『姉の代わりに相手をするのが妹だとわかって逆上するも返り討ちにあってしまう副会長の話』




 ある水曜日の夕方。
 生徒会室へ続く廊下は静寂に包まれていた。
 耳に響くのは自分の足音のみ。

 それもそのはず、すでに下校時刻を一時間も過ぎているのだ。
 この時間まで学園内に残っているのは残業がある教職員や一部の学生のみだろう。

 その一部の学生に該当する俺、生徒会副会長・香月カズヤはある事案について会長である白鳥シズカと意見が対立していた。

……………
………


『待ってください会長、それではあまりにも女子を優遇しすぎです!』
『そうかしら。この件について男子は特に気にしないのではなくって?』
『ありえない……絶対気になりますよ。食堂の利用時間のうち7割を女子のみ限定にするのはどうかんがえても危険です』
『でも副会長、男子は女子と比べて食べるのが速いでしょう? だから何も問題ないと思うわ』

 今回は食堂の利用時間についてだが、会長である白鳥シズカの横暴……いや、女子への優遇はこれだけにとどまらない。部活動での体育館の利用時間や休み時間の運用にいたるまで、事あるごとに会長は女子を優遇し男子を冷遇しようと試みる。それに歯止めをかけて男子の尊厳を守るのが俺の役目なのだ。

『とにかく俺は断固反対です! 公平性に欠ける。誰の目から見ても明らかです』
『副会長、あなたの熱意も時々行き過ぎることがあって困ったものですね』
『どの口がそれを言う……俺は会長の暴走のほうが常々問題だと思いますが! だいたいアンタはいつもやりすぎる』

 自分を抑えているつもりでも、やり取りを重ねるたびに自然とヒートアップしてしまう。
 目の前でシズカが冷ややかに笑う。彼女は見た目は生徒の中でもずば抜けて美しい。
 学業の成績も優秀。女子からの人望も厚く男子からの人気もある。

 俺とほぼ変わらない目線であり、女子の中でも高身長。
 腕を組んでるせいもあり、制服の上からでもわかるほど胸が強調されている。
 ほっそりした身体に不似合いな大きめのバストや近づくと甘い香りが漂ってきそうな長い髪。
 同じ部屋で生徒活動をしている時ですら気を抜けば見とれてしまうほどだ。

 はじめの頃はそのせいでうまく話しかけることができなかった。
 だが俺は活動をこなしていく中で思い知らされた。
 男尊女卑ならぬ女尊男卑とも言えるこいつの腹の中を。

『まあ、なんという暴言でしょう。男子のくせに』
『なんだと!?』

 どこから見ても美少女なのに男女差別が激しいというか、こいつは確実に男を見下している。
 それが非常に残念だ。

 今も黒髪を指の先でくるくると巻くようにいじりながら、俺の様子を楽しむように薄ら笑いを浮かべている。煽られているとわかっていても気持ちが高ぶる。余裕たっぷりに振る舞う会長に対して俺はひそかに劣等感を抱いていた。

『フフ、気に触りましたか。しかし私としても副会長の態度はちょっと許せませんわ』
『……ならばどうする? 俺は絶対に意見を曲げないぞ』

 言葉を発したあとで俺は気づく。
 引くに引けない状況になってしまった。内心焦る。

『そうですか。仕方ありませんわ……』

 わざとらしい溜息。その直後に浮かんだ会長の笑顔を見てさらに焦る。
 まんまと嵌められた気がした。

『副会長、あなたに決闘を申し込みますわ。
 私が負けたらあなたの意見を飲みましょう。
 逆の場合はどうなるかわかっていますよね?』

 眉根を潜めて口元に手を当てて悩んでいるふりをしていても目はずっと笑っている。
 俺の背筋に冷たい汗が流れる。

『くそっ、ついに本性を表しやがったな』
『もはや何を言われても構いませんわ。勝負しましょうか。それとも……臆したのですか?』
『ふ、ふざけるなっ!』
『では正々堂々と、格闘技でもセックスでも、もしくはその両方でも構いませんわ。
 納得いくまで戦って白黒つけましょう。気持ちの整理がついたら奥の部屋までいらっしゃい。
 私も最近のあなたに対しては反省していただきたいところが多々あるのです。
 この機会に存分に叩きのめし……いいえ、わからせてあげましょう』

 シズカは手のひらを上に向け、優雅な指先の仕草で俺を誘っていた。
 蠱惑的な笑みを浮かべた美少女が背を向け、生徒会室の奥にある「特別指導室」の鍵を手にした。

 頭の中に生徒会規則の中に存在する文言が浮かび上がる。

『生徒会規則第8条 附則、役員同士の意見の対立はバトルファックで決着をつけることもできる。』

 バトルファックというのは文字通りバトルとファック両方を指す。

 格闘技で相手を制した後に性技でわからせるのもよし。
 合意があるなら最初から性技のみで相手を圧倒し、屈服させるもよし。

 シズカは俺に対してそれを行使してきたのだ。
 俺が逃げ出せないように気持ちを煽り、言質を取って自分に有利な条件を整えた上で。

(形の上ではあいつが仕掛けてきたことになっているだろうが……)

 シズカのことだ。会話の流れもおそらく録音されているだろう。

 俺が意見を曲げないという言葉はしっかりと記録されている。
 いまさら引くことはできない。このまま会長を倒すしかないのだ。

『その澄ました表情……男を侮っていることを後悔させてやるぜ……』
『まあ怖いお顔。でもそうでなくてはいけないですわ』

 格闘技に関して俺はほとんど未経験。しかし女に負けるつもりはない。
 力で勝る男が女と戦って負けるはずがないだろう。

 お望み通り会長をボコボコにしてから押し倒し、淡々と犯してやるだけだ。
 だがセックスに関しては完全に未開の分野だ。
 格闘技同様に未体験……ゆえにこちらで勝負すれば確実に負けそうな気がした。

『気持ちの準備は問題なさそうですね。そろそろ始めましょうか』

 余裕たっぷりに奥の部屋へと俺を誘い込み、シズカは部屋に鍵をかけた。
 広さは3畳程度の完全防音室だ。
 ここで何が起きても誰も助けに来てくれない。



 ――そして俺は、シズカに敗北した。

 何度も気絶して、その度に無理やり起こされた。
 ビンタであったり、快楽責めであったり……
 明確に覚えているのは会長に負けた、彼女の色気と肢体に溺れてしまったという情けない事実だ。



 「特別指導室」に入ってすぐに会長が身構えた。
 左手を前にして斜に構えたボクサーのような姿勢。
 じつに洗練された動きだった。

(こいつは……もしかして格闘技経験者では?)

