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 俺をしっかり見つめベッドの上でわずかに内股になる彼女。
 左手で膝をつかみ太ももの内側の白さを見せつける左足と、浅い角度で折れ曲げった右足との対比が美しかった。
 右手を後ろについてバランスを取りながらゆらゆらと右膝を揺らしているので美脚の付け根にある楽園の入口は巧みに隠されている。
 妖しく微笑む表情と細長い手足の隙間に見え隠れする美乳。それに腰のくびれ。男を誘うポージングは手コキで爆ぜた肉棒の回復に一役買っていた。

(そうだ、逆転のチャンスはある……)

 鈍くなった手足の感覚は戻りつつある。たしかに俺は彼女にボクシングで遅れを取り、ベッドの上でも鮮やかに一本取られてしまった。だがここから挽回することは可能だ。

 体を起こして彼女と再び向き合う。
 膝立ちになってジリジリと距離を詰めその美しい女体に触れようとした。

 目を見つめると彼女はコクリと頷いた。
 少し恥じらうような、憂いが見え隠れする表情……やはりきれいな女性だ。

 まっすぐに伸びた右足、スベスベした太ももを撫でる。
 そして俺の右手が彼女の左膝に近づくと、あちらから手を握り返してきた。

(数分前、この指先で包まれて俺は絶頂した……)

 思い出すだけでペニスがわずかに反応してしまう。
 本番で勝負するなら早めの決着を意識しなければならない。
 そうでなければ俺はおそらく耐えられない気がした。

「……こ、このまま挿入しても」

「いいですよ」

 了解を得たので膝を前に進める。
 すると彼女は笑顔を浮かべ、恋人握りだった俺の右手を解放した。

 さらに、こちらを見つめながら細い指先で内部をかき混ぜはじめた。

「入れる前に見て下さい。あなたのせいで、ほらこんなに……」

 にわかに目がトロ~ンとなって、彼女の頬に赤みがさした。

クチュリ……クチュ、クニュ……

(急に、なんだ、これエロすぎる……!)

 初めて目にする女性のオナニーシーンを俺は凝視していた。
 左手の中指と人差し指が奏でる彼女のオナニーは強烈だった。

 トロリと糸が引く様子を俺に見せつけながら、ヌラヌラと光る指先で優しくクリトリスをつまみ、ツツゥ……となぞる。細く美しい指は時々深く沈み込み、第二関節まで見えなくなる。抜き差しされるたびにピチャピチャと卑猥な音が立つ。

「すごい……」

 俺の口から無意識にその言葉がこぼれていた。

「はぁ、はぁんっ、この膣内に入れた瞬間に射精……なんてことになりませんか」

 呼吸を弾ませながら俺を見つめ、さらに興奮しながら彼女の手淫は続いていた。
 特に敏感な突起部分を舐めるように手首を返し、指の間で挟み、爪の先でそっとくすぐり悶える様子は酷く繊細で華麗な絵面だった。

「今からここにあなたのおちんちんが入るんですよ」

「はぁはぁはぁはぁ……」

「我慢、できますか?」

 そう告げられた俺は急激に自信を失いかけていた。
 明らかに具合の良さそうなマンコだ。
 あの内部で俺自身が絡みつかれ、刺激にさらされる様子は容易に想像できる。
 そしてそれは自分が思っているよりも過剰な快感をもたらす気がした。

「あは、失礼しました。童貞クンじゃないですもんね? フフッ」

 幾分指の動きが穏やかになり、呼吸も落ち着きを取り戻していく彼女。
 その整った顔立ちに色気が上乗せされた表情はあまりにも淫らで刺激的。

「前に居たんです。自分はセックスが上手いと豪語しておきながらすぐに果てちゃった男の人が」

 トロリと溶け出しそうな表情のまま彼女は言う。

「前戯……私のフェラと手コキはなんとか我慢できたみたいですけど、その後で焦って膣内に挿れたらビクンビクンッて気持ちよさそうに震えて」

 その言葉につられて俺は濡れた膣口を見つめてしまう。彼女は中指を柔らかく使ってクリトリスをゆっくりと撫で回していた。

(ああすることで膣内の具合を高めているのだろうか……)

