『サンタに気に入られたお留守番少年の話』
「すごい雪だなぁ。お母さんたち大丈夫だろうか」
窓際で少年がつぶやく。彼の名前はリョータという。
クリスマスが近づいてきた今夜、珍しくこの地域に大雪が降ってきた。
見る見るうちに積もっていく。
買い物にでかけた両親の無事を祈っていた。
「あ、流れ星? 雪が降ってるのに不思議だなぁ」
夜空に一瞬走ったきらめきをリョータは運良く見ることができた。
その直後だった。
ドンドンドンドン!
「ひっ!?」
誰かが思い切りこの家の出入り口をノックしている、というか殴ってる。
チャイムを鳴らしてくれればいいのに。
恐る恐るドアホンのモニターを見る。
女の人だった。背中に大きな荷物を背負っている。
「だれですか?」
「はううう、さむいいい。だれでもいいからおうちにいれてえええ」
配達の人ではなさそうだ。
それによく見ればこの人、寒そうな格好をしている。
(悪い人じゃなさそうだし)
彼は自分の直感と良心に従って玄関のドアを開けることにした。
ガチャ。
リョータがドアを開けると冷気よりも速くその女性は体を滑り込ませてきた。安心したのか持っていた荷物を落とし、自らも膝から崩れ落ちてぺたんと尻餅をついた。
「わぁ……」
ほっそりした手足、きれいな金色の髪、カチカチ震えながら彼を見上げてきた可愛らしい顔立ちをしたお姉さん、というのが彼の第一印象だった。
「なにか飲みますか? 紅茶とか」
リョータが尋ねると女性はコクコクと頷いた。
温かい飲み物を口にしてからようやく自分のことを語りだした。
彼女はサンタクロースらしい。
心優しい少年はその言葉を疑うこともなく大変ですねと労った。
「きみは優しい子なんだね。サンタやるのも最近しんどくてね。特に今夜なんて風が強いから防寒服がふっとばされちゃって」
ニッコリ笑う自称サンタを見てもリョータはまだ不安そうな表情のままだった。
正面にいる女性の鼻と頬が痛々しいほど赤いのを見つめている。
きっと寒かったのだろうなと思った少年は、自室へ戻ってリボンが付いた小さな紙包みをサンタに差し出した。
「あら……なぁにこれ?」
何日かあとに彼の母親へ送るためのプレゼントだった。
中身はクッキーだ。
「サンタさんも、たまにはプレゼントを貰う側になってみるのもいいんじゃないかなって思ったから」
それから毎年ご苦労さまですとつぶやいたリョータの健気さに当てられたのか、サンタは両手で彼からのプレゼントを抱きしめた。
「これはもらえないよ。悪いから」
「どうして!?」
他の人あてのプレゼントを奪うわけには行かない。
サンタにだって矜持はある。
しかしリョータも食い下がる。何としてもサンタさんにプレゼントを受け取って欲しいと願う純粋な気持ちからの行為だ。
「そっかぁ……じゃぁ、きみをプレゼントとしてもらうことにするね」
「え」
呆気にとられた少年を見つめながらサンタが懐から真新しい袋を取り出した。
たたまれている時は小さかったそれは一気に口が広がり、リョータを飲み込めるほどの大きさにまで広がった。
「うわあああっ、ああぁぁ……」
彼の叫び声を体ごと包み込んでしまったサンタの袋。その中は一種の亜空間であり、人間がいくら抵抗してもどうすることもできない仕組みになっていた。
「この袋の中に入るとね、どんなものでも渡された人の所有物になっちゃうんだよ?」
「所有物!?」
「だからねー……わーい、プレゼントうれしー!これできみは私の所有物……もうわたしの言うとおりにするしかないよー……」
袋の中にサンタの声が響き渡る。
何故か自分が裸になっていることにリョータは気づいて顔を真赤にした。
寒さはない。だが恥ずかしい!
真っ白な空と真っ白な平原に立っているような状態。
どこを向いても同じ景色の空間に自分がいるのは不思議な気持ちだった。
「そろそろ慣れてきたかな?」
「全然です! 出して!」
「あっはは、ちょうど欲しかったんだよねー、きみみたいな可愛い男の子の奴隷……いや、トナカイクン」
なにか物騒な言葉が聞こえた気がするけどどうにもならない。
「だいじょうぶだよ。サンタの魔法は一夜限り。聖夜がすぎればまたいつものきみに戻れる」
その言葉に続いて、突然白い世界が動き出した。見た目はかわらないが、なんとなく縮まってきているように感じた。
「あっ!」
突然股間が掴まれた。反射的にビクンと跳ねた全身も、まるで大きな手でガッシリと握られたみたいに不自由になる。
「なんで、これ……動けないよぉ!」
袋の外側ではサンタがニヤニヤと笑っていた。
「気持ちいいでしょ? うりうり」
白い袋は真っ白な世界そのもの。
彼女は左手で彼の全身を掴み、右手の指先で股間を刺激しているのだ。
さらに念を送れば、白い世界にサンタのアバターが生成された。
リョータの目の前にさっきまで見つめていた可愛らしい顔が迫る。
「きれいに剥いてあげるねぇ」
リョータに軽くキスをしてからサンタは両手を伸ばしてペニスの皮をいじり始めた。
アバターは全身が真っ白で、なめらかで暖かい雪でできているように見えた。
「きもちいい? 優しくシュッシュして、ドッピュンしちゃお?」
彼の全身を拘束したままサンタは敏感な少年のペニスを弄ぶ。
指先を皮の中へ入れてクルリと回してみたり、喘ぐ少年の唇をそっと塞いでみたり、身をくねらせながら全身をまとわりつかせてみたり……
数分間それを繰り返された頃、リョータの体はすっかり出来上がっていた。
耳に息を吹きかけられただけでくすぐったさが駆け巡り、快感にすり替えられる。
「わたしに初めてを捧げてね? トナカイくん♪」
はむっと耳たぶを噛まれながら囁かれ、肉棒をしごいていた指先が射精を促すようにキュッとすぼまった瞬間、
ビュルルルッ!
