社内恋愛と時間外勤務 ~好きになった相手が積極的すぎて困る夏~





 公私混同は良くない。社会人なら当たり前のこと。
 たとえば会社の中に好きな人がいるのは許せるとしても、それが交際まで発展してしまうと業務に支障をきたす。俺は今までそんなふうに考えていたのだが――、

「やべぇ、毎日めちゃめちゃ幸せ……」
「おいっ」

 見かねた同期が呆れたように咎める。
 反省。目の前にあるディスプレイを眺めながら思わず呟いてしまった。
 実は最近、密かに想いを寄せていた相手と交際を始めたのだ。

「いくらなんでも顔に出しすぎだろお前。転勤させられるぞ」
「うっ、報復人事はこわいな……なにも悪いことしてないのに」
「幸せオーラが害なんだよ、害!!」

 そんな大声でわざとみんなに聞こえるように言わなくてもいいのに。

 俺、大生石ユウト【おおいしゆうと】は映像会社の総務部勤務である。
 手広く事業をやっているこの会社には何故か美人が多い。
 その中のひとりと現在交際中。しかも年上のバリキャリ。

 ひっそり付き合ってるつもりだったのに最近どこからかバレた。

(見に覚えはないのに……どこかで目撃されたのだろうか)

 週刊誌にすっぱ抜かれた芸能人の気持ちが今ならわかる。
 じつに理不尽だ。

 そんなことを考えていたら数メートル先から突然声をかけられた。

「大生石クン、ちょっといい?」



「あっ、古鈴主任……なんでしょう」
「ちょっと確認したいことがあるから倉庫まで来てもらえるかしら」

 他部署の上司とは言え敬語は必要だ。
 彼女は物流課所属の主任で、古鈴みすず【こすずみすず】という。

 第一印象は清楚。真面目そうな細い黒縁のメガネに黒髪のセミロング。
 うちの会社は勤務中の服装は自由なのだがいかにも事務員といった白いブラウスにタイトスカート。清潔感はあるけれど色気はあまり感じさせないスタイル。

(キリッとしてて美形なんだよなぁ……)

 真面目な顔を崩さないように気をつけつつ俺は見惚れてしまう。
 今は仕事中だからこれも当たり前だが私語はしない。

「呼ばれてるぞ。早くいけよ」

 同期に急かされ俺は立ち上がる。

 俺の先輩に当たる人であり現在の彼女。

(視線がブスブス突き刺さっているのだが)

 部屋を出る前に振り返ると同期を含む全員が生暖かい視線で俺を見つめていた。


 彼女の後ろについて倉庫がある場所へ向かう。
 手前にある資料室に用があると言われ、二人で入室する。

「それで何か……」

 俺が尋ねると彼女は振り返り、不満そうに見上げてきた。

「とぼけないで」

「えっ」

 ぐいっと手を引かれ俺と彼女の立っている場所が入れ替わる。
 カチャリ、とドアに鍵がかけられた。

「バラしたよね? あたしたちの関係」

 じっとりした視線を受けて俺は慌てて弁解する。

「それは、決して故意にではなく――」

「恋だけに?」

「誰がうまいことを言えと、んぶううっ!?」

 次の瞬間、彼女の人差し指が俺の口に突っ込まれた!

 驚いて硬直した俺を主任はぐいっと引き寄せ、腰を抱きしめてきた。
 細い指がクチュクチュと口内をかき混ぜ、言葉を遮ったまま資料室の壁まで俺を追い詰める。

(こんなっ、犯されてるみたいにいぃぃぃッ!!)

 混乱しながらも俺は興奮していた。わずかに口角を上げた古鈴主任の表情がたまらなくエロくて、そして自分がされていることに何かを思い出してしまって、

「どうかしら? 私の指だけでイけるようになれたかな」

 美しい指先に蹂躙されている。腰を抱いていた彼女の手がいつの間にか俺の後頭部へ回されている。これはペニスが膣内を往復するのに見立てて指を何度も、ゆっくりと出し入れし続けているんだ……

「ジュポジュポされて感じちゃうなんてドMまっしぐらね。ヘンタイ」

 ちゅぽん、と指が引き抜かれる頃には完全に呼吸を乱されていた。
 そして俺の股間は触れられていないにも関わらず痛いほど固くされていた。

「ぷはぁっ! 急にこんなことされたら誰だって」

ツツウウゥゥ……

「あうううっ!」

「ビンビンじゃない。まだ言い訳できるの?」

 あっという間にベルトを外され、トランクスに忍び込んできた美しい手に陰茎を握られる。手のひらの心地よさに体から力が抜け落ちてゆく。

(みすず、さん……こんなことしちゃだめ、なのにいいいぃぃ!)

