『これは正式な手続きを踏んでいるのだから浮気でも背徳感ありの三文字でもない件』





 ここ一週間は梅雨が明けてスッキリした天気が続いていた。

 猛暑とか酷暑だとかそんなニュースばかりのある日、スマホにメッセージが届く。
 俺の恋人・サオリからだった。
 これから会いたいという内容。にわかに心が舞い上がる。

(そろそろ付き合い始めて一ヶ月くらい……急に寂しくなったのかな?)

 サオリは学年でも人気の美少女で黒髪が美しい自慢のカノジョだ。

 勇気を振り絞って俺から告白。
 そして交際がスタート、デートも何度かして仲良くなれたと思う。

「なんにせよ恋人と朝から会えるなんてラッキーだな! 準備しよっと」

 約一時間後、俺はまだ涼しさが残る朝の公園で彼女と会っていた。
 予想していなかった展開になるとは知らずに。

「サ、サオリ、どうして?」
「理由は聞かないほうがいいと思うけど」

 突然の別れ話だった。俺は訳も分からず固まり続ける。
 気づかないうちになにか悪いことをしたのか。
 考えてもわからない。浮気もしてない。
 俺たちはうまくいってる、これからもうまくいくと思っていたのに。

「こんな用事で呼び出してごめんね。じゃあ」

 背を向けた彼女がポニーテールを揺らしながら遠ざかってゆく。
 俺は呆然と美しい黒髪を見つめるしかなかった。



 それから一時間ほどして、トボトボと俺は自宅に戻り、何も考えられない心境で部活の準備をした。ショックを隠しきれないまま体育館へ向かい顧問と仲間に挨拶をして準備運動をする。その間もずっと頭の中は別れた彼女のことばかりで。

「嘘だろ、ありえん……」

 いつもと違ってシュートが全然入らない。楽しいはずのバスケットボールがひどく虚しい。周りからもなにか言われてるけど耳に入ってこない。

 気持ちの整理がつかないままひたすら同じ動作を繰り返す。
 腕が上がらなくなるまでシュート練習をし続ける。

 不意にボールを持ち上げた腕を掴まれた。

「ちょっとセンパイ! 休憩時間ですって何度言えば」

 いつのまにかマネージャーである小久間アイ【こくま あい】が隣りにいた。
 眉根を潜めた難しい表情で俺を睨んでいる。

「あ、ああ、すまん……」

「何かあったんです?」

 気の抜けた俺の声に表情を緩める小久間。
 心配そうにこちらを見てるマネージャーの髪が風に揺れる。

 俺はぼんやりと今朝のことを思い出していた。

(あ、サオリと同じ髪型……ポニテだ)

 髪の色こそ違うが元カノと同じヘアスタイル。身長はサオリのほうが少し高いけど。

「センパイこっち!」

 ぐいっと手を引っ張られ、俺はマネージャーに連れられて体育館の外へ出た。

「話くらい聞きますよ。あのままじゃ絶対に怪我しちゃうから、はい、これ!」

 スポーツドリンクの入ったペットボトルを差し出してくるマネージャー。
 気が強そうな大きな瞳に見つめられ、俺はコンクリートの階段に座り込みながらポツリポツリと今朝の出来事を話し始めた。

