『バトルファックコロシアム ~アンフェアカーニバル~』



【登場人物紹介】

主人公 ユウゴ 身長167センチ 60キロ
学園時代はアマチュアBF選手権全国大会出場経験有り。
約1年前にプロ戦にデビューした。勝率は5割。
前回のバトルでは相手を侮り不覚を取ってしまった。
その屈辱を晴らすためにリベンジ戦に挑む。


対戦相手 リオン 身長151センチ 40キロ
2年前にプロデビューしてから着実に勝ちを拾う。
圧倒的不利な評判を覆すことが多く、逆境に強い。
見た目は清楚な少女だが自ら淫乱と認めており将来有望。





 ここは関東地方某所にある地下闘技場。
 知る人ぞ知るバトルファックコロシアムと呼ばれる聖地である。

 表向きは県営の複合スポーツ施設だが、平日に駐車場が満車になる時がある。
 時々入場規制が敷かれる理由は地元住民にも詳しく知られていない。
 平凡な施設の実態は、年に何度か開催される淫らな格闘技の会場なのだ。

 地方会場なので規模は小さめだが、なぜか好カードが組まれることが多かった。
 特に今日は「アンフェアカーニバル」と呼ばれる年に一度の祭典。
 周辺の宿泊施設や飲食店もこの時期はとても潤う。

 バトルファック自体は男女が性技を競い合う公式なスポーツだが、ここで行われる試合は賭博の対象になることもある。いわゆる闇の闘技場。
 裏で大きな力が働いているらしく警察筋からも見逃されている。
 噂によると収益の一部が自治体に流れているとか。

 この場所に関係する物騒な話はいったん置いて、本日は特別戦である。
 普段なら組まれることのない「歪な試合」が盛りだくさんで、開場前から多くの人々で賑わっていた。

 そして今日の対戦カードは――。




 試合開始直前。リング上で一組の男女が向かい合っていた。

 赤コーナーの女子選手は余裕たっぷりに対角線上の相手を見つめていた。
 対する青コーナーにいる男子は尋常ならざる闘志をみなぎらせている。

 この二人が対戦するのは二度目。
 しかもわずか一週間のインターバルしか用意されていなかった。

「おいおいおい、ずいぶん身長差があるな!」
「これで負けたらかなり恥ずかしいんじゃねえか? ユーゴ選手!」
「キャー! リオンちゃん今日も可愛い! がんばってー!」

 早くも観客から歓声が上がっている。内容的には女子の応援が多めだ。
 それもそのはず、二人の身長差は20センチ……頭一つ違うのだから。
 さらに勝ち負けの数は互角。
 事情を知らない観客からしてみれば男子が有利に見える。
 お互いのリーチがぜんぜん違う。
 同時に手を伸ばせば確実に男子が先に相手をつかめる。

 会場のアナウンスが二人の名を呼び、レフェリーが注意事項を説明し始める。
 1ラウンドで3度の絶頂もしくはギブアップによる決着というルールだ。

「おにいさんすっかり悪役ですね」
「ふん、まったく気にならないよ」

 レフェリーを挟んでの会話。

「そうですよね。だって……」
「あ?」
「私のほうが強いんですもの♪」
「ッ!!」

 可愛らしく笑いかける女子選手・リオンの煽りに一瞬顔色を変えたものの、真向から視線を跳ね返すユーゴ。彼は先週彼女に敗北している。

 しっとりと濡れた茶色がかった髪を左右にくくり、自分を見上げる相手はまぎれもない美少女だ。肩や袖に白いフリルをあしらった黒いビキニスタイルのコスチュームに身を包んだリオンはあくまでも可憐に、そして挑発的な表情でユーゴを見つめ返す。
 さらにウィンクしながら口元を軽くチュッと鳴らしてみせた。

(本当に俺はこんな小さなやつに負けたのか……)

 脳裏に蘇った敗北シーンをユーゴはすぐに振り払う。
 あの可愛らしい唇にペニスを挟まれ、しごかれ、吸い尽くされた。
 リオンはとても素早い動きをする。
 ユーゴのジャブをかいくぐり、回り込まれて転がされたあとの流れが思い出せない。

「……その顔、一時間以内に泣き顔に変えてやんよ!」

 精一杯の強がりを口にしたあと、彼は自分のコーナーへ戻っていった。


カーン!


