『魔界からの招待状 ~キノコのお店の甘い罠~』





 突然の出来事だった。
 俺の部屋に転移魔法のゲートが開いた。

 楕円形の出入り口の奥に見えるのは薄暗い紫色の空間。
 そこから這い出た魔族に俺は見覚えがあった。

「お久しぶりでございます」
「お前は……」
「はい、貴方様に命を助けていただいた ローにございます」

 上級魔族バンパイヤロードだ。名前はロー。
 魔族の中でも知性が高く、魔界の四天王一人だった。
 そう、あくまでも過去形。

 なぜなら勇者である俺が一ヶ月ほど前に魔王を倒したから。
 四天王たちを力でねじ伏せた俺は、人間界の国王との約束通り平和をもたらしたのだ。
 だからといって魔界に居るすべての生き物を殺すようなことはしていない。
 魔物といえども暮らしがある。
 こちらに害をなさなければ無駄な犠牲は出したくなかった。

 バンパイヤロード以外の四天王は文字通り討ち死にしたわけだが、やつだけは生き残って俺の側についた。計算高くて狡猾なバンパイヤロードだが話が通じた。

 ローは頭を下げつつ俺に大きめの封筒を差し出した。
 金の刺繍がしてある紫色の封筒には真っ赤な封緘がされていた。
 受け取って開いてみる。

「魔界からの招待状……?」

 今上魔王からの書面に間違いなかった。
 元魔王は俺が滅ぼしたが、その時近くで震えていた淫魔を次期魔王に任命したのだ。

 その彼女からの文章が手紙には書かれていた。なかなかの達筆。

「俺に感謝していると書かれてあるのだが」
「ええ、一部の魔族は勇者殿に感謝しております。今回はその気持ちを表すためにもてなしを……」

 ローは相変わらずにこやかな表情でそう答えるが、

「なにかの罠では?」

 感謝されるほどのことをしていないし、普通に考えれば恨まれて当然だろう。
 一体どんなつもりでこんなものをよこしたのか。

 なんの前触れもなしに俺の居室にゲートをつなげればそれこそもう一度滅ぼされても仕方ない口実を与えてしまうというのに。

 困惑する俺に向かってローが控えめに語りだす。

「疑われるのはごもっともですので、こういったものも用意しております」

 彼が懐から取り出したのは一枚の羊皮紙。

 そこに書かれているものを見て俺は目を見開く。

 誓約の魔術。魔族といえども抗えない絶対の契約。
 俺が調印すれば有効となる術式だった。

 内容としては、魔族が俺に害をなさないことや万が一機嫌を損ねた時はどんな処罰でも受けるといったものが中心で、一方的に魔族に不利な内容が書き記されていた。

「もはや我々は勇者殿に逆らうつもりは毛頭ありません」

 再び頭を下げたローに向かって俺は手をかざし、魔力を集中させる。

「試していいか?」
「存分に」

 相手の承諾を得てから思考を読み取る魔術を行使する。

 ローの言葉に嘘偽りはなかった。

「わかった。招待に与ろう」

 俺の言葉を聞いたローは、魔王からの指令を無事にこなせたということでホッとした表情を見せた。







「短時間で随分ときれいになったものだな」

 あれから数日後、俺は魔界の大地にいた。

「時を操る魔術で修復しました」

 禁術ですけれど、と案内役のローは付け加えた。

 俺が破壊した場所はきれいに修繕されており、魔界の都市は以前と変わらぬように機能しているという。やはり魔族の力は侮れないと感じる。

 ローは魔王城までの案内と、俺の接待を任されているらしい。
 俺の希望で今は街の中を探索している。もちろん偽装魔法をかけてだ。

(いろんな種族の魔物がいる……)

 だが皆、邪悪な気配はなく、健全な活気に満ち溢れている。

 そんな中で気になる装飾の店を見つけた。

「ここはなにをするところだ?」

 路地裏の細い通路の奥に、薄いピンク色や黄色の照明がついた小さな店舗がある。
 店の前には茶色い帽子をかぶった小柄な女性魔族……遠目だが可愛らしいと感じる店員と思しき者が客引きをしていた。

