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『女性恐怖症の格闘少年、奮闘する』 二次創作


元ネタ https://novel18.syosetu.com/n3192cm/109/


■ここまでのお話


神倉冴華へのリベンジのために訪れた神倉道場。
完全アウェイでの冴華との因縁の対決。
今回で三度目の挑戦となり後がない総太郎だが、
少しずつ追い詰められてゆく……





■以下本文 部分的に引用 ★まで


109話  最終決戦 前編if


・・・・・・
・・・


「力や勢いに任せて私に勝てると思ってんの? 考えが甘すぎるっての!」

 総太郎はパワーで冴華に勝てたことはないので、当然そんな甘い考えは持っていない。このタックルは力任せに押す意図のものではなく、冴華の動きを止めるためのものだ。

 そして、タックルを受け止められて停止する総太郎。冴華も腰を落として動きを止めているが、彼女はここから膝蹴りに来るような気配をみせる。

 総太郎はそのタイミングで腰を回し、ゼロ距離での刹渦衝を繰り出す!

「うおおっ!」

 最低でもガードさせれば、大きなダメージを与えることができるはずだ。このゼロ距離刹渦衝は初めて見せるものであるから、防ぐことはできまい、と思った。

 だが、冴華は体をとっさにズラし、総太郎の腕を脇で抱え込んだ!

「なっ!」

「もらったっ!」

 冴華はそのまま、膝蹴りを総太郎の腹へと叩き込む!

 ドスッ!

「うぐっ!」

 とっさに腰を引いたが、それでも冴華の膝が腹に入ってしまう。
 総太郎は体をひねり、なんとか冴華の腕を外させると、距離を離した。

「まさかっ、ゼロ距離の刹渦衝を潰してくるとはっ……!」

 完璧な形で入ったと思えただけに、防がれたことには驚きが大きい。

「あいにくだけど、刹渦の技はあたしには絶対に通用しないからね」

 冴華は親指で自分の頬を撫でるような仕草をしてから、総太郎に向かって構え直す。

「親父の刹渦拳を見たから、俺の刹渦衝ぐらいは防げると以前言ったな。それほどまでに、この技を研究したっていうのか」

「その技を見るとムカムカするんだもん。斤木総吉の得意技……あいつの動きは細部まで覚えてるし、潰し方を徹底的に研究したよ。それだけに、初めてあなたと対戦したときは一度も使ってこなくて拍子抜けしたけどね」

「あのときは、殺傷力の高い使い方しかできなかったんでな」

 そう冷静な口調で答えつつも、総太郎は舌打ちしたい気持ちだった。極限まで予備動作を削った刹渦衝が通用しなかったのは厄介きわまる。刹渦柳影倒舞はあくまでもステップと技とを組み合わせた奥義であり、そのフィニッシュブローのひとつとして刹渦衝の働きは重きをなしている。それが通じないとなれば、柳影倒舞そのものの威力が半減することになる。

(ちっ……さすがに、一筋縄じゃいかないな)

 今までの勝ちパターンが通用しない。どうやら、真っ向勝負にこだわるなどと甘いことを言っている場合ではなさそうに思えた。

(もしかすると視力の秘法で読み切られている可能性もあるからな。ここは出し惜しみをしている場合じゃない)

 総太郎はひとつ息をついてから、冴華の出方を見る。

 すると、今度は向こうからかかってくるつもりのようだった。

「今度はこっちの番ね、そろそろ見せてあげる。あたしがかえでちゃんを取り込んで、どう進化したのかを、ねっ!」

 気合を入れ、冴華が素早く踏み込んでくる。

(どう来る?)

 慎重に見極めねばなるまい。甘いようならカウンターで取るのもいいが、冴華に限って単純なことはしてこないであろうと思った。

 すると、冴華はシンプルに斜打から、それを追いかけるようなミドルキックで連続攻撃をしてきた。

「むっ!」

 それらを防ぐと、冴華は沈み込んでから上方向に蹴りを放ってきた。

「これは……」

 打ち抜くような上方向への蹴り。燕撃斧に近いモーションだ。

 総太郎はそれを、小さく後ろに下がって避ける。が、今度は冴華は脚を下ろすやいなや、素早く踏み込んで突きを放ってきた。

 間違いなく、刹渦拳のフォームだ。総太郎はそれをいなしながら、素早くステップして距離を取る。

「ふん、よくかわしたじゃん」

 総太郎の道着が少し切れている。どうやら刹渦拳はしっかりした威力があるようだ。

(こいつがこの技を使うとはな。相当に研究したようだし、使えても不思議ではないか)
 驚きはあったが、かえでから技を盗むことを目的に彼女を引き込んだのであろうし、その成果はしっかりと出ていたわけだ。刹渦拳に関しては、総吉の生前の頃からずっと打ち破るための研究をしていたというし、自分でも使えるようになっていて不思議はない。

「斤木流の体の動かし方、基本技の軌道、そういうのはかえでちゃんを見て学ばせてもらったんだよ。おかげで、以前より鋭くなってるセンパイのラッシュも、簡単に防ぐことができたってわけ」

 なるほど、確かにそれは総太郎にとって厄介なことだ。かえでから斤木流の基本的な部分を盗んだというのは間違いないようで、冴華は先ほどから斤木流のものと思しき突きや蹴りを攻撃に混ぜ込んできている。

「斤木流はあたしの前では丸裸も同然ってわけ。悪いけど、今回もセンパイには勝ち目はないよ」

 冴華は得意げだ。

 だが――

「さあ、それじゃどんどんいくわよ!」

 冴華は調子に乗って攻めてくる。

「あんたの刹渦衝と、あたしの刹渦拳、どっちが威力あるか比べてもいいのよ!」

「それも面白いな! だがっ!」

 総太郎は冴華の刹渦拳を待ち構え、腰をひねるようにしてかわしつつハイキックを打つ。

 それは冴華にかわされてしまうが、総太郎は腰の動きをそのままに勢いをつけて冴華に背を向け、振り上げた脚をそのまま打ち下ろした。

「なっ!」

 鋭く打ち下ろされてくる蹴り。冴華は刹渦拳から次の技につなげようとしていたが、総太郎の蹴りはちょうどそこに当たるような軌道を描いていた。

「くっ!」

 冴華はとっさに体を地面に倒す。総太郎は打ち下ろしの勢いのまま冴華の体を踏みつけにかかるが、彼の足が畳を強く踏み抜いたときには、冴華は後ろに転がって逃れていた。
「い、今のはっ……」

「斤木流、雀落とし。桜月の型に含まれる技だ。当然知らないよな」

「桜月……?」

「四つある斤木流の型のうち、かえでは飛燕しか知らない。しかも習得度はとても高いとはいえない。お前はそんなあいつの劣化コピーの技しか持たない」

 総太郎はかえでが使えない多くの技を身につけている。それを考えると、かえでを奪われたことなど恐れる必要もなかったことなのだ。

「お前の狙いは正しかったかもしれないけどな。かえでから技を盗んだ程度じゃ、斤木流の技を吸収したとはとても言えないぜ」

「くっ、いまいましい……」

 そう言う総太郎自身も、柳影以外には飛燕が多少できる程度で、桜月と青嵐は未熟もいいところであるのだが、それでも技を覚えていたことがここで活きた。

 総太郎はこの日初めて、冴華に精神的なリードを奪ったが、本人に余裕はなかった。

(今のがかわされたのは痛いな……)

 雀落としは奇襲技のようなものであり、晒す隙が大きい。
 冴華のような分析のうまいファイター相手に二度は出せまい。
 総太郎の手札は決して潤沢ではない。
 残る隠し技をいかに有効に使えるか、総太郎の戦い方が問われるところであろう。

「付け焼き刃の斤木流で俺に勝とうなんて、甘い考えだと教えてやる!」

 総太郎は自分を奮いたたせるように言い放つと、踏み込んでゆく。



「生意気なっ! そういうことなら、こっちはあんたの弱点を突かせてもらうから!」

 冴華は身を引くくし、総太郎の突きをかわす。
 すると、その直後、総太郎の顔になにかの布が覆いかぶされた。

「うぷっ! な、なんだっ!」

 どうやら服のようだ。
 甘いような匂いがして、総太郎の心臓が少し鼓動を速める。

 その直後、腰に強い衝撃が走った。

「せぇいっ!」

 ガシッ!

