『踊り子の悦楽 ~とあるダンススタジオにて~』 



 都内某所にあるバレエスタジオ。
 駅から少し離れた閑静な住宅街の一角、ここに一組の男女がいた。

「高岡先生、今の演技はどうでした?」

「ああ、いつも以上に良かったよ 結愛(ゆあ)」

「やったー!」

 無邪気に喜ぶ女性、というよりは女子の名を黒部結愛(くろべゆあ)と言った。
 白いタイツと薄緑の練習着をまとった姿は妖精のようで、事実彼女にはそれに似たニックネームが付けられていた。

 彼女を褒める男性は高岡と言う。このスタジオの経営者であり講師である。
 彼自身はコンクールへの出場経験、入賞経験は今ひとつだが指導者としてのセンスは確かなものがあり、教えた生徒の中には現在も活躍している者が多かった。

 結愛は成人式を数年後に控えた少女であり、高岡を師事していた。
 半年前から彼にパーソナルコーチングを受けている。
 持ち前のチャーミングな顔立ちだけでなく程よく鍛え上げたボディバランスの良さ、それに豊かな表現力が魅力の若手有望株だ。

「コンクールまであと少しだから頑張ろう。結愛なら気難しい審査員たちを唸らせることができると思うよ」

「はいっ!」

 彼の目から見ても結愛はマナー、礼儀、姿勢、どれをとっても優秀だ。そして今回がデビューとなる比較的大きめのコンクールで入賞を目指していた。彼女の活躍はそのまま高岡の名声に繋がる。必然的に指導にも熱がこもる。

 そしてレッスン終了の時間になり、着替えを終えた彼女が挨拶に来た。

「先生、今日もご指導いただきありがとうございました。お先に失礼します!」

 今日のコーデは白いシャツにデニムのミニスカート、それに白いルーズソックスとスニーカーというラフな格好だが細身の彼女にとても良く似合っていた。
 レッスン時は一つにまとめている長い髪が柔らかそうに揺れると金木犀のような香りが広がる。

「おつかれさま。次は明後日だね」

 高岡は短く告げ、彼女を送り出す。
 結愛はペコリと頭を下げて教室を出ていった。


「ふぅ……」

 彼女の気配が完全に消えたのを確認してから高岡は教室の片隅に向かう。
 こっそり配置していたノートパソコンを回収する。

(今日もうまく撮れているといいのだが)

 期待に胸を躍らせながら映像を確認する。
 画面の中ではストレッチをしたりステップを踏む結愛がいた。

 満足そうにそれらを眺めているうちに、高岡は部屋の片隅に淡い水色の布切れを見つけた。綺麗に折りたたまれたそれは彼女の所有物。
 どうやら薄手のパーカーを忘れていったらしい。

 高岡は何気なくそれを手に取り、画面の中で軽やかに舞う結愛の姿を見ながら鼻先に押し当て、ゆっくり呼吸を繰り返す。
 彼女の髪と同じ香りがするパーカーを片手に自身の欲望を高めてゆく。

 結愛の体は発育途中であり、少女から女性に差し掛かる貴重な時期特有の爽やかな色気を醸し出していた。自然と肉棒をしごく手に力が入る。

 結愛はここ最近、彼にとってのアイドルになっていた。
 男など知らなそうな無垢な笑顔を穢してやりたいと願っていた。

 実際にそれをしたら大変なことになるのでこうして自分を慰めているのだ。
 ゆえにこれは合法、自衛行為なのだという身勝手な解釈……

「ハァハァ、ゆ、ユア……もうイくっ!」

 そして彼の興奮が最高潮に達した時だった。

ガチャリ

「すみませーん、忘れ物しちゃっ……て……ぇ?」

 申し訳無さそうに結愛が入室してきた。
 そして彼女は目撃する。
 高岡が自分の忘れていったパーカーを握りしめていることを。

「こ、これは……違う、たまたまここにあったので」

 突然の来客に驚き、部屋に鍵をかけなかった自分を悔やみながら高岡はしどろもどろになって弁明する。

「ふぅん、先生どういうことですかぁ?」

 じろじろと彼を見つめながら結愛は静かに近づき、くりくりした大きな目を見開いてノートパソコンの画面を覗き込む。そこに数十分前の自分が鮮明に映し出されていたことに衝撃を受けた。