 冷静に見れば彼女は自分が快感に溺れないよう刺激を調節しているように見える。
 膣内の愛液を適度に潤し、男を迎え入れるために気分を高めているのだろう。
 同時に見ている男はあの姿に興奮させられてしまう。
 仮に今すぐに俺が挿入してしまえば彼女に豪語した以前の男と同じ結果になりそうな気がする。ほどよく蕩けた膣肉に返り討ちにされてしまう気がした。

「私、背中を撫でてあげたんです。そうしたら十秒も経たないうちに射精……私の胸に顔を埋めて、声を出さないように我慢しながら何度も何度も腰を打ち付けながら」

 男の気持ちはわかる。せめて彼女に一矢報いたかったのだろう。
 だがその状況で腰を振ったところで――、

「しかもおまんこから溢れ出すくらい連続でイっちゃって、そのまま力尽きて倒れ込んできたのが可愛くて……思わず抱きしめちゃいました。ギュウウゥ~~って強く」

 空いている腕を自分の胸に回して抱きしめる仕草をする彼女。
 その解説は的確に俺に当時の状況を伝えていた。
 相手に想像させるのがうますぎる。
 聞かされて居る俺は間違いなく先ほどよりも興奮してしまった。

「……そのつづき、聴きたいですか?」

 無意識に俺がうなずけば、オナニーを続けながら両膝を擦り合わせ彼女が微笑んだ。

「私に倒れ込んだあともおちんちんはずっと膣内でビクビクして動いてくれなかったんです。だから私のほうからゆっくりとこの脚で」

 スゥーっと長い脚を広げ、足首を俺に近づけてきた。
 そのまま彼女は俺の腰を挟み再び言葉を紡ぎ出す。

「男の人の腰やお尻をスリスリしながら膣の動きだけで回復させてあげたんです」

 言葉と同じく彼女の足が動き出して俺の腰を優しく撫で始める。
 左右から腰骨を挟んで自分へ引き寄せるような動きだった。

「顔や背中を撫でながら、ゆっくりゆっくり……膣内でもヨシヨシするみたいに弱く締め付けたりして。彼はそれがとても気持ちよかったみたいで、イく前よりもおちんちんがガチガチになっちゃって」

 腰骨を挟んでいた彼女の右足がそっと俺のペニスに押し当てられた。

(うああっ……!)

 甘い刺激に叫びそうになる。
 必死で声を押し殺そうとしたけど無駄だった。
 スベスベの足の裏がじんわりと亀頭を押しつぶしてきたからだ。

「そう、こんな感じでした。硬くなったおちんちん、騎乗位で味わっちゃいました♪」

ぐにぐにぐにっ!

「んはああああーーーっ!」

「ふふふ」

 悶える俺をしっかりと見つめながら彼女は笑い、足の動きを緩やかにした。

(うあっ、こ、こんな足コキで無残にイかされてなるものか!)

 気を抜いたら自分からあの脚に屈してしまいそうだった。
 あのまま続けられたら射精してしまっただろう。
 ここでもまた俺は軽い敗北感を味わうことになった。

「私の下になった男の人がまるで女の子みたいにアンアン言いながら何度も絶頂するのを見て私もいっぱいイキました。相手が感じてるのを見て自分も興奮するなんてヘンですよね?」

 股間からスッと足が遠のいていく。

「今だってそうです。私、興奮してきちゃった……」

 彼女が左手の人差し指をぺろりと舐めて俺の口へと差し込んできた。
 唾液と愛液が混じった味はお世辞にも良いものではないが、その仕草がエロすぎて俺はますます高ぶってしまう。

(指に、犯されているみたいだ……こんなのって……!)

 その指先で俺の口の中をかき混ぜてから再び彼女は自らの股間を慰め始める。

「唾液で間接キスされちゃう……はぁんっ!」

クチュクチュクチュッ!