 嫌な予感は的中するものだ。

『以前お伝えしたと思いますが、私は空手二段、柔道は三段、それからボクシングの経験も多少はありますわ』
『なっ……初耳だが!?』
『フフ、先手必勝ですわ!』

 シズカは膝を柔らかく使い軽やかなステップを刻み始めた。
 豊かなバストがその動きに合わせて上下に揺れる。

 ベッドが一つ置いてあるだけの狭い部屋で施錠済み。
 お互いに逃げ場はない。

『くそっ!』

 先手必勝という言葉をそのまま相手に返すべく俺のほうからシズカに襲いかかる。
 彼女は笑みを浮かべたまま動かない。

 左の拳で顔面を狙いフェイント、本命の右を細い腰にぶつけるつもりでパンチを放つ。

パチィンッ!

『がァッ!?』

 だが俺の手が彼女に触れるよりも早く、鼻先に小石のようなものがヒットした。

 硬くて疾い彼女の拳だった。
 ひらりを攻撃を交わしながら彼女が放った牽制の一撃。

『フッ、私が女だから手加減してくださったのかしら。思ったよりずいぶん遅いですわね』

 右を放つためにがら空きになった顔面にジャブを放り込まれたのだ。
 鋭い痛みに眼の前が一瞬真っ白になるが構わず右手を前に突き出す。
 
 当然のように空を切る俺の拳。自分でもわかるほど苦し紛れの反撃だった。
 俺の舌打ちに被せるようにシズカの口から可愛らしい気合の声が発せられた。

『やあっ!』

ドスッ!

 シズカは俺の右を避けることなく潜り抜けて懐に入りみ、鳩尾に肘を叩き込んできた。

『がッ……』

 呼吸が止まり、動きも止まった俺の腕をシズカが掴み、そのまま肩でぶつかりながら体重を預けてくる。
 上から下へと水が流れるような動きだった。
 フロアに俺を押し倒し、そのまま体を捻って体重をかけたヒップドロップまでしてきた。

ドムンッ

 カーペットが轢いてあるとは言え、床に背中を叩きつけられたところに追撃されたのだ。
 その苦しさを味わいながら今度は重圧。女の尻に敷かれ屈辱感を味わいながらどうすることもできない。
 彼女の鮮やかな連続技になすすべもなく俺は倒され呼吸が乱れる。

『はぁっ、ぐあ、はぁっ、あぁ……』
『あら? もうおしまいですの? あっけないこと』

 口元に手を当てて俺を見下すシズカを睨みつける。だが払い除けることができない。

『まだだ、俺はまだお前に負けてない!』
『そうですか。ではもっと辱めてさしあげますわ』

 俺の上に座り、くすくす笑いながらシズカは制服のポケットから何か細い紐状のものを取り出した。
 そこから素早く立ち上がり両脇に腕を通して俺を抱き起こした。

(な、なんだ……何をするつもりだ!?)

 左頬にシズカの呼吸を感じる。
 急に密着したことで自然と胸が高まり顔が血の気で熱くなる。

 上体を起こされたまま正面から抱きしめられるような格好だ。
 彼女の長い髪がわずかに顔に触れ、いい匂いが漂ってくる。

『このまま動けなくしてあげます。フフフフ♪』

 一瞬気が抜けた俺に対してシズカは微笑み、抱きついたまま背中に手を回す。
 その直後、俺の手が締め付けられ鋭い痛みがやってきた。

ギュウウ~~~ッ!

『痛ッ! な、なにをしている!?』
『失礼。副会長の両手を縛らせてもらいましたわ』
『えっ、そんな!』

 彼女の身体がすっと離れる。
 親指同士が結ばれて抜け出せない。左右の手が動かせない。

 シズカは俺を抱きしめた体勢で背中に腕を回し、先ほどの紐状のもので指をロックしたのだ。
 おそらくパソコンのケーブルを束ねるときに使うようなものだろう。
 解ける様子がまったくない。完全に両手の自由が奪われた。

『こんなものを持ち歩いてるのか……卑怯な!』
『何を仰るのやら。バトルの最中なのですよ副会長』

 ニヤニヤと笑いながら会長がすぅっと手を上げた。

『な、なにを……』
『これは先ほど私に対して無礼な言葉を使ったあなたの罪への罰です』

ぱんっ!

『ぐふっ……』

 細い指先が翻り、スナップの効いたビンタが俺の頬を弾く。
 頬に焼けるような痛み。
 シズカはそのまま手の甲で俺を打ち据える。

ぱんぱんっ! ぱしっ、ばしっ!

『ぶふうっ! や、やめっ』

 動けない相手に対する容赦ない往復ビンタだった。
 平手打ちを何度もされて左右に顔が弾かれる。

『クスッ♪ もう命乞いですか。まだあなたの罪は消えていないようですが』

 次第に目の前がクラクラしてくる。
 やがて会長が俺を打ち据える手を止める頃にはすっかり抵抗する気力を削がれていた。

『クスッ、しっかりなさい。まだあなたは負けていないのでしょう?』

 再び脇に腕を通され今度は無理やりその場に立たされた。
 両足の間に彼女の細い足が割り込み、柔道の投げ技みたいに腰を跳ね上がられて俺はベッドに転がされた。

『がああっ!』
『やれやれ、これでは勝負にならないではありませんか』

 呼吸が整わないまま衣類を剥ぎ取られ、下半身をむき出しにされた。
 羞恥心で顔を真赤に染める俺に向けて彼女が着衣のまま告げる。

『覚悟なさい。二度と私に逆らえないように心にトラウマを刻みつけてアゲル……』

 普段は冷静沈着な彼女の目が妖しく揺れていた。
 恐怖を感じたが、それ以上に不覚にもその表情が美しすぎて見とれてしまった。

 整った顔立ちがゆっくりと目の前に近づいてくる。
 もう少し顔を寄せたらキスができそうな距離でシズカがささやく。

『怖がらなくていいですわ。ここからは優しくしてあげます。
 少なくとも身体だけは、病み付きになるくらいたっぷりかわいがってあげますから』

『え……』

『痛みのあとで快楽を与えられたあなたはどんな声で鳴いてくれるのでしょうね』

チュッ♪

 鼻先同士がふれあい、その後すぐに唇が重なった。

 この上なく柔らかな感触に心が埋もれてしまいそうになる。

 それからたっぷりと時間をかけて、俺は手足の指先まで痺れてしまうほどの快感を彼女に流し込まれた。

 シズカの唇は凶悪だった。
 羽のように柔らかで天女のように気高くて、ずっと味わっていたくなる甘い口づけが何度も俺を蹂躙する。
 触覚と聴覚、頭の中を恍惚感で満たされ、蛇のように動く舌先で心をかき乱され、同時に指で乳首を弄ばれた。

