「律子ッ!」
事務所についてすぐに、俺は同僚の律子に声をかけた。
「あら、おはようございます。プロデューサー」
声をかけられた彼女が振り向く。
いつもどおり長い髪を一つにまとめ、きちんとスーツを着こなした律子が微笑んでくれた。
思わず見惚れてしまいそうになる気持ちを抑え、俺は唐突に切り出す。
「急な話で悪いんだけど、明日のフェスに参加してもらえないかな? うちのユニットのメンバーとして」
「な、なんですかそれっ!」
これにはさすがに律子も驚いたようだ。
実は俺が育てているユニットのリーダーである星井美希が体調を崩してしまった。
(そりゃ驚くよなぁ……しかし……)
明日の予定はずらせない。高木社長からの指示なのだ。
誰か代役を立てなければならないわけだが、美希の代わりなんてそう簡単には勤まらない。
そこで俺がたどり着いたのが律子だった。
「プロデューサー、私はもう『元アイドル』なんですよ?」
「そんなの関係ない! 律子は振り付けだって完璧だし、それにまたいつかアイドルのステージに立ちたいって言ってたじゃないか!」
「それは……確かにそう言いましたけど!」
俺は知っている。
美希の持ち歌の振り付けも、元々は律子が教えたものだということを。
それにアイドル時代の歌唱力も素晴らしかった。
きちんと化粧をしたときの華やかさも、おそらく美希以上だと思う。
俺は藁にもすがるような思いで律子を見つめ続けた。
「あっ……そんなに……じっと見つめないで下さい」
「ご、ごめん!」
「ん~……他の子じゃダメなんですか?」
困り果てた表情の彼女を畳み掛けるように、俺は本心を口にした。
「俺は律子のことをプロデュースしてみたいんだ」
「!」
「出来ればこれをきっかけに、アイドルとして本格的に復帰してみないか?」
これが偽らざる本心。
俺は律子をソロデビューさせたいと考えていた。
ビジュアルも歌唱力も、俺が磨けば律子は光る。
今までは誰も手をかけなかったから光らなかっただけだ。
このまま埋もれさせるには惜しいダイヤモンドの原石。
アイドルとしての完成形を世に送り出したい……これは俺の夢でもあった。
「そんな……竜宮小町はどうするつもりですか?」
不安そうな瞳で律子が尋ねてきた。
責任感の強い彼女らしい、もっともな質問だと思う。
「あの子達なら平気だよ。律子も居るし、俺もいる……」
「なっ!」
その言葉を聞いた律子が絶句した。
俺の言葉に嘘はない。律子共々、竜宮小町のことも面倒を見るつもりだ。
しばらく黙り込んでいた律子が、俺の眼を見つめながら聞いてきた。
「……本気なんですね?」
「ああ」
彼女のことも、竜宮小町のことも、もちろん俺の育てているユニットのことも全部プロデュースする覚悟はある。
俺は律子に向って力強く頷いて見せた。
「じゃあ私から一つだけお願いがあります」
「うん? なんだ」
俺から無茶な要求をしている以上、彼女からの願いも聞いてやらねばならないと思う。
できるだけのことはしてやりたいと考えていた矢先、律子が俺に向って一歩足を踏み出してきた。
「私を抱いてください」
「えっ……えええええ!?」
細い身体を俺に預けるように、律子が抱きついてきた。
淡いコロンの香りや、柔らかい髪が俺の鼻先をくすぐった。
「ど、どういう意味だそれっ!」
俺が問いかけると、律子は頬を赤くしながら小さな声で答えた。
「ずっと好きだった……あなたが初めてここに来たときから」
「…………!」
マジか?
こんなに近くに居たのに全然気づいてあげられなかった。
(俺が鈍いだけなのか……?)
いや、律子は自制心が強いからそんな事を少しも感じさせなかっただけなのかもしれない。
きっと事務所の誰も、俺に対する律子の気持ちなんて気づいていない筈だ。
「アイドルとして過ごした数年間、ずっと恋人なんて居なかった」
律子が寂しそうにポツリと言った。
確かにアイドルにとって、恋人の発覚などは致命傷だ。
事務所側だって交際やその他のスキャンダルの元は一切排除したい。
「それなのに、またアイドルに戻ったら……もう恋なんて出来ない」
俺の腕の中で、彼女が小さく震えた。
「だからお願い、プロデューサー!」
これが律子の願いなら叶えてやりたいところではあるけど……俺自身の気持ちの整理がつかない。
本当に彼女を抱いていいのか?