「納得です。そんなことがあったら集中できないのも仕方ないですね」

 真面目な顔で時々相槌を打ってくれる。

 焼けたコンクリートの暑さを感じながらマネージャーに悩みを打ち明けていくうちに少しずつ気持ちがほぐれていった。

「……話は以上だ」

「おつかれさまでした」

「俺のどこが悪かったっていうんだああああぁぁ!!」

「まあ、色々あるんじゃないですかね」

 それまでずっと黙っていた小久間が呆れたように言った。

「こんな時くらい少しは慰めろ」

 拗ねたように彼女を見上げると、目が合った。

「たしかにそれもありですね……」

 一人でウンウンと頷きながら小久間はある提案をしてきた。

 まずは気を取り直して練習に戻ること。

 今日は無理をしないこと。

 練習が終わったら小久間からのメッセージに従うこと、などなど。

 余計なことを考えたくない俺はマネージャーの指示に従い、ストレッチと基礎練習を中心に残り時間を過ごした。当然部活中の事故もなし。

 そして予告通り(?)小久間から練習後にメッセージが届いた。

『いったんおうちに帰って小綺麗な格好をして駅前まで来てください!』

 有無を言わさぬ命令形に苦笑してしまう。
 スタンプまで微妙に怒ってるポニテなのがおかしい。

 ともかくメンタルがボロボロになった俺のために何か考えてくれるらしい。

 帰宅後、シャワーを浴びた俺は駅前へ向かうことにした。



 待ち合わせは駅ビルの一階。
 小久間は先に到着しており、俺の姿を見て近づいてきた。

「じゃあセンパイのどこが悪かったのか検証してみましょう!」

 元気いっぱいに彼女が言う。薄手の長袖パーカーにミニスカート、それにサンダルというカジュアルさがとても良く似合っている。付き合っていたサオリみたいな清楚さは感じないが清潔で彼女らしいスタイル。何よりいつも通りの様子に安心感を覚える。

「小久間、ずいぶんテンションたけーな」
「あはっ、わかりますぅ~?」

 ムカつくことを言われてるはずなのに憎めないやつ。そんなマネージャーに促され、俺はかつて元カノと歩いたコースをなぞるように歩くことにした。

 駅前デート。実際に店に入ることはせずに行き先を告げながら小久間を連れ回す。だいたい30分ほど歩いてから二人でコーヒーショップに入った。もちろん割り勘で。

「なるほど、わかりました」

 アイスコーヒーをひと口飲んでから小久間が口を開いた。

「ホントかっ!」






「まずセンパイには買い物のセンスがないですね。壊滅的です。ご愁傷さま」

「え」

「食事も男メシばかりだし、付き合ってる相手のことを部活のメンバーかなんかと勘違いしてません? そりゃサオリ先輩もキレますわ」

 いや、男メシって、そんなことは決して……あるか。あったな。

「それに歩いてる時も気の利いた会話がないですし、自分のことばかり考えてるコミュ障みたいで、はっきりいってセンパイつまんないです」

 はっきり言いすぎだよ!? こいつ、言い方ってものがあるだろうに!
 でもたしかに思い当たるフシが……あるな。ありますね。

「あとは」

「まだあるのかよ!!」

「なんで駅前デートにしたんです? 自分からハードル上げてるくせに無駄に歩き回ってるだけで何をしたいかわからないし、私が恋人だったらぶっちゃけ不安になります。全体的にちょっと計画性がないというかデザインが甘いとい、あ、あれ? センパイどうしたんですか」

 小久間の言葉を聞いてるうちに涙が出そうになっていた。てゆーか出てる。

 俺はテーブルに肘をつき、床の模様を見ながらつぶやく。

「もう、いい、俺、死んでくる……この命でサオリに詫びるしかない」

 年下のマネージャーの言う通りなのだ。
 彼氏として失格。俺はつまらん男だ。
 自分では最善を尽くしたつもりが単なる独りよがり。
 情けなくて涙が溢れ出す。

「でもセンパイばかりが悪いってわけでもないと思います」

 チューっとアイスコーヒーを飲みながら小久間は言う。

「は?」

 冷酷な分析でさんざん滅多打ちにされたあとになって慰められても手遅れだと思いつつ顔をあげると、ニンマリ笑う小久間と目が合った。

「だって相手はあのサオリ先輩でしょ? きれいですもんねー。
 女子の間でも有名ですから。きっとこの一ヶ月はセンパイを試していたんですよ。
 だからこんなふうに指摘してくれなかったんじゃないかな」

(そうか……たしかにそうかもしれない!)

