『同級生への対抗心からバトルファックに足を踏み入れたら底無し沼だった 1』




 その日、帆川龍太【ほかわりゅうた】は荒ぶっていた。
 同級生のコウジがこっそりバトルファック界へ転向してしまったからだ。

「あいつ、俺と一緒にバスケで全国制覇する約束を反故にしやがって!」

 私立強栄学園の体育科に所属する彼らは特待生だった。
 あらゆる試験を免除され、運動だけに明け暮れていた二人。

 コウジは一見するとただの金髪チャラ男で最初は気に入らない奴だと思っていたが、根はいいやつだとリュータは思っていた。バスケ部の同期として苦しんだり楽しんだりしながらお互いを高めあってきたつもりだ。

 ――それなのに。

「リュータ、悪いけど俺バスケ部辞めるわ!」

 夏の大会予選で敗退した直後のことだった。
 コウジは引き継いだばかりの主将の役目を放り出し彼の前から姿を消した。

 以前から部活中の体育館で女子バスケ部やそれ以外の女子を目で追いかけていたようなコウジである。公然と異性と触れ合うことができるバトルファックの世界に魅力を感じていたのかもしれない。

 それにしてもあんまりだ。
 一方的すぎると思う。

 やがてリュータはやり場のない怒りとともに数週間を過ごし、コウジの後を追うようにして部活自体を辞めてしまった。

 退部後、途方に暮れたまま何日か経過した。

(女の体って、そんなにいいものなのか……スポーツよりも?)

 思春期を過ごした男子なのだから女性に興味が無いといえば嘘になる。
 それでも簡単には納得できなかった。

 コウジと比較してリュータは部活一筋の人間である。
 女の子について彼ほど詳しくもないし興味も知識も薄かった。

 憎しみや怒りを起点とした好奇心ではあるが、リュータはバトルファックがどんな世界なのか自らの目で確かめてみたくなった。



 ある日、彼は数少ない女友達の鍔元アヤメ【つばもとあやめ】を呼び出した。
 バスケ部ではマネージャーを務める彼女は年下だがリュータにとって緊張せずに話ができる唯一の異性だ。

「私に話ってなんですか?」

 放課後の体育館裏に呼び出された彼女はおどおどしながら彼に尋ねる。
 今日は部活全体が休みの木曜日なので彼らの他には誰もいない。

「お前にしか頼めないことなんだ」
「はぁ……?」

 アヤメは訝しがるしかなかった。
 ここは体育館の裏。
 男同士なら決闘の申し込みだろうし、男女の仲なら告白でもされそうな場所。

(わ、私、なにかリュータさんに怒られるようなことをした?)

 彼女に思い当たる節はなにもない。
 彼とは元バスケ部の部員とマネージャーという間柄であり、告白されるほど仲良しでもない、というのがアヤメが持つリュータへの印象だった。

「年下のアヤメにこんな事を頼むのは無茶だとわかっているけど」

 そんな彼が切実な目で自分を見つめている。
 にわかに緊張してしまう。

(ここでいきなり名前呼び!? 初めてなんですけど)

 この流れは決闘の申込みではなく愛の告白だろうと瞬時に判断した彼女は不意のできごとに顔を赤く染めた。心の準備が全く出来ていない。

 彼女の目から見てリュータはごく普通の男子、ではあるが……魅力的な部分がないわけでもない。むしろ部活に励んでいた男子として好印象だ。
 顔立ちも凛々しくて鍛え込まれた肉体。隠れファンも数名いるとは聞いているが、コウジと違って浮いた噂ひとつなかった彼が自分に想いを寄せていたとは考えにくい。

(きゅ、急にドキドキしてきたぁ! どうする私、ど、わかんないよぉ~!)

 アヤメは黒髪で地味な印象ではあるが年相応に恋に焦がれる乙女であった。
 顔色は変えずに冷静でいるつもりだが、アヤメは確かに興奮していた。
 今まで気づかなかった自分も鈍感だが思いを隠していた彼もすごすぎると思った。

 十秒後、沈黙を破りリュータが決意したように彼女に告げた。

「たのむ! 俺に、バトルファックを教えてくれないか!!」

「え」

 ぽかんと口を開けてアヤメは答えてしまった。
 今にも土下座しそうな勢いで頭を下げられたが今度は理解が追いつかない。

 一瞬で真っ白になった頭の中に浮かぶのはバトルファックという単語のみ。

(私が? え、えっ!? 保健体育の授業で聞いたことはあるけど、バトルファックなんだからエッチするんだよね? どうしてリュータさんいきなり……あっ、もしかして)