『フフフ、思った以上に感じやすい体質なのかしら。副会長は』
『うあっ、ああァ……ッ!』

 逃げられない。本能的に身を捩っても追従してくる口づけに抗えない。

 初めていじられる場所に戸惑いを隠せない。
 細い爪の先でキリキリと乳首をつままれながらのキスはとてつもなく気持ちよかった。

 シズカは舌先で口内を凌辱するのと同様に指先で俺に痛みと快感を交互に与えてきた。
 乳首をいじるのと同様に巧みな手つきでペニスをいじられて寸止めされた。

『苦しいですか? 苦しいですね。フフフ、可愛らしくおねだりしてごらんなさい副会長』

 しかし彼女は悪辣だった。
 どんなに俺が求めても絶頂に至る決定的な刺激を与えず先延ばしにした。

『はっきり言ってくださらないと私もやる気が削がれてしまいます』

『いやらしい。こんなにパンパンに膨らませて……はしたないですわ』

『私のことが憎いですか? それとも愛しく感じてきましたか? フフフフ……』

 甘い囁きと同時に全身を嫐られているうちに、俺は自分から何度も射精を懇願してしまった。
 わかっていても逆らえない状況だった。

 焦らすようなキスを頬や額に何度もしながら時折唇も奪い、黒髪の香りをばらまきながら耳元では偽りの愛をささやき、シズカは俺自身が心底屈服するように仕向けた。

 すべすべした手のひらが俺の全身を這い回り、悶える様子を楽しみながら時折腰を合わせて振動を与え、寸止めしてきた。
 あと数秒触れ合っていたら射精していたという感覚を何度も俺に植え付けるために。

 記憶が途切れるほど許しを請い、自らの非礼を詫び、彼女を求め続けた。

 時が経ち、ついに射精に至ってからは何も覚えていない。
 圧倒的な快感に押し流され冗談抜きで頭の中が真っ白になった。
 いや、真っ白にされた。

 精根尽き果ててベッドの上で身動きできなくなった俺を見下しながら彼女が言う。

『さて、今日は私の勝ちということでよろしいですね?
 リベンジしたければいつでもどうぞ。私は何度でも副会長の心と体をわからせてあげますわ』

……………
………


 はっきりした記憶はここで途絶えている。
 それでも最後で言われた言葉だけはハッキリと覚えていた。

 だから俺はシズカにやり直しを請求しに来たのだ。


 甘美な誘惑と一時の快感を味わった代わりに俺は醜態を晒してしまった。
 このままでいいはずがない。
 前回の屈辱を噛みしめながら俺は目的の場所を目指す。

『少なくとも俺は万全ではなかった。
 突然のバトル開始だったし、会長は格闘技の経験について隠していた。
 つまり不意を突かれた。ゆえに再戦を要求する。次は負けない。』

 凌辱された翌日、俺からの挑戦状を受け取ったシズカは目を丸くしていた。
 あれだけ痛めつけたのだから、もはや反撃などないと高をくくっていたのだろう。

『なるほど、わかりました。副会長の精神に敬意を評します。
 ですが今回は日時を指定させていただきますわ?
 こちらにも準備……いえ、予定がありますので』

 最後に見せた会長の表情が気になっていたのだが、今さら考えても仕方あるまい。
 再戦の日時は二日後の放課後に設定された。

(汚名を削ぐために彼女に打ち勝たなければならない!)

 生徒会室にたどりついた。
 この先に会長がいるはずだ。
 深呼吸してから意を決して入室すると、待ち構えていたのは……



「あら、本当に来たんだ。おにいさん」

 会長の椅子に座っていたのは会長の妹だった。
 俺より一学年下にあたる彼女の名は、白鳥アズサという。

「副会長だ! 俺はお兄さんじゃない! しかしどうして妹のキミがここに……白鳥会長はどうした」

「おねえちゃんなら先に帰ったよ。
 今夜は見たい番組があるから失礼しますわって伝言をあずかってるけど」

 普段はシズカが座っている上等な椅子からピョンと飛び起きたアズサがこちらへ歩いてきた。
 身長はわずかに姉よりも低く、髪はツインテールにしている。

 顔立ちは姉妹というだけあって似ている。だが端正ではあるが妹のほうが性格は天真爛漫といった様子であり、全身から姉とは違ってゆるい印象を醸し出している。

 アズサは学業面では姉ほど優秀ではないものの男子からの受けはよく、密かにファンクラブが存在するほど人気者らしい。彼女の画像を高額転売するために隠し撮りする輩がいるということを一ヶ月前の持ち物検査で知ったのでよく覚えている。


「番組って……バカなっ、ふざけてるのかあの人は!? わざわざ時間まで指定して俺を呼び出しておきながら」

 再戦にあたり彼女はスケジュール調整が必要だと言っていた。
 その結果、俺は今こうしてここにいるというのに無礼にも程がある。

 ワナワナと震えだす俺を見ながらアズサが手招きするような仕草で軽口を叩く。

「まあまあ、そんなに怒らないで。おにいさ……副会長の相手なら私で充分ってことなんじゃないかな」

 ニヤニヤする会長の妹の顔が先日の姉に重なって見えて急に苛ついてきた。
 一見するとにこやかだけど心の底では男を見下しているのがわかる。


「まさかキミが俺の相手をするとでも?」
「うん。もしもおにいさんが私に勝てたら何でも言うことを聞いてあげなさいっておねえちゃんから言われてるし」
「しかしだな……」
「まあ、どう考えても無理だけどね。フフフ」
「なんだと!?」
「私に勝てたら『おねえちゃんが負けた!』って言いふらしてもいいし、前回負けたときに撤回させようとした話を飲んであげてもいいってさ」
「そんな好条件を何故……」
「だっておにいさん、一度おねえちゃんに負けたんだよね。だとしたらきっと私にも勝てないと思うけど」

 勝てない? 一度負けたくらいで?
 怒りを堪えて考える。
 アズサが口にしたその条件の中には前回の敗北を撤回することも含まれているのだろうか。
 そう考えてる最中にアズサが口を挟んできた。

「もしかして私とバトルするのが怖い? たいしたことないんだね、副会長って」

 アズサが口にした一言は流石に許容できない内容だった。
 気づいたときには体が動いていた。



「ふ、ふざけるなあああああああ!!」

 ダメだとわかっていた。
 これは不意打ちだしアンフェアだ。

 それでも猛然と襲いかかる自分を止められなかった。
 眼の前にいる妹が、俺を蹂躙した姉と重なって見えた。

 男を馬鹿にするのも大概にしろという思いを込めて殴りかかったのだが、

「クスッ、こっちこっち♪」

 アズサは身軽に俺の突進を回避してしまった。
 まるで俺の動きを事前に把握していたかのように。

「くっ! まだまだあああぁぁ!」

ブォンッ……

 虚しく空を切るのは俺の拳。
 アズサは軽くステップを踏みながら軌道の外へ身を逃がす。

 そのやりとりがしばらく続き、俺は異変に気がついた。

(まさか俺が無意識に手加減している? 相手が年下だから)

 一瞬の戸惑い。だがそれが正しくないとすぐに頭を切り替えた。
 これは真剣勝負だ。
 代理とは言え相手は生徒会長の妹。
 手を抜くなどありえないと思っているとアズサが不敵に笑い始めた。

「ププッ、不思議だよねぇ?
 おにいさん決して体調が悪いってわけでもなさそうだし」
「くそっ、チョコマカと!」
「でも私にはわかるの。おにいさんがさっきから空振りばかりしている理由が」

 煽られて悔しくないわけではない。
 だが今は相手の軽口を封じる必要がある。

「そろそろ反撃してもいいよね。私も体が温まってきたから」
「やれるものならやってみろ!」

 構わず俺が攻め続けると今まで避けてばかりだった相手に変化が現れた。

 アズサが半身になり、スッと左手を前に出す。

「おにいさんなら次はこう来るのかな?」
「はああっ!!」

ぱしっ!