 ゴングが鳴った直後、二人はお互いに距離を取ったまま相手を伺う。
 ジリジリと円を描くような足運びで突破口を探り合う。
 にわかに観客が静まり、ちょうど半円を描いた頃にリオンが小さく笑った。

「以前よりも慎重ですね?」
「そりゃどうも」
「でも驚きました。まさか一週間後にリベンジしてくるなんて」
「先週負けたのは偶然だ! 決して俺の実力じゃねえからなっ!」

 その言葉を皮切りに、ユーゴが手を伸ばす。
 力みなく開いた手のひらがボクシングのジャブのように何度もリオンの腕や髪に襲いかかるのだが彼女はそれを紙一重で回避する。
 簡単にファーストヒットを許すつもりはなさそうだ。

「そうですね。おにいさん強いです。スピードもあるし筋力だってすごいです」
「ほざけ!」

 自分を捕まえようと伸びる腕を手のひらで外に押したり、身をかがめたりしながらリオンは彼の動きを観察していた。ユーゴはしっかり対策していたようだ。前回のような隙が今のところ見当たらない。
 全てが彼女にとって少しだけ想定の上を行く速度だったが、

「でも私には勝てません」

 踏み込んでくる彼の足が着地する寸前を狙ってリオンが足払いを仕掛ける。
 転ばせることはできなかったが一歩飛び退いて彼の間合いを外す。

(なぜだ! なぜこうも当たらないッ)

 ユーゴが彼女の動きを研究していたように、リオンも彼の過去の試合を見て研究しているのだ。しかもいくつか小さなクセを見抜いていた。
 彼は格下の相手や小柄な女性に対しては強引に踏み込んでくるタイプだった。そしてスタミナはそれほど豊富でもなく長丁場に弱い。

(そろそろかな……よし、きたっ!)

 何度かその駆け引きを繰り返すと思った通り彼が強引に両手を伸ばしてきた。利き腕が伸び切ったところで手首を取り、自分のほうへ引き込みながらクルリとひねってやると面白いようにユーゴはその場で一回転した。

「がああああっ!?」

 小柄なリオンがユーゴを投げ飛ばす展開に観客がどっと沸く。

「焦りすぎですよ。うふふふふ」
「こ、このッ……!」

 リングの照明に照らされ、リオンに見下され、屈辱を味わったユーゴは即座に立ち上がり強引に距離を潰そうと前に出た。それを彼女は闘牛士のようにかろやかにかわし、勢いを殺すようにすれ違いざまに蹴りや突きを差し込んでゆく。
 じわじわと彼の動きを鈍いものへと変えてゆく。やがて一方的に嫐られたユーゴは倒れはしないもののスタミナをたっぷり奪われ、呼吸を激しく乱していた。

「はぁ、はぁっ、ちょこまかと逃げやがって!」
「逃げちゃ駄目なんですか?」
「正々堂々と戦え!」

 すると肩で息をする彼を睨めつけながらリオンの口元がニマーっと歪んだ。

「いいですよ。正々堂々と、ですね?」

 彼女が構えを解いた。

「なっ!」

 そして無造作に彼に近づいてくる。チャンスだと思ったユーゴは拳を握って柔らかそうな彼女の腹に正拳突きを――、

パァンッ

「ぶごぉっ!」

 拳を突き出す前に彼は強制的に右を向かされていた。

「それっ」

パァンッ、パンッ、パンッ!

「あっ、がっ、まっ!」

 激しく左右に顔面が揺らされた。
 同時に脳が揺らされ、目の前がくらくらしてユーゴは動きがままならなくなる。

「どうされたのですか? 私は目の前におりますが」

パンッ、ゴスッ、パンッ、ガッ! パァンッ!

「やめ、や、めっ、ぶはっ」

 規則的に刻まれる炸裂音と焼けるような頬の痛み、それに首から上を揺らされる不快感が彼の正常な思考を奪い去り、やがて恐怖心を呼び起こす。
 観客は見とれていた。
 対戦相手より背の低い美少女が容赦なく男の頬を打ち据えている光景に。

 リングの中央で膝が崩れかけた彼を固定するように、リオンは左手をユーゴの顎に添えたまま右手でビンタと裏拳を何度も味わわせた。

 強かに打ち据える音が二十を超えた頃、それはやがて終わる。

「手が痛くなっちゃいました。うふっ、ふふふふふ!」
「が……ぁ……」

 目の前にいる美少女にすっかりボロボロにされたユーゴは、先程までの闘志がすっかり削ぎ落とされた瞳で彼女を見つめていた。
 リオンは嗜虐的な目つきでその様子を眺めながら、えいっと可愛らしい掛け声とともに彼をリング中央に投げ捨てる。

