『日曜日の朝からくすぐり調教されて逆らえなくされちゃうお話』
早朝からのチェックインは平日も休日も変わらずにお得だった。
今から彼と二人きり、日が暮れるまでフリータイムだ。
手早くシャワーを浴びた私はバスタオルを巻いた姿でベッドへ向かう。
彼はまだ服を着たまま穏やかな表情で私を見つめている。
自分は裸、相手は着衣……この時点でお互いの上下関係がはっきりしていた。
そして指示されたとおりに横たわり、手首を拘束された。
足首はまだフリーだけど勝手に動かすことは許されない気がした。
「いい子ですね。今から存分にくすぐられてしまうというのに」
褒められて嬉しくなる。
言葉だけで体の芯が熱くなり、今すぐくすぐってほしくなる。
(でも、自分からは絶対に言わないんだから……!)
簡単におねだりしてしまうような女だと思われたくなかった。
キュッと口を結ぶ。だがそれも長続きしなかった。
「ひぃっ……!」
彼の指先が私の右肩に触れ、そのまま鎖骨へと移動する。
それだけでとてもくすぐったい。
ううん、気持ちいい……
「どうしました?」
「なっ、なんでも……なひいぃぃッ」
「我慢強い子は好きですよ。いじり甲斐がありますから」
私を責める指先の数がひとつ増えた。こんなにくすぐったいなんて!
見た目は普通のラブホテルなのにここの設備は特別だった。
一般的なカラオケルームよりも高密度な防音材。
本来ならば声を押し殺す必要はない。
でも我慢しなければならなかった。それが彼の命令だから。
「あ、はぁ……あっ!」
体をギュッと硬くして身構えている私を静かにくすぐり続ける彼。
その指の動きは狡猾で残酷だった。
感じやすい場所を探り当て、我慢しづらい場所を迂回して弱点を増やしていく。
「ずるい、こんなの……ッ」
「何がですか?」
「わ、笑いたいのに、寸止めされちゃうなんて」
わかっているのにとぼけたふりをする憎らしい人。
確実に私を悶えさせる場所は後回しにして他の場所に探りを入れていく。
くすぐりやすい場所を開発していくのが上手すぎる。
「んっ! あっ、ああああ……」
遠ざかっていく刺激にため息が出る。
くすぐられて苦しいけど、気持ちいい。
気持ちいいのに思い切り叫べないのは苦痛だ。
「解放できないでしょ」
「う、くぅっ……」
その苦痛を癒すように指先が軽やかに私を撫で回していく。
ずるい、本当にずるい!
抵抗したいのに優しく封じ込めて、さらに私を苦しめるなんて。
「それが狙いですから」
見抜かれてる。それなのに反抗らしい反抗ができない。
逃げようと思えば逃げられる状況なのに、彼の次の一手を待ちわびてる自分がいた。
「いじわる……」
「はい」
すねた様子の私に不快感を示すわけでもなく、彼は微笑みながら刺激を重ねていく。
「ふあっ!」
くすぐったくてたまらない場所を、一瞬だけ彼の指がかすめた。
軽く引っかかれただけで我慢できない。
「そこ、は、待って……ダメ、ダメだからああああ!!」
脇の下から乳首の真横までをサラサラとなぞられ、悲しいくらい感じまくっているのに絶対に許してもらえない。
もう少しだけ深くくすぐられたらイけるのに!
あと少し長く同じ場所を刺激してくれれば溶けてしまうのに!!
「上から下に撫でられる方がお好みですか」
「……ッ!!」
そのとおりだった。でも悔しいから言わない。
「ささやかな反抗ですね」
ツゥ……
「ひゃあああぁぁぁんっ!!」
全身から汗が吹き出すほどの快感。
思い描いていた通りの指の動きだった。
(やっぱり見切られてる……これじゃ、絶対逆らえないよぉ……!)
笑い声に変わる直前で指の力を抜かれ、体の奥がモヤモヤする。
自然と両脚をモジモジ動かしてしまう。
いつの間にかショーツは脱がされていた。
「理解できましたか? もう完全にあなたは私のものなんです」
ドクン、と心臓が大きく脈打つ。
(彼のモノ……私が……)
何気ない一言なのか、狙ったキーワードなのかはわからないけど、彼の言葉が思い切り心に突き刺さった。
そして顔を寄せてきた彼に囁かれる。
「指先一つでこんな風に」
直後にやってきたのは、おへそ周りへのくすぐり。
「んっ、ん、んーーーーっ!!」
「少しくらいの抵抗じゃ我慢できませんよ」
密着したまま囁かれ、さらにクルクルと指先だけで翻弄される。
抑え込まれた体勢で自由気ままに私の腹部をさまよう彼のくすぐりに我慢できず、ついに叫び声を上げてしまった。
「ひあっ、んふっ、ああああ、あっ! そこ、それ、く、くしゅぐった……」
「はいストップ」
そしてピタリと止まる指先。
「ああああああああああああーーーーーーーーっ!!」
不完全燃焼のくすぐったさに私は涙まで浮かべてしまう。
(もっとくすぐってよぉ……せっかく、おねだりしたのに! はずかしいのを我慢して服従したのに!!)
全身が火照りだして止まらない状態にされているのだ。
くすぐられたくてたまらないのに生殺しにされているのだ。
もちろん彼はそんなことはお見通しで、私の泣き顔を楽しんでる。
でもすごく優しい表情で見つめられると何も言えなかった。
「鳴き声が可愛いですね。これ、ご褒美です」
「え……」
私のお腹をくすぐっていた彼の指。
それがおもむろに私の口の中に侵入してきた!
「んんーーーーっ!!」
「お口の中をくすぐってあげます」
チュプ……
「!!」
無防備な口の中を犯された。彼は私に痛みを感じさせることなく、歯の表面や裏側、頬の内側などをくすぐってきたのだ。
同時に私を抱いているもう片方の手で上や背中も撫でてくれるのだからたまらない。
内側と外側を同時に愛撫されては我慢などできるはずもなかった。
「あ……ひぃ……♪」
「私に可愛がられて嬉しいですね」
すっかりトロ顔になった私を見ながら彼の愛撫は続く。
(すき、好き、これすきぃ……!)
だらしなく口を開き、うっとりした目で彼を見つめてしまう。
チュ、ポ……
やがて口の中に入っていた指が引き抜かれた。
正直、名残惜しい。
「見えない鎖をつけられちゃって、ほらもう自分じゃ解けない」
「そんな……」
「ここからはお望み通り、狂わせてあげます」
シュルル……
枕元に用意されていた小さめのタオルを噛まされた。
猿ぐつわの代わりだ。
どれだけ叫んでも助けてもらえない。
彼の行為と言葉に再び体の芯がしびれてしまう。
このあときっと私は犯される。
今までのが準備運動だったと思えるくらいにボロボロにされてしまうだろう。
激しくくすぐられて、泣き叫んでも許してもらえないまま、彼の気が済むまでくすぐり尽くされてしまうのだ。
膣内へペニスを挿入されるまでもなく指先だけで数時間悶えてしまうのだ。
「でも幸せでしょう?」
震える私を抱きしめながらささやく彼。
その言葉に私はコクリとうなずいてしまうのだった。
(了)