コンサートの最中、如月千早のステージで突然アクシデントが発生した。
961プロの黒井社長の陰謀により、彼女の持ち歌のオケが流れなかったのだ。
しかし千早は動じること無く、自らの判断によってアカペラで「眠り姫」を歌い始めた。
それは、曲のイントロが始まらずにざわめく観客の心を鎮め、一瞬で会場を静寂を取り戻した。
高らかに謡う歌姫の独唱は観客だけでなく、黒井社長が買収したはずの音響スタッフの心までも揺さぶった。
「眠り姫~ 目覚める私は~」
Bメロが始まるタイミングで曲が流れ出す。
そして全てが終わったとき、千早は今までにないほど大きな歓声に包み込まれた。
□
ステージを終えた千早は、舞台の袖で控える仲間たちに向かって頭を下げた。
「みんな、ありがとう……!」
「千早さん、ミキ感動したの! 今日のステージは、きっときっと忘れないの!」
765プロが誇るビジュアルクイーン・星井美希ですら、今日の千早の姿には感動を隠さない。
一時は週刊誌の報道などで精神的なダメージを受け、再起不能とまで言われた千早が、圧倒的な歌唱力で観客を魅了したのだ。
「ちょっと、次っ! スタンバイスタンバイ!」
プロデューサーである律子の声で、アイドルたちは我に返り、自分たちのステージへと走っていく。
「ミキ、千早さんに負けないように頑張るの!」
当然、次を任された美希にも力がこもる。
「……春香、ありがとう!」
「んふっ、どうしたの? 急に……」
「あの時、春香がいなかったら私……きっとあのまま歌えなくなっていたと思う」
千早は心の底から感謝していた。
先週の定例ライブで、なんとかステージに立ったものの声が出せず、崩れかけた千早に寄り添いながら歌を支えてくれたのは春香だった。
だから今日はどんなことがあっても、春香のためにステージを成功させる決意があった。
「大げさだよー! 千早ちゃんが歌えなくなるなんてこと、絶対ありえないよ!!」
「春香……」
「私はずっと信じてたもん。どんなことがあっても、千早ちゃんはここに戻ってくるって」
親友の一言に、千早はまた泣きそうになってしまう。
ここまで自分を信じてくれた春香に、もっともっと恩返しがしたい。
「ねえ春香、今度のオフなんだけど……ひま?」
「う、うん」
「じゃあ、私に付き合ってくれない?」
春香はニッコリと微笑みながら一度だけ頷くと、ステージに向けて駆けていった。
□
そして久しぶりの休日、春香と千早はショッピングモールで待ち合わせをした。
「千早ちゃんとお買い物できるなんて思ってなかったよ!!」
「すごく活き活きしてるわね、春香」
「こういうところは苦手? 千早ちゃん」
「そんなことはないけど……」
自分から誘ったこととは言え、予想以上の人ごみに千早は戸惑っていた。
春香はそんな彼女の手を引いてショッピングを楽しんだ。
「いっぱい買っちゃったね! しょうがないよね、この洋服が可愛いんだもん」
「春香と一緒にいると、私も元気になれるわ」
それから数時間後、買い物を堪能した二人はショッピングモールをあとにした。
(これで少しは恩返しできたかしら……)
駅までの途中、千早はチラリと春香の横顔を覗いた。
彼女の表情を見る限り、大満足といった様子なのだが……千早の中ではまだ不十分に思えた。
「あっ…………」
その時、奇妙な建物が千早の目に入った。
その入り口にある看板には「ホテルクォーターゲート」と書いてあった。
「……ねえ、ここに入ってみない?」
「ほえっ!? ち、千早ちゃん……ここって…………!!」
「……」
千早は何も言わずに春香の手を引いて、建物の中へと入っていった。
□
「フリータイムだって! カラオケみたいだねー!!」
「そ、そうね……」
「どうしたの? 千早ちゃん」
春香はベッドに腰掛けながら落ち着かない千早を見て、不思議そうにしている。
「うん、だってこんなにあっさり入れるとは思ってなかったし……」
出入り口で断られたり、不審な目で見られたりしたら、そのまま立ち去るつもりだったのだ。