「これ、私……?」

「あ、ああぁぁぁ!」

 高岡は慌てて画面を折りたたむが、少し遅かった。

 結愛の視線がいつになく厳しい。

 どんなに取り繕っても彼が手にしているものが全ての言い訳を台無しにしてしまう。

「うわ……私のことをエッチな目で見ていたんですね」
「ちっ、ちが、そうじゃなくて……」
「正直に言えば見逃してあげますよ。これは約束します」

 人差し指を立ててじっと彼を見つめる結愛。

 高岡は逡巡した後、とうとう観念した。

 現場を押さえられてしまったのだから言い訳すればするほど不信感を持たれてしまう。
 純真な彼女をなんとか言いくるめられないかと考えたが、それも難しそうだ。

 少女に尋ねられるままに自分の罪を告白してゆくしかなかった。

「やだ、へ、へぇ……嘘でしょ、ヘンタイ……」

 途切れ途切れのつぶやきが高岡の胸に突き刺さる。

 一時の気の迷いがとんでもない事態に発展してしまった。

 やがて全てを話し終えた彼を汚物のように眺める結愛。

「教え子の体を見て興奮しちゃうなんておかしいですよ。それじゃあ今まで私は週に何回も先生を気持ちよくしていたことになるじゃないですか」

 怒っている。最もだ。高岡は項垂れて結愛に許しを請う。

 高岡が必死で言い訳を重ねていると、不意に彼女が顔を寄せてきた。

「私の何がそんなに好きなのです?」

 怒りの中に僅かな好奇心をにじませる美少女に声に高岡は顔を上げる。

 結愛の美脚を褒め、顔立ちを褒め、見とれてしまいそうになる姿勢の良さを褒める。

 このまま褒めちぎればなんとかなると思ったがそんな簡単なものではなかった。

「この脚がそんなに好きなんですか。ちょっとよくわかりませんねぇ」

 結愛はそう言いながらデニムの裾をめくってみせる。

 高岡の心臓がドクンと大きく跳ね上がった。

 彼女はミニスカートの下にレギンスを履いており直接ショーツが見えることはないのだが、今の高岡にとって逆にそれがエロすぎた。
 真っ白な太ももを見つめながらペニスがピクッと反応してしまう。

「顔が好きとか胸が好きっていうのが普通じゃないですか。それなのに脚?」

 今度は自分の胸元を抑えながら結愛が言う。
 彼女は決して巨乳ではない。

 だがレオタードの上から見てもわかるほど美しい稜線を描いており、窮屈そうに抑え込まれながらもふっくらした様子が彼にとって魅力的でたまらないのだ。

 不用意な言葉を吐き出せず、何も言えなくなった彼をにらみながら、結愛は教室の端にあった折りたたみ椅子に手をかけた。

「先生はここに座って下さい」

 高岡は逆らうことができずにその通りにする。

 彼が大人しく従ったのを見て、結愛はスポーツバッグからタオルを取り出して高岡の両手を椅子に縛り付けた。

「なにを……」
「先生の大好きな脚で虐めてあげます。私の演技を近くで見れるなら幸せでしょう」

とん……

 結愛は彼の正面に立ち、静かに片足を上げて左肩に置いた。

 足首を包むルーズソックスの柔らかさとほんのりした温かみのあるふくらはぎを感じた高岡は突然のことに驚きつつも興奮してしまう。

(ああああぁぁ、結愛の足が俺に触れてる……!)

 指導中も簡単には触れられない場所。そして彼が触れたくてやまない美脚。
 ドキドキしないわけがなかった。
 背徳感と興奮が彼の心を支配していくが、その悦楽は長く続かない。

ゴスッ!

「ぐああああっ! ううぅぅっ……」
「ふふ、そんなに痛くないでしょう? 大好きな私の脚なんですから」

 結愛は彼の肩に乗せた脚を持ち上げ、かかと落としをした。
 首筋をしたたかに打ち据えられた高岡が小さく呻く。

 さらにもう一度強くかかと落としをする。

 高岡の体にぶつけた反動を利用して、そのまま膝を折り曲げて右足の甲でペシッと彼の頬を叩いた。

(くっ……これは、制裁のつもりなのだろうか……)

 高岡は戸惑いながら快感を覚える。

 痛めつけられているのに興奮してしまうのは彼の変態性によるものなのか。

 美少女の足で蹴られるうちにしぼんでいた性欲がぶり返してきた。

ゴッ、パシッ、ピシッ、ガスッ!

 かかと落としからの足ビンタを繰り返すうちに彼女はあることに気づく。

「先生、おちんちんが膨らんでるみたいですけど」

 そして彼女は足の裏を無造作に彼の股間に落とす。

ぐにっ……

「んああああああっ!」

「なにその声……蹴られて気持ちいいんだ……私の脚で感じてるんだ……」

 結愛は軽く足を振り上げ、もう一度彼の股間を足の裏で踏みつけた!

「がっ! ぐあぁっ、ひいいっ!」

「もっと激しくしますよ」

ぐにぐにぐにっ!

 事実、結愛は彼に制裁を加えているつもりだった。

 自分の体に欲情した淫らな講師を懲らしめるための行為。

 だがそれがますます彼を高ぶらせるなどとは考えていなかった。

「あ、ああぁぁ……」

「気持ちよさそうにしないで下さい。痛くされて感じちゃうなんておかしいですっ」

ぱしっ、ごきっ、ばしっ!

 足ビンタによって顔を左右に振られ、興奮した肉棒に容赦なく落とされる足の裏。

 結愛のつま先が強めに頬を叩くと流石に高岡も痛そうな顔になる。

 それを見ている彼女も静かに興奮し始めていた。

ガシッ! ぱんぱんっ、ビシッ! ぐぎゅうううう!!

