「助けてくれッ! なんでもする! 全部話すから……ギャアアアアア」
隣の部屋から聞こえる悲鳴で目が覚めた。
俺はZ国のスパイ。
数日前に街中で怪しげな連中(おそらくこの国の公安)に拉致され、睡眠薬を飲まされた。
そして気がついたときにはここにいた。
身体はまだ動かない。
しかし意識ははっきりしてきた。
普段は一般社会に溶け込み、秘密の指令があったときだけ短い時間で結果を出すのが「もぐら」と呼ばれる俺の役割だ。
記憶があいまいで、思い出そうとするとさっきから頭がズキズキ痛む……そうだ、たしか今回は仲間がミスをした。
そして今、情けないことに敵に捕まってしまってこの有様だ。
過激な拷問を受けたせいで断続的に記憶が吹き飛んでいる。
何か大事なことを忘れているようで心配なのだが……こんなときでも俺は死ぬことを選ばない。
むしろピンチはチャンスだと思って虎視眈々と敵の機密を盗み見ている。
見てろよ。
必ず隙を見つけて生還してやる。
ここに連れて来られてから、すでに何度目かの拷問をされた。
俺の身体に自白剤は効かない。そういう訓練をされているのだ。
敵から秘密を聞かれれば話すけれど、それは全て虚偽。
本当のことなど絶対に話さないぞ。
相手も馬鹿ではない。
俺のついた嘘などすぐにばれてしまうことだろう。
まあ、せいぜい慌てるがいいさ……。
目の前にいるのは3人目の拷問官。
腰まで伸びる金色の髪と、緑色の混じった青い瞳。
尋問用のライトに照らされ、白く輝く肌。
黒のタンクトップからはみ出しそうなバスト。
イバラの鞭とか似合いそうな美人だ。
「ははッ、今度は色仕掛けか……ぐぼおおっ!?」
吐き捨てるように俺は言った。
だが女は俺の言葉には答えず、いきなりみぞおちに拳をめり込ませてきた。
「お……おうぅぅ」
呼吸が止まる。
咳き込むこともできない。
小さな拳にきっちりと体重を乗せた見事なパンチだった。
「……ふん」
女はさらに俺のあごを持ち上げ、平手打ちを数回食らわせた。
鼻の粘膜が切れ、脳が左右にゆらされる。
「ううっ……失礼、アンタは正統派だったか」
「強情なお前には手を焼く。ここから先は楽に嘘がつけると思うなよ」
「なんだと?」
女はポケットから何かを取り出した。それは小さなスプレー缶。
吹き出し口をこちらに向けると、おもむろにボタンをプッシュしてきた。
「ぐあっ……あぐぁぁ!」
息が詰まり、目の奥が焼けるような感覚に包まれる。
悲鳴も上げられないまま視界が暗転する。
俺は再び気を失った。
どれくらい気絶していたのか見当もつかない。
そして再び目覚める。
まだ生きているみたいだ。
しかし目覚めてすぐに異変に気付いた。部屋の様子がおかしい。
クリーム色の壁。
明るい照明。
勉強机。
部屋の隅には小さめのベッド。
まるで子供の部屋みたいだ。
ゆっくり呼吸する。甘いケーキみたいな香りが漂っている。
「……」
体はさっきと変わらず動かせない。
両腕はしっかりと拘束されている。
拷問は続行中のはずだ……が、このミスマッチは何だ?
妙な胸騒ぎがする。
ガチャッ
その時、俺の右側でいきなりドアが開いた。
手足は壁に打ち込まれているみたいに拘束されていたので、真横にドアがあることに気づかなかった。
しかも驚いたことに部屋に入ってきたのは……
「おはよ、おにいちゃん」
およそ拷問には似つかわしくない少女だった。
少女は俺の正面に回って、にっこりと笑いながらお辞儀をした。
年齢は12~14歳くらいだろう。
身長はそれほど高くはない。おそらく155cm程度だ。
肩は露出していて、フリル付の黒いキャミソールと、チェックのミニスカートをはいている。
髪は長く金色で、メイド風のカチューシャをしていた。
比較的美少女の部類に入ると思う。
俺はそういう趣味ではないが、ロリコンの奴らからしたらたまらない存在だろう。
「きみは……」
「ここからは私がおにいちゃんの担当だよっ」
やはりこいつが拷問官なのか。
意外性という点では正解だが、果たしてこんな少女に……
いや、なにかがおかしい。
「あんまり見つめちゃイヤよぉ……」
恥ずかしがった振りをしてもだめだ。
まじまじと目の前の少女を見つめる。
違和感の正体を突き止めてやる。
「……お前はいったい何者だ」
違和感の理由はすぐにわかった。
スカートから伸びているほっそりとした、形の良い脚。
しかし、ちょうど膝関節部分に機械的な何かが取り付けてある。
次に俺は手のひらや指先を注視した。
やはりそうだ。
マネキン人形みたいな切れ目。こいつ、人間じゃない!