「あなたがこれからどんな声を出してくれるのか想像するだけで、ほら……こんなに……んうぅっ♪ はぁ、はぁ、は、あっ、でもあなたは一度ミルクを出してスッキリしてるから長持ちしますよね。逆に私のほうが危ないかも」

 うっとりした目で俺を熱く見つめ、彼女は切なく懇願する。

「やだ、興奮してきちゃう……お願い、早くぅ……そのおちんちん、私にください」

 そのリクエストに俺はあっさり応じた。もう我慢ができなかった。

「いっ、挿れるぞ!」

 両手で彼女の足を掴み大きく広げる。ピンク色をした中心部は見るからに柔らかで、俺を迎えるためにヒクヒク震えていた。その花弁を割り広げ一気に腰を落とす。

ずちゅっ、ずにゅううううううう!!

「んんっ……あっ♪」

 肉棒を迎え入れた刺激にのけぞる彼女。何の抵抗もなく先端が彼女の中へ潜り、奥へと導かれていく。
 挿入の瞬間だけは流石に彼女も声を押し殺して刺激を味わっているように見えた。

 だがそんな事を冷静に分析する余裕はすぐに吹っ飛ぶことになる。

(あ、ああああ、せまい……名器か、これええええ!)

 肉棒を押し込んだ先は予想に反して窮屈な楽園だった。
 内部で蠢く肉襞は、ペニスを歓待すると同時に全方位からしゃぶりついてくる。

 膣口はしっかりとペニスの根本を掴み、カリまでを包む中間はどこまでも優しくさざめき、亀頭を受け入れた膣奥はキュウキュウと締めつけてくる!

 あまりの心地よさに両手から力が抜けそうになる。
 すると彼女の方から腕が伸びてきて、俺の首へと巻き付いた。

(だ、抱きしめられるとまずいのにいいいい!)

 お互いの心臓の音が聞こえるくらいピッタリと俺たちは折り重なった。
 熱い吐息を耳元に感じる。
 柔らかいバストは形を変えて俺を誘惑する。
 細く長い脚が俺の腰へ絡みつく。ついさっき聞かされた男の話を思い出し、それが何の誇張もないものだということを改めて思い知る。

「うふっ、おちんちん、ガチガチになってる……そんなに私を犯したかったのですか? ガンガン突きまくりたかったのですか?」

 密着したまま腰がくねりと軽くひねられる。
 俺を抱きしめた彼女は顔を横に向け、耳たぶを甘噛みしてきた。

 声も出せずにその濁流のような刺激に俺は耐えるしかない。
 気を抜いたらすぐにイってしまう!

「きもちいいですか?」

「あ、あ……すごい……」

 まだ一往復もピストンしてないのに彼女の膣内でぐちゃぐちゃにされてる。挿入前のオナニーのせいなのか、たっぷり湿っているはずなのに与えられる刺激が強すぎる!

「もっときて……激しく……ね?」

 甘ったるい声でささかれ、その誘惑に導かれた俺は後先考えずに激しく腰を振り始めてしまう!

バチュバチュバチュバチュッ!

「あんっ、すごい! 想像以上ですっ」

 真下で髪を振り乱す彼女を見ているうちに俺は勝利を確信した。
 これなら俺が果てる前に相手が先に降参する。

 そんな思いを胸に腰を打ち付ける。
 しかし急にその動きが止められてしまった。

ギュウウッ!