 恋人としてのお試し期間。なかなか鋭いじゃないかマネージャー。
 普段から気の利くやつだと思っていたけど恋愛相談までこなすとは。

「だからといって、それでいきなりズバッとお別れとか。センパイかわいそ……」

「ぐぬううっ!」

 突然、哀れみたっぷりにこちらを見つめてくる小久間。

「や、やめるんだ、俺はもう限界なんだ。これ以上追い詰めるんじゃない……」

「いいえ、やめませーん! これから最後のチェック項目に移りまーす」

 一気に残りのコーヒーを飲み干して立ち上がるマネージャー。
 こちらはまだ半分以上残っているのにお構い無しで腕を引っ張られる。

 周りの客に見られながら俺たちは店をあとにした。




 小久間と二人で2つ隣の駅へ向かい、そのまま下車。
 そこは待ち合わせした駅前よりも賑やかな繁華街。

「おいっ」

「どこにしようかなー」

「おい! お、おま、ここは、さすがに」

 ずんずん歩く先に見えるはきらびやかな建物。
 ここはいわゆるラブホ街。

「単なるチェックです。恋愛感情とかなければ、ただの娯楽施設です!」

(うは、言いきりやがったぞ、こいつ……)

 昼間からこんなところへ来ること自体問題だけど、実は少し興味があったのも事実。

「まあいいか……」

 今さら後に引けない気持ちもあって小久間のあとについていく。
 やがて恥ずかしさも収まってきた頃、俺たちは足を止めた。

「センパイ、ここどうですか!」

「……わかんねえよ」

「じゃあ決まりー」

 あっさり決定。一応値段を確認。
 サービスタイムなので8時間3980円らしい。

 これなら払えない金額ではないなー(もちろん割り勘で)なんてことを考えていたら、小久間が不意に尋ねてきた。

「あ、そうだ! センパイってもしかして、あたしのことが好きだったり?」

 顔を覗き込んでニヤニヤしてる小久間に向かって俺は嘆息する。

「ナイナイ! ないわー。恥じらいの欠けてる女を意識するとかありえんだろに」

「むううー! いいたい放題ですねー。ま、いっか」

「いいのかよ!?」

「だってそれなら安心してホテルに入れちゃうわけでしょ」

「たしかにそうだけどさぁ……」

 さすがに言い過ぎたかと反省する。
 小久間は拳を握って俺の胸にトンッと押し当ててきた。

「じゃあ勝負しましょ。今日中に好きって言ったらセンパイの負けってことで」

「なっ! ぜ、ぜってー負けねえからな!」

 傷心中の俺がこいつを好きになるはずがないだろうに。

 カラオケルームにでも入るつもりで部屋を選びエレベーターに乗る。

 ひんやりと湿った空気が俺たちの頬を撫でた。




「わぁーっ!」

 感嘆の声を上げる小久間。
 ドアを開けるとそこは別世界だった。明るいイメージ。そして清潔。

「広いんだな……外より断然涼しいし」

「そりゃそうですよー。これから熱くなるんですからお部屋は冷えてて当然」

「あ、熱くなるって?」

 ボムッと大きめのベッドに腰を下ろして微笑む彼女。
 なんだか随分余裕だな。
 こっちは急にドキドキしてきたっていうのに。

「もちろんやるんですよ。やるべきことを! あたしとセンパイでラブラブセッ……いいえ、モテ男子適性検査です?」

「なんか最初と趣旨が違うような……」

「とにかく脱いでください! センパイからどうぞっ」

 まるで部活でジャージを着替える時みたいなノリで小久間は言う。

 ニヤニヤしながらじっと見つめてくる。
 いたずらな視線に逆らえない。


「あんまり見るなよ!」

 恥ずかしいので背中を向けて衣類を脱ぐ。
 やたらジーンズが引っかかるので焦る。

 トランクス以外を全て脱ぎ去り小久間に向き直る。

「こ、これでいいか」

「ちゃんと鍛え込んでますね~」

 遠慮なしにジロジロ見てきやがる……お前も脱げよといいかけた時だった。





「まだ一枚残ってるじゃないですか」

「まじかっ! はずかしいんだぞ!」

「ふふふ、ここまで来て何言ってるんですか。それを脱いでからあたしの服も脱がせてくださいよ」

「う……」

 両手を大きく広げて小久間が誘ってくる。こいつに恥じらいというものはないのか。

「カノジョさんだと思って! さあっ!」

「そんなこと言われても……」

「そうだ、センパイ。念のため聞きますけど、あたしのこと好きでしたっけ」

「いや……」

「ですよねー! 本気で惚れられちゃったかと思って余計な心配しちゃいましたよー」

「……」

「べつにそれでもいいですけどね!」

 余裕たっぷりにニヤけている小久間の顔を見て俺の中で何かが切れた。

(お望み通りにしてやるさ!)

