複島ナオト 彼女が心配
ヒメが地下組織に所属していることを知る
独占欲が強い分だけ愛情も深い
リングネームはフクト
兎月鈴 バトルファック新人王を目指す
彼氏には内緒にしていたつもり
働けなくなった母の代わりにバイトしてる感覚
リングネームはリンコ
『裏組織に出入りする彼女を止めたい彼氏の話』
バトルファックは金になる。
これはそんな時代になってしばらく経ってからの話。
きっかけは少子化対策だったと考えられる。
ある時期を境に、この国において潜在的に善ではないとされていた性教育や性に関する産業が見直され、それらを主体とする活動が保護されるようになった。
性風俗は健全な商売とみなされ、医薬品や医療も飛躍的に発達した。
やがて政府のお墨付きのもとバトルファック協会が発足した。
バトルファックは男女が性技を競い合うスポーツだ。当然のように性的な行為に及ぶのだから淫らで過酷で刺激的なものになる。人気は非常に高い。
その発展に伴い商業施設も増えた。いわゆるラブホの数は年々増加し、単純な性行為だけでなく健全なスポーツ施設として認知されるようになった。
おかげで今では男女問わず気軽にバトルファックを楽しめる時代になった。
しかし繁栄する業界には光と影が混在する。
「手順は踏んだ。あとは運次第か」
夜更けの歓楽街の片隅で俺、複島ナオト【ふくしまなおと】は独りつぶやく。
ここはとある居酒屋の地下。
秘密の入り口から入れる「闘技場」と呼ばれるホールのひとつだ。
今夜この街で行われる非公式のバトルに俺は参加する。
選手として登録されている俺には狭いながらも個室が与えられている。
対戦相手は当日の夜に発表される。
順当に行けば俺は今夜目的の相手と対戦することになる。
公式戦と呼ばれる正規のバトルファックに参加するためには協会が発行するライセンスの取得が必要だ。でも今の俺には年に数回行われる資格試験を待つ余裕はない。
俺の大切な恋人がバトルファックをしているとわかった。
しかもネット上では彼女、兎月鈴【うづきすず】は有名選手・リンコとして一定のファンもついているようだ。だが表舞台ではなくアンダーグラウンドでの話だ。
きっと誰かに脅されて裏の世界に身を投じているのだろうと思った。
その事を親しい知人から聞かされた時、俺は茫然となった。
鈴の苦しみを察してやれない自分を責めた。
しかしそれから一週間もしないうちにそれが間違いであることに俺は気付かされる。
彼女は自発的にこの世界へ足を踏み入れた。
その理由はおそらく金。
非公式の試合は競馬と同じ。賭けの対象であり大きな金が動く。
参加する選手は貴重なコマとして優遇され、それなりの報酬を受け取ることができる。
(だからといって見過ごせない。俺は彼女を止める!)
自分なりに小さくない決意を胸に秘め、俺も彼女がいる世界に踏み込んだのだが……話はそう簡単ではなかった。
チャンピオンに挑むためには上位ランカーを倒す必要がある。
ボクシングなどと同じシステムだ。
そして俺の彼女は年代別でトップ3に入るほどの実力者だったのだ。
何度か身体を重ねたこともあるが床上手だった印象はない。
むしろ俺がリードしていつもフィニッシュしていた印象が強い。
もしかしたら彼女なりに気を使って俺に花を持たせてくれたのか。
何にせよ彼女と同じステージに立たなければ始まらない。
俺は心を鬼にして短い間隔でいくつも試合をこなして、ようやく彼女の元へたどり着くことが出来た。
彼女を取り戻すと心に決めてから早くも一ヶ月が経とうとしていた。
控室のドアが不意に開く。
プロモーターの使いが入ってきて俺に一枚の紙を渡した。
「ほらよ、今夜の組み合わせだ」
「助かる」
言葉少なめに会話しながら紙に印刷された文字に目を落とす。
リングネームはリンコ。序列は女子2位。間違いなく彼女だ。
俺のリングネームはフクト。現在序列は男子4位。
彼女にも同じデータが届いているころだが、鈴は俺の存在をデータ上でしか知らないはずだ。
(とにかく勝つ。勝てば俺の言うことを聞かせることができるだろう)
試合開始に備えて俺は控室の天井を見つめながら精神統一を始めた。
