『教育担当になった後輩社員に弱みを握られた上にセックスで勝負させられてしまう話』





 僕は食品関係の商社に勤務している。今年で三年目。
 うちの会社は業界内では中堅どころだ。近年の不況でなかなか新卒社員を迎え入れることはできなかったけどようやく可愛い後輩が出来た。

 後輩の名前は八矢名栞里【はやなしおり】という。
 今月入ったばかりの大卒の新人であり、我社にとって将来を担う貴重な戦力。
 大切に育てなければならない。その担当として僕が付くことになった。

 研修を終えた八矢名さんは頭の回転が早くて少し教えただけで理解してくれる。
 半月も経つとかなり仕事のできる子だとわかった。
 今日は月末月初の処理についてレクチャーしている。

「先輩、言われた通りにやってみました。これでよろしいですか?」
「じゃあ確認しますね……うん、オッケーです。きれいにまとまってる」
「ありがとうございます!」

 この通り返事も良い。特に必ず最後に感謝の言葉を添えてくれる性格の良さもあって、僕以外の先輩社員にも評判がいいみたいだ。

 その一方で、僕は教育担当という慣れない仕事面での心配事が減った代わりに最近どうにも気になってしまうことがある。じつは今も必死でこらえている。

(制服のスカートから見え隠れする八矢名さんの美脚がエロすぎて……)

 やばいくらいに綺麗なのだ。
 聞くところによると学生時代にバドミントンをやっていたらしい。
 キュッと引き締まった足首……そして魅惑的なカーブを描くふくらはぎと太もも、そして腰のくびれにいたるまでスラリと伸びた全身の美しさは男性社員の中ではちょっとした噂になっている。
 顔立ちも美脚に劣らず端正だ。業務中は髪を一つにまとめて地味な装いに見せているけど、通勤時に何度か一緒になるたびに普段着姿の華やかさに驚かされている。
 アイドルみたいに整った顔立ちはメガネも似合う。
 こっそり教えてくれたけど実はレンズには度が入っていない伊達メガネ……そんなもので美しさを完璧に隠すことなんて不可能だろう。
 そして胸もさりげなく大きい。
 日常的に目のやり場に困る新人さんなのだ。

 優秀な彼女の教育担当をしているということで何度か同僚たちに冷やかされたこともあるけど、断じて僕はやましいことなど……考えたりしていない。断じて。

「あ、先輩!」
「えっ? あ、ああ、なにかなっ」

 頭の中を見透かされたのかと思ってドキッとするが、

「ちょっと相談なんですけど」

 さすがそうではなかったみたいだ。よかった。

「どうしたの?」
「いえ、急で申し訳ないのですが……」

 周囲を見回して神妙な様子で彼女が耳打ちしてきた。
 さり気なくいい香りが漂ってくる。

「物流課に知り合いの方はいませんか? ここだけの話、この制服のサイズが少し合わなくて困ってるんです」
「それは……困るよね」

 なんとか冷静に返すと、八矢名さんはコクンと小さくうなずいた。少し顔を赤くしてお願いしてくる姿がなんともかわいらしい。頼られてると思えば嬉しくもなるけど今度は先ほどとは別の意味でドキドキしてしまう。

「ほら、このあたりとか、変じゃないですか?」
「せ、説明しなくていいから!」

 ヒソヒソ声で耳打ちされると意識してしまう。
 いい香りと彼女の声、それに体温まで伝わってくるのだから。

(うぅっ、急に寄られると困るな。制服が合わないって、そんなにキツイのか)

 思考を無理やりそらさなければ危なかった。
 見惚れていたのがバレたら先輩としての信用にかかわる問題だ。

 八矢名さんはスラリとした体型なのにバストもそれなりにある。
 腰回りも細いけどお尻が大きく見えすぎることもない絶妙なスタイル。

 いかん、これ以上の妄想はセクハラになってしまう。
 それに自分では詳しくは聞けない。
 物流課にいる同期に伝えればあとはあちらでなんとかしてくれるだろう。

「わかった……ちょうど知り合いがいるから聞いてみるよ」
「助かります先輩、お時間のある時で構いませんのでよろしくお願いします!」

 キラキラした目で見上げてくる彼女から目をそらし、気まずさを隠すように受話器を取って内線番号を押す。
 八矢名さんはホッとしたように微笑み、お辞儀をしてから僕に背を向けた。