「うぐっ!」

 どうやら蹴りを入れられてしまったようだ
 総太郎は顔に被せられていたものを手に取りつつ後退する。
 見ると、それは冴華が着ていたパーカーだった。

「め、目くらましか? せこい真似を――」

「てやっ!」

 冴華が斜め軌道のスラッシュキックを打ってきているのを見て、総太郎はそれをガードする。

「くっ……!」

 腰がずきりと痛む。スラッシュキックは鋭く、ガードした腕はまるでムチで打たれたかのような感覚があった。

 そして、冴華はスカートを総太郎に投げつけてくる。総太郎はそれをはたき落とした。
「ふふん。あたしが手段を選ぶような人間だと思ってたわけじゃないでしょ?」

「ちっ……そうだな、俺が甘かった。しかし、これは色仕掛けのつもりか?」

「強がっても、蹴りを食らったことに変わりはないけどね。匂いで動揺して一瞬動きを止めたことぐらい、あたしにはお見通しだし」

 その通りだった。総太郎は苦虫を噛み潰したような顔をする。

 冴華はピンク色のタンクトップと黒のスパッツという、肌を多く露出させた格好になっている。
 すらりとした体のラインが丸出しになり、腰のほっそりとしたくびれは見事なものだった。

 脚線美も相変わらずで、むき出しになった太ももは健康的な艶を放ち、女の子らしい肉感を誇示している。

 ぴっちりとしたタンクトップとスパッツの組み合わせは、色こそ違うものの、初めて総太郎が冴華にやられたときの姿と同じものだ。

「やっぱりこの格好が一番動きやすいかな。センパイを惑わせるにも都合がいいしね」

「……そういうことをしてくると分かってさえいれば、今さらお前の色香に惑わされる俺じゃないぜ」

「そうかなぁ? ま、試してみれば分かることだよ」

 冴華は、服を脱いだ拍子に乱れた髪を手でかき上げて直す。
 すると、総太郎の元までふわりと柑橘系の香りが漂ってくる。

(くっ……わかっているとしてもこれか)

 女の子の香りに弱くなっている。
 相手が憎いはずの冴華であっても一度意識してしまうと効いてしまうようだ。

 冴華は胸も大きめで、全身はすらりとしていて、脚はつややかで肉感的。
 目鼻立ちが整っていることもあり、こうして全体を見ると文句なしの美少女だ。

 先ほど顔に投げつけられたパーカーで冴華の香りを思い出してしまったせいもあるだろう。ほんのわずかだが、総太郎は胸の高鳴りを覚えていた。

(落ち着け……今の俺ならばこいつの色仕掛けにも抵抗できる)

 そう自らに言い聞かせ、大きく息をつく。
 甘い香りが少し弱くなった気がした。


「んじゃ、身軽になったことだし、こっちからやらせてもらうよっ!」

 冴華は長いポニーテールが水平になるほどの勢いで突っ込んでくる。
 総太郎は一瞬戸惑い、すぐに気持ちを切り替え身構えた。

(落ち着け、ここを耐えるんだ)

 これ以上クリーンヒットはもらえない。
 冷静に対処してペースを掴まねばなるまい。
 そして、チャンスが来たら手札を切ることだ。

「せいっ!」

 冴華の突きが来る。それをさばきながら左の突きで反撃すると、相手が連続で出してきていた蹴りと交錯する。
 互いに技は外れるが、同じペースで攻防が続く。
 まるで鏡合わせのように、ほとんど同じパワーとスピードでのラッシュ合戦だ。

(これは、こいつ、さっきまでと技の出し方が違うぞ)

 冴華の技には明らかに秘法の効果が乗っている。
 それも、ただ考えなしに発動させているわけではなく総太郎の技が甘い時は秘法なしでさばいてしまい、その分、反撃に剛力法を乗せてくる。

「今のところうまく躱してるね。センパイ」

「くっ!」

 重い突きを受け止めて、総太郎は顔をしかめる。緩急のついた、しかも効率的な攻撃と防御で立ち回ってくるだけでも相当に厄介だ。しかも――

「はっ! やっ!」

 冴華の二段突きを受け止め、最後に回し蹴りをかわす。

 技を見ると分かる。
 冴華は斤木流の技を連係に組み込んでいる。
 総太郎は、自分の受けや突きと冴華の技がよく噛み合うような気がしていたが、それも当然だ。かえでを相手にしたときと似た感覚がある。

 総太郎は押されることを恐れて反撃の突きを放つが――

「おりゃっ!」

「ていっ!」

 総太郎の突きをさばきながら、腰の入った追い突きを打ち返してくる冴華。

「くうっ……!」

 見るからに重い突きだ。
 かわさねばならないが、総太郎は攻撃の直後で体勢が悪い。

 なんとか腰をひねりつつ腕でガードするが、腕をかすめた突きによって総太郎の体はビリビリと痺れる。


「このぉっ!」

 苦し紛れの反撃で総太郎が腕を振り回す。
 バックブローで牽制し、冴華を遠ざけるつもりだった。

 しかし彼女はその軌道を読み切り、軽く腰を落として避けながら兎脚法を使い、総太郎の懐へ潜り込んだ。

「これはどうかな?」

 冴華の腕が総太郎の首に回る。

「なっ!?」

 突然の行動にパニックになる総太郎。
 冴華の整った顔がキスできる距離まで近づいていた。

 さらに彼女は自らおっぱいを彼の胸に押し当て、腕の力を使って密着しながら囁く。

「……神倉流・妖舞抱香」

 そこから首筋をペロリと舐めた。

「あうっ!」

 反射的に彼女を遠ざけようとする総太郎。
 だがそれより前に冴華が離脱した。

 硬直した彼を確認してからバックステップで距離を取り構え直す。

「なんのつもりだ……」

「さあ? でもこれでからセンパイは思うように動けなくなるんじゃないかな」

 冴華は何もなかったように前後のステップを刻み、

「やあっ!」

 フェイントを2つ入れてから再び兎脚法を使って接近、ジャブの二連打からのローキックを放つ。

 戸惑いながらも総太郎はそれらに対応してゆく……
 空振りした突きや蹴り足が起こす風に冴華の香りが残っていた。

「とりゃあっ」

 冴華はそこからサイドステップして横蹴り、総太郎は体を捻って避ける。
 吹き抜けた蹴りの後に、やはり冴華の残り香が漂う。

「ふっ、はっ!」

 スピードを上げながら冴華は彼の左へ回り込み、細かく鋭い技をいくつか放つ。

「ぐ……」

 至近距離に入られた総太郎はフック気味のパンチを腕でガード。
 その拳の重さに顔をしかめるが、それ以上に自分の変化に戸惑っていた。

(何故だ……見えているのに、一手おくれてしまう)

 動きは目で追えている。冴華の動きは厄介だが対応できないほどではない。
 だが手足の動きがほんのわずかに遅れるせいでカウンターまで持っていけないのだ。

(冴華が速くなっているのではなく俺が遅くなっているのか!?)