「千早ちゃん、けっこう大胆だねぇ?」
「えっ、そんなことはッ…………でも、どうしよう」
一大決心の末、春香の手を引いてラブホテルに入ってみたものの……何をして良いのか見当が付かない。
(カラオケもあるみたいだけど、私たちいつも歌ってるし……)
困り果てている親友の様子を見て、春香が口元を緩めた。
「どうするも何も、せっかくだから一緒にお風呂にはいろ?」
「えっ、でも……」
「いいからいいから♪ ほら、広いよー」
「春香っ!」
着ている服を素早く脱いで、春香が先に浴室に入った。
そしてドアから顔を出して、千早を手招きした。
シャアアアアアアア……………………
まだ冷えている床タイルに、暖かなシャワーのお湯が降り注ぐ。
もうもうと立ち上がる湯気に身を隠しながら、千早がポツリと呟く。
「私、恥ずかしいな……」
「どうして?」
先にシャワーを浴びていた春香が、ボディソープを手に取りながら千早に尋ねた。
「だって、私……」
「もしかして、気にしてるのは……ここかなっ?」
「きゃあああぁぁっ!」
突然、千早の胸にぬるりとした感触が湧き上がった。
春香の両手だった。
「あっ、ああぁぁ!」
襲い掛かってきた春香の両手が淫らに這い回る。
指先で柔らかく千早の胸を刺激しつつ、性感帯を探しているように……
「可愛い乳首……♪」
「や、やめて! 春香っ」
背中を抱きしめられながら、耳元に春香の吐息を吹きかけられる。
妖しげな指先の動きと、春香に抱かれている感覚の両面攻撃に、千早は悶えるしかなかった。
「ううん、やめない。だって綺麗なピンク色で、お肌も真っ白…………うらやましいな」
ぬるついた春香の指先が、千早のふくらみを覆い隠しながら時々軽くつねってくる。
その度に千早は身体を丸めようとするが、巧みにはぐらかされてしまう。
「う、うらやましい? 私が!?」
「うん、千早ちゃんってすごく綺麗なんだもん」
かぷっ……
千早の首筋に軽い痛みが走った。
「ひっ! は、はぁっ、春香……噛まないでええぇぇ!」
「痛くはないでしょ?」
「う、うん……でも、なんかヘンな感じなの…………」
まるで吸血鬼に血を吸われたように、千早の身体から力が抜けていく。
脱力しかけた千早に、さらにじっくりと春香が愛撫を重ねていく。
「んふふ♪ 綺麗なだけじゃないんだ……」
ゆっくりと胸からへそ、へそから秘所へと指先が舞い降りてゆく。
ほっそりとした千早の脚の間に、春香は太ももを割り込ませた。
「こうすると……どう?」
引き締まった千早の脚の間に割り込ませた太ももを、ゆっくりと前後に動かす。
「あ、ああぁぁっ!」
すべすべの春香の太ももの表面が、千早の秘所に快感を植えつけていく。
「私の脚で感じちゃう?」
「あんっ! あっ……ひぃっ!!」
春香は千早を抱きしめながら、こっそりとクリトリスを優しくねぶった。
細い指先が包皮を撫で上げる瞬間、千早は顎を跳ね上げ、快感を押し殺そうとした……が、それは難しかった。
「千早ちゃんって……すごく可愛い」
春香はシャワーの前にある大きな鏡に向ってニヤリと微笑んだ。
「あ、ああぁっ! 春香っ!」
鏡の中に写るのは、頬を朱色に染めて春香に身体を預ける千早の姿だった。
(は、恥ずかしい……! 私……)
千早の可憐な乳首を指先が這い回り、予想の出来ない快感に晒されている。
そして手のひらで身体中を撫で回されるたび、自然に声を上げてしまうのだった。
「だからぁ……そんなに気にしちゃ駄目だよ?」
すっかり力の抜けた千早の身体を反転させてから、春香は正面から力いっぱい抱きしめた。
「ほらぁ、私だってそんなに大きくないし……ね?」
「うそ……春香の胸、大きいよ……」
「もうっ! そんな悪いこと言うお口は…………んんっ♪」
「ひぅっ!?」
右手の人差し指だけで千早の顔を自分の方へと向かせると、春香はそのまま静かに唇を重ねた。
さらに空いた腕でその細い身体を抱き寄せると、お互いのバストが重なり合った。
(春香が私に……キスをっ!?)