「ホオオ! さすがお目が高い! 最近評判の店のひとつです」

 ローはそういって、俺に耳打ちをしてきた。

「娼館か……」

 往来のあるこの道ではおおっぴらにできないのだろう。
 ローは気を利かせて俺の手を引いて店の前まで連れて行ってくれた。



 路地裏の奥へ進むと店がそれほど小さくないことがわかった。
 間口が狭いだけで想像以上に大きな娼館。
 同時に30組以上の客をもてなすことができるらしい。

 派手な照明のついた看板の前にさっきの女性魔族がいた。
 近くで見ると本当に可愛らしい。
 人間界で言うところの踊り子っぽくも見える。

(こんな子が男をもてなしているのか……)

 見た目通りの年齢ではないのかもしれないがちょっとしたカルチャーショックだ。
 茶色い帽子の下にあるふわふわの金髪と真っ白な肌。
 クリクリした大きな目と薄紅色の唇。そして体型に似合わない巨乳。

「勇者殿からしてみれば非力な下等魔族です。恐れることもないでしょう」
「しかし……」

 ローには罪悪感というものは持ち合わせていないのかもしれない。
 もしそうなら俺のためらいを理解できるはずもない。

 無言になった俺を見て遠慮してるとでも思ったか、ローはさっきよりも好色な笑みを浮かべてグイグイとこの店を推してくる。

「誓約の魔術式もありますし、なによりここには誰もいません。人族は貴方一人」

 たしかにそのとおり。監視も護衛もいない。

「何事も経験が大切なのでは」

 それも一理ある。
 こんな機会でもなければ魔界の風俗など縁がない。

「……わかった。世話になろう」

 気づいたときにはそんな言葉が俺の口から飛び出していた。




「いらっしゃいませー」

 あれよあれよという間に店の中へ案内され、そのまま最上級の部屋に通される。
 いい香りがする室内には大人が四人くらい並んで寝られるサイズのベッドがある。
 そこに柔らかそうな白いタオルが敷かれており、俺は客引きをしていた彼女と一緒に座っていた。

 試しに偽装魔法を解除してみたら、とても驚かれた。
 勇者であることを名乗ると警戒されると予想したのだが、予想は裏切られ、逆に感謝の言葉と好意を述べられた。

 密かに魔法で確認したが、彼女からも敵意は感じない。
 歓待しているというのは嘘ではなさそうだった。

「魔族と言っても、変わらないのだな……」
「あー、偏見ですぅ! ちょっと落ち込んじゃうかも」

 ふわふわの金色の髪をなでながらつぶやくと、俺たちの背後からもうひとり女の子が登場した。その顔を見てぎょっとする。身を寄せている彼女と瓜二つだったからだ。

「あたしはキノっていいます」
「うちはピオ!」

 よくよく聞いてみれば双子らしい。
 唯一違うところは髪の色が、ピオのほうが少しだけ赤いところか。

「よ、よろしくな……俺はどうしたらいい?」

 美少女魔族、キノとピオに挟まれた形で俺が尋ねると二人はニコニコしながらそっと俺から離れた。

「そこに寝てくださいー」

 ふわふわのタオルの上にうつ伏せになれという。

 立ち上がった俺に抱きつきながら二人がかりで服を脱がせてきた。
 同時にそれぞれが脱衣して、下着姿になって寄り添ってきた。

「帽子は脱がないのか?」
「あ、これは体の一部ですー」

 帽子じゃないなら何なのだろう……興味本位で顔を近づけてみると、果物みたいに甘い香りがした。

「アロマキャンドルみたいなものでー、リラックスできるキノコです」
「キノコ!?」
「食べ物じゃないですよー。いい匂いを嗅いでリラックスして、明日に備えるためのお店ですから」