「んっ、はぁんっ、抱きしめちゃいました……好きぃ……」

 俺の首へ回していた彼女の腕がいつしか脇の下へ潜っていた。
 そして俺の背中へ腕を回し、首の付根あたりで手のひらを重ねている。

「なっ……あああっ、うああああああああーーーーー!」

キュッ♪

 同時に、腰に絡みついていた美脚はわずかに下方へ流れ、俺の尻のあたりで足首がクロスされていた。
 こうなるとピストンは無理だ。ヘコヘコと腰を動かすくらいしかできない。

「もうダメ? イっちゃう?」

 腰の動きを止めた俺は荒く息をするだけで何も言えない。
 それを射精寸前と捉えたのか、彼女が足首のロックを解いた。

「じゃあこうして……」

 自由になった美脚が次の狙いを定めたのは俺の腰。両膝で俺の腰骨をはさみ、ゆっくり上下に動かし始める。

クプ……ヌチュ……クニュ、チュプッ……

「うああっ、あああ、あああぁぁ……なに、を!」

「これ手コキされてるみたいで気持ちよくないですか」

「な、なっ……!」

「こちょこちょって優しく何度もおちんちんに触れてるみたいで。うふふ」

 それは激しさこそ無いものの強制的なピストン運動だった。
 鍛えた彼女の腹筋と足腰の安定感がなせる技。
 細い脚が俺の腰を捕らえ、わずかに持ち上げて肉棒を舐めるように抜き取りながら再び膣内へと落とし込む甘美な繰り返しだった。
 彼女が意図したものなのか、ヌルヌルの肉襞はペニスが外へ抜ける時は強めに絡みついてき、再び内部へ受け入れる時は優しくなで上げる。

(駄目だ、これ、あの手コキみたいで気持ち良すぎる……)

 みるみるうちに忍耐力が削がれていく。自分から動いて調整できない分だけ彼女に支配されている感覚が広がり快感が募ってゆく。

「気持ちよさそう……でもいいんですか」

「……え……」

「ボクシングでも手コキでもあなたを苦しめた悪い女を懲らしめたくないですか」

 ニヤニヤしながらゆっくりと強制ピストンを続ける彼女。
 軽い煽りで快感だけでなく屈辱まで与えてくる。

 俺は臍のあたりに力をためて、ペニスが戻される瞬間を狙って腰を強く打ち付ける。

ぱぁんっ!

「きゃうっ、すごい、こんなに……はぁんっ!」

 美脚が腰を挟む力が弱まった。好機!

ぱんっ、ぱぁんっ! ぱちゅっ、ぱんっ!

(ど、どうだ……少しは効いてるだろう!)

 まぶたをギュッと閉じて手のひらで口元を隠す彼女を見て気合を入れ直す。肉棒は硬く尖ったまま、奥へ突き刺すたびに膣内のコリッとした何かをわずかにえぐっている。

いける! いける、これでイかせる!

 心なしか膣圧も緩くなってますます俺が動きやすくなる状況になった。
 汗がにじむ手のひらで彼女のバストを揉みしだく。

(クソッ、触ってるこっちのほうが気持ちよくなってどうする!)

 指先に伝わる心地よさ、極上の柔らかさをもつバストを手の中で弄ぶ。
 普段の俺ならこれだけで夢中になってしまいそうだ。

 今は邪念を捨てて全力で……だがそこで俺は目を閉じて耐え忍んでいる相手が薄く笑っていることに気づいた。

「まさか……そんな……!」

 俺の腰使いが失速する。
 静かに開かれる大きな目が俺を捕らえてニンマリ笑う。

「うふ、バレちゃいました?」

(効いてない……いまのは俺を消耗させるために!?)