 それから一ヶ月後、先月教えた業務について彼女は完璧に理解していた。業務全般について安心できるレベルに達しているので僕から声をかけることも少なくなった。

 交換した制服も気に入ってくれたみたいで今は問題ないらしい。

「先輩のおかげです」
「大げさだなぁ」
「私にとっては切実な問題でした。何か恩返ししたいです!」
「じゃあ来週の火曜日あたりに残業する予定があるから手伝ってもらえますか」
「喜んで!」

 にっこり微笑んでくれる彼女。うん、よかった。
 すっかり部署の一員として馴染んだ彼女とともに久しぶりに残業することになった。
 直属の上司が出張で不在なのでその分の業務を割り振られたのだ。

 そしてその日は来た。
 多くの社員は定時で退勤して、予定通り僕たちだけが残業となる。

 月末月初のルーティーンワークを八矢名さんに手伝ってもらう。
 思った以上に手際が良い。

「先輩、私そろそろ終わりそうです」
「あ、そうなの? じゃあ先に上がってもらってもいいけど」

 ぶっちゃけ僕のほうが足を引っ張っている。進みが遅い。

「そうはいきません! 二人で早く終わらせちゃいましょ?」

 帰ってきたのはじつに頼もしい言葉だった。
 彼女には教育担当なんて必要ないではないか。
 三ヶ月も待たずにもう一人前に育ってくれたと勝手に感動していると、

「ああっ! そこの数字が間違ってますよ先輩」
「えっ、本当に!?」

 慌てて画面を見ると指摘された箇所が見事に違っていた。
 僕も気を抜いていたつもりはないけど彼女の言うとおりだった。
 かなり恥ずかしい。

「八矢名さんのおかげで助かったよ」

 情けない気持ちでいっぱいのまま照れ隠しの笑顔で彼女の方を向く。
 すると今までに見たことのない冷ややかな表情で八矢名さんが僕を見つめていた。

「先輩って時々打ち込みを間違えますよね。出会った頃から」
「そう、かな……ははは、言い返せないや」
「しっかりしてくれないと困ります。私の教育担当なんですから!」

 いつになく厳しいお言葉。それは、ぐうの音も出ない追撃だった。
 同時に何故か不思議な感情が湧き上がってくる。

「ごめん……」
「そのうち私のほうが先に昇進しちゃうかもしれませんよ」

 ありえない話ではない。彼女は優秀だ。
 そんな八矢名さんに丁寧語で罵られてる。

 湧き上がってくるのは怒りでもなく、焦りと悔しさと恥ずかしさの混じったいたたまれない気持ちだった。

「もしかして私、もう先輩を超えちゃったかも?」
「なっ……」

 八矢名さんはこちらを覗き込むようにしながらつぶやいてきた。

「ミスを減らしてもらわないと私が困るわ? 先輩クン」
「ううぅぅっ!」

 恥ずかしさと悔しさで思わず下を向いてしまう。

 懐いてくれていた彼女に突き放され、ひどく不安な気持ちになる。

 笑うわけにもいかず泣くこともできない。
 怒るのはおかしいし、悲しみが一番近いか。

「やめてくれ……」

 考え抜いた末に口からこぼれ落ちた言葉がそれだった。急に泣きたくなってきた。

 相変わらず八矢名さんは冷ややかな目で僕を見つめていた。
 その瞳の奥でなにか妖しい雰囲気が滲み出していた。

「いいえ、だめです。せっかくだから試しに私と勝負しませんか?」
「勝負って……何の?」
「どちらが先に伝票を終わらせるか勝負しましょう。先輩の残り半分を私が受け持ちますから」

 そう言いながら彼女は僕の机の上から伝票の束を取り上げた。
 半分くらいに分けて少ない方を僕に手渡してきた。

「かわいそうだから先輩にハンデあげます。これでいいですよね」

 見下したような表情。
 これにはさすがに僕も怒りがこみ上げてきた。

「い、いい気にならないでくれるかな。本気を出せば僕だって――」

「生意気な新人なんかに負けない、ですか?
 私、だいたいの作業を先輩より早く終わらせられると思いますよ」

「くっ……」

 にっこり微笑みながら残酷な言葉を彼女は僕にぶつけ続ける。
 それが屈辱的でたまらないのに、僕は返す言葉を見つけることができなかった。

(本当に万が一彼女の言う通りになってしまったら僕の立場がない)

 八矢名さんとは明日からまともに顔を合わせられない気がする。
 丁寧に退路を断たれ、ひくにひけなくなってしまった。

 この勝負に勝たなければ先輩社員というアドバンテージを一気に失ってしまう!