 リュータが退部届を出す前にコウジが部を去っていったことをアヤメは思い出した。
 無関係ではないはずだと思い彼に問いただしてみると、やはりそのことがきっかけだったようで……ようやくアヤメは現状を理解することが出来た。

「つ、つまりセンパイは私と交わることであちらの世界へ行く覚悟を決めたいと?」

 自分は踏み台にされるのだと思うとアヤメは少しだけ冷静になれた。

「そうだ。恥ずかしながら、俺は女の子のことを全然知らないんだ……」

 うつむきながらリュータがカミングアウトする。
 恥ずかしそうな様子の彼を目の前にしてアヤメは完全に落ち着きを取り戻した。

(これって、私がセンパイの童貞を奪っていいんだよね)

 アヤメは思わずニヤけてしまう自分を必死でこらえるのに精一杯だった。
 少なからずセックスの経験はあるが今まではずっと受け身だった彼女。
 でも今回は違う。自分が主導権を持っているのだ。

「リュータさん、その、初めてってことで間違いないですか」
「ああ、そのとおりだ……」
「ふぅ~ん。光栄ですけど、本当に私でいいんですかぁ? センパイ」
「どういう意味だ?」

「大切な初めての相手が私でいいんですか、という質問です。私はセンパイに頼まれたら断れませんけど……もっといい相手というか、レベルの高いパートナーがいるのでは?」

「そんな相手は居ないんだって。本当だ」

「へぇ……」

 軽く腰を折り曲げて彼の顔を覗き込むと、この上なく恥ずかしそうに唇を噛み締めながら視線を逸らした。
 アヤメ自身は自覚が薄いのだが彼女は学園内でも美少女の部類に入るだろう。
 伏し目がちだがパッチリした大きめの瞳。
 肩のあたりで綺麗に切り揃えられた髪はつややかで健康的だし、本人はひたすら隠そうとしているが胸もじつはかなり大きい。
 バスケ部のマネージャーということで部員からはもちろん他の部活の男子からも何回も告白されている。

 リュータもその事に薄々気づいており、彼女に対して悪しからぬ感情は以前から持ち合わせていた。

「さっきも言ったけどアヤメ、お前しか居ないんだ。恥を忍んで頼む!」

 押し殺したような声で彼女への思いを告げる。
 リュータにとって今までで一番自分の心臓の音が大きく聞こえた。

「わかりました。そこまで言われたらお引き受けします」

 数秒間の沈黙の後、アヤメは微笑みながら彼に告げた。

「おおっ、助かる!」

「じゃあ今からでいいですか? 私も予定が空いているので」

「い、今すぐに!? それは、ずいぶんと急だな……」

「そうさせたのはセンパイですよ? 今さら嫌とは言わせませんから。うふふ」

 アヤメがリュータに腕を絡めながら微笑む。
 それぞれの思いを抱えながら彼らは一緒に下校することになった。



 アヤメに促されて辿り着いた先はラブホテルではなく彼女の家だった。
 成り行きとは言えリュータは焦る。
 女の子の自宅へ行くなど彼にとって初めての体験である。

「おっ、お邪魔します!」
「緊張しないでいいですよ。今は私たちだけですから」
「そうなのか!?」
「はい。いきなりうちの親に会うと思いました?」

 リュータにとって幸いと言っていいのか、ご両親は共働きということでここには自分と彼女しか居ないらしい。考えてみれば当然のことではある。

「さあどうぞ。ここが私の部屋です」
「きれいにしているんだな」
「ありがとうございます」

 彼に褒められたアヤメは素直に喜んでいるようだった。
 おそるおそるベッドに腰を掛けると彼女のほうから寄り添ってきた。

「まずは女の子とふたりきりという状況に慣れるところから始めましょう」
「そうだな。助かる」
「ふふっ、センパイかわいいです。緊張してるんですね」

 そう言われて改めて自分が女性に対する耐性がないのだとリュータは思い知る。
 アヤメの気遣いは素直に嬉しい。バトルファックは男女が向かい合うものだからこの雰囲気に飲まれるようでは話にならない。

 しかし、さっきから気持ちがフワフワして落ち着かない。
 近くに感じるアヤメは正真正銘の美少女だ。
 制服を着たままお互いに身を寄せているだけで妖しい気持ちにさせられてしまう。

「一応言っておきますけど、私は経験豊富というわけではありませんから」
「わかってる。俺が、慣れていないだけだ」

 身を固くする彼の手にアヤメが手のひらを重ねる。

「でも相手は私ですよ? 部活だと思って楽にしてください」
「し、しかしだな……」
「センパイ。私とバトルファックするんでしょう。覚悟を決めてください」

 年下のアヤメのほうが落ち着いている現実。
 逆にリュータは緊張感よりも甘いムードに溺れかけていた。

(ここは、少し無理をしてでも主導権を握るべきなのだろうか。ええい、迷うな!)

