『なんとなく一緒にいたい彼女』


 いつもの年より早めの夏休み。
 カレンダー上の問題と、社会的な問題が組み合わさってこうなったんだけど……

「暇なの?」
 不思議そうに僕を見つめる彼女。そう、彼女ができたのだ!
 昨年までは独り身だったのでこの部屋の人口密度は現在より50%ほど低かったわけだが(当たり前だね)、今年の夏は寂しくない。それは嬉しいんだけど、出かける場所がない。

「ごめん。僕、レジャーの予定とかたてるのうまくなくてさ……」
「そっかぁ。別に悪くないんじゃない?」
 ふいっと横を向いた彼女だけど、別に不機嫌そうでもない。
 いつもどおりの穏やかさを保っている。
 本当に彼女で良かった思う反面、どこか連れていってあげたいな……

「あのさ、そんなにじっと見られてると困るんだけど……」
「ご、ごめん!」
「謝ってばかりだね~。なにか隠してない? 言いたいこと言おうよ」
 食い下がってくる彼女に戸惑う。
 見た目はおとなしそうなのにこういうところはグイグイ来る。
 僕にはもったいない美形の彼女……顔が近づくとドキドキしてしまうので、ますます黙り込んでしまう。

「はぁ、そういうトコロ……頑固だよね、キミ」
 諦めた様子の彼女を見てホッとした次の瞬間、僕は急に心臓が握りつぶされたみたいに息が止まってしまう。

「んんんっ!!」
「ねえ、なんでここ大きくしてるの?」
 彼女の白い手が僕の股間に添えられていた。
 ツツツ、と指先で形をなぞるように上下にゆっくり動き回る。

「ふぅん、言わないつもりなんだね」
 言わないも何も、いきなり手コキされて驚かない男なんていないと思う。
 それ以上に気持ちよすぎて頭の中がぐちゃぐちゃになってしまうというか……

(う、うまい……ってゆーか、こんなの我慢できない~~~!!)
 触ってほしかったわけじゃないけど、触られたら反応してしまう自分が恨めしい。
 彼女の方から触れてきたのだからそれで構わないんだろうけど、恥ずかしさにはいつまでたってもなれることはない。

「どんどん硬くなってますけど?」
 上下にしごかれ、先端を撫でられる。
 すでにパンツの中はぐしょぐしょだ……

「もう少しで弾けちゃいそうだね~」
 歯を食いしばって快感を耐えるだけの僕に、彼女が本格的に身を寄せてきた。
 甘い香りが漂ってくる。香水じゃなくて、もっと自然な……髪の香り。

 腕に密着する柔肌と、彼女の吐息に酔わされてしまう。
 手コキが一層激しくなり余裕が全くなくなる。
 その直後、耳元にキスをしてから彼女が囁いてきた。

「はい、トドメ♪」
 ピシッと指の先で亀頭を弾かれ、すぐに優しくなで上げてきた。
 その緩急の付け方に僕は敗北した……

ビュッ、ビュクウウウ、ビクン!!

 声を押し殺しながら絶頂した僕に彼女は優しくキスをする。
 唇を奪われながらも手コキは続けられ、静かな二度目の射精を迎えてしまった……

「気持ちよかった?」
 黙ってコクンと頷いた。
 腕に首を回しながら彼女がしなだれがかってくる。
 時時こんなふうに予測不可能なことをしてくるんだけど、怒る気すら抜き取られてしまった。

「うふふ、よかった。さっきまで寂しそうだったもんね」
「えっ、どうしてそう思ったの?」
「もしかして私のこと考えてくれてたの?」
 彼女は何気なく聞いたつもりだろうけど、そのとおりだった。
 大切な相手と過ごす時間なのにじっとしてて申し訳ないと素直に謝った。

「へ、へぇ……ホントに考えてたんだ。しかもそんな――」
 語尾を濁しながら、僅かに頬を赤く染めて彼女は僕の視線をそらした。
 少しだけ沈黙があったけど居心地が悪いものでもなかった。

「だからあんまり見つめないでよ!
 でも、ちょっと嬉しいなって思ったよ。ありがと」
 おどけた様子でそう告げた彼女の表情がいつになく上機嫌に感じられた。


『なんとなく一緒にいたい彼女』(了)



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