 二人しかいないオフィスとは言え、これは真剣勝負だ。
 決して負けられない戦いのはずだった。




 そして、勝負はあっさり決まった。

「はい、私の勝ち。うふふ、どんな気持ちですかぁ?」

 猛烈な速さで伝票を処理してデータ保存まで終えた彼女がこちらを見ている。
 僕はがっくりと項垂れるしかなかった。

「僕の、圧倒的な負け負けだ」
「そうですね。先輩の負けです」

 まだ半分も終わっていない。途中で慌てたせいで一枚ずらして打ち込みをしてしまったので修正するのに時間がかかった。
 いまさら言い訳しても始まらないのだけど。

「……八矢名さ、この後ごはん奢るから、今日のことは内緒にしてくれないか」

 しかし絞り出すように僕がつぶやいた嘆願は彼女に一蹴された。

「ええー、それだけじゃイヤです。明日の朝にでも課長に言いつけちゃいます。教育担当の先輩が頼りないから変えてもらえませんか、って」

 人差し指を顎に当てながら余裕たっぷりに振る舞う八矢名さん。
 あざとささえ感じるその仕草を見ているとますます自分が情けなくなる。

(絶対に負けちゃいけない場面だったのに僕は――!)

 しかし後の祭り、もうどうしようもない。
 八矢名さんに許してもらう条件を尋ねると彼女の唇の端がわずかにつり上がった。

「年上の男の人がしょんぼりしてるのって可愛いです」
「えっ」
「なんでも無いです。じゃあ今から私に付き合ってください。仕事はもう終わりでいいですよね」

 この雰囲気なら条件次第では思いとどまってくれそうだ。
 どこか満足そうに僕を見るその表情は、いつもと同じ彼女の笑顔だった。



 それから十数分後、僕たちはタイムカードを押して退勤した。

 オフィスをあとにして彼女についてにぎやかな繁華街を抜ける。

 そしてたどり着いた先は……

「こ、ここ!? どうしてこんな場所に」
「ラブホテルですけど何か」
「いや、それはわかるけど! 真面目な八矢名さんがなぜこんなところへ」
「私に対して勝手なイメージを持つのは先輩の自由ですけど、私こう見えてエッチが好きなんです」

 後半の言葉に差し掛かると八矢名さんの声がわずかに低くなった。そして、さり気なく僕に身を寄せて腕を絡ませてきた。

(あ、やわらかい……)

 ふわりと頬を撫でてくる髪と、ギュッと押し付けられた豊かなバストに対する感想。
 恋人同士みたいに体を寄せられたおかげで頭の中の不安が一気に消し飛ぶ。

「エッチが、好き? そう聞こえたけど」
「はい。それと性格も優しいので。後輩に仕事でボロ負けしちゃった哀れな先輩にチャンスをあげようと思うんです」

「僕にチャンス……?」

「さっき言ったとおり私はセックスが好きなので、先輩がこっちで私を満足させてくれたら、今夜のことは課長にもみんなに黙っててあげます」

 もちろん簡単には満足しませんけど、と八矢名さんは付け加えてきた。

「満足させるっていうのは、つまり」
「先輩より先に私をイかせてくれれば満点ですけど、それは無理そうだし」
「っ!!」
「何度イってもいいですから、最終的に満足させてください。さっきと同じようにハンデをあげます。そうしましょ?」
「……」

 さすがに童貞ではないけど異性からこんな勝負を挑まれるのは初めての体験だ。

「もしかして自信ないですか?」
「違う、そういうことじゃなくて」
「私、約束は守りますよ。明日からも普段どおり先輩を立てるように仕事もしてあげますし、場合によってはご褒美も……ね? これって大チャンスでしょう」

 すでに自分が勝つと決まっているとでも言いたげな表情。
 憎らしいのに綺麗で、色っぽくて、興奮してしまう。

(今すぐにでもあの艶やかな唇にキスしたい!)

 覚悟が決まった。このままでは自分は破滅だ。
 明日からも安心して働くために八矢名さんの提案に乗ることにした。

 ホテルの入口を抜け、無言で部屋に入る。

 ドアを締めた直後に振り返り、いきなり唇を奪う。
 すると一瞬だけ八矢名さんは意外そうに息を呑み、ゆっくりと目を細めた。

 細い腕が僕の首に巻き付いてきて、少し背伸びをするようにしながら彼女の方からキスを貪り始める。

(う、うまい……)

 全身で八矢名さんを感じる。柔らかな身体にグイグイ押され、キスされたまま通路の壁に追い詰められた。口の中を丹念に舐め上げられ、唾液をたっぷり与えられた僕は恍惚とした表情で彼女を見つめることしかできなかった。