警戒する俺の目の前で、少女の背中から翼のようなものが飛び出した。
飛び出したのは翼ではなく、禍々しい数種類のマニュピレータ……こいつ擬態していたのか!?
「あはっ、気付いた? 私はGMR-12っていうの。拷問専用マシンよ」
俺は耳を疑った。
(目の前のこいつが噂の拷問ロボットだと!?)
今回の依頼を受ける数ヶ月前、同僚との雑談では聞いたことがあった。
スパイから情報を搾り出す拷問機械が某国に存在するということを。
こいつにかかったら、どんな屈強なスパイでも口を割ってしまうらしい。
その方法はわからない。
なにせ帰還した人間がいないのだから。
とにかくお前も気をつけろ。
目の前に拷問機械が現れたら舌を噛んで死ぬしかない……
――今が死ぬときなのか!?
機械相手に死を選ぶ。
(人として、なんとも情けない結末だな……)
だが、現状を分析すると死んだほうがいいのかもしれない。
体は固定されたままで、得体の知れない機械が目の前で俺を拷問しようとしているのだ。
回転する巨大なノコギリの歯がじわじわと迫ってきているのと同じ。
機械に感情はない。こいつは迷わず俺を苦しめるだろう。
頭の中で数秒間迷っているうちに、少女の姿をした機械が音もなく俺に近づいてきた。
滑らかな動きで腕が伸びて、俺の顔に手が触れた。
モーターの作動音など全くしない。
頬に触れる感触は人間の手のひらと変わらない。
今のところ痛みはない。
「はなせっ! バケモノめ!」
「もうっ! 私はGMR-12……これじゃあ言いにくい? じゃあ『セシル』って呼んで」
セシルだと?
なぜお前が俺の彼女の名前を知っているんだ……
単なる偶然なのか、それとも俺を混乱させるための敵の作戦なのかわからない。
「まずはあなたの味をインプットしないといけないね?」
機械の顔が近づいてくる。
左目の色が赤から緑に変わった。
うっすらとレーザーが照射されているのがわかる。
目を焼くつもりか!?
「あ……むっ♪」
「んうううぅっ!」
セシルはさらに顔を近づけると、唇を重ねてきた。
顔の表面にコーティングされたシリコンの味など感じない。
むしろリンゴみたいな甘い香りがした。
「相手にキスするだけで、私は色々分析できるの。性癖や女性の好みやもちろん、脈拍や体温、苦痛を感じるポイント、快感を感じるポイント……全部探ってあげる」
一見すると俺より背が低いはずの少女が、俺と同じ目線だということに気付く。
後で気づいたことだが、背中から伸びたアームが床面を押していたのだ。
そして俺よりも少しだけ高い位置からのキス。
拷問機械であるセシルのキスは甘く、しかも時々舌先が伸びて俺の口内を心地よくし続けた。
頭の中がボーっとしてくる。
キスに混ざって怪しげな薬を流し込まれたのか……?
「おにいちゃん……」
数秒後、一時的に俺を解放するセシル。
こいつが現れてからの短い時間で起きたことに戸惑いつつ、次の行動を考える。
そしてたどり着いた結論……
――今すぐ死ぬしかない!
今度は迷わなかった。
俺は渾身の力をこめて舌の根を噛み切ろうとした。
(ぐっ……! 嘘だろ……!?)