 二人は妖精だという。
 キノコの妖精なんて居るのか。

 世の中は広い、いや魔界は広いのだな。

「い~~~~っぱいリラックスしていってくださいね、勇者サマ♪」

 キノがにっこり微笑むと甘い香りが強くなった気がした。



 それから数分後、俺は二人の手によってマッサージされていた。
 驚いたことにその手付きが絶妙で、優しく撫でられているだけかと思えば筋肉のコリを見つけてぎゅっと強めに揉まれたり、いい匂いのするパウダーで全身を清められたり、すっかり俺は彼女たちのテクニックの虜になっていた。

「どうですかー」
「ん、すごく、いいな……」

 心からそう思う。
 かゆいところに手が届く、どころではないのだ。
 全身の筋肉がもみほぐされて気持ちいい。

「眠くなってきちゃいますぅ?」
「う、むん……ぅ……」

 眠いかと問われて眠気が増した。そんなはずもないのだが。
 すごく強めに肩や腰を掴まれている。
 だが痛みを感じない。ひたすら気持ちいい。

「そろそろ夢見心地ですよねー」
「じゃあ、本番と行きますか!」

 キノとピオは微笑みながら、俺の両耳に息を吹きかける。
 そのまま今度は顔に、髪に、型に、全身に……

 キラキラした何かが俺を包み込む。
 これは、胞子……?

 だが息苦しさも感じないし咳き込むこともない。

 まどろむ俺を見つめながら彼女たちは上と下へ分かれる。
 上半身をキノが受け持ち、下半身をピオが。

 力の入らない俺の腰に手を潜らせ、膝を立たせて四つん這いにする。
 正確には三点支持、顔や肩はベッドに伏せたまま膝だけを立てた状態。

 そしてまた二人が息を吹きかける。胞子が舞い、俺の背中へ薄く積もる。

「全身ふわふわ~、マシュマロキノコ~」

 その積もった胞子をパウダーに見立て、四本の手が俺の全身をくすぐりだした!

「はぅんっ!」

 反射的にあえいでしまう。もちろんそんなことで二人の手の動きは止まらない。
 キノは俺の首筋や肩、脇腹を弄び、ピオは下半身全体をゆるゆると指先で撫で回している。全身を這い回る彼女たちの指先がくすぐったくて、でもそれ以上に心地よくて、俺は笑い声よりも多く喘ぎ声をあげてしまう。

「んふんふ、元気がいいキノコですね~」

ピチョンッ!

「はあああああっ!」

 せ、先端が、優しく撫でられた。ペニスと乳首の両方を同時に!

 キノは俺の上半身に覆いかぶさるようにして背筋をペロペロ舐めていた。
 逆に下半身担当のピオは片方の手でペニスを揉みながら尻の谷間をなぞったり、太ももの内側をさすったりしている。

「ぷっくりツヤツヤ、おつゆもジュワァ~」

 亀頭をふわりと包み込みながら、美少女の手のひらがキュッとすぼまった。

「んはあああああああ!!」

 ベッドに顔を埋めたまま俺はあえぐ。
 優しく甘く痺れる感覚の中で、何も抵抗できずに彼女たちの手に落ちていく。

 それは一種の恐怖でもあり、期待でもあった。

 ヒクついたアナルをそっと指先でなぞられ、睾丸も優しく転がされる。
 ペニスはビクビク震えるだけでその先へ進めない。

 それなのに上半身は全然力が入らず、しかもようやく抱き上げられて四つん這いになった俺の目の前にいるキノが目を閉じて顔を寄せてきた。

「んっ♪」

ちゅ、ちゅうぅぅぅ……

 小さな唇が触れただけで全身が大きく震えた。

「暴れちゃ駄目ですぅ~」

 戒めるようにペニスの根本がギュッと握られた。
 ピオはそのまま睾丸をスリスリしてくる。

 まだキノは俺の唇を奪ったまま、舌先で口内を舐め回している。

 前と後ろを同時に責められ身動きができない!
 しかもこんな情けない格好で、四つん這いで……

ちゅ、ぽ……

「勇者サマのキノコだけじゃなくて~、全身をリラックスさせちゃいますから」

 やっとキスが終わり、目の前で花のように微笑むキノを見て俺はベッドに崩れ落ちた。



「表になってくださいね~」

 そしてふわふわした気持ちのまま天井を向かされる。
 二人の顔が見える。
 ピオは視線を下げて顔を赤くしていた。

「うわ、おっきいキノコ……おいしそう!」

クチュ……

 恐る恐る伸ばした彼女の手が俺自身を掴んだ。

(あ、あああぁぁぁ!!)