「気持ちよさそう。もう降参ですか?」

 挑発するような八矢名さんの言葉で我に返る。

「男の意地をかけて絶対に勝つからね」
「それは楽しみですね。せっかくですからシャワーも一緒に浴びます?」
「いや、いい。キミから先に行ってくれ」

 わかりましたと言いながら彼女は背を向け、ベッドの上に荷物を置く。

 やがて彼女の姿がバスルームに消えたので緊張を解く。

(あのキスだけでギンギンにさせられてしまう……)

 続けられていたら射精していたかもしれない。
 僕はこの限られた時間で気持ちを落ち着けることにした。
 調子に乗って一緒にシャワーなんて浴びたら心を乱しかねない。

 数分後、胸にバスタオルを巻いた八矢名さんが出てきた。
 水滴がついたしっとり肌に目を奪われる。メガネを外した素の彼女。

 抜群のスタイルには目もくれず入れ替わりで僕がシャワーを浴びる。

 手早く身を清め、バスルームを出ると彼女はリラックスした様子でベッドに寝そべりスマホをいじっていた。こちらに気づいて軽く微笑む。

「ずいぶん早かったですね?」
「ああ……」
「もしかして、そんなに私と交わりたかったのですか。シャワーを浴びる時間すら惜しくなっちゃうくらいに」

 八矢名さんは身を起こしてニマニマと笑いながら抱きついてきた。
 タオル越しに感じる柔らかな肉体が男を刺激し、誘惑してくる。
 僕の中での彼女の印象がすっかり小悪魔にすり替わった瞬間である。

「ちがっ、ちゃんと洗ってきたし! いや、そうじゃなくて」
「ふふふ」

 軽く僕の首筋にキスをしてから八矢名さんが離れる。
 こちらをじっと見ながら焦らすようにバスタオルの結び目を解きはじめた。

「見せてあげる……」
「えっ」
「これがいつも制服の上から先輩が目で犯している私の身体ですよ」

 その指先の動きを目で追ってしまう。厚手のタオルがフロアに落ちる速度が妙に緩やかに感じるほど僕は彼女の身体に見とれてしまった。

「どうですか?」

 僕は何も言えなかった。
 すぐに言葉に出すのをためらうくらい美しかったから。

 まずピンク色をした上向きの乳首に目が釘付けになる。
 八矢名さんは自分を魅せるようにわずかに身をくねらせ、その場でくるりと回った。
 見事に張り詰めたお椀型のバストが悩ましげに揺れ、形の良いお尻に視線が導かれる。
 くびれた腰から下では長い脚がもつれあい、誘うように伸びていた。
 女性の秘密の場所はしっかりと処理されていてツルツルなのがわかる。

「はずかしいからパイパンとか言わないでくださいね?」
「う、うんっ」
「クスッ、さあもっと近くへ来てください」

 その言葉につられてふらふらと彼女へ吸い寄せられる。
 両手を大きく広げて僕を誘う八矢名さんに手を伸ばし、僕は彼女に抱きつく。

 そのまま二人でベッドに倒れ込み、気づけば僕は両手で八矢名さんの美しい双丘を夢中で揉み始めていた。感触を味わう僕の呼吸が乱れていく。

「やっぱり胸からですか? ふふ、どうせならもっとしっかりとエッチな手つきで触って欲しいです。お手伝いしますね」

 ひんやりした八矢名さんの手が僕の指に重ねられた。胸をもみ続ける僕の手をサポートするように彼女の指先がいやらしく導いてゆく。

(む、胸から手が離せなくなっちゃう……)

 下から上に向かって持ち上げるようにバストを揺らすと次の瞬間には心地よい弾力が跳ね返ってくる。僕がますます夢中になっておっぱいをこねまわしていると、不意に腰回りが強く引き寄せられた。

「捕まえた。胸ばかり弄ってるからですよ?」
「あっ、脚が……!」
「正解です」

 八矢名さんの片足が腰に絡みついて押している! そしてふくらはぎで僕のお尻を舐め回すように愛撫していた。

「ねえ先輩? 初日から私の脚、ずっと見てましたよね」
「な、なぜそれを……」
「バレバレですって。女の子は視線に敏感なんですから」

 しどろもどろになる僕を楽しそうに眺めながら八矢名さんは続ける。

「大好きな私の脚に捕獲されちゃった気分はどうですか」
「うぅっ、動けない!」
「そうですね。もう逃げられません。気持ちいいですね?」

 しっかりと僕を捕らえたまま彼女が笑う。さらにもう片方の足も絡みついてきて僕は完全に動けなくなった。グイグイと胴体を締めあげてくる様子は、まるで全身をペニスに見立てて扱き上げてくるような錯覚を僕に植え付けてくる。