 サクッとトランクスを脱いで全裸になる。

「わ~ぉ!」

 視線を落とした小久間を気にせず、彼女の肩に手をかけた。
 意外にほっそりしてて、しっかりとオンナを感じさせる感触。

 薄手のパーカーを脱がせると中はノースリーブの黒いニット……てゆーか、ほとんど下着じゃないのかこれ!?

「き、緊張しますね……」

「お前が言うな!」

「もう、ムードを大切にしてくださいよ。背中のリボンを外してからホックもお願いしますね?」

 小久間がゆっくりと両手を上げ、頭の後ろで組み始める。自然と胸が突き出されたような格好になり、俺は彼女の背中に手を回す。柔らかい生地が指先に触れた。

(やばっ、いい匂いがするぞ……)

 相手は部活のマネージャー。普段は全く意識しない相手。それなのに俺は確実に興奮を覚えている。大切にしなきゃいけないという思いが胸に広がってきた。

 なんとか小久間の上半身を完全に脱衣させた時、俺の目は柔らかそうに揺れる物体に釘付けになった。

「なにか感想は?」

「でかい」

「クスッ、じつはちょっと自信あります」





 体を捻ってわざと胸を揺らす小久間。真っ白で柔らかな双丘。桃色の乳首。

 いやまじで、でかすぎだろ! こいつ着痩せするタイプだったか。

 部活中は気づかなかったけどスタイル抜群ってやつでは?


「きれいだ」

 思わず口に出た言葉に小久間が微笑む。

「んっ、いまのはいいですね~。もう一度」

 そのリクエストに応える。

 お世辞ではなく小久間の身体は文句なしに美しかった。

 健康的な肌の色、そして手のひらから零れそうなくらい大きなバスト。

 足首も元運動部らしく引き締まっていて、筋肉質の美脚。腰のくびれもいい。

「ふふふ、ちょっとキュンキュンしちゃいました。
 センパイは案外褒め上手ですね。プラス7てん!」

「ひ、低っ!」

「まあ、そんなもんですよ。なんたってセンパイは童貞クンですし」

「っ! なぜわかる」

「そんなの最初からバレバレですって」

 ふふん、と鼻を鳴らして俺を見上げる小久間の目が妖しく光る。

「センパ~イ、気分よさそうにしてるところ申し訳ないですけどぉ、あたしのこと好きになったりしちゃいました?」





「だ、誰が!」

「ほんとにぃ~?」

 いや、これは、けっこうヤバいかも……だがなんとか言葉をまとめて言い返す。

「スタイルはいいと思うけど、お前の性格を思うと……」

「やったぁ! 少なくとも身体は好きなんですね?」

 しまった、と思ったときにはもう遅かった。
 得意げに胸を反らせながら彼女が笑う。

「もうひと押し、かな?」

 思わず誘惑に負けそうになる自分を諌め、気持ちを切り替えて細い両肩を掴む。
 そのままベッドに押し倒し、覆いかぶさるように四つん這いになる。

「さあ、ここからどうします?」

「触っていいか」

「もちろん」

 彼女の目は全然ビビってない。もしかしてラブホ慣れしてるのか?


「お前、こういうことをいつも」

「ブブー! 女の子にそういうこと聞いちゃ駄目です。マイナス1点」

「そっか。そうだよな……」

 ちょっと落ち込む。たしかに無粋。

「ちなみに、あたしも初めてです」

「え」

「処女」

「まじか」

「もっと驚いていいですよ?」

 自分を抱きしめるようにして恥じらう小久間。
 正直、ちょっとドキっとした。素直に可愛らしい表情だと思ってしまう。

「ふへへへっ」

「はいそこ! あからさまに嬉しそうにしない!!」

「すまん」

 変な声を出した自分を戒める。ムードも何もあったもんじゃないな。


「というわけで、優しくしてくださいね……」

「お、おうっ」

 再び気を取り直して片手でおっぱいを鷲掴みにする。

(や、やわらけぇ~~~!)