「先週はお口でかわいがってあげましたから今日は……」

 手慣れた様子で試合用のトランクスを剥ぎ取り、彼の下半身を露出させるとペニスはなぜかギンギンに勃起していた。

「はしたないですね」
「ち、がう……」
「違う? 何が? 私にお仕置きされて喜んでいるではありませんか」

 そのまま小さな手がペニスをギュッと掴んだ。

「ぐあぁっ!」
「そんなに私の指が好きなのですね。ではこのまま気持ちよくしてあげましょう」

 嘲るように言葉で自分を責めるリオンを見ていると、ユーゴの股間は彼の意に反してますます固くなってしまう。彼の名誉のために言うならばこれは男性として正常な反応であり、性的な興奮のみによる現象ではないのだがリオンはそれを辱める。

「すっかりかわいくなっちゃって……うふ、エッチなおつゆいっぱいです」
「やめろっ、いうなああああ!」
「いいえ、おにいさんは変態です。私にいじめられて興奮しちゃうどうしようもないマゾなんです」

 低く、二人にしか聞こえない音量で言い含めるような彼女の声を聞きながらユーゴの勃起はますます激しくなる。先程までのビンタのせいでまだ思考が定まらず、何故か性感が高まって我慢汁はポタポタとリング上に垂れるほどになっていた。

 リオンは大の字になったまま動けずにいる彼に覆いかぶさる。鍛えられた腹筋の上にぺたんと座り込むと柔らかなお尻の感触でユーゴが小さくうめいた。そして手のひらで彼の上半身を優しくフェザータッチしてやると、うめく声に性的な喘ぎ声が混じり始める。

「ここからは優しくしてあげます」

 両手で彼の顔をそっと挟み込み聖女のように微笑みながらリオンがささやく。

 片方の手は彼の顔に添えたまま、もう片方はゆっくりおろして刺激を待ちわびている肉棒に指先を絡みつかせる。

「確かこのおちんちんが好きだったのは……」

 焼けた鉄の棒みたいに熱くなったペニスをいたわるように、シュルシュルと指をひねりながら丁寧に刺激してゆくと――、

「んひっ!?」

 裏筋の少し上を指が掠めたところでユーゴの身体が大きく跳ね上がった。

「クスッ、当たり……ですね?」

 対戦相手の決定的な弱点を炙り出したリオンはそこを重点的に責め続けた。天使の羽が舞うように、淫魔がいたずらっぽく焦らすように……

「んあっ、あ、あああああーーー!!」

 身悶えする獲物をなだめるように、リオンは首筋に添えた手を動かして彼をくすぐって気を紛らわせる。柔らかな手付きで絆され、性感を支配され、ペニスの弱点をこね回されているユーゴにとってそれは天国のような快感。

「だいじょーぶです。すぐにイかせたりしませんから」

 対戦相手に情けをかけられている屈辱よりも、極上の美少女が自分に微笑みかけている現実のほうがユーゴにとって重要だった。スタミナを奪われたせいで手足もろくに動かすこともできず快感に揺蕩うことしかできない。

 そんな彼の耳元に口を寄せ、リオンは意地悪くささやいた。

 今まで向けていた偽りの愛情、いっさいの感情を殺し、悪女のように。

(このまま負けちゃっていいんですか? リベンジできなくなっちゃいますよ)

 それは生ぬるい泥沼のような怪感とともに天国に召されかけていたユーゴの精神を現実へ引き戻すには十分な一言だった。

「がっ! なんだ、と、くっ、くそおおおおおっ!」

「フフ、この体勢だとおにいさんの悔しそうなお顔が丸見えです」

 満身創痍ながら闘志をわずかに蘇らせたユーゴを見つめ彼女は嗤う。

 抵抗する獲物をさらなる怪感で絡め取るのは愉快だ。

 気力を持ち直したところで今更どうすることもできないのだから。

「悔しいですか?」

「あっ、当たり前だろう!!」

 今にも噛みつきそうな、それでいて泣き出しそうな顔でユーゴが抗う。

 そんな彼の目の前にリオンは人差し指を立ててみせた。

「ではもっと悔しがらせてあげます」

 リオンの細く長い指先がゆっくりと彼の乳首へ向かい、

ツツゥゥゥーー……

「ふあ……あうぅっ!」

「ほら、力が抜けちゃった♪」

 乳首の周りを柔らかくなぞり、翻弄する。

(こいつ、うめぇ……いちいち指先が俺の弱いところばかり触れて)

 ペニスをしごかれるような刺激ではないがもどかしい。ジリジリと胸から全身へ広がってゆく甘美な調べに焦らされ、彼は再び喘がされてしまった。

「おちんちん寂しいですね? 触ってほしかったらおねだりしてください」

「だ、だれが!」

「おにいさんがするんですよ。リオン様、僕のおちんちんに触れてください、と」

ツツゥー……

「あああああっ!」

 天使のように優しく、淫魔のように悪辣な誘惑。いつしか両方の乳首を責められ、ユーゴは彼女の思うままに鳴かされていた。放置されたペニスは熱を持ったままビクビクと刺激を求めるように揺れ、決して触れてもらえずにストレスだけが溜まってゆく。

(こ、こんなの、無理だぁ……!)