約一時間後。俺たちはリング上で対峙していた。
「なぜあなたがここに」
「……すべてはお前のためだ」
明らかに戸惑っている様子の彼女は普段見たことのない扇状的なコスチュームを身にまとっていた。流れるような黒髪を映えさせる白いレースのビキニと、同じく白のアームカバー。そして水色のショートブーツを履いたヒナは上位ランカーの風格を全身から溢れさせている。
対する俺は地味な黒いトランクス風のスパッツに黒のリングブーツ。
レフェリーがルール説明を行っている間もずっと彼女の大きな瞳は俺を恨めしそうに見つめたままだった。
「ここでは会いたくなかった。いつもの私じゃ居られなくなるから」
「止めてみせるさ」
「無理よ。だって、今の私はあなたが知っている鈴じゃなくてリンコだから」
その言葉を最後にセコンドアウト。すぐにゴングが鳴り響いた。
観客は居ない代わりに複数台の小型カメラが俺たちの姿を映し出す。
ここからは真剣勝負だ。
リング中央で構え、お互いに牽制し合う。
簡単に間合いに入らせてくれない。
付け入る隙のない動きをする彼女を見て、今度は俺が戸惑う番だった。
「なっ!」
彼女の姿が不意に視界から消えた。
実際には俺の左側へ身体を潜り込ませただけなのだが、動きが速すぎる。
「悪いけど手加減できないから」
リンコは俺の呼吸を読み、一瞬で距離を潰したのだ。
それに気づいたときには彼女の足が俺の左足を刈っていた。
(馬鹿な! こんなにあっさりと……)
軽いショックだった。ほっそりした彼女に初動で後れを取るなんて。
バランスを崩され、リングに背中が付いた頃には彼女は次の動作に移っていた。
素早く俺の両足を掴んで電気あんまの体勢になっていた。
「ナオト、いつも私をベッドに転がして主導権を取ろうとするよね。だから自分が転がされるのも好きなんでしょう? たっぷりいじめてあげる」
ぐいっ! ドガガガガガガ!!
「ぐああああああああああ!!」
股間に置かれた彼女の足が情け容赦なく振動する。
痛みを伴う快感に悶えながら俺はリンコの細い足首をつかもうとするのだがことごとく動きを先読みされて回避されてしまう。
「男って単純ね。足で踏まれると屈辱と快感を同時に味わうことになるんだから」
涼しげな目をした彼女が笑う。
この時になって俺は自分の甘さに気づいた。
リングの上だというのに彼女のことを自分の恋人として見ていたのだから。
(くそっ、こんな、一方的にいいいい!)
早く外さないとこのままイかされてしまう。
それは選手としても男としても屈辱だ。
体を捻ったリバウンドさせたりしてロープ際へ逃れようとするのだがうまくいかない。
「ずいぶんと甘い動きね」
「ぐああああっ、くそおおおお!」
リンコの足の動きが変化した。
痛みを伴う動きが緩やかになり、足の裏で股間を舐めるような淫らな動きによって的確に俺の性感を責め始めたのだ。
(くっ、これは、まずいぞ、きもちいいいいいい!)
体勢を崩され、制圧されながらの快楽責め。
このまま身を任せてしまいたくなるほど彼女の足が巧みに動く。
「こう見えても私は優しいんだよ? だから選ばせてあげる」
「な、なんだって!」
「二度と私の邪魔をしないと誓うか、このまま足でイかされるか」
そんな二択があってたまるものか! どちらにせよ俺の敗北じゃないか。
性技で彼女に後れを取ることに彼氏としてのプライドが拒否する。
しかし興奮が収まらない。白いビキニから伸びた足がペニスを喜ばせ、普段は見せない彼女の表情が俺をドキドキさせる。
「お、おれはっ! お前を止める……そのためにここに」
「却下」
すると股間をいたぶる前後の動きに小さなひねりが追加された。
「んはあああっ、おあああああーーー!」
彼女の足コキがさらに気持ち良いものに変化する。ピンポイントで裏筋をグリグリとこすリながら射精を促すように根元から先端をくまなく愛撫してくる。
「無様にイキなさい。ここはお客様を楽しませる場所だから」
やがてその動きを続けながらリンコは足の親指をぐっと固め、裏筋を強く踏み抜くようにして俺にとどめを刺してきた!