「密着したせいで、先輩の大切なところが私のおなかに当たってる」

 そう言いつつ彼女は腰から下だけをクネクネと波打たせてきた。ちょうど触れ合っている裏筋部分が八矢名さんのスベスベの肌ですり下ろされてゆくようだ。

「うあ、動かないで、ああああぁぁっ!」
「チョロすぎですよ先輩。そんなに気持ちいいんだ? ヘンタイ……」

 蔑むような言葉が似合わない淫らな視線で彼女は僕を見つめ、バストを揉む僕の手をサポートしいた動きを止めた。

「今度はこっち」
「あ……」

 自由になった彼女の手が僕の手首を掴み、胸より下へと導いてきた。
 支えを失ったせいで僕は八矢名さんの胸に顔を埋めることになる。

「うぷ……」
「自分からおっぱいに顔をこすりつけるなんて積極的ですね」

 弱々しく首を横に振る。
 可愛い後輩に優しくなじられて僕はますます興奮してしまう。

 もう少し強めに刺激されたらそれだけで射精してしまいそうだった。

 そして僕の両手は彼女の美脚へと強制的に向かわされていた。

「ほらほら私の脚を遠慮なく触ってもいいんですよ」

 バストに対して行ったのと同じように彼女が僕をリードする。八矢名さんは長い脚で僕の腰を挟み込み、そっと手を重ねて僕の指先を太ももに這わせる。

(おっぱいで、何も見えないけどっ、これが八矢名さんの脚……ああぁぁぁ!)

 それは胸とはまた違う心地よさを秘めていた。
 待ち望んだ弾力性に富んだ脚の感触を求めて自然に手が動き出してしまう。

 指先に感じる手応えが僕を狂わせる。呼吸するたびに彼女の香りを胸いっぱいに吸い込むことになり、興奮が持続する。

「うふふ、もっと夢中にしてあげます」

 美脚を撫で回す僕の手の動きを感じながら八矢名さんは手を離す。
 もうサポートは不要だと判断したのだろう。
 自由になった彼女の手が僕の顔をふわりと掴み、胸の谷間からすくい上げる。

「先輩、私の目を見ながら名前を呼んでください」
「八矢名さん……」
「違います。し・お・りって呼んで?」

 蠱惑的な表情で首を傾げて彼女が言う。

 八矢名さんを名前で呼ぶ。
 それはお互いの関係を保っていたぎりぎりのラインを踏み越えてしまう気がした。

 彼女の誘惑に僕は自分を抑えられなかった。

「し、栞里さん……」
「呼び捨てでいいですよ」
「うう、あ……栞里、しおりいぃぃっ!」

 名前で読んだ瞬間、僕の中で何かが砕け散った。

「そうです、しおりですよ? 先輩♪」

 天使のように微笑む彼女と完全に男と女の関係になってしまった。
 いや、無理やり引きずり込まれた気がした。
 同時に僕の心を守っていた最後の防波堤が決壊した。

「もう戻れませんね。もっと私に溺れてください」

 大切な部下の、新人の教育担当だった自分がどこかへ消えた。

 とびきり可愛くて小悪魔で美しい栞里。
 その美脚に触れながら興奮が際限なく高まってゆく。
 大好きな女性に心の奥を触れられ、僕の興奮度が一気に頂点に達した。

「クスクスッ、うっとりしちゃってる。そろそろいいかな?」

 栞里は僕の顔に添えていた手をそっと離し、下へ向かわせる。

クチュッ……

「あああああああああっ!」

 突然股間に走った快感に声を上げてしまう。
 視線を下げるまでもなく何が起きたのか理解した。

 彼女の指先がペニスの先端を包み込んできた。

「私の胸と脚だけでこんなに興奮してくれるんだ……まだ挿入してないのに先輩のおちんちんはとてもいい子ですね」

 指先だけで弄ぶような手つきから、しっかりと竿を握り込んでくるまでそれほどの時間はかからなかった。ツルツルした感触の指先が織りなす快感に抗いようもなく、無意識に僕は腰を上下に揺らし始めていた。

(き、きもちよすぎる! 栞里の手コキ、やばすぎるよおおぉぉぉ!)

