『二次元の世界でならばそれはとてもよくあることですが、現実世界でこっそり好きだった人と秘密の場所で結ばれました』




 汗ばんだ肌が密着して滑り合う。閉ざされた空間の中で抱き合いながら二人の世界に浸る。正確には一方的に抱きしめられているのだけれど。

「気持ちいい、きもちいいよおおお!」
「ふふっ、抱きしめるたびにプルプルしちゃってかわいいです。もしかして、もう出ちゃいそうなんですか?」

 低い声で囁いてくる彼女の源氏名はミキさん。このお店で人気の女の子。
 でも僕は彼女の本名がミズホさんであることを知っている。

「だ、だって、気持ち良すぎて!」

 本当にそれしか言葉が出てこない。こうしているだけで下半身が溶け出してしまいそうなのだから。射精していいと言われたらすぐにでもしてしまうだろう。そしてまたすぐに硬さを取り戻したペニスは彼女を今以上に熱く求めてしまうだろう。とろけるような柔肌に触れている現実が今でも信じられず、この幸せを受け止めきれない。

「えー、それにしても興奮しすぎじゃないですか?」
「いえ、いいえ! そ、そんなことはッ」
「じゃあこうしたらどうなっちゃうのかな……おちんちんもらっちゃいますね」

 キュッと手のひらが握られた。それだけでなく手足も指も絡ませてきた。抱き合いながらミズホさんは蛇のように僕を拘束し、長い手足の感触を存分に味わわせてくれる。
 そして太ももに挟み込んでいた僕のペニスが熱い肉壺の中へと導かれる……

ニュプッ、ニュルウウッ!

「んあああああああっ、は、入ってえええ」
「ふふ、そうですね。おちんちんお招きしちゃいました。これじゃあまるで……恋人みたいですね」
「う、うあっ、あああああ!」
「喜んでくれて嬉しいです。もっとくっついちゃおうかな」

 手のひらで腰を抱き寄せられ、首筋にまでキスをされた。柔らかなバストも僕の胸で潰れたまま、さらに彼女を近くに感じてしまう。
 ぴったり密着した状態でジワジワと染み込んでくる愛情。それがどれほど許されず、贅沢で甘美な誘惑であることか。
 幸いここはそういったことが許容される空間であり、風俗店なので少なくとも僕だけは彼女をリアルを感じている。

「おちんちんピクピクしてますね。このあと私にどうされたいですか?」
「できればっ、こ、このままイキたいです……」
「もうっ、まだもったいないですよぉ……いっぱい我慢してくれたら、もっとあなたのことを好きって行ってあげられるのに。ちゅ、ぷっ」
「あああああああああ!!」

 抱き合ったまま身動きできずにいる僕の左耳が彼女の口の中へと吸い込まれ、甘噛みされ、ピンク色の舌先が差し込まれた。ゾワゾワと背筋を駆けるこの感覚、しばらく忘れたくない。
 膣内で捕らえられたペニスは相変わらず彼女の熱を感じ続けていた。

「んふふ、今のちゃんと我慢できたんだ。イッちゃう人もいるのに偉いです」
「だ、だって! ミズホさんが我慢しろって言うから」
「ここではミキですよぉ。本名を言い合うのは禁止です」
「すみません……」

 僕がしょんぼりした様子で謝罪すると彼女は微笑んでくれた。
 いつものように穏やかで、トロンとした目尻のまま彼女は笑う。僕はこの風俗嬢と会うのは初めてではない。常連客というわけでもない。むしろ偶然の邂逅、お互いに誰にも言えない関係でしかないのだ。

「うふっ、たしかに時間内無制限ですけど実際は何度も出せるわけでもないですし。いっぱい我慢すればするほど気持ちよくなれるってわかってるでしょう? だからもっと我慢してね」

 すると一旦腰を上げ、膣内からペニスを解放した。湯気が立ち上りそうな肉棒をそっと握り、なめらかな手付きで上下に扱き上げてくる!

(ああああああああああっ!!)