 指先が食い込む、といっても痛みは感じてないはず。できるだけ優しく指を這わせながらどこが感じるのか探りを入れていく。

「やんっ、くすぐったいですよ。センパイ」

 くねくねと腰を揺らながら彼女は身悶えする。くすぐったいというのだから気持ちいい訳ではないのだろう。このあたりの経験が全く足りてないのが童貞のつらいところ。

(おかしな気持ちになってきた……)

 相手はマネージャー。これは彼女の言う最終チェックに過ぎないわけで、でも何をチェックするんだろう? 大事なところを聞いてないことに気づいたけどもう遅い。

 柔らかくて大きなおっぱいを触っているうちにすっかり俺は興奮に当てられてしまったのだから。

「もっと強く触って? 乱暴にしてもいいんですよ」

 そんな事ができるはずないじゃないか。少なくとも俺は彼女を傷つけたくないと思い始めている。気づけば両手で一心不乱に美巨乳を弄り回し、乳首や下乳をねちっこく触り続けていた。

「センパイ、興奮し過ぎでは?」

「はぁっ、はぁ、だ、だって! ……あ」

 言い訳しようとする俺の顔を抱き込むように、小久間の腕が絡みついてきたことに気づけなかった。

「えいっ!」

「っ!?」

 ギュッと抱きしめられ、そのままおっぱいにダイブさせられた。顔いっぱいに広がる柔らかさに俺は戸惑い、恍惚とした気持ちにさせられてしまう。





「センパイセンパイ、そろそろ良いんじゃないですか?」

「んうっ、な、何がだッ」

 唐突に尋ねられ、ますます俺は困惑する。この柔らかさ、やばすぎる……じっとしたまま味わい続けたくなるほど気持ちいいのだ。

「もうあたしにメロメロですよねぇ~」

「っ!!」

「今ならお買い得だと思いますよ? たった一言、素敵な言葉をかけられたらセンパイに落ちちゃうかも」

 俺をギュッと抱いたまま耳元で囁かれる。
 彼女の甘ったるい声色に頭がどうにかなりそうだった。

(こいつの身体、気持ち良すぎる……)

 何も言い返せなくなった俺の耳をパクンとくわえる小久間。レロレロと舐め回してくる舌使いがエロすぎて、俺は自分から彼女の身体にすがりついてしまう。

「はぁんっ、触り方がエッチで情熱的です……でもセンパイのほうが先に落ちちゃうと思いますけどねっ!」

 そんな声を聞かされながら息を吸い込むと、彼女の甘酸っぱい体臭をさらに強く感じてしまう。興奮が収まらない。それなのに小久間は次の一手を打ってくる。

サワサワサワサワ……

(なっ!)

 ビクンと俺の身体が跳ね上がる。
 胸の谷間に埋もれたまま動けない俺の顔はそのままに、小久間が指先すべてを使って俺の背中や腰、お尻などを撫で回してきたのだ。

「これ、気持ちいいです? 聞くまでもないか」

 妖しげな指使いに悶える俺。細い指先による愛撫が容易に俺から性感を引き出し、おっぱいを感じながらますます彼女に夢中にさせられてしまう。

 やがて覆いかぶさった俺の身体をよいしょと押しのけ、小久間は自分と俺との位置を入れ替えてきた。大の字になってベッドに手足を投げ出す俺を見つめながら、彼女がゆっくりと指先をペニスに絡めていく。

(あああああああああーーーーーーっ!!)