いくら親しい仲とは言え、女同士でのキスなどありえない……それは千早にも良くわかっていた。
しかし身体に力が入らない。
顔を逸らす気力も起きない。
知らず知らずのうちに、千早は春香の唇の味に酔わされていた。
「……千早ちゃんは自分のいいところ、わかってないみたい」
長いキスのあと、春香が言った。
「……どういう意味?」
「今から教えてあげる♪」
春香はもう一度優しく唇を重ねてから、千早の身体を手のひらで優しく洗ってやった。
□
「ここからが本番だよ」
「は、春香……私!」
もうこんなことはやめようと言い出す前に、春香の指先が千早の髪に触れた。
「まずはここ……」
「あっ……!」
千早の左耳に優しく触れながら、春香は手のひらを徐々に開いた。
絹糸のような長い髪が指の間をすり抜けていく。
「綺麗な髪……私もこんな風にツヤツヤのロングだったらいいのにな」
(ああぁ、なんで……髪を触られてるだけなのに!)
「気持ちいいでしょ? 髪の毛って。結構感じちゃう人は多いんだよぉ。今の千早ちゃんみたいにね!」
「だ、駄目…………!」
千早は春香の手の動きを止めようとしたが、簡単に振り払われてしまった。
「もっと素直になっていいんだよ? 千早ちゃん」
「春香……なんでこんなの上手なの?」
「くすっ、まだわからないんだぁ」
息を弾ませる千早をいたわるように、春香はもう片方の手で正面からバストを愛撫した。
「あはぁぁぁ!!」
「すごい声…………」
細い指先が自分の左胸を不規則に蠢く。
それ以前に優しく髪を撫でられているせいで思考がまとまらない。
「……千早ちゃんのこと、好きだからだよ?」
「私のことを…………?」
「綺麗な髪も、スベスベのお肌も、長くて細い脚も……全部大好き」
胸を愛撫していた指先が千早の太ももへと移動した。
春香の愛撫によってすでに桃色に染まり、興奮している様子を見せている。
「ほら、膝立ちになって?」
言われるがままにベッドの上に両膝をつくと、千早はそのまま後ろに押し倒されてしまった。
「あ、ああぁ……春香……」
自分よりも短い春香の髪が、鼻先をくすぐる。
少しずつ春香に溺れていく自分を止めたいのに……甘いシャンプーの香りが千早の意識を曇らせる。
「すごくドキドキしちゃうね?」
「う、うん…………恥ずかしいよ」
「いつか千早ちゃんをね、こんな風に抱きしめてあげたいなって思ってたの」
(これって……まるで告白みたい。春香、そんなに私のことを?)
男女の差はあれど、春香は本気で自分のことを想っている。
そう感じた瞬間、千早の心を縛っていた鎖が解けていった。
千早を抱きしめながら、小さな声で春香が言う。
「そろそろいいかな?」
「えっ」
「ふふっ、ここもいい感じだよ? 千早ちゃん」
春香は上体を起こして、身体を反転させた。
そして力が入らない千早の両足を開き、彼女の秘所に顔を沈めた。
「え、何をするつもりなのっ! 春香、そこはい、いやああぁぁっ!」
「ぴちゅ、ぷちゅ…………うん? どうして?」
千早の声に気づいた春香は愛撫の手を緩めた。
「だ、だって! そんなところ……急に舐められたらっ!!」
「んふっ、じゃあ今から舐めるね?」
「そういう意味じゃ……はああぁぁぁぁっ!!」
軽く宣言してから、再び春香の顔が沈む。
すっかり濡れそぼった千早のつぼみを軽く舌先でいたぶる。
「ひゃああぁっ!」
今まで人に触れられたこともない千早の敏感な部分を、春香は丁寧に舐め上げた。
ぷっくりと膨らんだ皮を剥き、真っ赤になった核のみを舌先で責める。
「くす……おいし♪」
「い、いやぁ…………春香、私っ! そんなことされたら……ああぁぁ!!」
「すっかり目がとろけちゃってるよ、千早ちゃん……」
恥ずかしげに閉じようとする美脚を、春香は軽々と押さえ込んだ。
抵抗する真っ白な太ももを撫で上げたり、舌を這わせてやると無言で千早の身体は歓喜に震えた。