 さっきまでとは違って、優しさよりも気持ちよさを重視した指使い。
 見る見るうちに肉棒がそそり立ち、今度はキノが興奮したように体を起こした。

「あたしから頂いちゃうもんね」
「あ、キノちゃんずるい!」

 ピオがそう言うのにも関わらず、キノは迷わず俺のペニスの真上に陣取る。
 そしてゆっくりと腰を落としてきた。

クニュッ

「はぁんっ、すごい……精力がいっぱい詰まってて、硬いよぉ……」

 ゆっくりゆっくり埋め込まれていく。

 簡単にはすべてが収まりきれなかった。怒張したペニスの硬さに驚きながら、いつしかピオもその様子に見入っていた。

クプ、プププ……

 肉襞が亀頭を飲み込み、ついに俺と彼女が一つになる。
 根本が見えなくなるほどしっかりと俺をくわえ込みながらキノがニヤリと笑った。

「このままおつゆを搾ってあげますね~」

キチュウウッ

「んあああああああああっ!!」

 思わず喘ぐ。それほどの快感だった。

 キノの膣内はしっかりと俺を捕らえ、形を覚えるように内部で俺をくすぐり、なぞり、感じさせていく。しかも速度がスローすぎて、一往復するだけで俺は射精寸前まで高ぶってしまった。

「しこしこ、キュッキュ……ほらぁ、ジュワァ~」

ぱちゅっ!

「ふあああああああああああああ!!」

 抜け落ちる直前まで腰を上げ、膣内を締めてから一気に急降下。
 そして一番奥までくわえこんでからは腰を動かさない。

「あ、あああ、なにこれええええ!?」
「うふっ♪」

 内部のざわめきだけでキノは俺を喜ばせにかかっているのだ。
 全身をくすぐられたときよりも耐え難いくすぐったさに俺は悶えるしかなかった。

「勇者サマ、こっちがお留守ですよ♪」

 じたばたと悶える様子をうっとり見つめながら、ピオが優しく乳首を弄んでくる。
 その手つきはまるで膣内で俺を弄ぶキノと同じで、ペニスと乳首の両面責めが俺を感じさせてしまう。

「キノコの先っぽから漏れちゃいます? うふ、ふふふふふ♪」

 ピオの指先がひらめく度に全身が波打ち、キオの腟内がやんわりと俺を締め上げるたびにあらたに快感が生み出される。

 射精したい気持ちはすでに限界を振り切っているのだが、自分の意志では射精できなくなっていた。きっとこれも全身を包む彼女たちの胞子、パウダーの効果なのだろう。気づいたところでどうにもならない。軽く絶望するが、すぐに快感に押し流される。

ニュポッ

「とろとろ我慢汁だけでお腹いっぱーい」

 腰を上げたキノは満足げにつぶやき、ピオと場所替えをした。

「じゃああたしの膣内に、おいしいの、ちょーだい♪」

 そしてまだ満足していないピオのピンク色の膣口が俺のペニスへ近づいてくる。

 おそらくキノと同様に柔らかな肉襞が俺を包み込む。
 そう考えるだけで興奮が抑えきれなかった。

「ふふふふ、もうすっかり骨抜きキノコさんですねー」

 その言葉と同時に、俺のペニスは彼女の中へ閉じ込められた……





 それから数時間。

 交代しつつ何度も犯され、徹底的に精液を搾りとられて彼女たちの虜になった俺の前にローが現れた。

 もはや彼女たちが紡ぐ言葉に俺はすっかり従順になっており、何でも言うことを聞くようにされていた。

 そんなキノコ姉妹に対してローが命じたのは、ここへ来る前に俺が魔族と交わした誓約の破棄だった。






『魔界からの招待状 ~キノコのお店の甘い罠~』(了)











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