 恥ずかしくなったリュータは思わず彼女を押し倒してしまう。
 後先考えずに本能に従った行動である。

「きゃっ♪」

 少し驚いた様子だがアヤメはしっかりと彼を見つめていた。
 普通に考えれば男子に押し倒されて平静でいられるわけがないはずなのに、彼女は頬を赤く染め、次の行動を待っているようでもある。

(この後どうすればいい? それにアヤメもどうして抵抗してこないんだ)

 肩に手を置いただけで女の子の柔らかな感触がじわりと伝わってくる。
 ベッドに背中を預けた彼女がふわりとほほえみながら言う。

「けっこう大胆ですね。いきなり押し倒すなんて」

 罪悪感と興奮が同時に彼の胸に広がってくる。

「す、すまん」
「どうして謝るんですか?」

 謝ってみたものの彼女はそれほど怒っていなかった。
 だがこの先どうするのかを彼は知らない。

「まずはこうやって相手に優しくしてみるとか、どうです?」

 そっと頬を撫でられる。アヤメの手は滑らかな感触で心地よかった。

「うあぁ」
「気持ちいいですか? じゃあ私にも同じようにしてください」

 アヤメが優しくリードし始めたことでリュータは内心ホッとした。
 遠慮がちに彼女の頬を撫でる。

「んっ」

 ほんの少しだけ彼女が甘い声を上げた。

(やばい、こんなに可愛かったのかこいつ……)

 自分の下で目を細め、心地よさげに彼の手のひらにされるがままになっているアヤメ。それを見ているだけでリュータはドキドキが止められない。

「センパイ、これから私と肌を合わせちゃうんですよ。女の子の身体をじっくり勉強してください。どうすれば相手が感じるのか見極めないと」
「お、おうっ」
「もっと激しくされても私は平気ですから」

 アヤメは恥じらいながら彼の手を握って自分の胸元へと導く。

「いいのか?」
「はい。どうぞ」

 ギュッと手を握られ、胸を押し付けられ、彼女自身を存分に味わう。しかもまだ着衣だというのに、リュータの興奮は最高潮に達していた。

「はぁんっ、上手ですね……もっと、中まで触っていいですよ。怖がらないで」

 まだ全裸になっていないというのに、彼女の言葉だけでおかしくなってしまいそうだった。

「私の誘惑でもけっこう効いてるみたいですね」
「う、うん……」
「あはっ♪ かわいい童貞くんですもんね。このあともいっぱい誘惑しちゃいますけど、絶対に虜になっちゃだめです。これは訓練ですから」

 誘惑すると言われ無意識にリュータは身を固くしてしまう。

(そうか、これもアヤメの特訓メニューなんだ! 真面目にやらなきゃいけない、な)

 すべて彼女の演技だと自分に言い聞かせようとするのだが、

「センパイ、ずっと好きでした」
「えっ!」
「うふっ、演技ですよ。何を言われても真面目に受け止めちゃ駄目。試合中に誘惑してくる女の子が居たらどうするつもりですか」
「くそっ! 今のは、本音じゃないんだな? それなら」
「さあどうでしょう。私の誘惑に我慢できたら答えてあげます」
「こいつ……!」
「クスッ、真っ赤になっちゃって可愛い♪」

 アヤメはそういいつつ彼の顔をなで、背中を優しく抱きしめる。

 引き寄せられたことで柔らかい胸がリュータの身体で押しつぶされ、存分に感触を味わってしまう。その魅力よりも彼女の言葉が脳内で何度もこだまする。

(俺のことが好きって、嘘でもそんな事言われたら!)