 呼吸を乱す僕を見つめ、得意げにクスクスと笑いながら淫らな手コキは続く。

 このまま優しく上下に刺激され続けたら僕はあっけなく射精してしまうだろう。

 しかし栞里の指先が裏筋をひっかくようにしてくすぐったのも束の間、

「どうせなら一度射精するまでこの脚でかわいがってあげましょう。こうして、っと」

 再び僕の両手がしっかり彼女に掴まれた。
 自由が奪われた僕を見ながら彼女は片足を上げる。

「何を……」
「ふふふ、少し焦らしちゃおうかなと思って」

 ゆっくりと片方ずつ、スラリとした脚が僕の首へ絡みつく。
 やがて栞里の太ももが僕の顔を挟み込んだ。

「やぁん、先輩に私のおまんこ見られちゃう~。はずかし~」

 あざとさを感じさせる声を出しながら、栞里が僕の首から上を美脚でロックした。
 両手を封じられた僕は動けない。その代わり、美脚の付根でいやらしく光る割れ目と、その淫らな香りをたっぷりと嗅がされる。

「ふふ、どんな気分ですか先輩。大好きな脚に挟まれて、エッチな匂いをいっぱい味わいながら自分ではどうすることもできないなんて悔しいですね」

 ベッドの上で僕は完全に彼女に支配されていた。
 栞里は下になったままの体勢だというのに難なくこの体勢を維持しつづけている。

 とんでもなく柔軟な身体に拘束されながら僕は悶える。

(入れたい、早くアソコにいれたいのにいいいぃぃぃ!)

 その淫らな体位と誘惑の言葉責めのおかげで頭がくらくらしてきた。
 ペニスは痛いくらいに張り詰め、自分でしごくこともできない。
 できることならベッドに自分からこすりつけてしまいたいほど高まってる。

 あまりにもひどい焦らしプレイを1分近く続けられ、ついに僕は力尽きてしまう。

 脱力を感じ取った彼女は手首と美脚の拘束から僕を解放して、余裕たっぷりに体位を入れ替える。
 久しぶりに新鮮な空気を吸いながら天井を見上げると、栞里が覗き込んできた。

「やだ、本当にメロメロじゃないですか。先輩って情けなぁい♪」

 心底おかしいといった様子で彼女は笑い、ベッドの上に片膝をついて座る。指先を動かすのも億劫なほど僕は疲弊していたけど彼女の美しい体に見とれていた。

「先輩に選ばせてあげます。このまま無様に私の脚へ出しちゃいます? それとも……おっぱいに負けちゃう?」

 四つん這いの姿勢になって僕の顔をまたぎながら栞里が尋ねてきた。

 じっと僕を見つめながら片手でペニスを包み込み、淫らに笑う。

 存分に無防備な様子を見せつける彼女の様子に心の奥がカッと熱く滾る。

「くっ、あんまり僕を舐めるな!」

 わずかに残った体力をかき集め、一気に体を起こして栞里を押し倒す。

「あんっ♪ すごいっ」

 言葉ほど驚いていない様子の栞里。その表情を変えてやりたくて、僕は何も考えずに彼女の脚を大きく開いて、たっぷり濡れた秘裂にペニスを突き立てた!

ずちゅううううっ!

 肉棒がぬかるみへ深く沈み込んでいくと同時に溜息と嬌声がこぼれる。

「あ、あっ、んあああああああ!!!!」

「はぁん、先輩に犯されちゃった♪」

 ペニスを挿入した瞬間、思っていたほどの抵抗がないことに気づけなかった。

 しかしピッタリと腰が合わさった途端に栞里の膣内が急激に変化した。

(なにこれぇっ、抜けないッ! 膣奥のほうが、キュウウって締まって、うああ!)

 不用意に突き進んだ先に罠が仕掛けられていた。柔らかかった肉襞が侵入者を逃さないといわんばかりに僕自身を締め上げ、拘束してきたのだ。一方通行という言葉が僕の頭の中に浮かぶ。栞里のアソコはとんでもない名器だった。

「言い忘れましたけど、私のおまんこは貪欲なんです。おちんちんを受け入れると、相手が柔らかくなるまではなさないっていうか……聞こえてます? 先輩」

 クスクス笑いながら栞里は言うけど、これは男殺しの名器。全身から力を抜き取られたみたいに手足が震えて体を支えられなくなる。それほどの気持ちよさ。
 彼女はこれを狙っていたのだ。

「腰が止まってますよ。どうかされたのですか先輩。うふふっ」

 なぶるような目で栞里が僕を見てる。
 あれはこちらから動けない事情を知り尽くしている目だ!

(くうぅ、不用意に動けばそのまま射精してしまう……こんなの、我慢できない!)