「な……」
「ふふふ♪ えいっ」

 一歩踏み込んだアズサが手のひらでパンチの軌道を変えてきたのだ。
 さらに掴みかかろうとする俺の腕をかいくぐって身体をぶつけてきた。

どんっ!

(ぐ……っ、肩を押し込んできやがった! くそ、負けるものかッ)

 直接的な痛みはないが攻撃が中断されてリズムが乱される。

「うおおおおっ!」
「あはっ、予想通りの動きだね」

ちょんっ

 空を切る俺の拳に難なく触れてくるアズサ。
 伸び切った手の甲を軽く小突いて挑発してくる。

(馬鹿な……ありえない!)

 完全に間合いを見切られているようだ。そうでなければ説明がつかない。
 俺の手が届く距離なのにアズサだけが俺の身体に触れていた。

「やっぱりおにいさん無意識に怯えてる。
 見た目がおねえちゃんに似てる私を見て身体が縮こまっちゃってるんだよ」

「そ、そんなはずあるか! 舐めたことを言うな」

 俺は呼吸を整えながら左の拳を軽く握った。熱くなった自分を落ち着かせる。
 ネットの動画で覚えた技だ。
 力んだ拳よりも力を抜いたほうが速く相手に届くらしい。

シュッ!

「わわっ! おにいさんも本気モード?」

 覚えたてではあるがボクシングのパンチをアズサの顔面に叩き込む、が当たらない。実際は当たりそうなのだが俺の左肘を彼女の右手が内側へ押してくるので回避されてしまうのだ。

(くっ、これでもだめか!)

「焦ったー! あぶないあぶない……」

 軌道をそらされるのは非常に悔しい。それでも攻撃を繰り返すのだがアズサを捉えることができない! 余裕綽々といったふうに攻撃を回避している彼女を見ているうちに俺の胸にもやもやと湧き上がってきた思いがある。

(こうしてみると、たしかにシズカに似てる。顔立ちは少し幼いけど……)

 だがもしもアズサが髪を解いたら、きっと姉と同じくつややかな髪が広がるのだろう。
 そう考えると急に胸がドキドキし始めてしまう。なぜなのかはわからない。
 緊張感や焦りとは違う何かが胸のうちに広がってくる。



(集中力を乱すな! しかしこの感情は、馬鹿な……そんなはずが、なっ!?)

 戸惑いを覚えたせいで動きが鈍った瞬間、

ヒュンッ……

「はッ!!」

 今まで回避するばかりだったアズサが明確に反撃してきた。

 視界の端で寸止めされたのがわかる。
 高く振り上げた右足が、細い足先が俺の顎先でピタリと止まっていた。

「シズカだけじゃなく妹まで格闘技を……」
「正解。でもおにいさん、ちょっと動きがおそすぎない?
 後から出した私のキックのほうが速いなんてありえないんですけど。
 バトルの最中に呆けてるのはダメだと思うよ?」

 その言葉を耳にした直後、顎の先で寸止めされていたアズサの足がわずかに揺れた。

パシッ!

「ぶふっ!」

 片足を上げたままの姿勢でアズサが俺を蹴った。
 足の先で顎を突かれ、上を向いた俺の顔にすぐさま硬いものが当たる。
 今度はアズサの踵だった。

ガッ、パシッ! ゴスッ、ビキッ……

 彼女は片足立ちのままで何度も蹴りを放ちヒットさせてくる。

「ぶっ、あっ、はあっ!」

 そしてまたつま先で蹴られ、踵を戻して反対側の頬を張られた。
 連続で何度もアズサの蹴りが襲いかかってくるのだが止められない!

ゴッ、パシッ、ガス、ビシッ! パンッ、バチンッ、パシィッ!

「きゃははは、それそれっ! 早く抜け出さないと歯が折れちゃうかもよ」

 しなやかな動きと驚くべきバランス感覚で俺を蹴り足で往復ビンタするアズサ。
 その威力は少なくともシズカの平手打ちの倍以上あり、細い足が吹き抜けるたびに強制的に俺の脳が揺らされる。

(な、だ、だめだ、離れなきゃ、意識が飛ばされるッ!)

 ぐらつく視界の中、俺は焦って手を出そうとする。
 しかし細い足首をつかもうとした途端にあっさり引っ込められてしまった。

「ププッ、弱~ッ! それに遅すぎて笑っちゃう」

 ケラケラ笑いながら彼女は言う。
 俺の頭の中でキンキンと耳鳴りがしていた。

 一歩離れた距離からの連続ハイキックに全く反応できなかった。
 ペロリと舌先を見せつけるようにしながら彼女が俺の顔を覗き込んでいる。

(く、そっ……わざと倒しに来なかったのか。ふざけた真似を!)

 年下に見下されるなど屈辱以外の何物でもない。
 手足に力を込める。
 少しは回復しているようだ。
 俺は目の前の少女に対していらだちを覚えながら猛然とラッシュを仕掛けようとした。

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!」

 だがその声はすぐに彼女によってかき消されてしまう。

「えいっ、やあっ!」

パンッ、バシイイッ!

「がああっ!!」

 アズサの反撃が本格化したのだ。
 俺が出す右のパンチに左の膝蹴りを合わせられ、その後苦し紛れに放り込んだ左のパンチは楽々かわされてアッパー気味のパンチを叩き込まれた。
 さらにそこから先ほどよりも重い蹴り技のラッシュが来た

「ぶっ、ぐふっ! がああっ!?」

 首に両手を回すようにして俺を固定したアズサは伸び上がるようにして膝を何度も俺の腹にめり込ませる。
 たまらず回避しようとして腕を交差させると、


「……ボディ狙いからのローキックだよっ!」

ズビシイッ!