 集中力が途切れがちになっていることに気づく総太郎。

 それは、冴華が撒き散らす香りのせいだった。

 先程の抱きつきがジワジワと効果を発揮し始めている。
 無意識に彼は冴華の匂いに惑わされ、待ってしまう。

 そして香りとともに先程与えられた感触に思考を遮られていた。

「やあっ!」

 冴華が飛び込んできて両腕を彼の腰に回し、投げ技を放とうとしていた。

 踏ん張りを聞かせる総太郎だが必然的に密着度が増す。

 彼女の両手がロックされる前になんとか振りほどくが、

(冴華の胸が……)

 自分に押し当てられた柔らかさが前回味わった屈辱を思い出させる。斤木の道場での格闘後に冴華の性技で蹂躙され、妹の前で辱められた。そして翌日から後遺症のように冴華とのセックスを思い出してのオナニーした自分……

「悔しくてたまらないでしょうね」

 飛び退いた冴華が呟く言葉にドキッとさせられた。

「じわじわと女性恐怖症がぶり返していく感覚を味わうといいわ」

「くそっ!」

 総太郎は自分の周囲を華麗に舞う冴華の動きを先読みする。

 ステップで撹乱されるなら彼女が次へ向かう場所にパンチやキックを置けばいい。

「ここだっ!」

 冴華の動きを予測したミドルキック。だが当たらない。
 続けて何度かジャブも放つが、明らかにキレが鈍くなっていた。

「そんなの当たるわけないじゃない。ばぁ~か♪」

 やがて彼女も総太郎の動きを読み始め、蹴りや突きで伸び切った手足の柔らかな部分を打ち払いだす。

「がぁぁっ!」

 ふくらはぎや二の腕、さらに肘と手首の間を打ち据えられた総太郎がうめいた。

「効くでしょ。あたしの色仕掛け。どんどん行くからね」

 冴華の動きが徐々に加速してゆく。
 そして体を密着させる回数も少しずつ増えていく。

むにゅうぅっ

「こ、こいつっ!」

 背中に回られ、おっぱいで押されてよろける総太郎。

 痛みがない分だけ屈辱が余計に募り、大振りの返し技を放つが冴華は悠々とそれを回避してしまう。

 そしてまた密着。

さわっ……

「うわあぁっ!」

 ビクッと体を震わせる総太郎を残して離脱。

(あいつの手が……)

 道場や学園の密室での手コキを思い出しかけた総太郎は首を素速く振って抗う。
 格闘に集中していたはずの体が性感に濁り始めた瞬間だった。

「もう一息ってところね」

 続いて顔面へのパンチをフェイントに使い、総太郎にガードさせてから冴華は無防備な股間を軽く撫で、すぐにバックステップ。
 突然やってきた快感が邪魔をして総太郎は反撃の前蹴りが出せない。

「嫐るような戦い方しやがって……!」

 憎々しげに睨みつける彼を冴華が涼しげな目であしらう。

「思った以上に効いてるみたいね」

 ちらりと総太郎の股間を見る冴華。
 そこは痛いぐらいに張り詰め、道着の上からでも確認できるほどの膨らみを冴華の前にさらしていた。

「こ、これは……違うっ!」

「戦いの最中に相手に抱きついて女の体を味わわせる初歩的な色仕掛け技だけど、けっこう難しいんだよ?」

 さらりと髪をかきあげ、勝ち誇った顔をする冴華に総太郎は一瞬見惚れてしまう。

 先程の攻防で、冴華が着ていたパーカーを総太郎に被せたのは自分の匂いに弱いことを確認するためだった。
 そして一瞬反応した彼を見て集中力をかき乱せると踏んだのだろう。

「まさかあたしにこんなことされるとは思わなかったでしょう? ま、実際あまり得意じゃないし。でもあなたには効果てきめんみたい。ふふふ」

 顔を真っ赤に染めて首を横に振る総太郎を、冴華がさらに煽る。

「負けられない戦いで相手に欲情するなんて浅ましいわね。あ、もしかして前回のあたしとのセックスを思い出しているのかな?」

 両腕で自分を抱きしめるように冴華がおっぱいを持ち上げる仕草をすると、総太郎は無意識にゴクリとつばを飲み込んだ。
 そこでこらえきれないと言ったように冴華がプッと吹き出す。

「あはははっ! リベンジ失敗だけでも恥ずかしいのに快感を思い出してるなんて」

「くそ……」

「でもあの時のあなたの顔、エロくて可愛かったよね」

「え……」

 冴華に可愛いと言われ、総太郎は一瞬放心する。

 そんな彼を見つめ、唇を舐めながら冴華は目を細める。

「先に言っておくけど。この後、あんたをぶっ倒したらお望み通り犯してあげる。二度とあたしに歯向かえないように念入りに骨抜きにしてあげるわ」

 冴華の性技をもってすればそれも可能なのだろう。

「二度もあたしの体を味わってるもんね? 今度は絶対に抜け出せないよ。泣きわめいてもここには誰も居ない。枯れるまで搾ってあげる。それとも、今日は前回みたいに気絶しないように優しく嫐ってあげようか? 斤木セ・ン・パ・イ♪」

「お、ぐ……うおおおおぉぉぉぉ!!」

 散々煽られ逆上した総太郎がバネ仕掛けにように飛び出す。

 自分が許せなかった。
 冴華に魅力を感じてしまうなんて屈辱でしかない。

「おりゃああああっ!」

「いい気合だね。でも私には届かない」

 その言葉通り、激しく単調な攻撃は冴華に届かず、総太郎のスタミナだけがどんどんすり減ってゆく。
 力みすぎた両腕を振り回すだけで疲労が蓄積され、やがて無意味なラッシュで彼が動きを鈍らせた頃……

「はぁ、はぁっ……くそっ、くそおおおおぉぉぉ!」

 冴華は軽やかにステップしていったん身を引いた。

「ふふん、どう? ペースが一変しちゃったね」

 得意げに胸をそびやかす冴華。見事な丸みを帯びたおっぱいが揺れる。

(あれほど冴華の色香に惑わされてはいけないとわかっていたのに……)

 何度も体に擦り付けられたおっぱいの感触が彼を悩ませていた。

 冴華の生意気な視線に見据えられ、総太郎は歯噛みする。

 明らかに冴華の立ち回りは先ほどまでより強化されている。
 いや、総太郎が弱体化させられただけなのかもしれない。

 今見せた華麗な動きも全力ではなかったのだろう。
 秘法を使わずにこちらを疲弊させにかかってきたのだと、今の総太郎には分かる。

 おまけに、織り交ぜられている斤木流の技が厄介きわまるのだ。

「かえでちゃんも言ってたけど、斤木流の技と神倉流の秘法のシナジーはすさまじいね。今までは秘法を使ったときでも、ここまで技に威力が乗る感覚を味わったことはなかったよ」

 冴華の不完全な斤木流であっても、その威力は脅威だった。
 剛力法が乗った重い突きや蹴りに対しては、しっかりと体勢を整えてさばくしかない。 だが防御に振り分ける意識が多くなれば、当然総太郎が攻めに出られる余裕は減り、相手にペースを渡してしまうことになる。

 真っ向勝負で渡り合おうとすれば、現状では冴華のほうが上だ。
 そのことを認めざるを得ない。

「お前、服を脱ぐまでは手加減していたのか?」

「ううん、そういうわけじゃない。ただ、以前より強くなっているようだから、リスクを抑えた戦い方で様子見というか、分析をする必要があっただけよ。それももう済んだし、センパイにペースを渡さないためにも今後は全開でやるけどね」

 そう、冴華は分析を武器とするファイターなのだ。
 ならば、最初に様子見をしてくるのは自然なことであろう。

 冴華はずっと、言葉と技とで駆け引きをしながら総太郎の実力を計っていたのだ。
 総太郎は戦い方を間違えたことを悟る。
 最初から奇襲技を惜しげもなく乱発して、相手が対応できないうちにペースを握っておくべきだったのではないか……

「服を脱ぐまではちょっとヤバイかなって思ってたけど、この戦い方をすれば圧倒できそうね。もう勝負は見えてきちゃったかな?」

 冴華はそう言いながら、ポニーテールを手で小さくかき上げて背中に送る仕草をする。
 総太郎は忌々しく思いながらも、不利を認めるしかない。

(くそっ、ここまでうまく斤木流を活かしてくるとは。たいして斤木流を使うことはできまいと判断した俺が甘かったということか)

 基本をある程度使えるだけであることは確かであろうし、燕撃斧や刹渦拳などの奥義については真似事の域を出ない。
 だが、それだけでも秘法を高いレベルで使うことのできる冴華にとっては大きな武器になるということだ。

(このままジリ貧になって負けるのは避けなきゃいけない。それにはペースをなんとかして奪うことだが)