「今夜だけでもいいの……私を愛してください」
律子の積極的なアプローチに、俺はとうとう首を縦に振ってしまった。
――その夜。
俺と律子は遅くまで事務所に残っていた。
そして日付が変わる頃、俺達は事務所の会議室へと向った。
「あ、ああぁぁ……プロデューサー!」
会議室に入った瞬間、俺の理性が飛んだ。
ほっそりとした彼女の身体を抱きしめ、衣類を脱がせてゆく。
「すごく優しいんですね……こんなに感じちゃうなんて……んうっ!? ふああぁぁっ!」
そっとキスを重ねてから、律子の控えめな唇に舌先を滑り込ませる。
「エッチ……」
すでにトロ~ンとした目つきの彼女を抱きしめながら、ゆっくりとブラウスを脱がせていく。
そして三つ目のボタンを外したとき、真っ白な彼女の肌が……胸の谷間が俺の視線を釘付けにした。
「律子の胸……!」
「うふふ、けっこう自信あるんですよ……」
俺の目の前で、ブラで締め付けられて窮屈そうにしている魅惑の双丘がプルンと揺れた。
大きさこそ貴音やあずささんに敵わないかもしれないが、律子のバストは綺麗な形をしていた……。
「綺麗? ホント?」
少し照れたような声で律子が言った。
どうやら俺は無意識に綺麗だと口にしてしまったらしい。
ファサッ
律子が髪を解いた。
普段は目にすることのないヘアスタイルに、ちょっと気持ちが高ぶる。
「……美希よりも綺麗かな?」
さらにメガネを外した彼女が、上目遣いで問いかけてきた。
その大きな黒い瞳に吸い込まれそうになる。
(律子は美希をライバルだと思っているのかな?)
本当はそんなに深い意味はないのかもしれない。
しかし今、目の前に居る女性は間違いなく俺が知る中で一番美しい。
「誰よりも綺麗だよ……」
「ふふっ、本気にしますよ!」
彼女は俺に寄りかかりながら、カチャカチャとベルトを外し始めた。
そしてしばらくして、俺と律子はお互いに生まれたままの姿になった。
「は、はずかしいな……」
「うふふ、そうなんだ?」
律子は俺の腰にそっと手を添えると、静かにしゃがみこんだ。
「私を褒めてくれたお礼に……はむっ!」
チュプッ……
「ああぁっ!」
既に半立ちになっていたペニスが、温かな律子の口の中に放り込まれた。
ヌルヌルとした刺激が俺を震えさせる。
ズリュプッ、ジュプウウ……
(フェラ、うま……い……!)
律子の顔が俺の股間でゆっくりと前後する度に、腰周りが溶かされていくようだった。
恐らく男性経験などないはずなのに、彼女の愛撫は俺をあっという間に射精間際まで追い詰めた。
「んふ……大きくなってる……ピチュッ」
すっかり息が荒くなった俺をいたわるように、律子がペニスを解放した。
彼女の唾液と俺の我慢汁が飛び散って、会議室のフロアに小さなしみが出来た。
「トクントクンって、私の手の中で気持ちよさそうにして……」
そして今度は手のひらで俺自身を包み込んで、優しくバイブレーションをかけてきた。
スベスベした律子の指先が俺の感じやすい部分をクリクリと弄ぶ。
「りつ……こ……すごい……! んああっ!」
ピチュッ
新たにペニスが我慢汁を吐き出したのを感じて、彼女はそのしずくを舐め取った。
痺れるような甘い刺激に再び俺は悶えた。
「このまま舐め続けたらイっちゃう?」
「……」
いたずらっ子のような瞳で、彼女が俺に問いかける。
俺が黙って頷くと、律子が優しく俺を押し倒した。
女性上位の体勢のまま、律子がそっとペニスを掴む。
「じゃあそろそろ挿入(いれ)てあげる」
チュクッ……!
「あああぁぁっ!」
律子の指先が軽く俺自身をしごく。
自分では決して得られない刺激に歯を食いしばる。
「くすっ……」
俺の様子を見ながら、彼女は自らの秘所に亀頭を何度も擦りつけた。
既にヌルヌルになっているお互いの感じる部分を合わせ、更なる快感を引き出そうとしてくる。
「私の初めての人……」
「えっ……?」
俺が声をあげると、律子は一度だけ微笑んだ。
「ううん、なんでもないです。では……」
彼女は口元をキュッと閉じると、一気に腰を沈めてきた。
ズップウウウウゥゥゥゥゥ!