ドビュルルルルッ~~~ッ!!
「ぐあああっ、ああああ!」
快感が俺の全身を貫く。
彼女に脚をホールドされたまま俺はあっけなく射精させられてしまった。
「まずは一発。このままイキ続けたい?」
ひどくいやらしい目で俺を見下ろしながら彼女が言った。
しかもまだ俺の脚を解放しようとしない。
グニッ、グニュッ!
「ぐあっ、ま、まってくれ!」
「だめだよ」
このまま足の裏で直後責めを続けるつもりなのだ。
(まずいぞ、このまま絞り尽くされるわけには……しかし!)
歯をぐっと噛み締めながら彼女を睨む。
下半身に力が入らない状態だがロープが近い。
このままブレイクすれば、と思った矢先だった。
「ふぅん、強情ね。じゃあもっと深く傷つけてあげる」
俺の足首からあっさり手を離すリンコ。
とにかく助かった……などと感じる間もなく、俺は彼女の行動に目が釘付けになる。
シュルッ……
「な、なにをっ!」
「あなたが悪いんだからね。私の領域へ踏み込んできたんだから」
リンコは自らビキニの下を脱ぎ始める。
倒れたままの俺をまたぎ、じっと見下ろしたまま舌なめずりをしてみせた。
(エ、エロい……俺はこいつに犯されちまうのか!)
無意識に全身を固くする俺。
ペニスの真上にピタリと照準を合わせたように、綺麗に剃毛された膣口がゆっくり近づいてくる。
「あああああ……」
その様子を見せつけながら彼女は言う。
「ナオトをこの体位でしかイけないように調教してあげる。その後でここから追い出して二度と来れないようにしないとね」
ピチュ……
「ひあああっ!」
いつもとぜんぜん違う感触だった。騎乗位で彼女にマウントを取られたことで俺は確実に興奮させられている。
それを差し引いても心地よすぎる感触の割れ目が、焦らすようにペニスの先端を何度も舐めてくる。愛液をたっぷりと俺にまぶし、まるで自分のものであると主張するかのように粘液で俺を絡め取る。
ヌチュッ、クニュッ、プチュッ……
「ああっ、うわああああ!」
「たっぷり濡らしてから一気に食べてあげるね」
ニュルニュルと裏筋を舐められ、割れ目の感触を刷り込まれながら俺は彼女との実力の違いを思い知らされていた。
(普段の彼女は力を抑えていたんだ。目一杯手加減したまま俺を、彼氏として喜ばせてくれたんだ……)
感謝の気持と屈辱が入り混じった感情。
亀頭の先端に何度もキスをされ、俺の体がこわばっていく。
しかしこのまま挿入されたらイく。
リンコの膣で秒殺されてしまう。その後は嫐られ放題になるだろう。
「怖がらなくていいよ。あなたは私の彼氏なんだから」
「えっ」
「あなただって十分強いんだよ。だからこそ本格的にここへ通うようになったら他の女に犯されて壊されてしまう。私はそんなの絶対嫌だから」
優しい瞳で俺を見つめ、ゆっくりと顔を近づけてくるリンコ。
いや、これは俺の彼女……鈴だ。
(あああぁ……も、もう俺は)
勝てない。気持ちが溶かされていく。
選手としての警戒心が包み込まれ、柔らかく解きほぐされていくのを感じる。
ふにゅうぅぅっ
両膝をリングについて上半身を倒し、豊かなバストを押し付けながら彼女が顔を近づけてくる。吐息を間近で感じる。
そして――、
チュ……チュ、チュッ……
唇同士が触れ合うだけのキス。
その優しい合図で彼女は俺の心を完全に折ってしまった。
「このまま挿入するよ。心も体も私のおまんこ漬けにしてあげる」
焦らすだけの動きを繰り返していた膣口がプニュ、と亀頭をくわえ込む。
トロリとした淫らなよだれに包まれながら飲み込まれていく。
ずちゅううううっ!!