 冴華との勝負の中で、総太郎がペースを握ることができたことは一度もない。
 冴華は総太郎と斤木流を徹底的に研究しているし、冴華自身も経験豊富なこともあって戦い方がうまいのだ。

 しかも色仕掛けのせいで無駄に体力が消耗している現状。

 総太郎が勝っているところといえば、それこそ技の豊富さしかないのだが――

(いや、ここまできて弱気になって何になる! ここまで這い上がってきた過程で身につけてきた強さを信じるんだ)

 総太郎は弱気になりそうになる心を奮い立たせ、冴華を見据える。

「まだ目は死んでないか。ま、センパイはそう簡単にあきらめてはくれないよね」

「ああ……今回は尚更な」

 負ければすべてを失う勝負だ。
 今回ばかりはなにがあろうとあきらめるわけにはいかない。

「じゃ、その強靭な心を今から折ってあげるね。力の差を見せつけながら倒してあげる」
 冴華はもう受けて立とうとはしない。
 積極的に前に出てトドメをさしにこようとしている。

 総太郎としても、それならそれでカウンターを狙う隙が見出だせるはずだ。

「てぇいっ!」

 冴華は大胆にハイキックを敢行してくる。
 総太郎はそれをかいくぐりながら返しを打とうとするが、すさまじい速さでハイキックが打ち下ろしの蹴りに変化してくる。

「うっ、これはっ!」

 ブラジリアンキックと呼んでいいほどの、鋭い変化蹴りだ。
 総太郎は下方向に重心をかけているのでかわせない。受けるしかない。

 ガシッ!

「うぐっ!」

 腕でガードするが、かなりの重みがあった。
 相変わらず少女のものとは思えないパワーだ。

 そして、総太郎の動きを止めた冴華は、脚を戻すと突きでラッシュをかける。

「それそれっ!」

「くっ、ううっ!」

 出鼻をくじかれ、冴華の一方的なラッシュを許してしまう。
 総太郎もなんとか手を出そうとするのだが、巧みに秘法の乗った突きを織り交ぜてくる冴華のラッシュには、割って入る隙が見いだせない。

 次第に押され、何発かはクリーンヒットを受けてしまう。

「がっ、ぐうっ!」

「はっ、やっぱりもう起死回生の手はなさそうだね、センパイ! このままあたしの攻めで気持ちよくノックアウトしてあげる!」

 冴華がフック気味のパンチを打つたび、ピンク色のタンクトップに包まれた形のいい胸が揺れる。

バチンッ!

「あがっ……」

 無意識におっぱいを見つめたせいで冴華の強打が側頭部をかすめた。

 改めて、女の子の攻めに圧倒されている自分の惨めさを思うが、現実として今の総太郎は打つ手が思いつかない。

(こ、このままじゃ……! なんとか間合いを離して、こいつにまだ見せていない技をっ!)

 それしかないと思ったが、つけこむ隙がない。

 そして、冴華の腰の入った逆突きをなんとかガードするが、あまりの重さに総太郎の体が小さく浮いてしまう。

「うっ、やばい……!」

 大きな隙ができてしまう。

「もらったっ!」

 冴華が大技を放つ。
 跳び上がり、腰をひねる。側頭部への飛び膝蹴りだ。
 女の子らしく丸みを帯びた小さな膝が顔へと迫ってくる。

「うおっ……!」

 両手で冴華の膝を受け止めようとするが、押されてしまう。
 このまま自分の腕ごと膝で打ち抜かれてしまいそうだ。

 総太郎はとっさに体を投げ出して後ろに逃れ、立ち上がる。

 が、冴華は着地してからすぐさま追撃をしてくる。
 兎脚法のステップはすさまじく鋭く、逃れられない。
 そもそも総太郎は下がり続けており、前に出てくる相手に対して後ろに逃げてはスピードで勝てるはずもなく、どうにも仕切り直しができない。

(こっちに息をつく余裕を与えないつもりだ)

 それが正解なのであろう、ここでトドメをさすつもり満々だ。
 もはや冴華に様子見の気配はまったくない。

 そして、なんとか立ち上がったばかりの総太郎に、冴華は踏み込みから燕撃斧を打ち抜いてくる!

「せやっ!」

 モーションで察知できたため、総太郎はなんとか背筋を後ろに逸らして避ける。
 冴華が斤木流の技を選択したことが幸いした。
 見慣れた技でなければ避けられなかったかもしれない。

 燕撃斧をなんとかかわした総太郎だが、体は後ろに逸れてしまっている。
 そこに、燕撃斧から脚を戻した冴華が再び後ろ蹴りを放ってきた。
 流れるような連続蹴りだ。

 ガシッ!

「ぐっ!」

 紙一重でガードが間に合うが、体のバランスは崩れる。
 ここになにか攻撃がきたら、今度こそ立っていられない。

 冴華も奥義クラスの技を連発したところであるはずで、すぐには連続攻撃はできないだろう、総太郎はそう思っていた。
 だが、冴華は後ろ蹴りを放った一瞬後には、軸足で跳び上がっていたのだ。

「せいっ!」

 跳び上がりながらの後ろ回し蹴り。冴華の体がしなやかに空中で一回転し、勢いをつけたカカトが総太郎の側頭部へと迫る!

 ガシッ!

「ぐうぅっ!」

 とっさに腕でガードはしたが、冴華の脚で打たれた腕には鈍い痛みが走る。

「ふふっ♪」

 そして、総太郎の体はぐらりと揺れる。
 冴華が浴びせてきた蹴りの嵐の前に、ついに耐えることはできなかった。

 その倒れようとする総太郎の頭を押しつぶそうとするように、冴華は飛び蹴りで一回転した勢いに乗じて、尻を向けつつのしかかってきた!

 そして……

 ドスンッ!

「むぐうっ!」

 総太郎は背中から畳の上に倒れ、その顔面を冴華の尻がヒッププレスの形で押しつぶした。頭部に強い衝撃が走る。顔にはスパッツに包まれた冴華の尻肉の感触と、その重みが伝わってきた。

(う、うぅ……ま、まずい……)

 甘酸っぱい少女の香りと汗と体温、そして柔らかさが総太郎の平常心を揺るがす。

 どう考えても不利な体勢だ。
 すぐに逃げ出さねば、冴華とグラウンドで勝負するのは危険すぎる。

 なのに抜け出せない。

 剛力法を駆使した関節技などを喰らえば、一瞬でギブアップさせられてしまいかねないというのに。

「ふふん、どう? 女の子のお尻に押しつぶされる屈辱感は。ああ、センパイはこの程度の侮辱技はいくらでも味わってて慣れてるか。ふふっ」

 ぐりぐりっ、むにゅっ……

「むぐっ、うっ、うぅ……!」

 総太郎の顔を蹂躙するように、冴華は尻をぐりぐりと押し付けてくる。
 柔らかで弾力のある女の子の尻肉の感触と、そして匂いとを味わわされ、総太郎の心臓はどうしてもドキドキを感じてしまう。

「たっぷり味わっておきなさい。もうあたしと戦うことはないんだから」

「こ、こいつっ……! おりゃあぁっ!」

 屈辱まみれにされた総太郎は冴華を押しのけようと、反動をつけ、華奢な体を跳ねのけようとした。

 が――

「おっと、脱出はさせないよ」

 総太郎が体を跳ね上げるのにタイミングを合わせて冴華が腰を浮かせる。
 さらに、素早く総太郎の頭を太ももで挟み込む。

「うっ!」

 尻肉の次に味わわされた太ももの感触に彼の鼓動が急激に速くなる。

「えいっ」

 そして、総太郎を巻き込むようにしながら冴華が体を横に一回転させた。

「う、うおぉっ!」

 総太郎が前後不覚になっている隙に、冴華は彼の右腕を掴んで胸元に引き込んでしまう。

(し、しまったっ!)