 女の子の手で握られるのがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
 自分でオナニーするのとは比較にならない絶妙な刺激。しかも予測できない不規則さがたまらなくて自分から腰を突き上げてしまいそうになる。

 ゆっくりと上下する指先の動きが肉棒から我慢汁を吐き出ささせ、さらに滑りを帯びた淫らな指使いが俺の興奮を加速させてゆく。

「気持ちいい? センパイ」

「まって、やばい、これやばいからあああ!」

「う~ん? どうやばいのか教えて?」

 上になった小久間にギュッと抱きつきながら、俺は気持ち良すぎる現実を拒むように目をつぶってしまう。

「おちんちん大きくて硬くて、すごく立派ですよ」




 小さくてかわいらしい声が右耳に注ぎ込まれ、思わず目を開けると美しい彼女の顔が目の前にあった。普段の気の強さは息を潜め自愛に満ちた表情で俺を見つめている。

「どうしたんですかぁ? センパイ」

「こ、小久間ぁ……!」

 見惚れてしまう。俺だけを見つめてくれる存在に。

「ねえセンパイ、ここからはアイって呼んで」

 小さく首を傾げながらウィンク。それがたまらなく可愛らしい。

「……いいのか?」

「いいよ。だから、名前で呼んで。気持ちを込めて」

 微笑みながらもキュッと唇を噛みしめる彼女を見つめ、リクエストに応える。

 するとパァァーっと彼女の顔が笑顔の花が咲いた。

(名前呼びって、特別だよな……これじゃあまるで恋人同士だ)

 もう駄目だ。俺はこいつを好きになる。
 これだから童貞は、なんて揶揄されても構わない。

「アイ、たのむ……」

 俺の言葉を理解した彼女の手が強めにペニスを握り始める。

「ふふっ、いい子……ほら、おいで?」

 いつのまにかショーツを脱ぎ去っていたアイが俺の身体をまたぐ。
 先ほどの意趣返しのように覆いかぶさり、膝を立てて腰の位置を調整していた。

「なにを……」

「センパイ自身を私の入り口で擦ってあげます」

 ニヤリと笑いながら、アイはゆっくりと腰を下ろして膣口にピトッとペニスの先端をあてがう。

「あっ!」

「これだけでも気持ちいいです?」

 そのままクニュクニュと擦られる。柔らかすぎる肉襞が、まだ挿入していない状態の亀頭をエロティックに舐め回し始めた。

「んっ、これ、いいかも……」

 アイの顔もわずかに紅潮し始めているが俺はそれどころではない。

(きもちいっ、きもちいいいいいっ!)

 ヌルヌルした粘液同士が混じり合い、卑猥な音を立てながらお互いの性感を高めあっているのだ。手コキよりも優しく抗えない快感が絶え間なく襲いかかってくる。

「なんかさっきより硬いです……センパイ」

 ヌチュヌチュと肉棒をこね回し、少しずつ膣口から深い場所へと導かれていく快感。

 特に腰を前後にゆらゆらと振られると全然我慢できない。

「ま、まって! それ、だめだっ」

「もしかして刺激強すぎです? うふふ、アイのおまんこ見て。センパイ」

 言葉に促され、視線を落とせばアイの秘所……綺麗に剃毛されたパイパンのあそこが執拗にペニスを舐め回していた。

「ああああああああーーーーっ!」

 その光景にますます興奮させられた俺は、ついに自分から腰を突き上げてしまう。

 だが彼女はその動きに合わせてわずかに腰を浮かせていた。

「このまま出しちゃえ♪」

 そしてまたゆらゆらと前後に腰を振られ、

「うあああああっ!」

「んふふ、チュッ♪」

 トドメとばかりに一瞬だけ膣内で亀頭にかぶりついてきた!

「ぐああああああああっ、でるううううううううううう!!」

 ドピュウウウウウウウウウウウウウウウウウーーーーーッ!!