しかしそれはすでに不可能な状況だった。
自分で舌を噛み切るほど、あごに力が入らないのだ。
「今、死のうとした?」
俺のことをジッと見つめていたセシルの目が両方とも青くなっていた。
「ああ、お前なんかに機密を渡すものか」
「私にキスされてもまだ抵抗するんだ?」
一瞬だけ冷たく微笑んだセシルは、再び俺の顔を固定した。
やばい! また悪夢のキスをされてしまう。
さっきは筋力を弛緩させられる薬を混ぜられたに違いない。
今度は自白剤を打ち込まれるのだろうか。
それもとびきり強力なヤツを。
「もっと心を砕いて、死にたいなんて気持ちを溶かしちゃうね」
心の中では抵抗してみたものの、やはり恐ろしい。
目の前の拷問機械には謎が多すぎる。
(き、機械にキスされたってどうってことないじゃないか!)
はじめはそう思っていた。だが、正直なところ気持ちよすぎるのだ。
こいつの目的は機密を自白させることなのか?
それとも俺を肉体的に痛めつけて、精神を緩ませてからデータを取ることなのか?
そして……なぜ美少女の姿をしているのか?
「んぶっ、んん~~!」
セシルの手が俺の胸板を撫で回す。
キスをしながら下腹部に触れ、股間に細い足を割り込ませてくる。
抵抗しようにも体を捻ることもできず、弄ばれる。
(屈辱的だ! こんな拷問機械に)
股間が弾けそうなほど痛くなる。
情けないことに、男の感じるツボを押さえた責めに耐えられない。
俺の体が何度か大きく震えたとき、セシルは手を休めた。
「もうイきそうだね。ここでやめちゃう」
「くそ……」
「あれれ? もっとしてほしかったんだぁ」
腕を組んだままセシルはこちらを見て薄く笑っている。
背中からそっとアームを伸ばして、俺の乳首やわき腹を撫で回してくる。
「はうっ!」
「とっても敏感なんだね」
ゆっくり体を撫で回されて悶絶する。
こいつの前でこんな姿をさらす気などないのに。
人間としての尊厳を根こそぎ奪われたような気分だ。
「体を自由にしてあげる」
セシルの背中から別のアームが伸びる。
枝切りバサミのような形状をした先端が、俺の手首を拘束していた皮の手錠を切り裂いた。
「なぜ……」
「こんな鎖や手錠で縛られていたら、気持ちよくないもん」
左右の戒めを解かれた俺の腕がダラリと垂れる。
長時間同じ姿勢を強いられたせいで、筋肉が言うことを聞かない。
せっかくのチャンスではあるが、逃げられない。
自由になった手足に力が入らないのだ。
「大事なおにいちゃんはぁ……私の翼で包んであげる」
セシルの背中のアームがゆっくりと俺に迫ってきた。
複数のアームが織り成す姿は、まるで天使の羽のようにも見える。
いや、訂正しよう……悪魔の翼に見える。
その中に見え隠れするマジックハンドのようなものが、やんわりと俺の手首を掴んだ。
静かなモーター音と共に、言いようのない不安感が込み上げてくる。
「こうすると私の顔が良く見えるよね」
「ふざけるな! 今すぐ離……」
恐怖感を消すために絶叫する俺の唇をセシルは静かにふさいだ。
口の中に広がる甘酸っぱい味。思わず唾液を飲み込んでから気づく。
またこいつに薬を注入された。
思考がまとまらない上に、目の前の美少女ロボットに見惚れてしまう。
自分より背の低い少女の形をした機械に見つめられる。
しかも手首を吊られてY字に吊られて、抵抗することも出来ない。
「まだ始まったばかりだよ?」
「く……そ……」
「本当のことを言ってくれるまで、楽にしてあげないからね?」
セシルはアームを操作して、俺との距離を縮めようとした。
両腕が封じられている状態で俺に出来ること。
気力を振り絞って右ひざ蹴りをかましてやる……はずだった。
相手の左わき腹を狙って繰り出したはずの蹴りがあっさりと受け止められてしまった。
『ターゲットの反撃を確認しました。拘束レベルを上げます』
セシルが呟いたのは機械的な声。
表情を全く変えずにセシルは俺の腰を持ち上げる。
じっと床面とつま先を見比べて距離を計測してから、数センチだけアームを上にずらす。
手首を吊られた状態で爪先立ちをさせられてしまった。
親指と人差し指だけがかろうじて床面に触れている状態。
「もう何もできないでしょう? イタズラしちゃだめだよ、おにいちゃん」
「舐めやがって……」
「ちょっとお注射するね」
左手首にチクリと痛みが走る。
おそらく手首を拘束しているアームから注射針が飛び出したのだろう。
今度は一体どんな毒を盛られたのか不安になる。
「今のは即効性の精力剤だよ。安心して気持ちよくなってね」
なぜこの状態で精力剤を?