 太ももで顔を挟まれながらの、腕への関節技。
 その体勢に入られてしまった。
 目の前には冴華の股間がある。総太郎はうつ伏せの体勢にさせられていた。

「あたしの太ももに挟まれたまま、地獄の苦しみを味わいなさい。それっ!」

 そして、冴華は関節に力を入れる。

 ぎりりりっ!

「うああああぁぁっ!」

 腕関節に激痛が走る。総太郎は暴れようとするが、腕も顔もがっちりとロックされていて到底外せる気配がない。

(だ、ダメだっ、これはヤバすぎる! 本当に勝負が決まっちまうっ!)

 強い危機感を覚え、なんとか関節技を外そうともがく。

「暴れても無駄無駄。あんたは力であたしに対抗できる術がないもん。ふふっ、女の子の太ももに挟んでもらえるなんて男として幸福ってもんでしょ?」

「だ、誰がそんなっ……!」

「強がっても興奮してることはお見通しだよ、あたしは脚には特に自信あるし。この脚の感触を味わわせてもらえる幸せを噛み締めながら、せいぜいいい声を上げて鳴きなさい! えいっ!」

 ぎゅううううぅっ……!

 ぎりりりりりっ……

「うがああああぁぁっ!」

 太ももで顔面を絞めつけられながら腕関節を痛めつけられる。
 女の子らしいすべすべとした太ももに顔を挟まれているが、秘法を使う冴華の美脚は明確な凶器だ。
 強烈な力で絞めつけてきており、このままでは頭蓋骨が割れてしまうのではないかと思うほどである。とても感触を楽しむような余裕はない。

(くっ、くそおっ、外せないっ! こ、このままじゃギブアップするしかなくなっちまう……!)

 ギブアップしなかったら腕を折られ、いずれにせよ戦える体ではなくなってしまう。
 いや、それと同時に絞め落とされてしまう可能性も高く、どうあれこのまま技を受け続けていては敗北は必至だ。

 柔らかな太ももの圧迫感に息が苦しくなってくるが、そんな中、総太郎は目の前に冴華の秘部があるのをチャンスと捉える。
 あれに顔をつけて舐めでもすれば、冴華も技を外さざるを得なくなるのではないか。

「……く、そぉぉ……!」

「なにか企んだみたいだけど残念ね。もっと悪あがきして見せてよ」

 が、どうやら密着距離まで届きそうにない。
 そういう反撃をされないように、わざと股に届かないようなロックの仕方をしているのだ。

(くそっ、それなら……て、手のほうでっ……!)

 しかし、腕はしっかりと関節を極められていて、ほとんど動かせない。

「ほらほら、どうしたの? 抵抗しないとこれで勝負ついちゃうよ? えいえいっ♪」

「うああああぁっ! ち、ちくしょう、こいつっ……!」

 総太郎は無我夢中のまま、怒りに任せて冴華の胸を右手で力いっぱい掴んだ。

 ぎゅうっ!

「きゃっ! いっ、痛いっ!」

 さすがに冴華は悲鳴を上げ、反射的に総太郎の腕を放し、弾くように遠ざけた。

「しめたっ!」

 総太郎はその隙をついて体を起こし、脱出しようとする。

 が、立ち上がったそこに、冴華の突きが迫ってきていた。

「し、しまっ――!」

 後ろに下がりながら立ち上がれば、前を向きながら立ち上がってくる冴華にスピードで勝てるわけがない。

 そして、冴華の突きが総太郎の胸板を直撃する!

 ガシッ!

「ぐはあぁっ!」

 立ち上がりかけていたところだったので、総太郎は踏ん張りきれずにあっさりと倒されてしまう。

 その胸板を、冴華は容赦なく踏みつけた。

「あぐっ!」

「ふん! まったく、女の子の胸をあんな風に鷲掴みにするなんて。形が崩れたらどうしてくれるわけ?」

 不機嫌にそう言ってから、しかし冴華はすぐに笑みを浮かべる。

「ふっ、でも勝負はどうやらあたしの勝ちかな? さっきの攻防、センパイはほとんどなすすべもなかったね」

 そう、冴華の苛烈な攻めをついに受け切ることができず、総太郎は二度もダウンさせられてしまった。

 完全に上を行かれた。そのことは間違いあるまい。冴華は前髪を指先でかき上げてみせながら、総太郎を見下ろして勝ち誇ってみせる。

「しょせんはこの程度よね。いくら鍛えてこようが、あなたはあたしの前に屈する運命なのよ」

「くっ……」

「妹と一緒に幸せに暮らしてきたような男が、ずっと恨みを抱いて生きてきたあたしにかなうわけがない。まして、あたしは斤木流にだけは絶対に負けないって、母さんが死んだあの日に誓ったんだから。その意地と怒りが、あたしの力をどこまでも高めてくれる」

 倒れた総太郎の胸板を足の裏でぐりぐりと踏みにじりながら、冴華は強気な言葉を継いでゆく。

「あたしは絶対に斤木流には負けない。そして、あたしの人生をかけて斤木流を必ず滅ぼす。斤木総吉があの世で歯ぎしりするような悲惨な運命を、あなたと斤木流に与えてやる」

 笑みの中に恐ろしいほどの怨念を感じて、総太郎はごくりと唾を呑む。



「お、俺をどうするつもりだ……」

「そんなの決まってるじゃない。それっ」

 冴華は胸板を踏みにじっていた足を上げ、つま先を硬くして総太郎の鳩尾に突き刺す。
「ごほぉぉっ」

 急所を撃ち抜かれた総太郎は悶絶する。呼吸が途切れ、全身から汗が吹き出す。

 その間に冴華は彼の背後へ回り込んでいた。

「ここからはあの日の再現になるわよ」

 首元にするりと巻き付いた冴華の腕の感触と背中に押しつけられたおっぱいに総太郎はドキドキしてしまう。だがそれも長くは続かなかった。

「ふっ!」

ごきり……

「うっ、ぎゃあああああああああぁぁぁ!」

 神倉道場に響き渡る総太郎の声。
 だがここには彼ら以外に誰も居ない。
 脱臼の痛みに総太郎が悲鳴を上げても誰も助けには来てくれない。

「これで右腕はおしまいね。もう片方も動けなくしちゃうね」

ごきっ……

 そして冴華は反対側も同じように脱臼させ、総太郎から自由を奪い去る。

「ひいっ、ひっ、あ、あああぁぁぁ……」

 両肩の関節を外された総太郎は冴華と出会った初日の記憶を思い出す。それは女性恐怖症が完全にぶり返すことを意味していた。

(だめだ、こわい、勝てない……冴華に、俺は……)

 両腕に感じる激痛以上に総太郎は心を覆う絶望の闇に怯えていた。

「もう逆らう気力もなくなったでしょ。負けを認めなさい。斤木総太郎」

 自然な動作で彼の前に回り込んだ冴華が冷たく言い放つ。

 ここで認めてしまえばすべてが終わる。道場の看板も、妹のかえでも取り戻せない。復活の兆しを見せていた男のプライドまで粉々に砕け散ってしまう。

 だが――、

「俺の、負けだ……」

 他に口から出せる言葉がなかった。そして自ら敗北を口にした瞬間、総太郎の目から涙が溢れ出していた。

「しっかり聞いたわよ。あんたは三度あたしに屈した。もう格付けは終わり。この先ずっと勝てないって心に刻みつけてやったんだから」

 冴華は総太郎の耳元で絶望感をさらに煽りつつ、彼の肩をはめ治す。

「うっ、あ……」

 当然痛みはおさまらないが指先の感覚が戻ってきた。総太郎が恐る恐る指先を動かす様子を見ながら冴華が言う。

「感謝の言葉はないわけ?」

「え……」

「別にすぐ治してやる義理はなかったんだけど。もう一回外しとく?」

「ひっ!」

 総太郎は慌てて冴華に頭を下げた。両腕が動かせないので額を畳に擦り付けながら。

ぎゅっ……

「ぐぅっ」

 総太郎の後頭部に重みがかかる。冴華の足の裏が彼を踏みにじっていた。そのまま何度かグリグリと足を動かした後、冴華は彼の脇腹を蹴って乱暴に転がした。

「ぐはっ……!」

 総太郎は薄暗い道場の天井を見上げながら自らの敗北を噛みしめる。

 だが悔しさを持つことすら今の彼には許されていないようだ。

 視界の端に居た冴華の姿が徐々に大きくなってきて、

「よくできました。あたしもそれなりに満足したわ」

 そう言いながら総太郎の下半身だけを脱がせ、裸にしてしまった。

(ううぅ、今から俺は……)