 ヌチュヌチュと音を立てながらとんでもない快感が襲いかかってきた。

「おちんちん、もっと甘やかしちゃおうかなぁ」

 細い指先がしっかりとカリ首に回され、急所を責めるようにクニュクニュと蠢きながら僕の感じやすい場所を探している。

「ううっ、こ、この程度で! 僕は負けない」
「じゃあどうしてこの子は我慢できないんですかぁ? もう少し締め上げたら思い切り射精しちゃいそうですよね。うふふふふ」

 指先での刺激を続けながら彼女は亀頭を膣口へとあてがい、そのままゆっくり見せつけるように再挿入。


クプウウゥゥゥゥ……

 淫らな膣内へと飲み込まれていくペニスはすっかり従順で、むしろ彼女の中へ入ることを待ちわびているたかのように硬い。

 にこやかで笑顔が素敵な美人さん。彼女と僕はマンションの隣同士なのだ。こんな遠く離れた場所で会うはずもないというのに偶然のいたずらが僕らを引き寄せたとしか思えない。

「んっ♪ おちんちん、もう一度しゃぶってあげますね。私の膣内で」

 僕は今でも戸惑っているというのに彼女は物怖じしない。むしろ今を楽しむという感覚においては彼女のほうが何枚も上手なのだと思い知らされた。

 最後はストンと腰を落とし、一番奥までペニスを飲み込んでしまった。そのまま自分を抱きしめるようにしながら目を閉じて、ゆっくり深呼吸するミズホさん。

(え……っ?)

 次の瞬間、僕の腰回り全体がムズムズとくすぐったくなってきた!

 彼女はゆっくりと臼を引くように腰を回転し始めている。結合した肉棒が彼女の内部でグチュグチュにかき混ぜられ始めた!

「こういうのはいかがです?」
「や、やめっ、膣内が動いてるッ! そんなのされたらますます出そうになっちゃうからあああ!」
「ふぅん、やっぱりこれが気持ちいいんですか。おちんちんを抱っこされて、私の中でいっぱい甘やかされて駄目にされちゃうんですね」

 いたずらっぽく彼女が笑う。
 その表情がエロすぎてますますペニスが固くなってしまう。

「想像しちゃうから、そういう事言わないで!」
「うふふふ、ちょっとエッチな言い回しでした? でも褒められたら女として自信持っちゃいますよ私。おちんちんをぎゅってするだけでこんなに喜んでもらえるなんて思ってなかったから」

 彼女は容易い感じでそう言うが、ぎゅってするだけでこんなに気持ちよくされてしまう僕の心境を察して欲しい。出会ったときから興奮が止められないのだ。いくら近所に住んでいたからって普段は話しかけることさえ憚られる、憧れに近い存在とこうして肌を合わせているのだから。

「もうこれは確定だと思いますけど、お互いに体の相性はバッチリですね。でも信じられないです。褒められるような仕事じゃないと思ってますし、ましてや知り合いの方から激しく求められるなんて考えたこともなかったですし」

 そう言いつつも膣内をクネクネと蠢かして僕を悩ませる。腰は軽く前後に動かしている程度なのに内部が絡みついてとんでもなく気持ちいい! 当然僕は我慢汁を吐き出し続けているからますます感じやすくなって。温かい膣内への抵抗力が失われてゆく。

「そんなに私のことを好きで居てくれたんですかぁ?」

 顔が近い。いつも見かけるたびに顔立ちが整っている人だと思っていたけど、近くで見てみるとますます綺麗であることを思い知らされた。そんな人に抱かれ、ペニスを深いところへ導かれ、甘やかされているのだ。

「好きって言われると嬉しくなっちゃう……」

 全身を強く抱きしめながら彼女が言う。瞳をうるませながら。

「好きっ、う、ああああああああっ、しめつけないでっ、気持ち良すぎておかしくな、あああ、またああ!」
「こういうのが好き?」
「うう、う、うんっ! すき、すきですうううう」
「うふふふふふっ、強く抱きかえされたら私も感じちゃいます。ではいつから好きになってくれたんです? こっそり教えてください」