 チュポ、っと膣内から先端が解放された瞬間に俺は果てた。

 真っ白な粘液が勢いよく溢れ、アイの膣口を強く打ち付ける。

「ちょっ、あ、熱っ! センパイ、感度良すぎでは?」

 焦らされて煮えたぎったマグマのような精液を受け、彼女も軽くイったようだ。

「これは、おまえの、せいだぞ……」

「あぁん、きもちい……クリトリスにぶっかけるなんてエッチすぎです!」

 そのまま彼女は股間へ指先を伸ばし、太ももの内側についたものをすくってペロッと舐め上げた。
 吹き出した精液に舌を伸ばしすアイを見てドキッとしてしまう。


「クスッ、そんなに興奮しちゃった?」

「っ!!」

 言われるまでもなかった。
 その証拠にペニスは萎えずそのままの硬さを保っている。

 普段は色気なんて全く感じない相手がここまで豹変するとは。

 ドキドキしっぱなしの俺を満足そうな目で眺めるアイ。

 その手のひらでフワリと肉棒を掴む。
 再び狙いを定めたように膣口の前へと導かれ、俺は息を呑む。

「さ、ここからが本番ですよ。ちゃんと膣内にお招きしてあげますから」

 トロリと溶け出しそうな目で俺を見据え、先端を膣口にあてがうアイ。

クチュリ……

 わずか数センチだけ亀頭を咥えた状態で彼女はペニスを手離し、両手を俺の膝においてから見せつけるように腰を落とし始める!

ずっ、ぷううううっ!





「うああっ、ああ、あついいいいいいいいいいいいいい!!」

 ドクンドクンと脈打つように熱を帯びた膣内へペニスが落とされてゆく。

 入り口より先がキュウキュウに締め付けておりそれらをかき分けるようにして俺たちは深く繋がってしまう。

「はい、った……あまり痛くなかったですね?」

 キョトンとした表情でつなぎ目を見る彼女。

(うあ、あああぁぁ……なんで平気なんだよっ!)

 俺の方はアイに包み込まれた熱に浮かされたように腰が動かせない。

 様々な思いが交錯している。
 童貞喪失、しかも相手は処女。
 それなのに一切リードすることもできずに快感に揺蕩うばかり。

 だがそれもつかの間の逡巡だった。

「童貞卒業おめでとうございますセンパイ」

きゅうう、ううううぅぅぅっ

「ああああああぁぁっ……」

 アイに締め付けられた肉棒が快感で溶かされ、一つになっていくような感覚。こみ上げる感情は元カノに対して感じていたものより濃厚で失いたくないものだった。

「うっ、ぁあんっ、すご……も、もうっ! 硬くしすぎですよぉ!」

「ごめん、でも俺にはどうすることも」

「いいんですよセンパイ。いっぱい愛してあげる♪」

 そう言いながらアイがゆっくりと腰を揺らし始めた。
 さっきまで膣口でペニスを舐めあげていたのと同じ動きで。

ヌチュッ、グチュッ、クチュッ、ヌチュッ……

「ふあっ、あああ、それはーーーーー!」

「コリコリおちんちんがおねだりしてますねぇ~」

 具合を確かめながら彼女の腰の動きが加速してゆく。処女喪失、破瓜の痛みなどまるで関係ないみたいに、ねっとりと船を漕ぐような腰使いで。

「いろんなとこにあたって、きもちいいです……♪」

「ひあ、うあ、まって! あああっ、締めないで!」

「それ却下で~す。えいっ」

 すでに膣内の動かし方を把握したのか、彼女の言葉と同時に肉棒が締め上げられて密着度が増してゆく。根本と先端が同時に刺激されると俺は我慢できずに情けなく喘いでしまうのだ。

「あはっ、きもちよさそ……ねえセンパイ? 今はどんな気持ちですかぁ」

「お前の中がすごく、うねうねして、エッチで、気持ちよくてえええ!!」

「じゃあもっと気持ちよくなりましょ?」

 ベッドの端を握って耐えるだけの俺に向かって、アイが身体を倒して密着してきた。

(アイのおっぱいが……)