 この先彼女が何をしてくるのかは明白だった。前回までと同じく性的に総太郎を蹂躙するつもりなのだろう。冴華はそうすることで完全に彼の中の「男」を屈服させる。

 だが、ひどい目に会うとわかっているのに総太郎の股間は硬く張り詰めていた。

「じゃ、ここから先は天国だよ。格闘だけじゃなくてこっちのほうでも格の違いを見せつけてあげる」

 冴華が、するりとスパッツとショーツを脱ぎ、彼の顔に投げつける。

「うぷっ!」

 冴華の香りと汗の匂いが染み付いた布切れ。
 それを与えられても屈辱が募るばかりのはずなのに、

(ああああぁ……)

 今の彼を興奮させるには充分な素材だった。同時に前回の敗北後に冴華の赤いタンクトップでオナニーしたことも思いだし、総太郎はますます興奮してしまう。

 だがその至福の時間はすぐに終わる。

ぐにゅり……

「んああっ!」

 突然訪れた股間への刺激に総太郎は体を震わせる。
 肉棒が冴華に踏みにじられていた。

「ヘンタイ」

 顔からずりおちたショーツの先で冴華が冷ややかな笑みを浮かべていた。

「負けた相手の下着で興奮するなんて本当にヘンタイだね」

「あ……それ、は……」

 冴華が無言で腰に手を当て顔を寄せてくる。
 無意識に総太郎の体は震えた。

「あたしが怖い?」

「う、ううぅ……!」

「涙まで浮かべちゃって。よしよし、頑張ったセンパイにはご褒美をあげなきゃね。あたしより弱いヘタレだけど怖い女の子と一生懸命戦ったんだから」

 すりすりと総太郎の顔を手のひらで撫で、顎の先を手の上に乗せてから冴華がそっと目をつぶり、

ちゅうぅぅ……

 総太郎の唇を奪った。

ぴちゃ……ぷちゅっ……

「んぐうぅ!?」

 それはとても優しいキスだと言うのに、総太郎の全身には電気が流されたような刺激が駆け巡り、

どぴゅううぅぅぅっ!

 気づいたときにはガクガクと震えながら射精していた。
 当然、冴華にもその震えは伝わってしまう。

「もしかしてキスだけでイっちゃった? よわっ……」

 呆れたように言い捨てる冴華だが、彼を見る目から敵意が消えていた。

(なんで、キスだけで……俺の体、どうしちまったんだ……)

 困惑する総太郎。まだ彼は自分の中での変化を気づけないでいた。

 冴華に言葉責めされ、弱くなったところで優しくされたのだ。

 たとえ彼自身の勘違いだとしてもそこに冴華の母性を感じてしまった結果、キスだけで射精してしまう回路が彼の内面に構築されたのだ。

「んっ、んっ♪」

ちゅ、ちゅっ、ちゅうっ!

「んっ、はっ、ああああ!」

ぴゅっ、どぴゅ、どぴゅう!

 気を良くした冴華が総太郎に連続でキスを与えると、それに応じて総太郎の体が不規則に精を吹き出す。

 冴華は何度かそれを繰り返し、反応を確かめてから満足そうに口元を拭う。

「気持ちよかった? 自分より強い女の子にキスされて」

「はぁ、はぁ……う、うう、こんな……」

 キスだけで凌辱された総太郎は震えながら目に涙をためている。

 そこでくるりと冴華が身を翻した。シックスナインの体勢だ。

「舐めなさい」

 そう言いながら彼の顔を容赦なく尻で潰し、

ぐにゅぐにゅぐにゅっ!

 腰から下をくねらせて膣口を総太郎の鼻先に持っていった。

(さ、冴華のマンコが……)

 こうして間近で見るのは初めてだった。勝手に鼓動が高鳴る。

 気絶するまで自分を搾り尽くした名器。それはあまりにも清らかで、処女のそれにしか見えないほど薄桃色で美しい。

 総太郎が舌を伸ばし、静かに舐め始めると冴華が僅かに身震いした。

「上手ね。さすがは学園の女子を何人も侍らせてるだけはあるわ」

 彼女はしばらくその快感を味わってから、あらためて総太郎の顔に尻を落とす。

どすんっ!

「んぶぅっ!?」

「はい、そこまで。なんか調子に乗ってるみたいでムカついたから」

 自分が感じていたことを悟られないように冴華は目の前の肉棒を指で弾いた。

「あうぅっ!」

「なにこれ? おちんちんますます硬くなってない?」

 そのまま両手で総太郎自身を包み、石鹸を泡立てるように刺激し始める冴華。

しゅっしゅっしゅ……

「うあっ、ま、まずいっ!」

「あたしの手の感触、思いだした? 何度もイかせてあげたもんね」

 冴華の言うとおりだった。道場で、学園で、総太郎は冴華の手の気持ちよさを味わわされている。このまま射精へ導くことも容易だろう。

 しかし、

「あむっ……んちゅ、ちゅっ、れろぉ……」

 冴華が突然、肉棒の先に舌を絡め始めた!

(んあっ、こ、これ、は、ま、まさかっ!)

 総太郎はまだ自分がフェラされていることに気づけない。
 プライドの高い冴華が男を口でくわえ込むとは思えなかったからだ。

 そして、総太郎の予想に反して冴華のテクニックは男のツボを見事に捉えていた。


じゅっぷじゅっぷじゅっぷ……

(こ、この程度なら……!)

 単純なストロークだが、なぜか総太郎の性感を高めてくる。

ぬるるるるるる……

(あ、あっ、そんな奥まで! 嘘だろっ)

 ディープスロートは、まるで膣内に閉じ込められたときのようだった。
 射精感が一気に高まり、総太郎は拳を握りしめる。

 そこで、

ぺろぺろぺろぺろっ!

「あああああっ!」

 いたずらをするような舌使いで裏筋が集中的に舐められた。
 たまらず総太郎は甘い声で喘いでしまう!

「男に奉仕するみたいで好きじゃなかったけど、あんたは簡単に感じてくれるから」

 もはや射精寸前まで高められた肉棒を見て冴華は笑い、彼に見せつけるようにして舌を伸ばし、震える肉棒の一点にズプリと刺激した。

「さあ、イきなさい」

 その言葉通り、総太郎は絶頂してしまう!

「ううっ、ああああああーーーーー!」

どぴゅううぅぅぅ!

 こらえていたのに腹の底から一気に精液が駆け上がり、総太郎は一瞬たりとも我慢できずに果ててしまった。

「他愛ないわね」

 全力疾走をしたように息を切らせる総太郎を見ながら冴華は立ち上がり、彼の両足の間に座り直す。

「この弱いおちんちんを鍛えてあげないとね」

 そして総太郎の下半身を腰の上で抱き、固定させた。

「あ……ああぁっ!」」

「途中からずっと見てたよね。おっぱい」

 そう言いながら彼女は自らおっぱいを両手で持ち上げ、胸の谷間を総太郎に見せつけながらゆっくりと左右から肉棒を挟み込む。

ふにゅうぅぅっ

(や、やわらかいぃぃぃっ……)

 総太郎の腰が跳ね上がったのを見て冴華は笑い、

「当然気づいてたよ。だから作戦を切り替えたの。ふふっ、あれじゃあ私に負けて当然だよね」

ぐにゅっ、ぐにぐにぐにっ!