俺を弱らせたままのほうが拷問しやすいはずなのに……
こいつらの言う拷問の意味がわからない。
性的な辱めを受けさせることが自白につながるのだろうか。
俺は今までこんな目にあったこともないし、対抗するための訓練も受けていない。
(ぐっ……)
左腕が、左半身が熱い。
これはさっき打ち込まれた精力剤のせいなのだろう。
妖しげな熱はどんどん体中に広がってゆく。
身体がむず痒い!
「これ何だかわかる?」
表情をゆがめる俺の前で、セシルは黒いアタッシュケースを開いた。
「なんだそれは……!」
「手首セット。いっぱい種類があるんだよぉ」
ケースの中には女性の手首らしきものがいくつも並んでいた。
それぞれ赤や水色のレースの手袋をしている。
付け根の部分はボールジョイントになっており、接続端子も見える。
拷問用の小道具が登場したということか。
「まずはこれ」
セシルは一番手前にあった桃色の両手首を取り出した。
そして俺に背を向けたままカチャカチャと音を立ててパーツを付け替えた。
「ローションハンド。気持ちいいよ?」
ニコっと笑いながら、両手の甲を俺に見せ付ける。
その名の通り、ヌラヌラと光るローションつきの手に見える。
セシルは無造作に手のひらを返して、俺の胸にペタっと押し当てた。
「ほらぁ……」
「くうっ、あああぁぁぁ!!」
ひんやりとした感触は一瞬だけで、その後すぐに身体に電撃が走った。
俺を悩ませていたムズ痒さの上に重なるローションの感触は絶妙だった。
身体がいつもよりも敏感になっている。
研ぎ澄まされた感覚を優しくなで上げるセシルの指先……
「たくましい胸板も、かわいいおっぱいもヌルヌルよ……」
丁寧に俺の身体の隅々まで指先を這わせてくる。
必死で歯を食いしばってみても、セシルの指先が流れるように動くだけで、全てが崩されていくようだった。
「あああぁぁっ、ぐああっ!」
「ただ気持ちいいだけじゃないんだから」
俺の脇の下で指をすぼめてクチャクチャと音を立てながらセシルは言った。
「ちゃんと拷問用のお薬が入ってま~す」
最初に塗られた部分はすでに乾燥し始めている。
しかし、身体の表面をコーティングしたローションの効果は凶悪だった。
「もうすぐ効果が出てくるよ」
やつが言うまでもなく、すでに効果は出始めている。
むず痒さと共にローションで撫でられた快感をも薄皮一枚に封じ込めていた。
俺の身体が自由なら、すぐにでも全身をかきむしっているだろう。
「き……さま……」
「触れるか触れないかギリギリの快感で……狂わせてあげるね」
さらに念入りにセシルは指先でローションを伸ばす。
正面から抱きつくような体勢で背中全体を魔のローション漬けにしてくる。
「気持ちいいんだ?」
「そんなわけない……だろうがああぁぁ!」
「どっちでもいいけど、次いくね」
急にクルリと背を向け、手首を付け替える拷問ロボ娘。
ほんの数分で、俺はさっきよりも体力を搾り取られてしまった。
ペニスと睾丸を除く全身を、たっぷりと愛撫された。
特にあの指さばき……機械ならではの正確さと無慈悲さは、俺を打ちのめした。
「今度はこれ……選ばせてあげる。どっちがいい?」
振り返ったセシルの手を見て、俺は言葉を失った。
左右別々の手……それも凶悪な快感を生み出すことを予感させる形状。
「こっちはカズノコハンド。指と指の間とか、表面がザラザラしてるの」
右手を俺の前で広げて、ゆっくりと見せ付ける。
表面はセシルの言うとおり細かいブツブツが付いている。
その手を握り締めると、乾いた布が擦れるような音がした。
「左手のほうはイソギンハンド。やわらか~い素材で出来てるの。この中に入れたら……」
「や、やめろ……」
「おちんちんがすぐにドピュしちゃって、あっという間に柔らかくされちゃうかもね? またすぐに硬くなっちゃうだろうけど」
セシルは笑いながら左手を二回ほど開閉した。
ゴムみたいにキュッという音に混じって、ローションが床に垂れた。
(あんなものでペニスを握られたら……)
こいつらの狙いは何だ?
