バトルファックコロシアム ~同年代対決 新人男子vs王者女子~





 ここは某所にある地下闘技場。表向きは普通のサッカースタジアムであるが、試合が組まれていない日にも駐車場が満車になる時がある。
 紳士淑女がこっそりと入場していく姿を見かけることもあるようだが、地元住民にもその理由は詳しく知られていない。
 その実態は月に何回か不定期で開催される淫らな格闘技の会場だった。
 ここは聖地でありバトルファックコロシアムと呼ばれる秘密クラブである。
 成人済みの厳選された会員にしか届かない観戦券はマニア垂涎のプラチナチケットであり、転売不可能な独自のシステムもその人気に一役買っている。
 また秘密を公にした者には大きな力が働いて数日以内に社会的に抹殺されるという。

 そのような物騒な話いったんは横に置き、本日は春のトーナメント開幕戦である。
 マニア同士で囁かれている最近のトレンドは若手同士による対戦だった。
 勝敗の行方が予測不可能であることと、ベテランにはない初々しさが人気の理由らしい。
 しかし今日の対戦カードは若手同士とは言え新人男子対女子王者という内容であった。

 新人男子である小多荷カズヤ(こたにかずや)はデビュー以来10戦全勝という好成績でこの場に立つ。
 決して大柄ではない彼のファイトスタイルは打撃で相手をひるませてからの羞恥プレイがメインだった。
 甘いマスクも相まって、新人としては多くの女性ファンを獲得していた。

 対する女子王者は見他中アンナ(みたなかあんな)という。
 この世界に入って2年目を超えたのでルーキーと言うには少々難があるがカズヤと同い年である。
 前王者が引退したあとの暫定王者であり、繰り上げ当選のような立場だった。
 実際に彼女の戦績は最近では芳しく無く、勝ちと負けを繰り返してこの場に臨むことになった。
 苦労人であると周りからは言われているが本人は全く気にする様子がない。

 下馬評では新人男子が優勢だった。

 しかし実際に試合が始まってみると……



「弱いなぁ……これじゃ本気出せないよ」

 持ち前のフットワークを生かしてリング内を大きく使うアンナ。
 カズヤには彼女の声が左右から聞こえた。

(そこだっ!!)

 相手の動きを一秒早く察して繰り出すローキック。
 有利なポジショニングのために死角へ回り込むのは定石。
 しかし冷静に狙いすましたはずのキックは空を切り、蹴り足を戻す前にアンナが身を寄せてくる。

「はい、またもーらい♪」
「こ、このおおおっ!」

 反撃に備えるも一手遅い。
 2本の指でそろりとなで上げられた股間にピリピリと快感が染み渡る。

「く、あぁっ……!」
「ふふっ、気持ちいいね?」

 体重を支える足の力が快感によって抜けそうになるのを堪える。
 悔しそうに自分を睨み返すカズヤを見て、アンナはさらに追撃を加えた。
 ほっそりした腕が素早く伸びて男の急所を捉えようとする。

「キミの攻撃はあたしに届かなくて」

 すり抜けた腕が股間を撫でようとするのを見て咄嗟にガードを試みるが、間に合わない。
 せめて脚を閉じて抵抗しようとしたカズヤの耳へ、アンナの吐息が吹き込まれた。

「ひっ!? な、ああっ!」
「あはっ、耳もしっかり感じちゃうんだね。
 そしてあたしが伸ばした手は確実にキミに届くみたいよ?」

 万全の体制でもう一度手を伸ばし、先程よりもしっかりと陰茎をしごきながら亀頭を指先でピンっと弾く。
 カズヤの喘ぎをしっかりと間近で感じ取ってから、ゆっくりと両手で彼を突き放す。

「ふふふ、もうそろそろ降参したくなってきたんじゃないの?」

 フラフラにされた上に情けをかけられたカズヤは歯噛みする。
 大画面に映されたその表情は遠くの観客まで歯ぎしりの音が聞こえてきそうだった。

『おおおおーっと、これは予想外!
 アンナ選手に翻弄され、一方的な展開になりかけているカズヤ選手!
 がんばれ、ラウンドの終わりまであと2分近くあるぞー!!』

 場内アナウンスがカズヤ陣営を煽り、観客もヒートアップする。
 カズヤの奮闘を望む声とアンナが勝負を決めにいくことを望む声が交差する。

「まあ、予想外ってほどでもないけどね」

 余裕たっぷりの対戦相手をカズヤがにらみつける。

「自分のほうが圧倒的に強いとでもいいたげだな!」
「ううん、それは違うと思う。
 実績も実力もキミのほうが上なわけだし」

 アンナは19戦9勝5敗5引き分けという成績だった。
 彼女は謙遜気味に言ったが、見方を変えればその勝ち負けはそのまま経験の差であるとも言えた。

「じゃあどうして――」
「あえて言うなら事前に研究しているかどうかの違いじゃないかな」
「くそっ!」

 不意をついたように突進してくるカズヤを見つめながらアンナの口元が緩む。
 彼の利き腕が伸び始めるタイミングを図りつつ前かがみの姿勢になり、左手の人差し指をスポブラに潜り込ませて少しだけ引っ張る。

「うふっ、大サービス♪」

 プルンと弾けるようにバストが胸から少しこぼれ落ちる。
 男性の観客から声援が上がった。

「なっ!」

 カズヤの表情が変わり、そこに一瞬の隙が生じる。
 油断ではない単なる時間の経過だ。
 しかし一秒足らずの駆け引きには意味があった。




※2020.04.08更新部分

(つづく)









※このサイトに登場するキャラクター、設定等は全て架空の存在です
【無断転載禁止】

Copyright(C) 2007 欲望の塔 All Rights Reserved.