「ぐあああああああっ!」

 左の膝とふくらはぎに激痛が走り、崩れ落ちそうになった。
 途中で変化したアズサの蹴りに対応できずもろに食らってしまった。

「ふふっ、気持ちいいなぁ。年上の男の人をボコボコにするのサイコー!」

 ドン、と両手で肩を押されてよろめきながら下がると鼻先を彼女の回し蹴りが吹き抜けた。
 当たらなかったのはラッキーではあったが明確に恐怖を感じてしまった。

 だがそれでも負ける訳にはいかない。
 シズカよりも体格で劣るアズサに後れを取ることなどあってはならないのだ。

「しぶといね~。まだやるの?」

 両手を握って顔をガードする俺を見てアズサが溜息を吐いた。

「ぐっ、お、俺は、お前たち姉妹に負けるわけにはいかない!」
「しょうがないなぁ~」

 するとアズサのほうから構えを解いた。
 張り詰めていた気が抜けた俺はその場に片膝をついてしまった。

「あれあれ~? だいぶ辛かったんだね」

「そんなこと、ないさ……」

「強がんなくても良いし。
 痛いのはもう終わりにしてあげるよ。
 そのかわりエッチで戦うヤツやろうよ。
 きっとそのほうがおにいさんにも勝ち目あるんじゃないかな?」

 クスッと笑いながらアズサが背を向けた。
 机の引き出しに手をかけた。特別室の鍵を探しているのだろう。

 今なら勝てる。無防備な背中に蹴りでも叩き込めば余裕で倒せるだろう。



 しかし俺は小さな背中を見つめたまま動けなかった。
 それは散々痛めつけられたせいで体が動かないからなのか、アズサとのバトルファックを望む気持ちからなのかはわからない。
 ただ正々堂々と勝ちたい気持ちがあった。

「あれっ、不意打ちしてこないんだね?」
「……当然だろう」
「さすがおにいさん。副会長はダテじゃないんだ!」

 アズサは特別室の鍵を開け、扉を開いて手招きしてきた。

「じゃあ今から奥のお部屋で勝負してあげる。
 おねえちゃんそっくりの私を制圧できるチャンスかもよ? フフフフ」

 片手で髪をかきあげながら笑うアズサの一言にドキっとした。
 最後の微笑が姉のシズカにそっくりだったのだ。

(今のはわざとか? それとも……)

 白鳥姉妹は無意識に男を惑わす素養があるのかもしれない。
 だがアズサを倒し、俺の要求を飲ませるとしたらここで勝負するしかないのだ。
 俺はその提案に乗ることにした。

「ベッドの上ではどうかしら? なんてね……さあ、おにいさんどうする? 逃げるか戦うか決めてほしいな」

 相変わらずアズサは余裕たっぷりだが、今回はお互いに着衣のままスタートすることを提案した。
 これならば俺に有利というか前回よりフェアな条件と言えるだろう。

「異論があるなら受け付けるが」
「私はそれでかまわないよ。おにいさんは先攻と後攻どっちがいいの?」

 尋ねられたので先行は彼女に譲ることにした。
 相手の出方がわかれば勝ち筋も見えてくることだろう。

 少なくとも年下のアズサが姉のシズカほどの性技を持っているとは思えない。
 そして前回敗北したおかげで俺は快感に対して耐性ができてるはずだ。

 大丈夫、この勝負なら負けない。
 自信がみなぎった俺の表情を見てアズサが嬉しそうにうなずく。

「うんうん、そうこなくっちゃね。じゃあ私が先行~。
 考えてみれば当然だよね。
 格闘の方ではおにいさんを圧倒したんだから」

 そんな軽口を叩きながら彼女がタイマーをセットする。

「わかってると思うけど私たちのバトルは全部記録されてるからね。
 相手を満足させるか降参させたほうが勝ち。
 せっかくだから15分交代でやろうよ。いいでしょ?」

 特に異論はない。俺が軽く頷いた直後、タイマーのカウントがスタートした。
 拘束されることはないが時間が尽きるまで抵抗は許されない。

 だが開始直後に俺は彼女に促され上半身を裸にされてしまった。
 姉よりも小さな手でペタペタと胸板を触られる。

「おにいさんの身体ってすごく敏感そうだよね」
「……っ」
「フフフ、私の裸も見てみたい? しょうがないなぁ~」

 正面で微笑みながらスルリとブラウスを脱ぎ去るアズサ。
 淡い黄色のブラジャーを見て思わず唾を飲み込んでしまう。
 姉ほど巨乳というわけでもないが形の良さをはっきりと主張していた。
 ブラから覗くその肌の白さを見ていると、何故か姉のシズカのことまで思い出してしまう。

「やだ、見惚れてる……ヘンタイだね おにいさん。
 すぐに気持ちよくして、恥ずかしいお顔にしてあげる」

 クスクス笑いながら誘惑してくるアズサ。
 再び白い指先が俺の肌に触れる。

(くそっ、きもちいい……)

 予想外に柔らかなタッチに背筋が震えてしまう。

「我慢してるお顔、かわいいかも♪ いつまでもつかな~」

 俺の股間はすでに半立ち状態だ。
 それを見破られたようで少し恥ずかしかった。

 アズサの手が俺の股間へ伸びてくる。
 姉のシズカと同じようにほっそりした指先がカリ首を探り当てた。

「うっ……あうっ、あああぁぁぁー!」

 そっと触れられただけなのに心臓が飛び上がるほど刺激的だった。

「ありゃ~、これなら簡単に制圧できそうだね。じゃあ今度はこっち」

 股間から手を離したアズサは指先を見せつけるようにしながら乳首を狙ってきた。
 爪の先が細かくうごめいて乳首の周囲をカリカリと撫ではじめる。

「くっ、うっ、あぁぁ……!」

「どうしたの? ヘンな声出しちゃって。くすぐったいのが好きなのかな?
 それともおにいさんは年下にいじめられちゃうのが好きなのかなぁ~」

 さらにもう片方は鎖骨のあたりをくすぐりながら脇の下を優しくなぞってきた。
 乳首と首筋を同時に責められ、さらに指先が移動して今は背中と脇の下を通過した。
 見つめられながらの触診はゾクゾクするほど淫らで、自然に声がでるほど心地よかった。

「これが好きなの? どうせならちゃんと気持ちいいって言って~」
「だ、だれが! あああぁっ」
「フフフ、素直じゃないね。おにいさん」

 脇の下へ差し込まれた彼女の指先はそれほど動いていない。
 アズサはいたずらネコのような瞳で不思議そうに俺を見つめているだけだ。
 その目の大きさが、形がどことなくシズカに似ていて焦る。

「気持ちよくないなら、触ってるだけなのにどうしておちんちんがビクビクし始めてるのかなぁ?」
「そ、それはッ!」
「ほ~ら、もっとイイコになろうね?
 年下の私のテクで悶えるところをおねえちゃんにも教えてあげないと」

 顔を撫でられ、ゆっくりと上下する手のひらの動きを見せつけられる。
 手首を柔らかく使って感じやすい場所を何度も優しく撫でられる。

 正直、たまらなく気持ちいい。
 ぎこちない手つきなのに確実に快感が蓄積されてゆく。

クニュッ……

「あああああああああああ!」
「クスッ、おちんちんこんなに固くしてエッチだなぁ……そろそろパンツの中から触らせてネ? その前に~」

ちゅぽっ

 アズサは人差し指を自分の口の中に入れて唾液を絡ませ、ニヤリと微笑んだ。
 トロリとした透明なしずくを見せつけながら彼女の手が肌着の内部に滑り込んできた。

「おちんちんクン、私のお手々とキスしようね」
「はうッ!!」

 遠慮がちだったのは最初だけで、するりと忍び込んできた指先はあっという間に肉棒の根本を捉え、シュルシュルと擦り始める。先ほど探り当てたカリ首へとしっかり指を這わせ、粘液を絡めながら刺激してくる。

クチュクチュクチュ……

(う、うまいっ! なんだよ、これえええ!?)