 彼女の目を見て理解した。責めさせられていたのだ。
 受け身になることで相手のスタミナを削り取る作戦だったのだと。

「気持ちいいのは本当ですよ。だってとても可愛い顔で、ガンガン突いて私にマウントを取ろうとしてくるんですから」

 わずかに呼吸を弾ませる彼女の表情にいつの間にか落ち着きが戻っていた。

 自分の口を抑えていた手のひらで俺の胸板を優しく撫でる彼女。
 指先が俺の乳首を狙ってそっとつついてくる。

「はぅっ……」

 気が抜けた俺はその刺激に甘い声を出してしまう。

「まるで童貞みたい♪」

チュッ……

 余裕たっぷりに彼女はウィンクして、投げキッスをしてみせた。愛らしい表情と仕草のせいで心臓が大きく跳ねて、膣内にあるペニスも同じようにビクンと震えた。

「演技していたのは本当です。あなたを抜け出せなくするために。でもそのおかげで今は最高に気持ちいいでしょう?」

 情けをかけられている。
 ボクシングでもそうだった。
 出鼻をくじかれた失敗を取り戻そうとした挙げ句にペースをずっと握られていた。

 そして今も――、

「おちんちんも、その体も心も全て私が抱いてあげます」

 いつの間にか体勢が入れ替わっている。
 見下ろしていたはずの彼女を見上げているという劣等感。
 後手に回りたくなくて先手を取ったのに不発、そして性技において圧倒されているという気持ちが込み上げてきた。

(何故俺はこんなに屈辱を浴びているのに……彼女にドキドキしてしまうんだ)

 細い指が俺の肩を抑えている。そしてゆっくりとペニスは彼女のペースで出し入れされていた。それがたまらなく気持ちよくて、情けないのに求めてしまう。

(ああ、そうか……さっきの手コキのせいだ……あれのせいで俺は……)

 痛みに対する耐性が、拒絶感が塗り替えられてしまっていた。心地よいはずの射精のきっかけになったのは亀頭へのデコピンだった。痛みと快感がごちゃまぜになったまま夢見心地へと導かれた。

 俺の目が絶望に染まったのを感じたのか、とびきり優しく彼女は笑った。

「たっぷり愛してあげます。戻れなくなるくらいに」

チュ……

 今度は額にキスされた。頭の中が彼女でいっぱいになる。

 もっと愛されたい、気持ちよくされたい、痛めつけられたい……自分でもおかしいと思う感情だが全てがグチャグチャに入り乱れている。

 俺は彼女に2種類の劣等感を抱いている。
 ジムでの敗北とベッドの上での最初の敗北。格闘での痛みと手コキの快楽。
 それらがさっきのデコピンで結びついてしまったのだ。

 さらに失意の中での誘惑。今の俺が頼れるのは彼女しかいない。この惨めな状況を許してくれるのは彼女しかいないのだ。

「もっと焦らして狂わせちゃう」

ずちゅうううぅぅぅぅ……

 深く繋がり、一番奥へと導かれたペニスに伝わる窮屈な刺激。
 カリへの締め付けとそれ以外の部分が柔らかい布で磨かれているような感覚。

「あああっ、それっ、きもちいいいいいーーーーッ!!

「ふふ、じゃあもっと」

 彼女は体を倒し、ピッタリと俺に重ねてきた。
 両手は恋人握りを強要され、長い脚が外側から俺の脚を挟み込む。
 ベッドの上で両足を伸ばされた俺はペニスだけでなく全身で彼女の体を味わわされている。

(きもちいい、このマンコ、どうなってるんだ……俺の弱いところにピッタリ食い込んでくるみたいな……)

 挿入前から勝負は決まっていたのだ。同時に俺は気付く。
 ボクシングと手コキで負けた段階で諦めていればここまで彼女に心を掴まれることはなかっただろうと。

「おちんちんさっきよりも硬いですよ」

「うっ、ううう……」

キュウウウゥゥゥゥゥゥゥ~~~

「ああっ!」

「ゆっくり締め付けられるの好きですよね。射精しなかったのは偉いです」

(うっ、なんで、褒められるだけで気持ちよくなっちゃうんだよ……)

 彼女に優しくされると無条件でドキドキしてしまい性感も上がる。そういえば2回戦、セックス本番の序盤も彼女は俺を褒めちぎっていた。
 そして俺から勝負を仕向けるように主導権を渡して誘導した。手コキによって痛みと快感を結び付けられていた俺はそれに気づけなかった。
 今思えばセックスという甘い罠を回避する選択肢が巧みに潰されていたんだ。