 普段よりも密やかで甘ったるいアヤメの声は童貞の彼には刺激が強すぎた。
 それが麻薬のようにリュータの思考を溶かしてゆく。

「私のこと好きになっちゃいました?」
「くっ……」
「我慢ですよセンパイ。そうすれば女の子に強くなれますから」

 諫めるように彼女は言うが、リュータにとってはそれすら甘い媚薬。
 しなやかな手つきで全身を撫で回され、蕩けるような優しさの洪水に溺れるしかなかった。たいして時間もかからずに心の中が彼女でいっぱいにされてゆく……

「そろそろ今日のレッスン2へ移行しましょうか」
「え……」
「私とセンパイの相性は悪くないみたいですし、抱き合っているだけで気持ちよくなれるってわかりましたよね。だから今からその先の世界へ行きましょ?」

 アヤメはゆっくりと身体を起こし、彼を膝立ちにさせた。
 丁寧にリュータの制服を脱がせにかかってきた。

(は、はずかしいっ!)

 細い指先が自分のシャツを、ズボンを一枚ずつ剥がしてゆく様子に見とれてしまう。

「ほら、センパイも私の服を脱がせていいんですよ」

 アヤメも同じように膝立ちになり、ねだるように手を後ろに組んで彼の目の前で胸を揺らしてみせた。

「早くぅ~」
「あ、ああ……」

 上目遣いでじっと見つめられ、ドキドキしながら女の子の服を脱がす。しかしアヤメの真っ白な肌が露出してすぐにリュータは見事な谷間に視線が釘付けになってしまう。

「あ~、エッチな目で見てる……」
「ご、ごめんっ!」
「謝らなくていいですよ。それより早くこの刺激に慣れないと、女の子のっていうよりは私の虜になっちゃいますよ~」

 アヤメの促されてブラのホックを外す。

「やぁんっ」

 恥じらいながらも彼を上目遣いで見つめるアヤメはどこかいたずらな表情だ。

(こんなのっ、興奮しすぎておかしくなっちまう! でも我慢しなきゃ、付き合ってくれてる彼女に失礼になる)

 だが目の前で柔らかく揺れるおっぱいを見ているだけでペニスはどんどん硬くなる。気を紛らわせるために震える指先で乳首に触れたり、下乳を持ち上げたりしてみるが逆効果だった。

「うふ、私からも触っちゃいますね♪」

くにゅっ……

「あ、うわあああああーーーっ!」

 リュータが思わず視線を落とす。
 アヤメの右手が自分の肉棒をやんわりと包み込んでいた。

(女の子に触られるとこうなるのか……)

 その現実にリュータは今までで一番の興奮を味わっていた。

「おちんちん気持ちいいですか? センパイ」
「ここ、これやばい、やばいって!」
「そう? じゃあこうしたらどうなっちゃうんだろ」

しゅ、しゅっ、しゅ……

 人差し指と親指でリングを作りアヤメは肉棒をゆっくりと刺激する。
 ほっそりした彼女の手が翻り、逆手でカリ首をくすぐるような動き。
 それを何往復か繰り返されると腰がガクガクと震えだした。

「きもちいい、きもちいいよおおぉぉぉ!」
「んふふ、もうイっちゃいそうじゃないですかー」
「待って、一旦ストップ!」
「やめません。もっと感じて? センパイ」

 そっと触れられただけで声を出してしまう彼を見て、アヤメも内心ドキドキしておかしくなりかけていた。普段は凛々しい彼を自分が翻弄している現実が刺激的すぎて興奮を隠せない。

「センパイってこんなに可愛い人だったんだ……」
「言うな、あ、ああっ、そこはッ」
「よわ~いところ全部責めちゃいますから。我慢して下さいね」

 アヤメは先端から溢れ出した粘液を指ですくい取り、ニュルニュルと亀頭全体へとまぶしてゆく。その動きが彼にさらなる快感をもたらし余裕を奪っていくとわかっていてもやめられない。

(このまま彼のことを私の虜にしちゃいたい!)

 自分でも知らず知らずのうちにエスカレートしていく欲望。
 確実にリュータが興奮してくれるとわかっている現状に彼女は満足しはじめていた。

「バトルファックの基本らしいですよ。手コキって」
「こんなに、気持ちいいなんて聞いてないっ!」
「溺れちゃだめですよセンパイ。手コキだけで負けちゃうバトルファッカーなんて、ほとんど居ないんですから」
「くううっ、そ、そうなのか……」
「そうですよ。だからもっと強くなりましょ? ほらほら」