「あああああああーーーーーーっ!」

 外側からおっぱいを手のひらで挟んで複雑にこね回してみせた。

「ほら柔らかいでしょう? ここでおちんちんを責めるなんて初めてだわ」

「っ!?」

「あはっ、ドキドキしちゃった?」

「くっ……」

 冴華にとって初めてのパイズリと聞かされ、総太郎は自分でもわからない興奮に身を浸していた。

 だが素直に喜べない。
 自分を打ち負かした相手にこれ以上負けたくないという気持ちもあったのだが……

「そんな顔してないで、あたしの初めて……たっぷり味わってね」

むにゅっ、むにゅっ、むにゅむにゅ……

「うあっ、ああああーーーっ!」

 本格的に冴華のパイズリが始まると、数秒前まで抱いていた葛藤が快感で押し流されてしまった。

(これはっ、きもちいっ、こいつのおっぱいが、こんなに!?)

 大きさだけなら綾子のほうが上だろう。

 テクニックだけなら咲子のほうが上かもしれない。

 だが、今の総太郎は自分を打ち負かした冴華にパイズリされているのだ。

 いくら拒んでも劣情を感じてしまう自分より上の存在にペニスを弄ばれるのは屈辱でもあり、この上ない快楽でもあった。

 冴華を求めるように勝手に体が反り返ってゆく……

むにゅっ、むにゅううぅぅぅ!

「あ、あああ! い、イくっ、またっ、イかされ……」

「ふふっ♪ ……あはぁ、センパイのおちんちん、おっきいよぉ~」

「えっ!?」

 突然、冴華が偽の喘ぎを始めた。総太郎が彼女の顔を見ると、今までないほど可愛らしく口元を緩めている。

「あたしのおっぱい、センパイのせいでどんどん熱くなっちゃう」

 それが総太郎の心を一瞬で貫いた。

「くぅぅぅ! や、やめ……」

「やめないよ? センパイ、大好き。好きスキすきすき……」

「ああッ! やめろっ、やめてくれれえええぇ!」

 総太郎はこれが嘘だとわかっているのに興奮させられてしまう。

 冴華がこんな甘い言葉を吐くはずがない。
 自分を憎んでいるのだ。

 でも、もしかしたら好敵手として認めてくれているのかもしれない。
 そんな期待を抱いてしまう。

「さ、冴華……?」

「なぁにセンパイ。おっぱい気持ちよくないの?」」

むにゅっ、ふにゅううぅぅ!

「うっ、あああ、きもちいいっ、きもちいいいぃぃ!」

 総太郎がようやく素直な言葉を口にした途端、冴華の表情が変わる。

「……なぁんてね。ほら、さっさとイきなさいよ」

ぎゅむうぅぅぅ!

 今までで一番の締付けだった。大きめな冴華のおっぱいに垂直に差し込まれ、埋没した肉棒が内部でこね回される。

 そしてついに、

「ああああぁっ、さえかああああぁぁぁぁ!!」

どぷどぷどぷどぷ……

 彼女の名前を叫びながら総太郎は果ててしまった。

「うわ、おっぱいの中へ押し込めたのに水たまりができちゃった。相変わらず量だけはすごいねセンパイ」

 ばしゃっ、と音が出るほどの精液を彼の腹の上にぶちまける冴華。

 そして呼吸を乱す彼の鼻先で強気な言葉を放つ。

「これであたしのおっぱいにも勝てなくなったわけだ? ふふっ、あははははは!」

 高笑いする冴華に対して総太郎は何も言い返せなかった。

 冴華の、形の良い丸みを帯びた大きめのおっぱいは今までの誰よりも魅力的だった。
 それは彼が冴華に負け続けたことによるところが大きかったのかもしれない。

 ひとしきり笑った後で冴華は傍にあったタオルで自分の体を拭き、あらためて総太郎へと向き直る。

 汗と体液に濡れた彼女の体に総太郎は見惚れてしまう。

 自分がさんざん搾り取られた後だと言うのを忘れ、冴華の美しい体のラインに釘付けになってしまう……

「じゃあ挿れるよ」

 射精したばかりの肉棒を、足でそっと踏みつける。

「うあっ!」

 総太郎自身も信じられないほど早く肉棒が天を仰いだ。

 一秒でも早く冴華に犯してほしいと懇願するように。

「ふふ、良い反応ね。すぐに天国へ連れて行ってあげる」

 冴華が総太郎の体をまたぎ、そそり立つ肉棒の先に狙いをつけてゆっくりと膣口を近づけてゆく。

ずにゅ……

「あああっ!」

「前は全部飲み込むまで我慢できたけど今回はどうかな?」

 先端が滑らかに、吸い込まれるように膣内へ導かれると、総太郎は忘れようとしていた冴華の名器ぶりを明確に思い出す。

(奥へ行くほど締め付けが強くなる……しっかり気を張っていないと、持っていかれる!)

 無意識で歯を食いしばり、やってくる快感に耐えようとする。

ずぷ、ずっ……

「まさか途中でイっちゃうなんてこと、ないよねぇ?」

 ちょうど肉棒が半分ほど埋め込まれた時だった。

きゅうっ!

 何の前ぶれもなく冴華の膣内が狭くなり、肉棒を噛みしめるように刺激してきた!

「うあっ、くそぉ、だ、だめだっ!」

どぴゅっ!

 甘い刺激に耐えきれず総太郎が達してしまうと、

「あはっ、やっぱり駄目だったかぁ。センパイ早いもんね。続けるよ」

 冴華は想定済みだと言わんばかりに笑い、そのまま腰を沈めてきた。

ずぷんっ……

 そして完全に根本まで繋がってしまう。

 総太郎はすぐに肉棒に纏わりつく刺激に気づいた。

「こ、この動き……ああっ、うっ、ううっ!」

 快感が強すぎて動けなかった。両手を彼の胸についたまま冴華は内部だけを動かして精液を搾り取ろうとしている!

(前よりもずっと吸い付いてくる上に、冴華の膣内が勝手にチンコに絡みついてくる……こ、この中に挿れてるだけで消耗しちまうなんて……!)

「くすっ」

 耐える総太郎を無視して、冴華は何も言わずに腰をスライドさせ始める。

 総太郎が挿入直後に連続射精しなかったことを称えるような腰使いだ。

ずちゅっ……ぐちゅっ……

「はぁぁっ、ああっ、くそっ、うっ、あああっ!」

 ゆっくりと肉棒全体を舐めるような、先端から根本までをまんべんなく刺激する腰使いは前回冴華との騎乗位で味わったものだった。


「ああ、これも弱かったよね。スローなグラインドなのに全然我慢できなかったのすっかり忘れてた」

 前傾姿勢になるほど彼に接近しながら冴華は言う。
 そして艷やかな体が離れると、総太郎への締付けが僅かに強くなる。

 冴華が体を浮き上がらせるようにしてから、腰を後ろに引くと淫らな音がした。

 ぐちゅっ……

「あうっ、はうぅっ!」

「もうイけば? どうせ我慢しても無駄なんだから」

 そして、冴華は再び顔を寄せ、おっぱいを彼の胸に預けるような姿勢で囁く。

「イ・け♪ このヘンタイ男!」

くにゅうううぅぅぅぅ……

 同時に肉棒を甘く締め付け、軽く腰をひねる。

「んあああっ、でるうううぅぅぅ!」

どぴゅううううっ!

 ただそれだけで総太郎は絶頂させられてしまった。


「ふふっ、また完封。セックスになってから反撃らしい反撃が一回もできてないよセンパイ?」

「くそっ、くそおおおおぉぉぉぉ!」

 冴華に煽られて発奮した総太郎が腰を突き上げる。

 それはあまりにもがむしゃらで、単調な怒りに任せた反撃だった。

「どこまで頑張れるかなぁ?」

 ニヤニヤしながら冴華は総太郎の動きに身を任せているが感じていると言った様子ではない。
 二回、三回、四回と徐々に力強さが失われてゆき……突き上げが二桁に達する前に冴華が腰を上げ、向かい打つように彼の動きを撃ち落とした。

ずちゅんっ! きゅううぅぅぅっ! ……ビクビクビクッ!