 指先に力を込めずにアズサは肉棒の先端を握り、柔らかくひねりつつドアノブを回すように何度も甘責めしてくるのだ。その手技は姉の手コキを思い出させるのに十分なほど熟達していた。


「どうかな? でもまさかこれだけで射精しちゃうなんてことないよねぇ?
 年上の男の人だもん、もっと我慢できて当たり前だよね~」

 小馬鹿にするような言葉を受けても言い返せない。
 気持ち良すぎて集中を切らせることができないのだ。
 アズサの手コキは服の上からとは段違いの気持ちよさだった。

 細い指がしっかりとカリ首を掴み、裏筋を軽く引っ掻きながら我慢汁を何度もすくってクチュクチュと刺激してくる。
 淫らな音と指先の感触の両面で俺は責め立てられているのだ。

「ねえ、このままだと私の手のひらがおにいさんのでドロドロになっちゃうんだけど。
 そろそろこのエッチなお汁を出すの止めてくれないかな」

「そんなこと、言われてもッ……ふああああーー!」

 俺が反論しようとしたところで亀頭がこね回された。
 すっかり弱点を看破されている。

(どうしてだ、さっきよりも、きもちいい……とめられないッ)

 だが俺はもっと重要なことに気づけなかった。
 自分が年下に言葉責めされて興奮していることに。
 快感に全身が震える。だがそれを悟られたくない。
 アズサに気づかれたくないのだが、そうなるとますます感じてしまう!
 急に心臓の鼓動が跳ね上がり興奮が漏れ溢れてくる。

「くっ、あっ、ま、まって……!」

「あ~ぁ、おちんちんからなんか出ちゃいそう。こうすればいいのかなぁ」

チュクッ!

 アズサの指先がカリカリと先端をくすぐってきた。まるで舌先で弱点をねぶられているようなテクニックに思わず声を上げてしまう。

「ひあああああっ!」

「フフッ♪ なぁに、おにいさん。指先でチロチロされるの好き?」

 もう限界だった。勝手に腰が跳ね上がり俺は射精に備える。
 それを察したようにアズサはカリ首の辺りをこちょこちょとくすぐりはじめ、ゆっくりと爪の先を肉棒の頂点から裏筋へと移動させてゆく……

「おちんちん優しくくすぐられるの気持ちいいね?
 と~~っても敏感な先っぽを甘やかされたらがまんできないよね」

「やめろっ、いうな! だめだああ!」

「ううん、言うよ? エッチな想像してほしいもん。おちんちんの気持ちいいところをいっぱいくすぐってあげる。おにいさんがはずかしくてたまらないところ、全部見ててあげる。クチュクチュにされて我慢できなくなっちゃうおにいさんのおちんちん、アズサがかわいがってあげる♪」

 笑顔でそう言いながらアズサは俺の耳元に顔を寄せ、チュッとキスの空打ちをした。

「お耳に優しくキスしてあげる。頭の中でじわじわ広がって、おにいさんはエッチなことしか考えられなくされちゃうの。そしたらもうイっちゃって? おねえちゃんのキスを思い出しながらおちんちんトロトロに汚しちゃお? フフフ」

ちゅっ、ちゅ、ちゅううーー♪

 その音を聞かされた俺はまるで本当にキスをされたように感じてしまう。耳たぶだけでなく、脳に至るまでのルートをすべて舐めあげるような誘惑。

 アズサの唇が何回も耳たぶに触れ、そのまま丁寧になぞるように舌先で舐められる。

 甘い吐息を浴びて混乱するのと同時に指先の技巧で感じまくっているペニス。
 その先端の刺激と俺の耳たぶが頭の中でリンクした瞬間、


「ぐああああああっ、でるううううううううう!!」


ビュッ、ビュク……ドピュウウウウウウウウウウ~~~~ッ!!

 開始から5分も経過していないというのに俺は爆ぜた。
 手コキと言葉責めの誘惑で、最後は亀頭に熱いキスをされたような気持ちになって射精してしまったのだ。

(と、年下のアズサの手が気持ち良すぎて耐えられない。残りあと10分もあるのに!)

 全身が脱力した。屈辱感というよりも焦り、それとプライドが砕かれたことを強く感じていた。ある意味、シズカに敗北していたときよりも傷が深い。妹のほうが確実に劣るはずなのに我慢することができなかったのだから。



「ププッ、よわっ♪ 射精するのはや~い! あっという間にイっちゃった!」

「うっ、うるさい!」

「おにいさんもしかして溜まってたの? それならもう降参しちゃえばいいのに。耳たぶキスと優しい手コキで何度でも抜き取ってあげるよ♪」

 悔しいが何も言い返せない。そしてアズサの顔を見つめ返せない。

「ほらぁ、もっとかわいがってあげるんだから」

 未だ余韻が残るペニスを包み込むように両手で掴みながらアズサはニヤニヤとした表情で俺を見つめている。白濁まみれになった肉棒がまだ相手の手の中にあると知って俺もドキドキしてしまう。

「せめて私の身体にかけられたら良かったのに残念ね、よわよわなおちんちんクン」

 ニマ~っと笑いながらアズサが言う。

 そして先ほどと同じように顔を寄せ、チュッとキスをするふりをしてみせた。

(こ、こんなことでっ!)

 薄い唇が軽く音を立てただけでペニスがムクリと持ち上がる。

「フフフ、すぐに硬くなった。おちんちんクン、またキスしてほしいのかな? 私の虜になってるみたいでかわいい。どう? まだがんばれそう? それともギブアップしちゃう?」

 このまま敗北を認めることなどできない。弱々しく俺が首を横に振るとアズサは淫らに微笑んだ。

「しないんだ。じゃあキレイにしてあげないといけないね!」

 そのまま彼女は俺の股間に顔を沈め、口を開けてペニスの先端を迎え入れた。

「はぁ~むっ、じゅるるっ」

「うあああああああああーーーっ!」

「んふふ、ちゅうっ、チュルルルルル……」

 年下の少女の口内は思わず火傷をするのではないかと思うほど熱かったが、俺はすぐにそこが尋常でないことに気付かされた。

ジュルルッ、レロ、レロォ……ジュプウウウウウウウウ!

(う、うますぎる! なんだこの、まとわりつくようなフェラは!?)

 深々と飲み込まれたわけでもないのに歯を食いしばって耐えることしかできない。
 アズサのフェラは弱点を的確に責め嫐る口技だった。小さな口元がキュっと締まり、カリ首と裏筋には柔らかな舌先が這い回る。しゃくりあげるように、撫で付けるように……緩急をつけた性技に腰から下がとろけそうになるのを感じた。

(駄目だ、こんなの続けられたら、またあああああああ!!)