 優しくバナナの皮を剥くように、一枚ずつ彼の忍耐力を剥がしてゆく。
 そのたびに荒くなっていく彼の吐息を感じながら。

「いいんですか? このままドピュッてしちゃっても」
「う、ぐっ、ああああぁぁーー!」

 アヤメの手のよって下半身も心もむき出しにされた彼は恥ずかしそうに両手で股間を覆うように隠そうとするのだが、

「それはだめです」

 簡単に手を振りほどかれてしまった。そしてついにもう片方の手も手コキに加わることになる。

「罰ゲームですよ。今から10秒間、私の手コキに耐えてください」

 アヤメは左手の人差指と親指を根本に絡ませ、残った小指や薬指で睾丸をツンツンと刺激し始める。

「な、なにをっ、あ……ああああ!」
「両手責めです。おちんちん完全に私の手に包まれちゃってますねー」

くちゅくちゅ、シコシコ、しゅっしゅっしゅっしゅ……

「あーぁ、我慢汁で私の手がドロドロなんですけど?」
「うあ、こ、待て、これキツイ、許してくれ、一旦手を止めて――」
「だめですよ。バトルファックなんですから。ここから逆転しないと。あと五秒です」

 アヤメは抵抗を許さない。バトルファックという大義名分を存分に使いながら彼をますます恥ずかしさの崖っぷちへ追い詰めてゆく。

(手コキしながらキスしてあげたら……センパイ、射精しちゃうかな?)

 好奇心と独占欲が混じったアヤメの思考にリュータは気づけない。

 彼女が考えたように手コキとキスを同時にされたら童貞である彼などは確実に射精するだろう。同時に自分への依存心を高めることもできそうだ。

「こんなにビンビンにして。センパイのおちんちん、私の手が大好きみたいです」
「う、ううううっ!」
「もう限界ですか?」
「ま、まだ俺はやれるッ」
「じゃあここで私にキスされたら……どうなっちゃうんでしょうね」
「なっ!?」

 キスという言葉に彼の顔色が明らかに変わったのを見てアヤメが笑う。

「こうして、チュッ♪」

 投げキッスをするみたいにウインクしながら微笑みかける。

「ひいっ!」
「おちんちんにキスされたい? それとも……唇に?」

 すでにリュータの忍耐力は崖っぷちである。
 あとほんの少しだけ背中を押して、快感の渦へ叩き込むだけだ。

「私とキスしてみたいですか。センパイ」
「くぅっ、ううう!」
「自分からはおねだりできないですか。そうですよね、これはバトルファックの特訓ですから」
「お、おまえ……これも誘惑だというのか!」
「はい。そうです。だから先輩は我慢しなきゃ駄目なんです。ふふ、苦しいですね?」

 アヤメは不意に手コキを止めて彼をベッドに押し倒した。
 それだけで彼女の嗜虐心が満たされてゆく。

「センパイからはキスしちゃだめですけど、私からならいいんです」
「え、そ、そんな!」
「たっぷり味わってもらいますね」

 ゆっくりと顔を寄せ、彼の顔色を間近で見るアヤメ。
 怯えながらも興奮の色を隠せないリュータを見つめ、ゆっくりと自分の唇を舌の先で舐め回す。

「私とベロチューしましょ。もしかしてファーストキスだったりして?」
「……っ!」
「あたり、ですね? じゃあ我慢しないと私に溺れちゃいますよ。センパイ」

 言葉で彼を縛り、抵抗することだけが自分にできることだと諭す。バトルファックにおいて忍耐力は重要なファクターだが、今のようにアヤメが完全に主導権を握っている状況ではその訓練の効果は薄い。だが経験不足の彼がそれに気づくことはできない。

「センパイのはじめてのキス、奪っちゃいますね」
「あ、あああぁぁ……」
「私じゃ嫌ですか?」
「そんなことは、ないが……」
「じゃあ問題ないですね。キスしながらおちんちんにも優しくしてあげる」

くにゅ、しこしこしこしこ……

「ああああっ、我慢がッ」
「本当に可愛いです、センパイ。年下の私に気持ちよくされて、初めてをいくつも奪われて情けなく喘いじゃうんですね」

 リュータに頬ずりしながらアヤメは何度もゆっくりと言葉を染み込ませてゆく。

(きもちいいっ、こんなことされたら、おかしくなるどころか……)

 アヤメを好きになってしまう。リュータは本能でそれを悟る。
 自らの急所を握られ、しごかれる。
 しかも優しく言葉責めまでされながら。

「うあああっ、もう!」
「クスッ、いいですよ。私にキスされながら全部出しちゃってください」

 快感に痺れながら彼女にすがりつけば笑顔で迎えられ、許される。

「い、イくっ! 駄目だ、止まらないいいいぃぃ」
「大好きですよセンパイ。だから受け止めてあげます」
「っ!!」
「センパイは悪くないですよ。全部私のせいにしちゃいましょ。それに、ここには二人しか居ませんから……」