快楽で俺を腑抜けにしてから情報を抜き取るつもりなのか、最初から嬲り殺しにするつもりなのか。
「選べない? じゃあ順番にやろーね」
「ちょ、ま……」
「こっちからいくよぉ」
「うああああっ!」
くにゅっ……
亀頭にそっとかぶせられたのはセシルの右手だった。
それは見た目よりも優しく、ほんの少しの動きで俺は悶絶してしまった。
甘い痺れ……俺の腰に暖かいものが広がる。
「ほらぁ、ザラザラでしょ」
「くあああぁぁぁぁ……」
「気に入った? おにいちゃん」
「だれが……あああっ! そこは!」
「このままゆっくり……しこしこしこしこ♪」
だめだ! 気持ちよすぎておかしくなる!
目を開ければ無表情のセシル。
いや、わざと薄く笑っているような表情のセシルが俺を見つめている。
「あははっ、お顔を左右に振っても無駄だよぉ。今度は上下にシコシコシコ♪」
「くふっ、んああぁぁ! やめろ、やめろ、やめろおおお!!」
「敏感な亀さんもザラザラしよーね?」
俺を見つめるセシルの目がたまに赤から緑に変わる。
照射されるレーザー光が目に入ると、思わずまぶたを閉じてしまうがおかまいなしだった。
「なんだかもうイっちゃいそう……つまんないから止めちゃう」
射精寸前になって、セシルの指先がピタリと止まる。
俺の目の動きで射精行動を読んでいるのだろうか。
「そんなに残念そうなお顔しないで。続きはちゃんとしてあげる。今度は左手よ」
「あっ、ひいいぃぃぃぃ!?」
今度はさっきよりも明確にクチュッという音がした。
俺が漏らした我慢汁のせいなのか、セシルの左手から滴るローションのせいなのかはわからない。
だがこれは、この刺激はヤバい!
「な、なんだ……これっ」
「気持ちいいんでしょ? 素直に言ってよ、おにいちゃん」
柔らかくて細かいブラシでペニス全体を擦られ、揉まれ、くすぐられている感覚。
右手の愛撫は直接的な刺激を生み出したが、この左手の愛撫は……
「あああっ、これっ!」
「この左右の手でゆ~~っくり責め続けたら、どんな男の人でも骨抜きにできるんだよ?」
ペニスの表面はそのままに、一番感じる芯の部分だけを意地悪く嬲られる。
この左手には、穏やかな動きながら男に抵抗を許さない凶悪さを備わっていた。
「おちんちんの中身だけじゃなくてぇ……頭の中も空っぽにしてあげようか」
「やめろ、助けてくれ……」
「ダメ。セシルのことしか考えられないように、たっぷりいじめちゃうもん」
喉が枯れる。
短時間で膨大な量の刺激に踊らされ、体が快感で蝕まれる。
しかもなぜか射精できない!?