「女の子を犯すのと、女の子に犯されるのではどちらがお好きです?」

「そ、そんなの……」

 彼女は膣内のざわめきをストップして俺の答えを待っている。

「答えられないということは?」

 じっとこちらを見つめたまま、ゆっくり腰を回して円を描く彼女。
 その動きによってペニスの表面が内部でソロリと撫で回される。

クキュ、チュクッ、クニュゥゥゥゥ……

 まるで毛先の柔らかい筆で急所を責められるような刺激に、

「あ、ああああ、きもちいいよおぉぉ!」

「クスッ、やはりそういうことですか」

 自ら弱点を告白させられた。
 しかし最初から挿入によって彼女に性感を委ね、弄ばれることは確定していたのだ。
 極上の手コキによって無意識に刷り込まれた快感に抗うのは難しい。
 それを無理に我慢したからますます俺は快楽を求め、彼女の思惑へ落ちてゆく。

(こ、この騎乗位、押し返せない……さっき体力を使い果たした……)

 そして正常位では彼女は演技をした。俺の自尊心をくすぐり、さらに快感の深い場所へと導くために。その結果、実力以上に張り切って疲れた俺は手足をホールドされ、むき出しにされた心まで彼女に掴まれてしまった。

「じゃあこれは?」

 不意に抱きついたまま腰から下だけを動かし始める彼女。

タンッ、タンッ、タンッ、タンッ……!

「あ、あっ、それだめ、でっ、でちゃうううう!」

「我慢ですよ。ほら、また私に負けちゃう」

「うぐっ、く、くそぉぉぉ!」

 数分前、挿入と同時に射精してしまうであろうことも彼女は予測してい。
 だから俺を煽ることで闘争心で快楽を封じ込めたにすぎない。
 今だってそうだ。心が折れる直前までペニスをなぶり、意のままに操っている。

「かわいい♪ 少し手加減してあげます」

「あ、うっ、ぅ……」

 腰の動きがピタリと止んで、逆に物足りなくなった俺はヘコヘコと腰を動かそうとするが体は彼女に抑え込まれている。

「動けなくて悔しいですね。でも童貞クンにはこれくらいがちょうどいいですか」

 クスクス笑いながら彼女は言う。優しい口調でまた屈辱感を埋め込まれた。
 気持ちを多少塗り固めたところで彼女が与える快楽の前ではあっけなく剥がされてしまうというのに。

「まだ射精してないからチャンスはありますよ」

 なぜ2本勝負にしたのかも今ならわかる。1本目の勝利では不十分だったのだ。俺の心を快感で絡め取り、引くに引けない状況を作り出すために。

「ほらぁ、もっと突き上げて私をイかせないと」

「こ、このっ……!」

 俺の体が力んだ瞬間に彼女が全身で俺を抱きしめてきた!

「はい、ダメー。女の子を押し返せないなんて弱いですね~」

(あ、ああああ、勝てない、彼女が強すぎて……)

 密着感にドキドキしつつまた俺は焦らされる。
 触れ合っているだけで力が抜けて興奮だけが高められてしまう。
 彼女が完全な勝利を掴むために絶頂間際で寸止されているのだ。

「……そろそろ楽にしてあげましょうか」

「ッ!?」

 ここで俺が望めば彼女は最高の射精へと導いてくれる。
 だがそれは自ら望んだ敗北となり、俺の心を深く傷つけるだろう。

「私の奥でおちんちんをキュウウウウって搾ってみるとか」

「だ、だめ……そんなことされたら」

「赤ちゃんができちゃうかも知れませんね」

「え……」

「おちんちんをこんなに焦らされて、気持ち良~く射精させられたら……手コキの時よりもいっぱい出しますよね。私の膣内が精液で溢れちゃいます」

 完膚なきまでに女の魅力で俺を叩きのめし、頭と体に無意識の隷属意識を叩き込むのが狙いなのだ。それなのに彼女に対して決して逆らえなくなる状況を考えると今の俺は興奮してしまう。