 指先の動きがエスカレートしてゆく。先端をもみほぐし、我慢汁を塗り拡げながらいたわるように全体を撫で回されるともう駄目だった。
 勝手に腰が砕けて膝が笑う。無意識に彼女の肩に手をおいて踏ん張ろうとするけど、その努力もすぐに巧みな手コキで崩されてしまう。

 真っ昼間から勤務中に情事。あってはならないことなのに興奮する。

「ずっとエッチなこと考えていたんじゃないの?」

「ち、ちがっ! ああああっ、こんな不意打ち、ずるいです」

「じゃあ予告するわ。今から犯してあげる」

 俺の足の間に彼女の膝が割り込んできた。

「くっ、はぁっ、しゅ、主任ッ」

「みすずでいいよ。ユウト」

 片足立ちの状態で俺に体を預け、グイグイと膝を持ち上げて指先だけでなく脚でも俺を刺激してくる。睾丸が押し上げられる度にビクビクと震えてしまう俺。

「あっ、ああああ、みすずさんっ!」

 立っていられなくなるのを拒み、俺は彼女に抱きついた。
 そして耳元で妖しく囁かれる。

「ふふふ……おちんちんはこのままハメられたいみたいね」

 ストン、とズボンが降ろされた。下半身が露出してペニスがエアコンの効いた部屋の空気に触れて冷える。しかしすぐに彼女の指先に包み込まれて元通りの温度になる。

「立ったままで入れちゃおうか?」

「えっ、こんな格好で!」

 俺と同じようにみすずさんもスカートを床におろし、ショーツから片方だけ脚を引き抜いて見せる。

スリスリスリ……

「もっと硬くしなよ」

 自転車を漕ぐように美脚を動かし、肉棒を下から上へこすりあげてきた。
 ストッキングの感触も相まってペニスが一回り太くなる。

「ああっ、だめです、だめですって!」

「うるさいなぁ。キミは勝手に犯されてればいいのっ」

クプウウウゥゥゥッ!

 軽く背伸びをしつつ、立位の状態でペニスを迎え入れる彼女。
 その瞬間、俺は完全に脱力した。

(あ、熱いっ! もうこんなにオマンコが蕩けていたなんて……)

 彼女の膣内に取り込まれ、再びペニスから我慢汁が溢れる。
 狭い資料室の中で淫らな水音が跳ねる。
 ゆったりと腰をくねらせながら彼女は両手を俺の腰に回す。

パチュッ、パチュンッ、クチュクチュクチュッ!

「あああああああああああっ!」

 正面から抱き合う姿勢で彼女が背伸びを繰り返すと、程よく膣内もしまってペニスが心地よさで満たされてゆく。

「あたしね、これ好き。いいところに引っかかって」

 そのちょうどいいところを探り当てたのか、今度はじっと動かないまま膣内だけを動かし始める彼女。肉襞が裏筋付近を舐めあげるように動くたびに俺の背筋にサアアァァァっと快感の波が駆け抜けていくようだった。

「ふあああっ!」

「思い通りに喘いでくれるから。好き。はぁんっ♪」

 俺は情けないくらい彼女に抱きついたまま、気づけばフロアに横たえられていた。

 目の前に彼女の顔がある。整った顔立ちが魅力的で、しかもうっすらとほほを染めているのが艶めかしくてたまらない。

「好きだよユウト……会う度にめちゃくちゃにしたくなるくらい」

ちゅ……

 そっと重ね合うだけのキスに大きく胸が跳ねた。

「お、おれも好きですっ! みすずのことがっ」

キュウ、ウウゥゥ!

 戒めるように膣内がざわめき、肉棒を何度も不規則に抱きしめてくる。

「あああああ~~~!」

 返事をするように彼女の細い体を抱きしめるとますます膣内が俺を責める。
 心地よい手触りのお尻に手を置いたままその刺激に耐えようとするのだが、

「呼び捨てとか生意気。もうイきなさい」

 言葉とは正反対の優しい表情で彼女が俺を見つめていた。
 すると不意に強い締め付けが緩んで、ペニス全体をもみほぐすようなバイブレーションが襲いかかってくる。

「あ、だめっ、これイクッ、出ちゃう、出ちゃうよおおおおぉぉ!」

どびゅうううっ、びゅるる、びゅるうううっ!!

 彼女に抱かれ、自分も彼女に抱きついたまま俺は爆ぜた。

 全身がとろけるような膣内の動きに身を任せ、射精が収まるのを待つのだが、

「あひいっ、でてるからあああ! 締め付けないで、も、もうっ!」

「ふふふ……喜んでるくせに」

 快感に震え続ける俺を抱きしめたまま、ペニスを再び膣内で弄ぶ彼女。

 それから再び射精してしまうまでそれほど時間はかからなかった。


 約十分後。

「はぁ、これっていいのかなぁ……」

 衣類を整えて俺たちは向かい合っていた。

「問題ないわよ仕事だし」

 悪びれもせずに彼女は言う。そのとおりなのだ。俺もわかってはいたけれど、心の何処かに引っかかっているものはある。

 うちの会社は映像部門が強い。しかも成人向けの映像制作の大手なのだ。
 彼女は女優でもあり社員。普段は真面目で有能な先輩。
 社内でも平均以上の美形でもある彼女は今まで成人向け作品への出演を頑なに拒んでいたのだが、ある条件付きでそのオファーを飲む。

 条件は俺を専属男優とすることだった。
 嬉しかった。
 ずっと密かに想いを寄せていた相手が俺を指名してくれるなんて。
 そして俺はそんな彼女のことがますます好きになってしまった。

「社内全部に隠しカメラがあるなんて便利よね~」

 もちろんこの行為も録画されているのだ。
 後日映像化される可能性も高い。

 それでも俺は彼女に問いかけてしまうのだ。

「俺たちのプライバシーは!?」

 すると彼女は人差し指を口元に当ててから、そっと微笑んだ。

「それは退勤してから……ねっ?」

 真面目なふりをした小悪魔の笑顔が魅力的でたまらない。

 仕事を終え、自宅に戻った俺たちは今夜も熱く燃え上がってしまうのだった。




(了)






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