「かはぁっ……」

 腰の突き上げを封じると同時に肉棒を締め上げ、総太郎を喜ばせながら冴華は楽しそうに笑う。

「ふっ、結局何をやっても無駄。セックスでも格闘でもあたしに勝てないダメ男」

 そう言いながら膣肉を振動させると総太郎の口から甘い声が漏れる。
 彼の弱点であるカリを重点的に締め付け、緩める時に腰を揺らしているのだ。

「気持ちいいんだ? ザコなのに感度は抜群だね」

「ああぁぁ、ちくしょ……!」

「今の言葉で感じちゃった? 膣内でおちんちん喜んじゃってるけど」

 冴華は体を倒し、両腕で彼の顔を抱きしめるようにしながら続ける。

「ふふっ、脱臼させられて腕も上がらない。あたしを抑えることも抱き返すことも出来ないなんて惨めね。もう何も考えなくていいよセンパイ。あたしの技に溺れて、快楽に押し流されて、毎日今日のことを思いだしながらオナニーしちゃいなよ」

 それを聞かされた総太郎は泣きそうになる。肉体は冴華の膣内で喜ばされているというのに、心まで支配されることにはまだ抵抗があった。だがそれ以上に、

(も、もう冴華とのセックスは出来ないのか……)

 冴華に対して性欲が抑えられなくなっていた。
 美貌の仇敵とはいえ、普段の彼ならありえない願望。
 これまでのキスや手コキ、パイズリ、フェラによって総太郎の意識に冴華に対する認識の変化が訪れていた。

 それが顔に出ていたのだろう。冴華が慰めるように言う。

「不安そうな顔しちゃって。ま、気が向いたら犯してあげるよ。格闘でボコボコにしてからになるけど」

 小さく笑った後、冴華は体を起こし、膝立ちではなく足の裏をしっかりと畳につけ、肉棒を挿し込む角度を整えた。

「じゃ、この間の復習しようか?」

 その時、総太郎の体にぞわりとした快感が蘇る。

 冴華が下半身に力を入れると、膣肉の感触に変化が生じた。
 甘く吸い付いてくるだけだった膣壁が、うねうねと蛇のように動き、強くペニスを絞めつけてきた!

 ぐにゅぐにゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅううぅっ!

「あ……ああああぁ! でっ、出っ、出るううぅっ!」

 びゅくっ、びゅくっ!

「はい、また瞬殺。さすがにこの技は我慢できないよねぇ。あなたが気絶するまで搾られた技だもん」

 冴華が激しく腰を動かし始めると、総太郎の喘ぎも際限無く大きくなる。

ぐちゅちゅっ、ぐにゅっ、ずちゅううううぅっ!

 びゅるるるっ! びゅくんっ、びゅくっ……!

「ひっ、あがっ、ああああぁっ!」

 すでに総太郎は白目をむきかけていた。

「気持ちいいはずよね。もちろん今日も前と同じ目に合わせてあげるつもりだけど」

ちゅ……

 軽く合わせるだけのキス。だが、白目をむいていた総太郎の意識が戻り、弓なりにそっていた体が落ち着きを取り戻す。

「あ、あれ、なんで……」

「この技とキスを組み合わせると気絶できなくなるんだよ? だからセンパイは何も気にせず目一杯射精してればいいの」

 そして名器による蹂躙が繰り返される。
 緩やかな腰使いだが膣内は肉棒をからかうように蠢き、激しい快感を与え続けている。

「たまにこんなことをしてみたり♪」

 冴華は腰の動きを止めて、可愛らしくウィンクしてみせながら総太郎の胸板に自らのおっぱいを当てる。

ふにゅん、むにゅっ……

「あ、ぅ……やわらかい、さえかの、おっぱい……やわらかいよぉ……」

 冴華の甘い香りとおっぱいの柔らかさで骨抜きにされた総太郎はそのまま射精してしまう。

ぴゅるっ……びくっ、びくっ……

「神倉流・獄淫……蜘蛛絡め。もっと吐き出してもらうわよ」

きゅっ、きゅうううぅぅぅぅ!

びゅるっ、どぴゅっ、びゅくんっ!

「がっ、あっ、なっ!」

 天国のようなおっぱいの柔らかさに酔いしれながら精を搾り取られていく感覚が彼を再びのけぞらせ、叫ばせる。

 快楽の無限ループだった。
 強烈な締付けで精液を搾り取られ、意識が消えかけるとキスで呼び覚まされる。

ちゅうぅぅ……

 冴華の口づけが、快楽地獄に落ちかけた総太郎を救う蜘蛛の糸のように伸びて、彼の意思に関係なく正気を取り戻させるのだ。それは細く強靭で淫らな糸。

「はぁはぁ……でな、い、もう、でないからぁ!」

「なに言ってるの」

ぐちゅううぅぅぅ!

「ひぎっ!」

「はい、おかえり。じゃ、またあたしのおまんこで気持ちよくなりなさい」

 意識を戻されるたびに何度も冴華の顔を見続けてるうちに、総太郎は無意識に彼女の名前を呼び続けるようになっていた。

ちゅっ、ちゅ……

「さ、冴華っ、さえか、さえかさまああぁぁぁぁ!」

「ふふっ」

 冴華は彼の手を握り、指と指を絡ませながら腰を振る。

ずちゅずちゅずちゅっ!

「あああっ、イくっ、またイかされるううぅぅぅ!」

どぴゅうううっ!

 そして体を倒して顔を寄せ、


「ほぉら、ここでキスすれば……」

ちゅっ……

 総太郎の顔が嬉しそうに緩み、全身が脱力した。

「うっ、ああぁぁ……冴華、さまぁ……」

「なぁに? 総太郎」

 乱れた前髪をかきあげ、膣内を緩めたまま総太郎の口内へ舌先を突き刺す冴華。

じゅぷっ、ちゅうううぅぅぅぅ!

「んぐうううっ!」

 冴華の舌先が総太郎を絡め取り、クイクイと引っ張りながら次の射精へと導く。

どぴゅっ、どぴゅ、ぴゅ……

(ふふっ、もうすぐ堕ちそうだね)

 もはや冴華のキスだけで絶頂してしまう総太郎。

 彼女との濃厚なセックスが総太郎の絶頂とキスを紐づけた結果だった。

 いつしか道場は淫らな熱気で包まれていた。
 その中心にいるのは彼ら、総太郎が何度も絶頂するたびに冴華の肌は艷やかさを増していく。

「おちんちん硬いね。ほぉら、いいこいいこ♪」

 螺旋を描くように軽く腰を揺らしてやると、総太郎の肉棒全体が膣内でねっとりと撫で回される。
 その優しい刺激に総太郎は身悶えしながら彼女を見上げてしまう。

「うあっ、ああ、きもちよすぎてっ!」

「もう完全に性技の虜だね。こんなに射精させられてみっともない顔まで晒しちゃって。ねえセンパイ、あたしにメチャクチャに犯されるの好き?」

 不意に尋ねられ、一瞬だけ躊躇いを見せる総太郎だったが、名器が紡ぐ快感に弄ばれるうちに思考を放棄してしまう。

「すっ、すき、すき……さえか、さまああぁぁ!」

「はいはい。あたしも好きよ、総太郎」

 彼をギュッと抱きしめ、耳元で平然と偽りの愛を囁く冴華。
 だが、もはや虜に成り果てた総太郎にはその声が素直に染み込んでいく。
 冴華が本気で男を好きになることなどないのだ。

 そんな事も知らず、総太郎は冴華の名を叫びながら果て、キスで目覚めるとまた犯された。

 やがて気を失うころ、冴華への憎しみや悔しさで歪んでいた総太郎の顔は満足そうな笑顔に変わっていた。



 つぎに彼が目覚めたとき、自分に何もなくなっていることに気づくだろう。

 男の意地も、妹の奪取も、道場の看板も何もかも。

 だが一筋の光明が見えるはずだ。

(冴華……様……)

 無意識でつぶやく彼は、夢の中でも冴華に犯され続けている。

 もはや自分には冴華しか残されていないことに気づくだろう。

 総太郎の物語は神倉道場で幕を閉じるのだった。





(ここまで)
初稿 2026.05.03
修正 2026.05.18














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