚に蝕まれている。
 いっそこのまま明日香に身を任せてしまいたいほど心地よかった。

 でもそれを認めてしまったら、俺達の関係が崩れてしまう。
 そんな心配をよそに明日香は更に深くペニスをくわえこんで――、

カプッ♪

「ひああああああああ!」
「んっ、んっ、んぅ♪」

 リズミカルに顔を前後に振りながら、上目遣いで彼女が見上げてくる。

「だめだ、そこはっ! 甘噛みするなああああああ!!」

 俺が制止しても無駄。
 明日香のフェラがゆっくり俺を攻略していく。

「だめだ、こんなの、されたらあああっ!」

 今すぐにでも射精してしまいたくなるようなテクニックに狂わされてしまう。
 舌先で尿道をツンツンしてきたと思えば、今度は唇をすぼめてキュウウウウっと全体が締め上げられる。
 唾液まみれにされたおかげで我慢がきかなくなった肉棒が、明日香の口の中でさらに大きく跳ね上がる。

(これからも鍛えてあげますからね……ちゅううっ!)

 そんな声が頭に響くようだった。

 やがてその数分後に解放された時、俺は完全に脱力していた。

「ほらもう発射寸前ですよ。
 これじゃあ今日も本番までたどり着けないじゃないですかー」

 明日香は逆に元気そうだ。
 俺から生気を吸い取ったみたいにピンピンしてる。
 抗いたい気持ちもあるが、明日香への思いでそれらの感情が塗り替えられていく。

「はぁ、あ、明日香、明日香ぁ……!」
「くすっ♪ 私にかかればセンパイなんて一年中こんなもんです」

シュルルル……

 急に明日香が制服を脱ぎだした。
 ちょうど逆光になるポジションでの脱衣は俺を魅了した。

 明日香の大きな胸と、細い腰のくびれ、それに細い首筋、それに甘い香り……

「何を――」
「特別な日だから、ちゃんとここで犯してあげますって」

 ゆっくりと近づいてきた明日香が改めて俺を押し倒す。
 そして優しく手のひらで俺を抑え込みながら、空いているほうの手の指でペニスの根本をきゅっと握ってきた。

「今日は特に溺れさせてあげますね、センパイ」

 そう言いながらペニスの先端を自らの足の付根へ誘う。
 ねっとりした蜜がすぐに先端を絡め取って、心地よいヌルヌル感を俺に与えてくる。

クチュウウッ

「うあああああっ!」

 その熱さに思わず悶絶した。

「あはっ、たっぷり抱きしめてからぁ、一番奥でチュッチュしましょ?」

 明日香の膣内はとても熱かった。それが彼女らしくて、愛しくてたまらない。
 学園最後の日にこんな展開になるなんて……嬉しすぎる。

 単なるみだらな行為ではなく、確実に愛情を感じる。
 それが嬉しかった。

「あっ、ああっ、あああああああああ!!!
「すごい喘ぎ声です。
 ほら、もっと強めにいきますよ。チュッチュッチュッチュ♪」

 根本までしっかり俺をくわえこんだ明日香の膣は、内部はヌルヌルのままなのに吸い付いて離れない。
 激しい腰使いのはずなのに俺から離れようとしない貪欲な名器のおかげで加速度的に俺の快感が跳ね上がる。

「あっ、おちんちんゴリゴリ当たってるぅ!
 やだぁ……やる気まんまんじゃないですかセンパイ」
「これはお前がッ……あひいいいいいいいいいっ!!」

 戒めるような腰使いに全身がしびれてしまう。
 無意識にお互いの指と指が絡み合う。
 明日香の細い足首が俺の膝をロックして、さらに安定感を求めてくる。

「明日香、お前こんなにかわいいの……ズルイぞ! 反則だから、俺がお前に負けるわけじゃないから、ああああーーーーっ!」

 上下に揺れる腰使いが左右への動きに切り替わり、膣内でペニスがしゃぶられる感覚に俺は悶えてしまう。
 明日香のいたずらな腰使いのせいで、また言葉を遮られた。

(で、でる……でちまう!)

 完全に騎乗位となった明日香に見とれながら、段々と体の奥から精液が上がってくるのを感じていた。

「いつも見苦しい言い訳してくれるの嬉しいです。
 でもこれで終わり……イっちゃえ♪」

ビュクウウウウウウウウウウウウウッ!!

「~~~~~~~~~~~ッ!!」

 気持ちよすぎて声を出せない。
 激しくのけぞりながら、俺は明日香の体重を感じつつ絶頂した。

「まだ出せますよね? センパイ」

 そして今度は前後と上下の動きに切り替わる。

ビュクビュクッ!

 射精を促すような後輩のテクニックに、俺はまた白旗を上げてしまった……





「はー、すっきり♪」

 それから数分間、俺達は抱き合ったままじっとしていた。
 身動きがとれない俺をいたわるように明日香が俺を抱き起こしてくれた。

「明日から暇ですよねセンパイ」
「勝手に決めつけるんじゃねえよ!」
「でも進学先の入学式までの間、ずっとお休みでしょ?」

 まっすぐ見つめ合いながら、甘い時間を楽しむ。
 スポーツみたいな感覚でセックスをしたことはあったけど、今日はいつもと違う。

 なんだか照れくさい。明日香の顔をまともに見れない。
 でもそれは彼女も同じようだった。

「センパイ、あんまり見つめないでくれませんか?」
「いやだ」
「もう……あ、そうだ。私ってば頭良くないから受験勉強教えてくれませんかね~」
「嫌味か! 今の段階でお前のほうが俺より頭いいだろうが」
「じゃあ悪いふりしてあげますから。ね?」

 照れくさそうに目をそらしながら明日香がつぶやいた。

「教えてやっても、いいぞ……」
「きゃはっ、やったー!
 じゃあこれからも濃厚接触しちゃいましょー!」
「お前な……言葉を選べよ?」

 目の前で嬉しそうにはしゃぐ明日香を見ていると、すべて終わりだと思っていたのが自分だけだと思って恥ずかしくなった。

 しかし悪くない気分だ。
 卒業式のあとも二人の時間は続いていく。

 俺よりも明日香がそれを強く望んでいる。
 それを確認できただけで嬉しかった。

「センパイセンパイ、勉強もいいですけど、どこか遊びに行きましょうよ」
「お前が勉強って言ったんだぞ? それに今はどこもしまってるだろ」
「別にいいじゃないですかそんなの!
 閉まっていたって散歩とかでも良いですから」

 期待いっぱいの目でこちらを見つめている明日香。
 忘れていたけど彼女にとっても長い春休みなのだ。

 世間は大人の事情で満ち溢れているけど、俺ができる範囲でこいつにとって楽しい春休みにしてやりたい。

「ねえねえ、いいでしょセンパイ!」
「ああ、そうだな……」

 きれいな黒髪をなでながら、俺は明日香にお願いされた受験勉強よりも二人でどこか遊びに行ける場所を考えてしまうのだった。





(了)










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