 まるで熟練の拷問官みたいだ。自分が聞き出したいことと引き換えに対象に快楽を与えて操作する。しかも抗えない。もっとお話したくなる。

 でもこれは、誰もいない室内だとわかっていても聞かれたくない質問だった。
 そんな思いがあって、僕は彼女にしか聞こえない声で問いかけに答えた。
 出会った時からずっと気になっていて、ときどき姿を見かけるだけで興奮してしまい、見抜きしたこともあった……そんな内容を、快楽漬けにされながら白状させられたのだ。
「男の人って可愛いです」

 満足そうに彼女が笑う。

「相手に好きって言わされるたびに私の膣内でおちんちん元気になっちゃうの、すごく可愛くて好き。いっぱい我慢させて、コリコリになったおちんちんをさらに固くさせてから白いミルクをたっぷり奪い取るのも好き……というわけで、一滴残らず搾り取ってあげますね」

ちゅ、ぽ……

 彼女が腰を上げた。一時的にペニスが開放された。もう少ししごかれたら射精してしまうだろう。そんな僕の上でゆらりと立ち上がった美しい体。情欲に満ち溢れた瞳が僕を見据え、彼女は口角を上げて僕に微笑みかけた。



 僕の視線は彼女の首筋にあるホクロに釘付けだった。いつもすれ違うたびに見とれてしまう美しい首筋。そこにポツリと控えめに存在する黒い印。今回彼女を店内で指名して、こうして出会えたのもこのホクロのおかげだった。顔出しNGの店内カタログの中でひときわ目立つ美しい輪郭とボディライン。それを見ただけで僕は彼女を特定できた。決め手となったのは首筋のマークだった。

「どうしてあなたがここに……」

 出会ってすぐに彼女は驚いた顔をした。当然だろう。

「ミズホさんのことは誰にも言いませんから」
「そうしてもらえると助かります。でも」

 彼女は言葉を切って、僕の顎を人差し指でゆっくりなぞる。
 それはいつも見ている笑顔だった。

 妻帯者が多いマンション内で珍しく男の匂いがしないお隣さん。それだけでも目立つというのに、いつもジーンズとパーカーという質素な服装で見かけるのだ。
 でも内面の美しさまでは隠せない。
 さりげない後ろ姿ですらエロすぎてどうしようもなくセクシーなのだ。

「ぅあ……」
「あなたは今日、あの写真が私だとわかって指名してくれたんですよね? それって私よりもあなたのほうがまずいことになるんじゃないかなーって思うんですけど」

 反撃の笑顔、だった。取引になると考えたのだろう。
 僕には妻がいる。
 だからここで起きたことは妻に黙っていてやるから私の言うことを聞けと言っているようにも見えた。

 ミズホさんの美しい表情とその余裕ぶりを見ただけで僕はゾクゾクと震えだしてしまい、また彼女は僕の中にあるマゾ特性に気がついたのだ。

 その後は彼女のペースだった。
 服を脱がされ、キスをたっぷりまぶされながらの即尺での射精。マットへ誘われ手コキで二発目、ローションを使ったスマタでもう一発、そしてパイズリで固くされてからもう一度太ももでの足コキ……彼女の美脚に僕が見惚れた結果だった。

 美しすぎる太ももは見た目だけでなく肌触りも最高だった。この記憶だけで今後僕は何度でもオナニーのおかずにできるだろう。短時間で彼女に飼いならされ、条件反射のように固くされたペニスが今は膣内で囚われているのだ。

ヌチュッ、キュウウウウウウ~~~!

 軽く上下に腰を揺らしながら奥に近づくたびに締め付けてくる名器。
 彼女も言っていたように肉体の相性は抜群で、特にこうして責めてこられると僕はどうしようもなかった。勝手に腰が跳ね上がり、彼女に哀願する。

「で、でるっ! 出ちゃうよおおおお!!」
「あんっ、全然我慢出来ないんですね。じゃあ予定変更、やっぱりだめ~~~」

 パンッ、と腰を打ち付けてから彼女は静かに目を瞑った。

ギュウウウウウウウウウッ!