「んあっ、はあああああああああーーーーっ!!」
熱い膣内に飲み込まれ、俺は悶絶した。
内部の襞がペニスを待ちわびていたかのように絡みつき、締め上げてくる!
(きもちいっ、きもちいよおおおお~~~~!)
しがみつくように彼女の太ももをつかむ。だが止まらない!
クチュッ、グチュッ、ニチュッ……
規則正しくピストンしながら彼女が俺を翻弄する。
腰を沈める時に腟内を締め上げ、抜き出すときは優しく緩めてくれる。
「おちんちんが包み込まれてるのはBランク上位のおまんこだよ。いつまで正気を保っていられる?」
小刻みな上下運動が続く。リンコの腰使いによって膣口が俺の先端を飲み込み、わずかに吐き出し、また飲み込みながら少しずつ奥へと導いてゆく。
グプッ、ズプッ……クキュ……
コツンとした刺激。ついに一番奥へ到達したのだ。
「んふ、硬いね。いつも以上に」
「あ、ああっ、もう動かないでくれ!」
「いいよ。このまま搾ってあげる」
両手で俺の顔を撫でるようにしながら彼女が天使のように笑う。
「うっ、ああ、こ、これっ! 中がうねって……」
「ふふふふ……」
彼女が自分の意志で内部を蠢かせているのは明白だ。
腰の動きはピタリと止まったままなのに刺激がじわじわと強まってゆく。
「まだ我慢できるなんて素敵……でもそろそろ『負け』を刷り込んであげる」
手のひらで俺の身体を撫で回し、脚を絡ませながら彼女が言う。
(動けない……こんなに密着したら、またイかされちまう!)
まるで淫らな触手に捕らわれたような錯覚。
「私に全身を包まれて気持ちいいでしょ。このまま負けちゃいなさい。そうすればさすがにもう立てないでしょ」
低い声でささやかれる。もうイキたくてたまらないのは事実だが、負けたくはない。
(い、いやだ! 負けたくない。俺はお前のために)
必死で心を奮い立たせようとするが、もはや手遅れだった。
勝手に腰回りが震え始めていた。もう射精間際だ。
密着しながら囁いている間もずっと俺のペニスは甘やかされていたのだから。
「命令よ。さっさと……イ・け♪」
「あああああああああああーーーーーー!」
ドピュウウウウウ~~~!!
トドメとなる彼女の一言を俺は我慢することが出来なかった。
それから二週間後。
「鈴……頼む……」
「今から出かけるんだけど。まあ、しかたないか」
俺は毎日彼女に嫐られ続けていた。
あの日の出来事が忘れられなくて、会うたびにセックス勝負を希望していたのだが
「ううううっ!」
「すぐに終わらせてあげる。あなたはもう私には勝てないわ」
鈴に見つめられるだけでドキドキしてしまい身動きが取れなくなってしまう。そんな俺を見て彼女も興奮するらしく、以前と違って容赦なく責めてくるようになった。
ツツ……
「あううううっ!」
単純な手コキですら今の俺は耐えられない。
「こんなに大きくしてる。サイテー」
何も言い返せず快感だけが増えていく。
彼女とのバトルファックは確実に俺の中でトラウマになっていた。
「ほら、イって」
「うあ、ああああ、やだああああ!」
「ふふ、抵抗しても無駄♪」
そっと先端を包み込むように刺激されると、
ドピュウウッ!
あの日のことを思い出して簡単に射精してしまう。
彼女のテクニックが良すぎるのだ。
そして気絶するまで搾り取られてしまうのだ。
「じゃあね。自分の部屋で大人しくしてなさい。夜はおまんこで犯してあげるから」
満足そうに言い残して部屋を出ていく彼女。
その細い背中を俺はうっとりと見つめるしかなかった。
(了)