 震えながら快感に耐える。その間もずっと膣内でペニスが強めに撫でられ、時々根本から上に向かってサァァァーっと快感が駆け抜けていく。

「早く腰をパンパン振って、おちんちんを打ち込んで私を感じさせてください。じっとしてるなんて意地悪です。女の子を待たせちゃ駄目じゃないですか~」
「そんなこと、いわれたって! うぐぅ……」
「もしかして限界ですか? 入れたばかりでおちんちん苦しいですか先・輩♪」

 そっと手のひらで顔を撫でられ、彼女のほうへ顔を向けられる。

 涼し気な笑みを浮かべながら栞里はこちらの様子を伺っていた。

「男の意地って言ってませんでしたぁ? クスクスッ」

 これだけ煽られても僕は自分から腰を突き出すことができない!
 具合が良すぎて暴発してしまう可能性が高いのだ。

「もう、先輩が動いてくれないなら私が……」

ヌチュッ……

「あ、ま、まって! 動いちゃ駄目だああああ!!」

 こちらの言葉を無視して彼女のほうから腰を突き上げてきた。

「うぅ~ん? 我慢できなくなっちゃいます?」
「く、そおぉぉッ!」
「私の中でおちんちん硬いままですねぇ? ああ、そうか! 今夜はいっぱいお仕事して疲れちゃったんですね。私が揉みほぐしてあげます」

ヌルルルウゥゥゥ……

「あっ、あっ、抜かないでっ!」
「ふふふふふ、こんなに優しく動いてるのに?」

 ゆっくりと肉棒が出し入れされる。そのたびに脱力を収縮が繰り返され僕は喘ぐ。
 栞里は同じ動作を繰り返して自分の持ち物の具合の良さを僕に認識させてくる。

 まるでなめらかな動きでレールの上を往復する車輪のように規則的で、一方的に僕に快感を与えてくる動き。

 それをしばらく繰り返されると僕は完全に動けなくなった。
 両手を彼女の顔の脇において覆いかぶさるしかできなくなった。

「はぁ、はぁはぁっ……」
「ご苦労さまです。無駄な努力でしたね。でも頑張ってくれたから先輩のアソコ、私がいたわってあげますよ。ほら、いいこいいこ」

 ペニスを一番奥まで飲み込んだ状態で栞里が両足を腰に絡めてきた。

 だいしゅきホールド……もうこれで脱出不可能だ。

 そのままクイクイと小刻みにピストンさせられ、再び僕が喘ぐ。

 快感をこらえる声に反応するように膣内も変化してゆく。
 カリ首が通過する部分の一部だけコリコリになって、ジワジワと刺激してくるのだ。

「うあっ、な、なんで!?」
「気持ちいいでしょう。女の子ならこれくらい練習すれば誰でも出来ますって」

 嘘だ。こんなことが当たり前のようにできるなら世の中の男たちは快感を餌に女性に逆らえなくされてしまうだろう。

 でも気持ちいい! 裏筋を柔らかく犯されていくみたいな、神経を直接舐めあげられるみたいな絶妙な刺激が延々と続くのだから。

「あ~ぁ、すっかり気持ちよさそうな顔になってる。先輩、私に降参します?」

 憐れむように栞里は言うけど、瞳の奥では僕を嘲っている。

「このっ、こんな、あっ、んっ! くそおおおお!」

「ふふふふふ、頑張って♪ 先輩」

 全力で抜け出そうとして肘をつこうとしても膣内で肉襞がキュッと優しくペニスを締め上げるたびに脱力してしまう。

(気持ち良すぎる、どうなってんだ栞里の中……)

 まるで僕のために誂えたような、性感帯を効果的に責めてくる魔性の蜜壺。こちらを一方的に刺激して自由に焦らし、寸止めしながら何度も絶頂させてくれそうな名器。

「こんなことが、うあ、ああああ!」
「私、もう先輩の体のこと全部わかっちゃいました。これがいいんですよね?」

キュウ、ウウゥゥゥ……

「ああああああああっ、そ、それえええ!」
「かわいいです。ふふ、私に抱かれて嬉しいですか?」

 身悶えする僕を抱きしめ、栞里は頬にキスをしてきた。
 唇を当てられた場所がジンジン熱を帯びてくるのがわかる。

「もう一度キスされたらイっちゃってください。先輩」

 甘い誘惑に逆らえない。抗えない。
 やがて僕は自ら彼女にすがりつき、快楽を求めて腰をヘコヘコ動かし始めていた。
 一度入ったら抜け出せない快感の檻のような栞里の身体に、僕は屈した。

「すっかり堕ちちゃいましたね。じゃあ楽にしてあげます」

 ベッドの上で体位が入れ替わる。つながったまま僕と彼女の立場が逆転した。
 そして、両手と両足を大の字に広げられ、脇の下から彼女の腕が通される。さらに彼女の足首が僕の膝にしっかりとフックされてから栞里が囁いてきた。

「私から逃げられる最後のチャンスですよ? 先輩」

 その言葉にドキッとした。このままイかされたら本当に抜け出せなくなるのかもしれない。僕は無意識に脱出を試みるのだが、

(あ、うそ、動けない……なんでっ!?)