 手コキの時よりも速く射精感がこみ上げてきた。
 あと一分も持たないと自分でわかる。

 両手を強く握って我慢し続けていると、不意に魅惑のフェラが中断された。

ちゅ、ぽ……

「んはあっ!!」

「んふっ、気に入ってくれた? 私のフェラでおにいさんのお顔がトロトロになっていくのがよくわかったよー。これ、おねえちゃんから教わったの。上手だったでしょ」

 得意満面の笑みを浮かべるアズサ。フェラ自体は中断されているというのに、シズカの名前を出されたおかげで先日の敗北と彼女の甘い舌の感触を思い出してしまう。

「でもここからが本番だよ~。たっぷり弄んであげる」



 ペニスの硬さを保つためにゆっくりと上下に手コキをし続けながら、アズサはいきり立った肉棒にまたがるようにしながらM字開脚をしてきた。

(いつの間に脱いでいたんだ……それに、これは!)

 ツルツルした真っ白な肌にサーモンピンクの膣口が覗いていた。
 薄い陰毛が少女であることを誇示しているようだ。
 穢れないアソコを俺に見せつけながら彼女は微笑む。

「ねえ見て、きれいでしょ……私のオマンコ」

 上記した顔で俺に囁いてくるアズサ。
 少女の秘密の場所がトロリとした液体をにじませつつ誘惑している。

 腰を浮かせ、わずかに騎乗位の体勢へと移行する。

「もう我慢できないって言ってるみたい。ピンク色でふわふわで、中があま~くトロけてるおまんこにおにいさんのおちんちんは食べられちゃうの。ほらもう先っぽが……」

 薄っすらとした茂みに目をやると、彼女のクリトリスがわずかに見え隠れした。
 目を凝らしてお互いの距離が縮んでいくのを見つめていると、

ニュチッ……クチュッ……

 軽く先端が触れ合った。俺は必死で声を抑える。
 粘ついた液で潤う場所に亀頭をあてがわれ、その吸い付くような感触に俺は喘いだ。
 この時点で気持ちいい。良すぎるのだ。

「うあああっ、ア、アズサ~~~!」

 先端がじわじわとめり込んでゆく。とろけきっているのに抵抗が大きい。

「ふふ、なかなか入らないね。おちんちん大きいからかなぁ……それとも照れてるのかな。じゃあこうしたらどう?」

 先端が少しだけ膣口に潜る。それだけで暖かさに包まれ、たまらなく気持ちいい。じっとしているだけでも射精してしまいそうだというのに軽く腰を捻りながらアズサは懸命に肉棒を飲み込もうとしている。

「あんっ、んふふっ、いっぱい擦れて気持ちいいよね。おまんこにクチュクチュされて、入りたいのに入れなくて苦しいね、おにいさん……はぁんっ♪」

 これはわざと擦り付けられているのか……
 ヌルヌルした粘液がまぶされ、次第になめらかな動きに変わってゆく。
 同時にアズサとの一体感が増してゆく。

「んっ、そろそろいいかも……」

 アズサは腰をスライドさせ、ゆっくりと腰を前に突き出す。
 入り込んだら抜け出せないような蜜壺へペニスを招き入れてくる。

キュッ、クチッ、キュプ、ヌチュ……プリュンッ!

 適度な抵抗感とともにペニスがクプクプと音を立てながら年下の少女の膣内へと飲み込まれてゆく……。

「ほらほら、ゆっくりだけど少しずつ入っちゃうね……うふ、すごい目で見てる。おにいさん、そんなに私のオマンコで犯されたかったんだ? 年下の柔らかオマンコにいっぱいチューされたかったんだ? エッチね」

 軽く息を弾ませ、頬を染めながら彼女は言う。
 その熱い瞳に見つめられていると一段と硬さが増してしまう気がした。

「アズサの膣内、すっごく気持ちよくなってると思うの。
 お汁がお腹の奥から滲みだしてるみたい……
 さっきからおちんちんに絡みついてニュルニュルしてるでしょ?
 おにいさんが気持ちよくなるように膣内でいっぱい抱きしめて、かわいがってあげるから」

 先端が潜り込んだ状態で彼女は腰の動きをピタリと止めた。

「じゃあ奥まで挿入するよ。おにいさん、我慢して♪」

 アズサは深呼吸してから意を決したように小ぶりなお尻をストンと落とす。
 とろけるような感触がそのままゆっくりと俺自身を包み込んでゆく……

……クプンッ! じゅる、ニュルルル

 今までの時間が嘘だったかのようにあっさりと彼女に飲み込まれてしまう。
 だがその瞬間、俺の時が止まった。

(な、なんだこれ……溶ける、チンコがこいつの中で!)

 暖かさと同時にざらつきを感じた。
 ピンク色をした膣口の内部は窮屈で、潜り込んだ先が激しくうねりまくっていたのだ。

「はぁんっ♪ やっと入ったぁ~」

 ホッと一息ついているアズサを見上げながら俺は戦慄した。フェラや手コキのときより格段に刺激が上だった。必死に歯を食いしばってもカチカチと震えてしまう。あまりの心地よさにそのまま射精してしまいそうになる。

「フフフフ、私と繋がった感想はどう? おにいさん……
 もしかして、おねえちゃんのときよりも興奮してる?」

 ゆらりと腰を捻りながら彼女が問いかけてきた。図星だった。

(気持ち良すぎる! どうなってるんだ……!?)

 まともに返事もできず震えている俺の胸にアズサが両手をつく。
 そして前傾姿勢になって顔を寄せ、余裕たっぷりにつぶやく。

「なんだか動けないみたいだね。無理もないかぁ」
「ッ!?」
「たっぷり焦らして、甘えさせてからおちんちんを食べたから、もう我慢なんてできないよ」

 さらにその端正な顔を寄せてきた。
 自然とアズサの唇に目がいってしまう。

ちゅっ♪

 唇の形が変わり、軽くキスの音を立てた。それだけで膣内のペニスが震えた。

(うあああっ、くそっ、しずまれっ!)

 目が離せない。さっきもキスの空打ちで俺を射精させた魅惑の唇。
 手コキとの連携がなくても威力は十分だ。
 その端がにわかに釣り上がり、そっとささやいてきた。

「もう射精したくてたまらないでしょ。オマンコに包まれちゃったもんね。おにいさんがどんなに我慢したくても時間の問題だよ。このままじっと見下ろしたままカウントダウンしてあげよっか?」

「え……あっ!」

 ゆらりと腰が上下する。き、きもちいい……!
 いつでもキスができそうな距離でアズサはカウントダウンをはじめた。

「ごぉ~……よん……さん……♪」

「ま、まって! やばい、だから――」

「フフッ、またないよ。おにいさん降参してないもん。だから遠慮なく犯してあげる。拒絶しながら年下の私に気持ちよくされちゃいなよ。おにいさん……にぃ~、いち♪」

 アズサが微笑むと、とろけるような感触の肉壺がじわりと締め上げてきた。

 必死の思いで告げた言葉を即座に却下される。
 そして無情にもカウントダウンが再開したときにはペニスはすでに限界を超えていたのだ。

(ああああっ、でる! 見つめられながら出ちまうううううう!!)