「あぐううぅ! それで……焦らしてるつもりか?」
「うん、そうよ。セシルは寸止めも上手でしょ、おにいちゃん」
「たいしたこと……はないな」
「強がり言えるんだ。すご~い」
セシルは亀頭を握り締めたまま、玉袋をやわやわと揉み解してきた。
巧みな指使いのせいで、出口を塞がれたままさらに精液が増産される。
「データ通りとは言え、本当にヘンタイさんだね? おにいちゃん」
「ちが……う、ヘンタイじゃない」
「うそ。女の子に縛られて、こんなにされてるのに感じちゃって……」
無慈悲な拷問ロボ娘が両手を開いて俺に見せ付ける。
すでに精液やローションでグチョグチョにされた俺と、可愛らしい着衣のままのセシル。
「言葉責めも好きなんでしょ? ちゃんと知ってるよ」
「そんなことは……!」
俺が目をそらすと、セシルがそっと耳元に顔を寄せてきた。
「拷問されて幸せ感じちゃうなんて惨め~」
ぴたっ
「んあっ!」
情けないことに身体に手のひらを押し当てられただけで感じてしまう。
こんな機械に……人間としてのプライドがズタズタにされた気分だ。
「そろそろ素直にしてあげる」
「なっ……」
「一度出してもそれじゃ終わらせないから」
うつむく俺を見つめながら、セシルは左右の手をペニスに添えた。
「何度も何度も潮吹きさせて、おちんちんを壊してあげる」
柔らかな左手が睾丸を包み、ザラついた右手が優しく亀頭を包む。
そしてゆっくりとグラインドをはじめる。
亀頭から滑り落ちる右手が棹を伝って睾丸にたどり着く。
それと入れ替わりに、ローションを垂らしながら吸い付くような感触の左手が亀頭をくすぐる。
「ああああぁぁぁ、もう……も、もうっ!」
滑らかな手コキだけでなく、亀頭を撫でるときに小さくバイブレーションをかけてくる。
指の間でカリ首を挟みこみながら捻りも加えてくる。
全ての愛撫が的確で、しかもストロークが長い。
セシルの手首は可動域が広いので、ゆっくりと長時間愛撫できるのだ。
(ダメだ、体の奥が疼いて……おかしくなるうぅぅ!!)
腰が大きく跳ねるが、あっさり押さえ込まれる。
あっという間に俺は射精寸前まで追い詰められてしまった。
「もう限界ね」
「あっ、ああああぁぁぁ!」
「ほら、射精なさい」
決して崩れることのない冷たい表情。その赤い瞳と目が合った瞬間、俺は爆ぜた。
どぴゅどぴゅどぴゅ~~~~~~!!!!
爪先立ちのまま、俺は目いっぱい身体をそらせながら絶頂してしまった。
一度目よりも二度目の痙攣で精液が多く飛び散る。
セシルの可愛らしい服が、長い手足が白く染まる。
だがそれでも射精は終わらない。
三度、四度と痙攣してからはセシルの両手が亀頭責めを開始した。
ぷくっと膨れ上がり、敏感に腫れ上がった亀頭が容赦なく擦られる。
セシルは両目でペニスの様子をサーチしながら、感じるポイントを見極めて集中責めをした。
精液ではない何かが俺のペニスを駆け上がり、再び彼女の服を濡らした。
自分の意思とは無関係に体中の力を抜き取られた俺は、意識が真っ白になって――
「第一次搾精完了。これより洗脳作業に移ります」
両腕を拘束するアームが下がり、床に膝立ちの状態にされる。
俺の頬を両手で挟んで、瞳を覗きこむセシル。
「私の目を見て」
俺は動けない。
しかし言われたまま、拷問ロボ娘の顔を見つめる。
(セシル……また俺を……)
彼女の目が赤い。
そしてレーザーを照射される。きっと何かのデータを取っているに違いない。
「あなたの大切な人は誰?」
「たいせつなひと……」
「それはセシル、でしょ?」
「たいせつなひと……セシル……」
「そう、いい子♪」
交互に照射される赤と緑のレーザー。
その光と共に刷り込まれるのは「セシル」というキーワード。
「セシルの言うことなら何でも聞いてくれる?」
「なんでもきく……セシル」
「本当ね?」
レーザーの光に導かれるように、俺は黙って頷いた。
目の前の翼を広げた天使の言う事なら何でも聞ける気がした。
「嬉しいな。おにいちゃんが言うことを聞いてくれるなら、なんでもしてあげる」
「なんでも……?」
「たとえばこんなこととか……」
俺を見つめながら、セシルは微笑んだ。
そっとしゃがみこんで、優しくペニスを上下に擦りはじめた。