 軽く抑え込まれているだけなのに逃げ出せない。手足が言うことを聞かなかった。

「逃げないんですね。それが先輩の意思なんですね」
「ちがう、だめ、これだめえええ!」
「何が駄目なんですか? 可愛い後輩に抱かれて幸せですよね? 情けないけど気持ちいいですね?」

 自分ではジタバタしているつもりなのにピクリとも動かない手足。

 やがて彼女が顔を上げ、正面から僕を見つめてきた。

「堕としてあげます」

キュ……

「あ……あああああああああああっ!!」

 栞里は全く動いていない。それなのに今までで一番の快感が腰回りから湧き上がって全身に広がっていくのを感じる!

「先輩のおちんちん負けちゃう、私のおまんこに降参しちゃう……ほぉら、もう出ちゃう、勝負に負けてはずかしいのに気持ちよくて勝手に腰がクネクネしてる」

 まるで暗示のような彼女の言葉通り、体の中が快感に染め上げられてゆく。

「キスしますね。先輩はもう我慢しなくていいんです。私に落ちて、溺れて、もがきながらどうにもならない自分を受け入れればいいんです……」

「ま、まって、駄目だ! いま、しおりにキスされたら僕は――」

「その可愛いお顔に免じて気持ち良~く出させてあげます。ほらっ」

チュ、チュウ、チュウウウウ~~~!

「~~~~~ッ! ~~~~~~~~~ッ!!」

 とろけるような口づけに僕のすべてが覆い尽くされた。
 我慢していた心も、秘めていた彼女への思いも全部快感に押し流されてゆく。

(イっちゃえ♪)

 頭の中に彼女の声が響いたと思った瞬間、

ドピュウウウウウッ!ドプッ、コプッ、ブピュウウ……

 全身を震わせながら僕はイった。
 じらしにじらされた膨大な快感が全身から溢れ出し、無意識に彼女の体を抱きしめながら何度も果て続ける。

 栞里はイキ続ける僕を飽きさせないように腰を軽く打ち付けたりひねり込んだりしながらキスと同時に膣内の心地よさをたっぷり味わわせ、更に深いところへ導いてくれた。

 やがて僕が動かなくなってからゆっくりと唇を解放して彼女は微笑む。

「ふふふふ、気持ちよかった? セックスも先輩の負けです。仕事だけじゃなくて、男としても私に勝てませんでしたね」

 その勝利宣言をすべて聞き終える前に、全身を苛む疲労感によって僕は泥のように眠ってしまうのだった。





 気絶同然だった僕が目覚めるとベッドの上や身体に飛び散ったはずの精液が綺麗に拭き取られていた。
 栞里は添い寝しながら僕の目覚めを待っていてくれた。

「おはようございます。見事なイキっぷりでしたね先輩」
「やめてくれ……」

 気まずさを隠せない僕の気持ちを察したのか、栞里は普段どおり可愛らしい後輩に戻ったように笑いかけてくれた。

「これは先輩次第ですけど、いくつか条件を飲んでくれたら今夜のことも黙っててあげますし、忘れてあげてもいいですよ?」

 主導権は完全に彼女にある。黙ってその条件に耳を傾ける。
 それは僕にとって意外と悪くないものだった。

「どうします?」
「わかった……受け入れるよ」



 翌日、彼女は一昨日までと同様に振る舞ってくれた。
 はたから見れば先輩社員に付き従う真面目な新人。

 しかし夜になると立場が逆転する。

『食事代とラブホのお金は今後一切、先輩が出してください。私が飽きるまでこの条件が続きます。』

 これが彼女の出した条件。

 今夜も僕は彼女に言われるままセックスに励み、尽くし、そして貪られるのだ。

 嫌な気持ちがなかったといえば嘘になるけど、何度も射精させられているうちにすっかり体のほうが栞里の虜になってしまった。

 もう彼女なしでは生きていけないのかもしれない。

 それでも僕は満足だった。

 年下の生意気な後輩に支配されることを心の奥で望んでしまったのだから。




(了)










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