「ごっ、ぶふっ、あがっ、ま、まって、結愛……」

「待ちません。もっと鳴けば?」

 冷たく言い放つ結愛の表情に愉悦が滲んでいた。

 ルーズソックス姿の少女が容赦なく男性を嫐っていた。

 彼女に許しを請いながら高岡は彼女に見とれてしまう。

 信じられないご褒美。もちろん痛みはある。

 結愛に蹴られたいなどとは微塵も思わないが、それでも興奮してしまう自分のマゾ性に気付かされてしまったのだ。

「嬉しいくせに。嫌がってるふりなんてしなくていいですよ、っと!」

ぎゅりりりりりりっ!

「いぎいいいいいっ!?」

 美しい足が振り下ろされるたびに痛みと快感が同時にやってくる。

 高岡は本気で苦痛を感じる中で、彼女の美脚に心を砕かれていた。

「結愛っ、や、やめ、ひいっ! あああぁぁぁ~~~っ!」

ぱんぱんぱんぱんっ!

 左足一本でバランスを取りながら結愛の足ビンタが続く。

 すでに高岡のペニスは限界まで張り詰めていた。

「ほら、こんなに喜んでる。ヘンタイ確定です」

くるり……パシィィィィンッ! 

「うぶうぅぅっ!」

 軽やかなターン、その場で一回転した結愛の蹴りが高岡の側頭部にヒットしてから滑り落ちるように彼の頬を弾き飛ばした。

 さらに彼女は蹴り足をそのまま下ろしてペニスを真上から踏みつけ、何度も膨らみの先を押しつぶす。

ぐちゅううううっ、ぎゅっぎゅっぎゅっぎゅ!

「ひっ、ぎゃああああっ、うわあああーーーー!」

「このまま踏み潰してやろうかしら」

「痛いっ、痛い痛いっ、許してくれえええ!!」

 もはや泣き叫ぶ高岡を見て結愛は少し溜飲を下げた。

「じゃあ次はこうです」

 股間に置いた足をそのままゆっくりと前後にスライドさせ始める結愛。

 痛みに怯えた高岡の表情があっという間に快感で蕩けてゆく……

しゅっしゅっしゅっしゅ……

「あひっ! あっ、そ、それっ、やめ……んあ、ああぁぁぁ……」

 もちろん彼女は足を止めなかった。

 その結果、彼が喜ぶことになるとしても自分自身の中に芽生えたサディズムが彼女を後押ししていた。

 結愛の穏やかな表情の中に淫らな笑みが広がってゆく。

「これ、気持ちいいやつですよね……最後まで見ててあげる」

 スッ……とポケットからスマホを取り出して、カメラを作動させる結愛。

 高岡は自分が撮影されているとは知らず、甘い声を上げ続け……

 ついに……

「ああああああああああぁ! 出るううぅぅぅ!!」

ビクンビクンビクンッ!

 自分が一番無防備になる瞬間を彼女に記録されてしまった。

 彼女に踏まれ、蹴られ、弄ばれた結果は明白だった。

 教え子になぶられて昇天してしまった高岡はだらしない顔で喘ぎ続ける。


(ああぁぁぁ……最高……男の人ってこんな顔ができるんだ)

 同時に結愛も悦楽に浸っていた。

 足の付根のその奥が熱く潤っている。

 ほんの数十分前までは想像もしていなかった感覚に彼女は表情を変えずに喜んでいた。

 やがて気が済むまで彼を美脚で弄んでから結愛がタオルの戒めを解く。

 ドサリとそのままフロアに転がる高岡を見て美少女が嗤う。

「今日のことは内緒にしてあげます」

「それは……本当かっ」

 信じられない一言に高岡は首を曲げて彼女を見上げる。

 そこにはスマホをちらつかせながら淫らに笑う結愛がいた。

 今まで見たことのない凄絶な表情に高岡は密かに絶頂してしまう。

「先生じゃあるまいし、嘘はつきませんよ。でも条件があります」

 高岡を座らせていた椅子に結愛は腰掛け、そっと足の先を伸ばして彼の顎を持ち上げて自分の方へ向かせた。

「練習の後、これから毎日先生を虐めさせて? 私が飽きるまでずっと」

「な……っ!」

「ふふっ、先生にとっても悪くない話でしょう? 私、男の人を蹴るのが楽しくなっちゃいました」

きゅっ……

 結愛が足の裏で高岡の顔を踏みつける。

 屈辱的なはずなのに彼は一切逆らわなかった。

「もちろんイヤなんて言えませんよねぇ? うふふふふ……」

パシィィンッ!

 結愛は座ったまま膝から先を軽く外側へ振り、足の甲で高岡の頬を蹴り飛ばした。

「あ……がっ……」

 美少女の追い打ちを受けた高岡はそのまま静かに気絶した。

 結愛はゆっくりと立ち上がり、タオルをしまった。

「次のレッスンが楽しみですね。先生♪」

 近くに落ちていた忘れ物を取り戻し、結愛は機嫌良さそうにこの教室から立ち去るのだった。





『踊り子の悦楽 ~とあるダンススタジオにて~』 (了)










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