「いっぱい我慢してるおにいさんの顔、すごくザコっぽくてかわいい♪
 でもこれでおしまい……はぁい、ゼロ。イッっちゃえ~!」

 ビクビク震えだす俺の身体を両手で抑えながら、アズサは腰を上げる。

 ペニスが抜ける直前で膣口をキリキリと締め上げ、一気に打ち下ろしてきた!

タンッ♪ ……じゅぷぷぷぷ

 膣口を通過するときの締め付けがやわらぎ、内部で優しく抱きしめられる。
 男なら誰でも参ってしまうであろう肉襞の包容に我慢が溶かされてゆく。

「あ……ああああああああああああーーーーッ!!」

ビュクウウウウウウウウウウッ! ドピュドピュドピュウウ!!

 腰をブリッジするように力ませながら俺は爆ぜた。

「あはっ♪ いい顔」

 アズサは悶える俺に抱きつきながら唇を塞いできた。

チュウウウウッ♪

「んあっ、ぐ、んっ、ンンンンンンンンンン~~~~!?」

 長く続く射精の間、俺は声を上げることすらできなかった。

 アズサがいきなり口づけをしてきたのと、その甘さに身悶えするしかなかったからだ。
 膣内で断続的にペニスが締め付けられながらの美少女からの執拗なキス責め。

(あたまが、おかしくなる……キスとオマンコの両方、気持ち良すぎておかしくなるうううう!!)

 射精を繰り返しながら俺は無意識にアズサの腰に手を回していた。自分から彼女を求めていた。細い腰やみずみずしいお尻に触れながらなおも激しく感じてしまう。再び射精の兆候が現れるが止められない。二度、三度と腰を跳ね上げて快感を逃がそうとしても収まらない。

ビュッ、ピュ……

 何度も精を吐き出して、俺が大人しくなるまでずっと彼女のキスは続いた。


「あはっ、熱すぎて火傷しちゃいそう。おにいさんの敗北射精」

 お腹を擦りながらアズサが満足そうに言う。
 その顔を俺は見とれてしまう。

(年下に負けた……しかも性技で。)

 恥ずべきことだ。だがすぐに立ち直れない。
 抵抗する気持ちと一緒に精力をドクドクと吸い出されてしまったようだ。

 純粋な気持ちよさがまだ体中を駆け巡っていた。
 未だにペニスは彼女の中に捉えられたままなのだ。
 甘い感触を、膣内の刺激を求めてペニスが震え続けている。


「それにしてもおにいさん、格闘技でもエッチでも負けちゃってかっこ悪いよ。
 おねえちゃんだけでなく私にも勝てないなんて。ねえ、なんか言いなよ」

 俺を見下し、顎をくいっと持ち上げながらアズサが目の奥を覗いてきた。

 ようやく蘇ってきた恥ずかしさと悔しさで正視できない……が、なんとか睨み返す。


「ふぅん、まだそんな目ができるんだ? ナマイキ」

きゅうううっ!

「うあっ、ああああああああああ!!」

ドピュドピュドピュウウ!

 囚えられたペニスが甘噛みされた途端、再び快感が背筋を駆け抜けた。


「ふん、わかった?
 少し本気を出せばおにいさんは何度でもイかされちゃうんだよ。
 年下の私に抵抗できず何度でも搾られちゃうの。はっずかしい~~♪」

 ひくひく震えながら呼吸を乱す俺を見ながらアズサが続ける。

「まあ、最初から勝つことはわかっていたんだけどね」

「どういうことだ!?」

「言ったよね。おにいさんはおねえちゃんに負けてるって。
 きっと今よりももっと搾り取られたんでしょ?
 その途中でお姉ちゃんとのエッチが大好きになっちゃったんだよ」

「そ、そんなはずはないっ! 俺は確かに会長に負けはしたが……」

「だったらどうして格闘技で私に負けちゃったの?
 おねえちゃんの顔やあの日のことを思い出したからじゃないの?」

ファサッ……

「ッ!!」

 そう言いながらアズサはツインテールにしていた髪を下ろし始める。

「これならどう? おねえちゃんみたいでしょ」

 彼女の言う通りだった。
 こうしてみると瓜二つと言ってよいほどアズサは姉のシズカに似ている。

「フフッ、効果は抜群みたいね」

 俺はそう言われて気づく。
 彼女の膣内でさんざん精を吐き出したはずのペニスが再び固くなり始めていることを。

「普段は私、こういう髪型なんだよ。
 おにいさん対策として今日はわざとおねえちゃんみたいに下ろさなかったの。
 実力の差を見せつけてあげようと思って」

「まさか、すべて計算の上だっとでも言うのか……」

「あっ、また大きくなってきたよおちんちん。
 おねえちゃんに負けたことを思い出してエッチな気持ちになっちゃった?
 それとも私に負けて気持ちよくなっちゃったのかな」

「うっ、ううううう……」

「その悔しそうなお顔が可愛いね、おにいさん。
 膣内で大きくなったおちんちんも優しくしてあげる」

キュッ……

 不意にアズサは身体を倒し、ピッタリと上半身を預けてきた。さらに俺の全身をギュッと抱きしめ、挿入したまま小刻みにお尻をフリフリと左右に動かしながら追撃してきた!

キュウウウウウーーーッ! 

「うああああああああああああっ!」

「フフフ、締め付けられたままこうされると気持ちいいでしょ?
 おねえちゃんからも聴いてたけど、さっきまでのバトルで大体わかっちゃった」

 密着されながらの囁きがエロすぎて彼女の言葉が頭の中をグルグル周りペニスはどんどん硬さを増してゆく。このままではやがて我慢することもできずにまた射精させられてしまう。

ドピュウウッ!

「はい、また射精~! さっきよりも簡単にイかせちゃった。
 私の魅力でおにいさんは骨抜きってカンジ?」

 嬉しそうに笑いながら拘束を解かれる。
 得意げなアズサの顔を見ているだけで俺は動けなくなりそうだった。
 まだ全身を縛られている余韻が抜けない。

 だがこのままじゃ終われない!

(俺は、あきらめないぞ……)

 声には出せなかったが俺はアズサをまっすぐに見つめていた。

「こんなにボロボロにされてもまだやる気なんだ。すごいね。
 でも、もしかして……もっと気持ちよくしてほしいだけなんじゃないの?」

「違うっ、俺は!」

 今から本気を出す、と言い切る前にアズサに遮られる。


「じゃあ選ばせてあげる。どっちで戦う? 格闘技とエッチ」



◆選択肢

  1・さっきまでは準備体操だ。格闘技で戦う
    → https://yokubounotou.fanbox.cc/posts/4259560

  2・今度こそわからせてやる。エッチで勝負!
    → https://yokubounotou.fanbox.cc/posts/4357167



※選択肢は現在執筆中です。支援サイトなどで先行公開するかもしれません
※追記(202208082011) 選択肢1完成 
※追記(202208290213) 選択肢2完成 





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