「まだ我慢できますか」

「ううっ、そ、それは……」

「それとも私のモノになっちゃいます?」

 甘い誘惑にペニスが膣内で跳ね上がる。
 それはおそらく彼女にも伝わってしまっただろう。

「だいじょうぶです。今日は安全日ですから」

「ま、またそんな、ことを……!」

 もがけばもがくほど飲み込まれていく快楽の罠に自分から飛び込みたくされている。
 このセックスは、逆らえば食い込む返し針のような甘い毒。

「本当です。でも私に負けるのがどうしても嫌で、今日だけの関係で終わりたいならここで試合終了にしましょう。その時は引き分けってことにしてあげます」

 ズキンと胸が痛む。もしこの関係が今日で終わるとしたら、俺は明日から彼女との刺激を思い出してオナニーするしかなくなってしまう気がした。

「さあどうします?」

 両手で俺の顔をはさみ、まっすぐに見つめてくる彼女。
 これが最終通告だと言わんばかりの重圧に俺はとうとう屈した。

「い、イかせて……俺を、思いっきり搾って下さいいいいいぃぃ!」

 その言葉を聞いた彼女はフッと笑い、俺の両手を頭の上で交差させた。
 右手のみで俺の手首を封じて左手で顎をくいっと持ち上げながらささやく。

「この勝負、私の勝ちです。射精した瞬間にキスしてあげます。
 あなたは格闘技でもセックスでも女の子に勝てなかったことを噛み締めながら自分勝手に気持ちよくなっていいですよ」

 その言葉が終わると同時に彼女が下腹部に力を込めると、ペニスにまとわりつく膣肉のざわめきが大きな変化を見せた。

クチュクチュッ……クニュッ、クニュっ、キュププッ、クチュウウウ!

「あ、あ、なんっ、なにこれえええええ!?」

「どんな男の人でも一分以内にイかせてしまう私のとっておきです」

 背筋を駆け抜けていく快感に俺は絶叫する。
 膣内全体が強くすぼまり亀頭は激しくシェイクされていく。
 彼女は腰を動かしていないのに体の奥から精液が吸い出されていくような感覚。

「次に私が腰を落としたら終わりです」

ヌリュウウゥゥゥ……

 わずかに彼女が腰を上げると俺もつられて腰を突き出して、いや腰が吸い寄せられてしまう。そして――、

……パチュンッ!

「あっ」

 全身が泡立つ。ペニスの敏感な場所が一気に舐め上げられた。

「ふふっ、イっちゃえ♪」

「あ、あっ! うああああああああああああああーーーーーーっ!!」

ドピュウウウウウウッ、ドプッ、ドピュッ、ドピュウウ!!

 両手を頭の上で交差させられたまま俺は激しく射精した。

チュウウウウウッ!

「んっ、んうううう、んんんーーーー!?」

 ドピュウッ!

 最初の射精と同時に唇を奪われ目を白黒させる俺。彼女は冷静に俺の口内を舐め回し、射精される感覚を楽しむようにクネクネと腰を揺らしてみせた。

ピュッ、ピュウウ~~!

 キスで頭の中を溶かされ、我慢を取り除かれた俺はまた射精してしまう。
 ベッドのスプリングがギシギシ音を立てて弾む。
 それでも吸収しきれない快感が全身を包み、訳のわからない声をあげながら俺は彼女の膣内に何度も精を吐き出す。

 2回、3回、4回、断続的に搾られ、ついに搾り尽くされて何も出なくなったあとも彼女はその技を止めなかった。

(しぬっ、こんなの、されたら、しんじゃ……う……)

 口をパクパクさせ、目に涙すら浮かべる俺に彼女が再びキスをした。

「言わなかったけど全部動画に撮ってますから」

「……っ!」

「拡散したりしませんから。これは私のお楽しみです。心配しないでいいです」

 全身が痺れたように動けない俺を見て満足そうに彼女は笑う。

(もう、俺は彼女から抜け出せない……)

 ふと見上げれば美しい彼女の顔がそばにある。
 それだけでまた胸がどきどきしてしまう。

 明日からは彼女と会うために毎日ジムへ顔を出すことになるだろう。

 今まで味わったことのない快楽を簡単に忘れられそうにない。

 静かに遠のいていく意識の中で俺はそんなことを覚悟していた。



(了)












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