刺激が強すぎる美優との「はじめて」体験を終えた後、橙矢は彼女の顔を正面から見つめることができなくなっていた。
自分から求めた淫らな行為への羞恥心もあったのだが、それ以上に抑えられない気持ちが彼の胸中を支配していたからだ。
(美優先生に、今こそ思いを伝えるんだ。ずっと好きでしたって言いたいし、せ、先生が僕のことをどう思っているかも知りたい……)
初恋の相手としては美優は美しすぎた。
できればこのまま一緒に居たい、ずっと同じ時間を過ごしたいのだ。
だが彼が思い切って何かを伝えようとしていることを美優は察知していた。
そして橙矢が今、何を考え何を言いたいのかも経験でわかる。
だから先に釘を差した。
「橙矢くん、私としては、今はキミから何も聞かれたくないなぁ……」
「ど、どうしてですか?」
自分の思考を読まれたと思った橙矢がビクンと肩を揺らした。
だが美優は相変わらず悪戯っぽい視線で彼を眺めていた。
「だって、聞かれたらきちんと答えなきゃいけないでしょう」
「!?」
「自分の中で温めてる言葉とか思いは言葉に出さないほうがいいと思う」
「で、でもっ」
「そっちのほうが楽しくない?」
美優は首を傾げて可愛らしいポーズを取ってはぐらかした。
完全に自分の動きを先回りされてしまった、と橙矢は落胆する。
心の中でくすぶっている思いを伝えることすら許されないなんて残酷すぎる。
「う、ううぅ……せんせ……ん、んんんーーー!?」
橙矢が必死の思いで抗議しようとしたところを、またもや美優が遮った。
チュッ♪
彼が絶対に抗えない方法で。
(先生、本当に僕のこと好きなの? 何を考えてるのか教えてくれないのに、キスとか、エッチなことをしてくるのはずるいよぉ……)
それでも溺れてしまう。
思春期の彼にとって美優の口づけは刺激的すぎた。
無意識に彼女を求め、抱きついてしまう。
そして美優はその欲求に答え続けた。
「橙矢くん、私にここまでさせておきながら、まだ不安があるの?」
優しい声でささやく。
彼の頭を何度も撫でながら、腕の中でとろけている少年をグイッと抱き寄せた。
「ああああぁぁぁーーーーーっ!」
橙矢の体がプルプル震えている。心地よいのだろう。
そしてこれこそが彼の望んでいる状況なのかもしれないと美優は考える。
「女の子に弱すぎるのも問題よね。
これからはこっちの方も、授業範囲に入れなきゃいけないかな?」
うっとりと自分を見上げている橙矢に尋ねる。
彼はコクンと頷いた。
「全然わからないのでお願いします……美優先生のこと、もっと知りたいです」
その言葉に美優も微笑む。
「いいよ。時間をかけて教えてあげる。
私も橙矢くんのことを知り尽くして、今よりもっと夢中にさせてあげるからね」
そしてもう一度軽い口づけを与えてから、美優は自分の虜になった彼の首筋にキスマークを刻みつけるのだった。
『美優先生と僕の特別授業』(了)