 耐えられない。おかしくなる、と彼の心が悲鳴を上げ始めたのを感じたリオンは再び彼に顔を寄せ、とびきり優しく最後の誘惑を口にする。

「……上手におねだりできたら、ご褒美に招待してあげます」

「えっ」

「おにいさんの敏感おちんちんを私の膣内に、ね♪」

 そしてニコッと微笑む。その一言は射精するかしないかの瀬戸際で踏ん張っていた彼にとどめを刺すのに十分すぎた。

「あはっ、一回り大きくなりました。期待しちゃったのかな?」

「あ、あ、ああ……!」

 ユーゴの全身が小刻みに揺れ始める。前回も味わっていないリオンの膣内。それが間違いなく極上の名器であり男を満足させる魅惑の器官であると彼は信じて疑わない。

(だめだ、イく、イっちまう! 想像しただけで、心が壊され……)

 目の前の美少女に抱かれる妄想から抜け出せない。この状況で挿入されたら一方的に連続射精させられてしまうだろう。バトルファックに身を置く者として相手に魅了されるのは以ての外だ。それだけは避けねばならないのに欲望に抗えない!

「おにいさんロリコンなんですね。私に責められて一度負けたから仕方ないとは言え」
「ち、ちがうんだっ、俺は……」
「俺は?」

 勝利を確信したリオンが可愛く首を傾げてみせた。

 同時に彼の乳首周辺を責めていた指で乳首の先端を押し込んでいる。

「はぅんっ!」

「ほらほら、また私が勝っちゃいそうですよ~」

 胸の中心から波紋のように広がる不意打ちの快感に耐えきれず恥ずかしい声が漏れてしまう。自分の口から出た情けない声に気づいた彼は、気力を振り絞って屈辱に耐えようとするのだが、

「抜け出せませんねぇ~。我慢できなくなっちゃった? クスクスッ」

 弱々しく首を左右にふるユーゴを見つめながら彼女は乳首への愛撫を続ける。
 そして……

「もういいじゃないですか。いっぱい我慢できましたよ。えらいえらい」

「う、この、撫でるな、ぁ、くそっ、くそおおぉぉ!」

 リオンに頭をよしよしされながら彼は泣いていた。
 心より先に身体が理解してしまったのだ。

 もう彼女に勝てそうにない、と。

「お、おまえ、なんかに……!」

「うんうん、頑張りましたね。自分より強い女の子にイかされるのがクセになっちゃったんでしょう。だからね……」

 彼女の指先がゆっくりとペニスの方へ伸びてゆく。
 ユーゴはその動きを見つめながら、肉棒がひときわ固くなってゆくことに気づいた。

スゥー……

「やめっ、あ、あああーーー!」

「はい、お・し・ま・い」

ピンッ!

 白い指先が、パンパンに膨れ上がった亀頭を優しく弾いた。

 ただそれだけの刺激だが今の彼には耐えることなどできない。

 軽い痛みはすぐに極上の快感にすり替えられ全身を駆け巡る。


「で、でるっ、出る! イくうううううううううっ!」

「いいですよ。いっぱい出してください……もうひとつ、えいっ♪」

ピシィッ!

 指先がもう一度しなり、気まぐれに放たれた追撃によってペニスが爆ぜた。

ドピュッ、ドピュウウウウウウウウウウウウウッ!!

「あ……あ、ああっ、んああああああああああっ、ウブウウッ!!」

 一瞬で真っ白になり、気が遠くなるような、目が眩む快感。

 彼が天国に導かれるのに合わせてリオンはユーゴの顔を自分の胸元に導いた。
 叫ぶ自由すら与えない。
 抱きしめながら何度も自分の匂いを味わわせる。

「武士の情けというやつです。恥ずかしい声がマイクに拾われなくてよかったですね。そして、おにいさんはもう私と闘うことはないでしょう。ふふふふふ」


 レフェリーは、彼女の腕に抱かれたまま失神したユーゴを見て試合終了を宣言した。

 わずか1ラウンドで勝敗は決した。
 リベンジは果たせずそのまま病院送りとなった彼は長期療養を余儀なくされた。

 身体能力が不公平とみなされていた今回の「アンフェアカーニバル」は、結果的にユーゴに不利が働いたようだ。

 フィジカルよりもメンタル面で、彼は大きなハンデを背負っていた。
 リオンに敗北した自分の幻影を振り払えなかったのだから。



 この試合の後、リオンには『幻惑の闇聖女』という二つ名がついたという。



(了)