「うあああぁっ!」
熱い! 律子の膣内がペニスに絡みついて!!
「あはあああぁぁぁっ!」
その刺激は俺だけではなく彼女の身体中にも駆け巡っているようだ。
律子は目を閉じたまま苦しげに身体を震わせている。
目じりに小さな涙の粒を浮かべ、フルフルとまつげを揺らしている。
「気持ちい……い…………あ、あんっ」
「!?」
律子がゆっくりと目を開いた。
そしてうっとりとした表情を浮かべると、ゆらゆらと腰を振り始めた。
クチュ……クチュッ、チュプッ!
膣内のざわめきがペニスにまとわりついたままでのピストン運動に、俺は一気に射精しそうになる。
「こ、腰が……あ、ああぁぁ!」
とろとろになった律子の内部で、ペニスが揉みくちゃにされていく。
俺の上で妖しく踊る律子の姿を見ているだけでもイきそうだというのに!
「すご……い……! 熱くて、愛しくて……」
「律子、俺……も、もう…………あっ!」
「プロデューサー、お願い……来て! 膣内で出して……!!」
俺の限界を察した彼女は、腰の動きを止めずに俺をじっと見つめてきた。
「こんなに気持ちよくされたら私、もう離れられない……あなたしか見えない……!」
呼吸を弾ませたまま彼女は言う。
俺の顔の脇に両手をついて、ゆっくりと腰を回しながら律子が身体を預けてきた。
(俺も……律子のことしか考えられなくなってしまいそうだ!)
下半身を、全身を包む優しい刺激から抜け出せない。
身体も心も律子の中にとろけていく……。
「だからいっぱい出して……プロデューサーの思いを私の中に」
「しかし…………うわあああぁ!?」
「んふっ、キュウウウ~~ってしちゃう!」
その言葉通り、律子の膣がペニスを締め付けた。
細い足が俺の腰にまとわりつく。
彼女は何度も自分の腰をグリグリと回し、俺を喜ばせた。
「が、あ……出る……!」
「……逃がさないよ? もう我慢できないでしょ? ほらっ、ほらぁっ!」
律子は俺の身体を抱きしめながら、膣内をキュンキュン締め付けた。
乳首をコリコリといたぶったり、舌先を這わせたり……。
(ダメだ、もう……本当に膣内でイくしか…………!)
このまま彼女に溺れたい。
そんな気持ちが俺の全身を支配した。
俺の心が折れたのを見て、律子が顔を寄せてきた。
「プロデューサー……私がキスしたら、そのまま…………イって?」
「ちょ、まっ……んぅ!」
俺の言葉を待たずに、律子が俺の唇を奪った。
「んっ……チュッ……ピチャ……」
甘く切ない彼女のキスが、俺をくすぐるように射精へと導いてゆく。
「んっ、んんっ! うううぅぅ~~~~~!!」
しっかりと俺に抱きついたまま、律子は規則正しく腰を振った。
そして小さな舌先が、俺の舌に絡みついてピチャピチャと吸い取るような動きをした瞬間……
ドピュピュピュピュウウウウウウウ!!
俺はとうとう射精してしまった。
身体中が痙攣して、律子を抱きしめたまま絶頂してしまった。
それからしばらくして、俺達は事務所をあとにした。
(本当に良かったのだろうか……)
彼女の願いを果たしたことにはなるけれど、俺は悩んでいた。
勢いとは言え、律子を抱いてしまった。しかも事務所の会議室で。
「なに難しい顔してるんですか? プロデューサー」
小さな溜息を吐く俺を見て、隣で彼女が笑った。
俺とは対照的に律子は上機嫌だった。
その笑顔を見て、俺はこれから先のことを考える。
律子をプロデュースすること、竜宮小町のサポート、そしてとりあえず明日のフェス……。
「やることがいっぱいだ……」
「そうですよ。ああ、そうそう……私の人生のプロデュースもお願いしますからね?」
「えっ!」
俺が聞き返すと、律子は少し恥ずかしそうな顔をした。
「そうだなぁ、とりあえずもうすぐ誕生日なんで! お祝いしてくださいね」
そんな彼女の肩を抱きながら、俺達は夜空を見上げた。
問題は山積みだけど、彼女と一緒なら何とかクリアできそうな気がしてきた。
(了)