 大丈夫だよと囁かれ、心を柔らかくほだされてゆく。無意識にリュータはアヤメのバストや腰回りに手を伸ばしその感触を楽しもうとしていた。

「私といっぱいキスして、ドピュってしたら、少し休んで特訓の続きをしましょ?」
「つづ、き?」
「はい。手コキだけじゃなくて脚コキも、あとはおっぱいを使ったり……最後はセンパイのお待ちかねのことだって」
「おれ、の……」
「ええ。童貞も奪ってあげます。本番で……私のアソコ、味わってみたくないですか」

 アヤメのささやき、本番や挿入という単語に心がときめいてしまう。
 だがそれ以前に彼はもう自分の限界を感じ始めていた。

(今度こそ駄目だ、で、出ちまう……気持ち良すぎて、我慢が……ッ!!)

 リュータは完全に彼女に溺れてしまっている。

 可愛らしいアヤメの顔が目の前にあり、くちゅくちゅという淫らな音が下半身に響いている。

 甘い言葉で心をほだされ、その間もずっとペニスにはアヤメの指先が絡みついているのだ。童貞の彼に我慢などできようはずもない。

「そろそろキス、しましょうか」
「うっ……」

 すぅっと彼女の目が細くなる。それにつられて彼も目を瞑る。

「センパイ」
「?」
「最後まで自分から私を求めてこなかったセンパイの勝ちです。だからこれはご褒美」

ちゅ、ううぅぅ……

「んっ!」
「ふふ♪」

 アヤメの唇とリュータの唇が静かに重なった瞬間、

どぴゅうううううううううっ、びゅるるるっ!

 ビクンビクンと腰を跳ね上げながらリュータが爆ぜた。

(な、なにこれ、キスってこんなに、あ、ああああーーーーー!!)

 アヤメの片方の腕でしっかりと顔を固定されながら彼は思う。

 キスされたことで彼女が自分の中で特別な存在になってしまったことを。

 普段のオナニーでは射精と同時にもたらされる虚無感に悩まされるものだが、今は全くそれがないことを。

「センパイ、私を好きって言って?」

 何度もキスを繰り返し、トロンとした目で彼女が言う。

 すっかり呼吸を乱して色っぽくなったアヤメに見つめられたリュータは自分の中で溢れ出す思いをそのまま口に出してしまう。

「すっ、好きだ! アヤメ、おれ、ああああっ!」

「うふふふ、私も大好き。だからさっきの誘惑は嘘じゃないです」

 妖しく微笑みながら愛をささやき、アヤメは彼自身への愛撫を重ねてゆく。

しゅっしゅっしゅっしゅ……

「てて、手を! もう離してくれ、もうイってるからぁ!!」

「だめ。おちんちんだって、もっと愛してあげますよ?」

 射精直後も彼女の指先が奏でる快感の旋律は極上であり、自分の弱いところをいちいち抉ってくる厄介な刺激であった。

「もう一度、しちゃうもん♪」

ちゅう、ぅぅ……

 唇が触れ合った次の瞬間、ペニスがまた大きく躍動した。
 アヤメもそれを感じ取ったのか少しずつ手コキのペースを早めてゆく。

(これ、きもちよすぎて、またイっちまう! あああ、アヤメ、好きだああああ!)

 小刻みに上下に往復する手の動きが左右に亀頭をこね回す運動に変化した時、リュータの我慢は再び限界を迎えてしまう!

びゅくっ、どくんっ……

「ふふ、またイっちゃった。センパイ? もう私以外に負けちゃだめですからね」

「そんなこと、言われたって……」

「約束通り今日は最後までシテあげる。おちんちんも毎日鍛えてあげますから」

 アヤメに嗜虐的な目で見つめられたリュータは戦慄するが、与えられる快感がそれを興奮への期待に上書きしていく。

 初めて味わう異性からの手コキによる快感は彼の想像を軽く越えていた。今でもリュータは何も考えられなくなるほど快感に揺られている状態であり、そんな自分に穏やかに寄り添ってくれるアヤメの姿が天使に見え始めていた。


 手コキだけでこんなに気持ちいいというのに、このあとは口腔性技と胸性技……フェラとパイズリ、そして膣内性技であるセックスが控えているという。

「明日の朝まで二人っきりです。折角の機会ですから最後までやっちゃいましょ?」

 目の前の天使からの誘惑に、彼はコクンと頷いてしまうのだった。





(つづく)





(了)










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