「は、はる……かぁ…………好き……」
「その顔、すごく可愛い。もう一度キスしちゃうね……」
春香は再び千早と向き合って、優しく唇を重ねた。
すっかり心と身体をほぐされたおかげで、千早は快感を素直に受け入れつつあった。
「あはぁ……」
「もう虜になっちゃったかな? そろそろ指を入れてあげる……」
たっぷりとクンニされた千早の秘所は、既に切なそうに震えていた。
春香は指先を折り曲げ、おそらく処女であろう彼女の膣口を傷つけないように内部に指を忍ばせた。
「愛してあげる……」
「あ、あぁ! 何かが入ってくる…………!!」
「私の指だよ? ふふふっ」
春香の指先がゆっくりと千早の内部を這い回る。
それは全く痛みを感じさせない極上のテクニックだった。
「千早ちゃんのアソコ、すごくきついね……それに熱い」
「やめて…………言わないで…………」
「恥ずかしいの? うふふ……私、男の子じゃないけど千早ちゃんに夢中になっちゃいそう」
春香の人差し指が千早の一番感じるスポットに触れた瞬間、まるで海老のように千早の身体が跳ねた。
「はぁぁん! な、何っ……!?」
「だって、こんなにいい反応を返してくれるんだもん」
突然の快感に戸惑う千早に追い討ちをかけるように、春香は無防備な乳首をそっと口に含んだ。
「そ、そんな! 乳首をアソコを同時になんて……!!」
「乳首をコリコリしながらアソコをかき混ぜられると……うれしくなっちゃうね?」
「あっ、ひいいっ、はぁん、ああああぁぁ~~~~~!」
無意識にベッドの上で逃げようとする細い身体を、春香は決して逃がさない。
愛撫を続けながら千早を横向きにさせて、背中を抱きしめる。
「すごい声だね……そんな声で鳴かれたら、あたしも興奮しちゃう」
実際、春香がもし千早に秘所を愛撫されていたなら……あっという間に達してしまうだろう。
それほどまでに清純な歌姫・千早が腕の中で悶える姿は官能的だった。
「アソコの中、もっとかき混ぜてあげる」
「だ、だめぇ! そんなことしちゃ、もう私…………」
「千早ちゃん、あたしの彼女にしてあげる。だからこの指で、もっといっぱい感じて……?」
終わることのないアイドル同士の秘め事は、千早が完全に気絶するまで続いた。
――1時間後。
「…………千早ちゃん、ごめんね。ごめんね!」
そっと握られた手の感触で、千早は意識を取り戻した。
「はる……か…………?」
やっと意識を取り戻した千早を見て、春香は申し訳無さそうな顔をした。
「あ、あの! あたし、激しくしすぎちゃったよね……?」
「……そんなことない。春香の気持ち、伝わったから」
心配する春香に向かって、千早は軽く微笑んだ。
そして優しく手を握り返した。
「よかった。これで『約束』が守れたよ……」
「春香? なんのこと?」
「ううん、なんでもない!」
ポツリと呟いた春香の言葉を千早は気にしないことにした。
自分から誘ったとは言え、ラブホテルでの春香との情事は刺激的過ぎた。
――そして次の日。
事務所に出社した春香は、誰もいない時を見計らってプロデューサーに報告した。
「プロデューサーさんとの約束……守りましたよ!」
「約束? な、なんのことだい? 春香」
「えっと、『千早を支えてくれ』っていうあれです……!」
「ああ、あれは……春香だけじゃなくて、皆に向けていったんだよ」
「えっ?」
プロデューサーの言葉を聞いて、春香は固まってしまった。
そして自分が千早にした行為を思い出して、トレードマークのリボンのように顔を真っ赤にした。
「ええええ~~!! じゃ、じゃあ別に一緒にお風呂に入ったりしなくても良かったんですかぁ!?」
「なっ! なんだって!?」
「ひゃうっ! いいえ、なんでもないです! 気にしちゃ駄目ですよ、プロデューサーさん!!」
春香は照れ笑いをしながら背を向けて走り去った。
(了)