「ふあああああぁぁ! セシルッ、ああぁぁぁぁ……」
あっという間に肉棒が膨れる。
頭の中で先ほどの快感がフラッシュバックして、射精しそうになる。
極上の快感を与えてくれるセシルの手の中で再びペニスが震えた。
クニュ……♪
さらにセシルはザラザラの手のひらで、亀頭を何度も撫でてくれた。
「今度は私のオマ○コに入れてみる?」
その言葉に反射的に頷くと、彼女はゆっくりと腰を落としてきた。
俺と同じように膝立ちになってから、腰の高さをあわせてきた。
すでにビンビンになった俺自身を手のひらで包み、自らの秘所に導く。
「じゃあ入れちゃおうっと」
「あううぅぅ、ああっ!」
ぴちゅっ……
やわらかなシリコンみたいな感触がペニスに触れた。
すでに潤滑剤も要らない状態であることを確認してから、セシルは一気に腰を沈めた。
ズニュ……クプププププ……
「ああああぁぁっ!」
「膝立ちのまま抱きしめられて、私にゆっくり犯されちゃうんだよ……」
セシルの翼に吊られて、十字架に貼り付けられたような姿勢の俺を抱きしめながら、彼女は淫らに腰を揺らしはじめた。
固定されたままのペニスに対してねっとりと8の字を描いたり、わざと音を立てながら前後に出し入れを繰り返す。
俺の腰にそっと手を伸ばして、固定したままでのグラインドは特に気持ちよかった
(セシルに犯されて……こんな小さな娘に)
その不規則な腰の動きとクールな表情を見つめているだけで、体の奥から再び熱い塊が飛び出しそうになる。
「すごい、これっ……こんなのおおおああぁぁぁ!」
「興奮しちゃう? するよね、おにいちゃん」
肩に手をおいて、俺に尋問するセシル。
彼女の膣の中は左右の手の愛撫とは違う快楽で満ち溢れていた。
「バイブ機能使ってあげる」
「うっ……あ、ああああ!」
セシルの内部がうねって亀頭が痺れだす。
しかもさっきまで俺を虜にしていた左右の手は、乳首や背中を愛撫しているのだ。
「もう病み付きね……」
肩に置かれた手が、そっと頬をなでまわす。
そして唇を重ねながら、あごの先にくすぐりを入れてくるセシル。
(息が……もう、セシルのことで頭が……)
過ぎた快感のおかげで、脳細胞がプチプチと焼けているような感覚。
可愛らしい美少女の快楽責めに、もはや抵抗することは出来なかった。
「だって、ロリコンなんだもん。ほら、また出ちゃうの?」
どっぴゅうううううううううううぅぅぅぅぅ!
「……さっきよりも早かったね」
俺を冷たく突き放すセシルの言葉に何も言い返せない。
「あっ……うううぅぅぅ……」
「しばらく休んでいいよ、おにいちゃん」
セシルは俺が再び絶頂したのを確認すると、手首を掴んでいたアームを解放してから立ち上がった。
ドサリと床に崩れ落ちる俺の身体。
「あとでいっぱいセシルとお話しようね」
激しく呼吸を乱している俺を見ることもなく、セシルは部屋の外へ出て行った。
拷問部屋からシャワー通路、クリーンルームを通って、控え室へ戻るセシル。
「任務完了。メンテナンス願います」
「セシル! このバカ娘!」
自ら充電用ハンガーに腰掛けたセシルに向ってきたのは、この国が誇る天才科学者アリス・ミゼル(14歳)だった。
「あら博士。どうされたのですか」
「おまっ、おまえは……なんで言われたとおりの部屋に行かなかったんだ! お前の相手はそいつじゃないだろ」
「えっ……」
アリスは怒り心頭といった表情でセシルを睨んだ。
右手に持っているメモには、セシルに指示を出したはずのルームナンバーが控えてあった。
「しかも大変なことをしてくれたな! メモリ全消去してからAIチップ入れ替えてやる。こっちにこい」
セシルが快楽拷問を行った相手……彼はQ国の高官だった。
本人も記憶喪失状態だった上、自分をZ国のスパイだと思い込んでいた。
さらに身元を証明するものを所持していなかったので、識別に時間がかかってしまったのだ。
そのことが判明したのはつい1時間ほど前のことだった。
Q国と結んだ条約の中に、お互いの捕虜への拷問は禁止という項目があった。
「でも博士、あのおにいちゃん喜んでいまし…………メモリ全消去しますか? YES/NO」
博士は迷わずYESを選択した。
(了)