手足を大の字に広げたままリョータは盛大に爆ぜた。叫び声を上げそうになる寸前にサンタにキスをされて声も封じられた。射精している最中も追撃することをやめず、サンタは少年の初めてを手のひらで堪能した。
ぷはぁ……
「あはは、いっぱいでてるねー」
口元を拭いながら彼女は笑う。だが少年は息も絶え絶えで、興奮が抜けきらない体を持て余してモジモジと腰をゆらし続けていた。
「もう少し磨いてあげるよ~」
サンタの手のひらが、そっと彼自身を覆い隠す。
それだけでリョータはうめいた。指先がゆっくり絡みついてくる。
逆らえない、剥がせない、それなのに気持ちよくてたまらない!
「真っ赤な先っぽのおちんちん、すごくいいよ!」
悶える少年を大切そうに一度抱きしめてから、サンタは舌先を首筋や乳首に這わせながら舐めおろし、しごいていた肉棒の先端へと顔を近づける。
そのまま大きく息を吸ってから、彼自身を口に含んだ。
(あああああああああああっ!!)
喉が枯れて声を出せなくなっているリョータ。それでも彼は理解した。ペニスがサンタの口の中にあることを。暖かい唾液が絡みついて、舌先でもてあそばれるたびに快感が突き抜けていく。このまま溶かされてしまいたいと思うほど心地よかった。限界は近い。
「もう一回、イっちゃえー」
ビュクウウッ!!
認識するより先にイかされていた。彼女の口の中で硬さを取り戻したペニスから精液が吸い出され、敏感になった亀頭を何度も舐め回されている。
リョータにとっての初体験はハードすぎて、すでに彼の頭の中は焼ききれそうなほど快感過多の状態だった。
サンタが満足したのは彼がそれから三回気絶してからだった。
「はぁ、はぁ、こ、これで、もとに……はぅんっ!」
指先が動くことを感じたリョータは自分がまだ白い世界に居ることに気づく。股間をサンタに抱かれ、彼女が光る指先で見慣れない文字を自分の腹に書ききろうとしているところだった。
「ひっ、うあっ! な、なにをしてるんですか……」
不吉な予感が彼に質問をさせた。あの文字から強い力を感じる。
「いい忘れたけどプレゼントは持ち主に名前を刻み込まれたら元には戻れないの」
「えええええっ!」
「あたりまえでしょ? だれのものなのかはっきり痕がついてたら返品不可能だよね」
少年はたったそれだけの会話で理解した。このサンタは自分を元の世界に返すつもりがない。それどころか永久に自分のモノにしようとしている!
慌てて抵抗しようとする彼に対してサンタが指先でペニスを弾いた。その刺激は痛みよりも快感が強く、リョータは腰砕けになって抵抗できなくなってしまった。
「今からきみは一生わたしのたいせつなオモチャになるの。体に、心に、魂に、わたしの痕跡を刻み込んであげる。いっぱいいっぱい、えっちなことしよ?」
キラキラと光りそうな笑顔のサンタを見ながら少年は唾を飲み込んだ。魅力的な提案なのかもしれない。可愛くて優しくて、そしてエッチな彼女と一緒にいたらいろんなことをしてもらえるかもしれない。
彼の気持ちが快感のほうへと傾きかけているのを感じたサンタが甘くささやく。
「自分が奴隷クンだって自覚させてあげる。朝になるまで、だれがきみの所有者なのか、わからせてあげる。うれしいよね」
そのまま彼の耳にキスをして、舌先をねじ込みながらペニスにそっと手をかぶせた。
さらにそこから数時間後。
甘い刺激で誘惑のシロップ漬けにされてしまったように、少年はもはや抵抗すらできずにサンタに身を任せていた。
優しくしごかれて射精、口に含まれてゆっくり射精、全身を撫で回されて焦らされてのおもらし射精、そして極めつけは童貞を奪われたまま抜かずに十回吸精……人間相手ではありえない回数を童貞卒業と同時に味わうことになった。
クタクタになってうごけない彼のとなりでサンタが背伸びをした。
「うん、そろそろ夜明けだねー。じゃあ解放してあげる」
袋の中にいた彼を優しく引っ張り出す。
出会ったときと同じ用に服を着せ、疲労回復の魔法もかけた。
「わたしにいい夢を見せてくれたお礼だよ。きみみたいないい子を、このまま独占するわけには行かないからね!」
サンタにも矜持はある。防寒着をなくしたサンタは、数時間前よりは寒さが和らいでいることを確認してからリョータの家を出ていくのだった。
『サンタに気に入られたお留守番少年の話』(了)