 柔らかすぎるバストが惜しげなく潰れて形を変える。
 目の前に彼女の顔がある。見惚れてしまうくらいきれいな年下の後輩。

「センパイ」

「あ……アイ……」

 名を呼べばその口元が幸せそうに歪む。

「こっちを見て?」

チュッ

 そっと目を閉じた瞬間、静かに唇同士が重なった。

 数秒間そのまま。

 ゆっくり目を開くと、柔らかく微笑む彼女が居た。


「好きですよ。センパイ。ずっと狙ってました」

「嘘、だろ……」

「信じてください。そして感じて」

 再び重なり合う唇。
 アイはわずかに震えていた。

 そしてまた見つめ合う。

「センパイだってあたしのこと嫌いじゃないですよね」

「そりゃそうだけど、何もこんな時に」

「こんな時だから言えるんです! 騙し討ちみたいにホテルに連れ込んだのはお詫びしますけど、この気持ちは本物ですよ?」

 ぷくっと頬を膨らませて拗ねたような顔をするアイ。

 その横顔を手のひらで撫でてやると心地よさそうに目を細めてくれた。


「フリーになったセンパイにアプローチしたんだから悪くないですよね? あたし」

「ああ、悪くない……な」

 確かにこれは浮気でもない。
 寝取られたわけでも寝取ったわけでもない。健全だ。

「褒めてください。長い間チャンスを待っていたんですよ。こんなふうにセンパイにかわいがってほしくて、健気にずっと」

 アイの言うことが本当なら俺はとんだ大馬鹿者だろう。

 全然気づけなかった。気づこうともしなかった。
 彼女がコーヒーショップで言ったように自分のことしか考えられなかったのだろう。

「俺は――、」

「センパイ、素直になって……あたしのことが嫌いならそう言ってください」

 至近距離で見つめられ、息が詰まる。

 アイの性格ならここで嫌いと言ったら素直に身を引くだろう。

 そして明日からは今まで通りの毎日を過ごすだろう。


「お前ずるいぞ、こんなの……」

「ずるいとかそういうのじゃなくて、ちゃんと言ってください。今度はセンパイから」

「そんなの……好きにきまってるだろっ!!」

 告白と同時に俺はアイの体を抱きしめた。
 それこそ、壊れるほど強く。

「あんっ、これ、すごい感じちゃう……もっと強くして! センパイッ」

きゅううううっ!

 突然肉棒が強烈に締め付けられた。
 挿入したままだということを完全に忘れていた。

「ば、馬鹿っ! 膣内を締め付けるな、出るッ、出ちまう~~~~!」

「センパイ本当は嬉しいくせに! えいっ、えいっ♪」

きゅっ、きゅっ、きゅうううう!

「あ、ああっ、アイの膣内がああ! 気持ち良すぎるうううぅぅぅぅ!!」

 俺の行為に反応したせいなのか、アイの気持ちが高まったせいなのかはわからない。

 だがすでに大量の精液を放出したはずのペニスが再び勢いをまして彼女の中で膨れ上がっていくのを感じる。同時にそれは俺自身にさらなる快感を呼び起こすことになり、

ドピュドピュドピュウウウウウウウウウ!!

 今度こそ搾り尽くされた俺は彼女の目の前でぐったりと身を投げ出してしまった。

「うふふふふ、こんなにいっぱい出しちゃって。赤ちゃんがデキたらどうしてくれるんです?」

「ご、ごめんな……アイ……」

「あ~ん、そんな顔しないでセンパイ♪」

 深く繋がったままアイが頬ずりしてくる。


「今日からあたしがセンパイのカノジョさんですよ。もう学校でも遠慮なしです!」

「こ、こわいな……でも頑張るよ」

「あたしの初めての彼氏さん、いっぱい愛してあげる」

「お手柔らかに」

「ダメです! おちんちんも心もあたしの虜にしちゃいますからね」

 アイは恋愛対象を束縛するタイプなのかもしれない。

 けれど俺はそれで構わない。お互い様だ。

 彼女に頼られる心地よさに身を任せながら、俺は新たに手に入れた幸せを噛み締めるのだった。





『これは正式な手続きを踏んでいるのだから浮気でも背徳感ありの三文字でもない件』(了)










※このサイトに登場するキャラクター、設定等は全て架空の存在です
【無断転載禁止】

Copyright(C) 2007 欲望の塔 All Rights Reserved.