 そして戒めるかのようにペニスがきつく抱きしめられる。

「んひあああああああっ! しま、締まってるううう」

 ビクンビクンと背中を震わせて訴えかけると、彼女はニヤニヤしながら手を伸ばして細い指先で僕の乳首をいじり始めた。

「得意なんです、私。男の人を困らせちゃうのが。だからもっといっぱい気持ちよくして困らせてあげます」

 そのまましばらく悶えさせられる。乳首をいじる手と、キリキリと僕を縛る膣内、それに彼女の魅力的な笑顔。やがて乳首をいじっていない方の手が伸びて、僕の後頭部にまわって顔を引き寄せてきた。

かぷり……

「み、耳はっ、耳は舐めないっ、でええ……」
「じゅるるるっ、んふふふ♪ なにか言いました?」

 くすぐったさと心地よさが混じった愛撫に何も言い返せず僕はひたすら悶えた。
 密着することで背徳感が最高になる。きっと彼女もそれに気づいていて、こちらに何度もそれを味わわせるためにやっているのだ。

「ここでなら、誰にも気にせず愛し合えますよね。だから時間いっぱい可愛がってあげたくなっちゃうの。好きですよ。私もあなたが好き♪」

 逃げなきゃいけない、これ以上溺れちゃいけないとわかっているのに動けない。
 くっついてる時間が長くなればなるほど好きになってしまう。偽りの愛情だと何処かで気づいているのに、それでも好きと言われると感じてしまう。

「お互いに秘密を握り合って気持ちよくなれるなんて素敵じゃないですか。だから何でもしてあげます。大好きなご主人さま、ドMすぎて素敵です」

 膣内で甘やかされ、心まで溶かされている……お金を払っていることが今では唯一の免罪符になっている。わかっているのに深みにハマりこれから先どんな顔をしてマンションで彼女に挨拶したらいいのかわからない。
 
「あああっ、出るッ、今度こそ」
「我慢出来ないんですね。私に出したいんですね?」

 こそこそと囁かれ、さらにギュッと抱きしめられ、心臓が早鐘を打つ。

「ふふ、いいですよ。許してあげる。いっぱい出して私を汚してください」
「ああああああああああああっ!」
「射精したらさっき話したように、一滴残らず絞り尽くしてあげますから。ほらぁ、もう限界でしょ? 好きっていいながら何度も射精してください。そのたびに気持ちよく締めてあげる。ほら、好き好き好き好き……♪」

 導かれるように僕は連呼した。好きと何度も口にしながら腰をがくがく震わせる。


ドピュドピュドピュドピュウウウウウウッ!

 約束通り彼女がペニスを締め続ける。射精している最中も断続的に締め上げが襲ってきて、ペニスは健気にそれらに反応してしまう。普段ではありえない快感だった。


「残り時間はあと十分……本気で枯れちゃうくらいたくさん射精して、私のことしか考えられなくなって意識が溶け落ちるまで、ずっとそのお顔を見ててあげる。気絶するまで私の中で抱いてあげますから、ね?」

 その言葉の通り、やがて僕は気絶した。
 美しい彼女の顔と甘美な快楽を嫌というほど味わいながら意識が闇に溶けてゆく。



 気がつくと真横でミズホさんが微笑んでいた。
 僅かな時間だが記憶に空白ができた僕に全裸のまま添い寝してくれたのだ。

「もしかして延長時間に?」
「いいえ、まだ大丈夫ですよ。ところでカズキさん、私の生活支えてくれます?」

 初めて下の名前で呼ばれて心が浮足立つ。

「もちろんですっ」
「じゃあまたお店に来てくださいね。ここでならいっぱい愛してあげられるから」

 彼女が顔を寄せ口づけしてきた。
 ほんの少し触れ合うだけのキスだがそれで充分だった。


 それから僕は何度もお店に通い、彼女を指名し続けた。
 彼女も僕以外のお客とは本番行為に及ぶことはないと行ってくれた。

 本当は嘘かはわからない。でも僕はお店に行くたびに同じような快楽と背徳感を味わい続け、心も体も彼女の虜になってしまった。

 そんな彼女もやがてはお店を辞めることになるのだが、その後も僕たちの関係は変わらなかった。お互いに交換したアドレスで毎日やり取りをして、同じような関係が今でも続いている。





(了)



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